Archive for category ショウ雑感

Date: 11月 11th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その8)

テクダスのAir Force Oneとじっくり比較試聴してみたい現行製品となると、
ノッティンガムアナログスタジオのAnna Logである。
外観的には、まるで方向性の違うプレーヤーであるだけに、どういう結果になるのか非常に興味がある。
そういう機会はおそらくない、と思うのだが、
それでもこのふたつのアナログプレーヤーは実物を前にして、音だけにとどまらず、
アナログディスクを再生するメカニズムとしてプレーヤーをどう捉え考えているのかを、
じっくりと比較しながら見ていくことは、おもしろい記事になるとも思っている。

音は聴かなければわからないもの、というよりも、
わからないところがあるものだが、
それでもAir Force OneとAnna Logとでは、前者のクォリティが全般的に上のような気がする。
それでも、アナログディスクを再生することの面白さとなると、
それは必ずしもAir Force Oneがいいとはいえなくなるような気もする。

アナログディスク再生のためのメカニズムをある種のカラクリとして捉えているのであれば、
Anna Logに非常に興味深い存在である。

現行製品の中ではAnna Logぐらいだが、
実際にアナログプレーヤーの購入を検討するときには、必ずしも現行製品だけとは限らない。
過去の製品も比較対象となってくる。

そうなるとAir Force OneとEMTの927Dstはどうなんだろうか。
おそらくずいぶんと傾向の異る音のはずだ。

Date: 11月 10th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その7)

カンターテ・ドミノは、ステレオサウンドの試聴室では井上先生の試聴の時に、
それこそ数え切れないほど聴いている。
オーディオ機器のチューニングのとき、これ一枚だけでかなりの部分でやられるときも少なくなかった。
だからこそ、井上先生のチューニングによって、カンターテ・ドミノの鳴り方がどう変化していくのか、
それを数多く体験できたのは、こういう場での音の確認の時に役立っている。

ステラのブースに響いていたカンターテ・ドミノの教会は、まぎれもなく木の印象のものだった。
それもピントのあまい音だった、ぼけた感じの音、そういう類の音で木の響きを、
いわばごまかしながら表現しているのではなく、
細部まできっちりと表現しながらも、木の独特の、やわらかな響きが無理なく拡がっていくのがわかる。

このカンターテ・ドミノのレコードを聴いて、
ステラのブースで、いま鳴っている音は信用できる音だと確信できた。
確信できたからこそ、カンターテ・ドミノのあとにかけられたディスクを楽しむことができた。

ステラのブースの、この時の音が、最高の音だとはいわない。
けれど、少なくとも、音楽を聴いていく上で、
しかもこういう場では、聴いたこともないディスクもかけられる。
そういうディスクであっても、そこでの音を信用できる、
という保証をカンターテ・ドミノのレコードの音で得られた。

そのことがAir Force Oneの凄さだと素直に認める。
現行製品のアナログプレーヤーとしては、音だけに関しては最高のモノといえるだろう。

Date: 11月 10th, 2013
Cate: ショウ雑感, 瀬川冬樹

2013年ショウ雑感(瀬川冬樹氏のこと)

今日は瀬川先生の三十三回忌法要に行ってきた。

ほんとうに近しい人たちだけの、ということで、私が行っていいものなのか、と思いもしていた。
瀬川先生が熊本のオーディオ店に来られることはかかさず通っていた。
いわばおっかけである。

私がステレオサウンドで働くようになったのは1982年1月から。
瀬川先生が亡くなられた後のことだ。
そういう者がはたして行っていいものか、とは思いながらも、
来てください、といわれていたので、行ってきた。

行ってよかった、とおもっている。
なぜ、よかった、とおもっているのかについては、いずれ書いていくかもしれない。
書かないかもしれない。

いまのところ、ひとつだけ書いておきたい。
ショウに関することだからだ。

瀬川先生がメーカーのショールームで、
定例プログラムを行われていたことは、この時代にオーディオに興味を持っていた方ならば、
多くの方がご存知だし、楽しみにしていた方も多かったはず。

瀬川先生の回は、どのメーカーのショールームでも人が多く集まっていた、ときく。
瀬川先生は、来る人拒まず、の姿勢だった、ときいた。
そして重要なのは、一人として最後まで誰も帰さない。
そういう覚悟で毎回行われていた、ということだった。

インターナショナルオーディオショウでもそうだが、
オーディオ評論家と呼ばれる人が講演という名の音出しをやっていても、
瀬川先生と同じ覚悟でやっている人は何人いるのだろうか。

Date: 11月 10th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その6)

カンターテ・ドミノは、スウェーデンのマイナーレーベルといっていいプロプリウスを有名にした一枚である。

プロプリウスは1960年代末にスタート。カンターテ・ドミノは1976年の録音。
教会でのワンポイント録音、テープデッキはルボックスのA77だった、ときいている。

1979年にスウェーデンのレコード賞を得て、
ヨーロッパのAESのコンヴェンションやオーディオショウでデモンストレーションのレコードと使われることが増え、
注目されるようになっていく。

1981年秋に来日したJBLのジョン・アーグルも、
この時の新製品、4435、4430のセミナーにおいて、カンターテ・ドミノを使っていた、とのこと。

このころになると日本でも話題になっていて、
1982年にマークレビンソンやSAEの輸入元でもあったRFエンタープライゼスが輸入を行うようになった。
日本で広くカンターテ・ドミノが知られるようになり、売れるようになったのは、このころからだろう。

カンターテ・ドミノのディスクは持っていないという人はいるだろうが、
一度も聴いたことがない、という人は少ないように思う。
どこかで耳にしていることが、きっとあるはず。

これほど有名なディスクにも関わらず、
日本人には教会ときくと、石造りのイメージがあるためか、
カンターテ・ドミノの録音が行われた教会もまた石造りだと思っている人がいる。

すでに何度か書いているように、カンターテ・ドミノで使われた教会は石造りではない。
だからカンターテ・ドミノで聴くことができる残響・反響は木の響きをイメージさせるものでなくてはならない。

テクダスのAir Force Oneで鳴ったカンターテ・ドミノは、
木の教会の響きを、実に自然な感じで再現してくれた。

Date: 11月 10th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その5)

エルプのレーザーターンテーブルのスクラッチノイズの出方が特徴的なのに対し、
テクダスのAir Force Oneでは、いわゆる一般的なアナログプレーヤーの出方なのだが、
ノイズは出ていても、あまり耳につかない。ノイズが尾を引かない。
ノイズの音そのものも低く抑えられている印象である。
つまりいいノイズの出方だった。

このへんは自分で操作しての印象ではないから断定まではてきないけれど、
おそらくノイズの出方の印象に関しては大きく変ってくることはないはず。

このノイズの出方を聴いていると、安心してアナログディスクが聴ける、という感じがしてくる。

ローズマリー・クルーニーの次はバリー・ベラフォンテだった。
その次はエリー・アメリングがかけられた。
このとのアメリングが、私の中にあるアメリングの印象よりもすこしばかり細めに聴こえて、
おやっ、と思うところもあったが、
アンプもスピーカーシステムも初めて聴くものばかりだから、
どこにそう聴こえる要因があるのかははっきりとはしない。

四枚目がプロプリウスのカンターテ・ドミノだった。
カンターテ・ドミノはCDもアナログディスクも何度となく聴いている。
自分のシステムでもかなりの回数聴いてきた。

このディスクの鳴り方で、ほぼおおよそのことは判断できる、ともいえる。

歌が始まる。
この瞬間で、Air Force Oneの実力の高さを確信できた。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(その10)

インターナショナルオーディオショウの今年の講演スケジュール表をすみずみまでみていたわけではなかった。
なんとなく眺めて、今年はこんな感じか、という程度の眺め方だったから、
各ブースの各講演はすべて一時間だと思い込んでいた。

ステラの柳沢功力氏のときも三時すこしすぎてから入った。
四時までだな、とするともうひとつどこかのブースに行けるな(最終日は五時終了)と思っていた。

次々にアナログディスクをかけられる。
テンポもいい。
ふと時計をみると四時近くになっていた。
そろそろかなと思っていても、少しも終る気配が感じられなかった。

四時をまわってもまったく時間を気にすることなく進んでいく。
もしかすると、二時間なのか、とやっと気がついた。
つまりステラのブースに最後までいると、終了の時間になってしまう。
他のブースにはもういけない。

しかもずっと立ちっぱなし。
人も多い。

それでも結局最後までいたのは、くり返すが、柳沢氏のオーディオの楽しみ方が伝わってきたのが大きい。
柳沢氏との対比で書いた人のブースには、がまんにがまんを重ねても、30分はいられなかった。
会場に着いてからそれほど時間は経っていなかったから、
別にしんどかったわけでもない。
それでも、もうこれ以上、ここにいたくないとおもい、ブースの外に出た。

各ブースのメーカー、輸入商社の人たちは、
講演を依頼する人をどうやって決めているのだろうか。

なぜ、この人にしたんだろう? そうおもってしまうことが今年に限らず必ずある。

Date: 11月 7th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その4)

スクラッチノイズの出方で、今回のインターナショナルオーディオショウで印象に残っているのは、
タイムロードのブースに鳴っていた、いわゆるレーザーターンテーブルである。

カートリッジという機械式のピックアップではなく、
レーザー光を使った、非接触型のピックアップによるアナログディスク再生を可能にした、
エルプのプレーヤーのことだ。

ちょうどタイムロードのブースにはいったときに、
エルプのレーザーターンテーブルによる音出しだった。
入った瞬間、不思議な質感の音だな、と思って正面をみれば、
アナログディスクのジャケットが、いまかけているディスクとして置いてあった。

しかもスクラッチノイズの出方も、聴きなれた感じとは違う。
どのアナログプレーヤーが鳴っているのか確認してみれば、エルプのレーザーターンテーブルだった。

ダイアモンドの針先が音溝と接触している、これまでのカートリッジによる再生と、
光学式では、トーンアームの振動の問題も含めて、
アナログディスク再生といても、条件はそうとうに異る面・要素をもつ。

そのためなのかどうかは、タイムロードでの短い時間で聴いただけでははっきりしたことはいえないのだが、
それでもノイズが皆無なのではなく、その出方が、これまでとははっきりと違っている。

これだけノイズの出方が違っているということは、
音に関してもそうとうに違う質感で鳴ってきても不思議ではない。

ここでも比較対象となるアナログプレーヤーの音が聴けなかったので、
これ以上音について触れるのはやめておくが、
アナログディスクの音について考えていく上で、決して無視できない存在である。

Date: 11月 7th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(その9)

今回は会場にいた時間はそれほどながくはなかったので、
聴きたいブースの音のためには、時間に余裕がある時ならば、
あまり関心の持てない人の話をきかずにすむのだが、今回はそうはいかなかった。

そのブースを音を聴くには、オーディオ評論家と呼ばれている人の時間帯にあたってしまった。
それでも、どういう話を、どういう話し方でする人なのだろう、という関心はあった。

話が始まった。
五分もきいていたら、いいかげん音を聴かせて欲しい、と思っていた。
でも話は続く。
しびれがきれる寸前で、やっと音を鳴らすことになったのだが、
ここでもまた少し話があって、それこそ、やっと音が鳴った。

一曲終り、また話が始まる。
そして二曲目、話、三曲目……。

話と音楽が交互にくるのは、どの人でも同じである。
同じであるからこそ、話の内容、かける音楽の違いが、より鮮明になってくる。

今回のショウで最終日の最後にステラのブースで柳沢功力氏によるテクダスのAir Force Oneをきいていた。
きいていて、上に書いた人とは正反対で、こちらがしびれをきらすようなことはほとんどなかった。
話もきいていて面白い。
話の内容すべてに同意できるわけではないし、疑問があるところもないわけではないけれど、
それでも、柳沢氏の話をきいていて感じていたことは、
話の巧拙ではなく、ああ、この人はプライベートでは、こういうオーディオの楽しみ方をしているんだ、
そういうことが話をきいて想像できるから、おもしろかったし、退屈することがなかった。

そこで感じられた楽しみ方が、自分の楽しみ方と完全に一致する必要はない。
とにかく、その人がどういう楽しみ方、オーディオと音楽との接し方をしているのかが、
きちんと伝わってくれば、話をしている人と私とのあいだに、いろいろな違いがあっても、
そんなことは問題にはならない。

上に書いた人の場合、私にはその人のオーディオの楽しみ方が伝わってこなかった。
話をきいていて、この人は、オーディオで音楽を聴くことを楽しんでいるのだろうか……、とさえ思っていた。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: ショウ雑感
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2013年ショウ雑感(行けば楽しい・その2)

国際フォーラムに搬入するということは、その前に各メーカー、輸入商社は自社からの搬出作業がある。
その搬出作業の前には機材のチェックがあるはずだし、梱包作業がある。
そうやって搬出し、会場に搬入し、開梱して設置する。
場合によっては、梱包資材はブースに置ければいいけれど、そうもいかなければ持って帰ることにもなる。
搬出作業はこの逆を行う。

実際にやってみると、たいへんなことである。
しかも今週末(8、9、10日)は大阪でまたオーディオショウがある。
ほとんどの会社が前日には大阪入りすることだろうから、
インターナショナルオーディオショウとハイエンドオーディオショウの両方に出展する会社は、
例年よりも大変であろう。

いま東京で開催されるオーディオ関係のショウはほとんどが無料である。
インターナショナルオーディオショウもハイエンドオーディオショウも入場するのにお金は要らない。
もっとも会場で欲しい、と思ったモノを手に入れるには、かなりの金額を必要とするけれども。

けれど会場を借りるのにはお金が必要となる。
搬入搬出作業にもお金はかかる。
お金はそれ以外にも出ていく……。

そういうオーディオショウが無料で入場できるわけだ。
なのに、人が多いとか、まともな音なんか聴けないから、とか、
電車に乗るのが面倒だから、とか、家族サービスをしなければならない、とか、
行かない理由なんて、いくらでもつけようと思えばつけられる。
そうやって行かない人は、もしオーディオショウが開催されなくなったら、
なんというだろうか。

毎年開催してくれている、とおもっている。
それも営業活動だろう、といえばそうである。
けれど、直接的な営業活動ではない。
あくまでも間接的な営業活動でしかない。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(行けば楽しい・その1)

今年のインターナショナルオーディオショウには初日と最終日に行った。
行くまでは、人が多いんだろうな……、そんなことを思っている。
でも会場に着き、それぞれのブースを廻っていると、やはり楽しい。

音なんて、ブースに入って瞬間にわかる、
だから一分もいないよ、
──こんなことを堂々と語る人を知っている。
インターネットにも同じようなことを書いている人もいる。
同じ人なのかどうかはわからないけれど、
こんなことを言って、何が楽しんだろう……、と思う。

自分の耳の良さでも自慢したいのだろうか。
そうやって自慢しなければならないほどの耳なのか。

どのブースにしても100%の状態で鳴っているわけではない。
そんなことは、このインターナショナルオーディオショウに何度か来ている人ならばみなわかっている。

だから聴く価値がない、という人もいる。
ほんとうにそう思っているのだろうか。

いくつか注文をつけたくなるところは私も持っている。
それでも、行けば楽しい。

おそらくショウ初日の前日の夜に、
各ブースの人たちは搬入作業をやっているはず。
エレベーターの数は限りがあるから順番を守っての搬入になるはずだ。

インターナショナルオーディオショウで使うブースはほとんどが会議室としてつくられているわけだから、
展示場として設計されている施設よりも搬入条件はよくない、と思う。

そうやって搬入してオーディオ機器の設置、それにブースの設置などの作業。
それから音を出しての調整。

初日の朝も、調整しているところもある、と思う。
実際に数年前、ショウの二日目の朝、あるブースで調整の最中だった場に遭遇している。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(その8)

デモンストレーションとは、辞書(大辞林)には、
勢力・技能・性能などをことさらに示すこと。また、そのための行動や実演、とある。

勢力・技能・性能などを示すことがデモンストレーションであるのなら、
音出しをデモンストレーションと呼ぶことに抵抗はないのだが、
「ことさらに」とあるから、デモンストレーションは使いたくないし、抵抗を感じる。

ことさらとは、際立つように意図的に物事を行うさま。故意に、わざと、と辞書にはある。

オーディオフェアのような会場では、「ことさらに」も必要となってきたかもしれないが、
インターナショナルオーディオショウでは「ことさらに」は必要ではない。
だからデモンストレーションではない。

ならば、講演なのか。

講演とは、聴衆の前で、ある題目のもとに話をすること。また、その話であるから、
インターナショナルオーディオショウでオーディオ評論家と呼ばれている人がそれぞれのブースで、
そこで取り扱っているオーディオ機器について話すことは、講演の範疇に、言葉の意味としては入る。

講演と呼ぶことを理解はできても、それでも納得がいかない。
講演と呼んでいいのか、というおもいがどうしても残る。

講演の講の文字が頭につく言葉には、講解、講学、講義、講座、講師、講釈、講読、講評、講明、講論などがある。
講演を含めて、これらから受ける印象が、
どうしてもインターナショナルオーディオショウのブースでやられていることとはあわない。

何もすべての、それぞれのブースでやられていることが講演と呼べないとは私だって思っていない。
講演だ、と思える場合も確かにある。
でも、残念なことにそれはわずかである。

インターナショナルオーディオショウで行われている、いわゆる講演のすべてをきくことはできない。
体はひとつしかないから。
でも、関心があまり持てない人でも、一度は、そのブースに行ってきいてはいる。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その3)

ステラのブースで鳴っていたスピーカーもアンプも、それにAir Force Oneも、
私にとっては初めて聴くモノばかりであった。
そういうシステムで、しかも比較対象がない状況でどれだけ正確に音を判断できるのか。
そのことに疑問を持たれるかもしれない。

アナログプレーヤーを、聴きなれているモノと比較できれば、
より正確にAir Force Oneの実力・素姓は掴める。

今日の音出しは、何ひとつ変えることなく、二時間Air Force Oneによるアナログディスクの再生だった。
同じディスクのCDが再生されることもなかった。

それでもアナログディスクにはスクラッチノイズが、宿命的につきまとう。
そしてこのスクラッチノイズが、こういうなにもかもが聴くのが初めてのシステムであっても、
確かな基準となってくれる。

別のブースでのことだが、ここでもアナログディスクがかけられていた。
高価なカートリッジ、高価なトーンアーム、高価なターンテーブル、
トータル金額はAir Force Oneには及ばないものの、かなり高価なシステムである。
このシステムも、初めて聴くモノばかりで構成されていた。

このプレーヤーでのスクラッチノイズは出方は、
私が良しとするアナログプレーヤーでので方とは異質の出方だった。
ノイズの量としては多くはないけれど、やけに耳につく。
なぜ、そういうノイズになってしまうのか、
そのアナログプレーヤーを自分の手で調整してみて音を聴いてみないとはっきりとしたことは何も言えないが、
ただ単に調整がおかしいだけとは思えない、そんなノイズの出方・質(たち)であった。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その2)

朝からの用事が予想以上にはやく片づいたので、今日もインターナショナルオーディオショウに行ってきた。
会場に着いたのが13時ごろ。

まずアークのブースに行き、VOXATIVが鳴らされる時間をチェックして、
それまでの間リンのブースに行っていた。
それからアークのブースに15時までいて、
ふと前を通りかかったステラのブースに入ったら、
ちょうど柳沢功力氏によるテクダスのAir Force Oneの音出しが始まるところだった。

一昨年展示してあったAir Force One、
この時は音は聴けなかった。
去年はインターナショナルオーディオショウに行けなかった。
なのでやっと今年、その音を聴くことができた。

最初にかけられたディスクは、柳沢氏ということから、すぐに、あれか、と思われる方も少なくないと思う、
ローズマリー・クルーニーだった。
このローズマリー・クルーニーのディスクは所有していないけれど、
何度か聴いたことのあるディスクである。

ローズマリー・クルーニーのディスクの上にカートリッジの針先が降ろされ、
音が鳴り出すまでのわずかの間、ここから、おっと思わせる。
音が鳴る。
見事だ、と素直に思える音が鳴ってきた。

アナログディスク再生に関しては、これまでいくつかの印象に強く残る出合いがある。
トーレンスのReferenceを初めて聴いたときのこと、
EMT・927Dstを聴いた時、
トーレンス101 Limitedを手に入れての、はじめての音出し。
その101 LimitedにノイマンのDStとDST62を取り付けて鳴らした音、
マイクロのSX8000IIをステレオサウンドの試聴室で初めて聴いた時、
そしてそのSX8000IIにSMEのSeries Vを取り付けて聴いた時、などである。

テクダスのAir Force Oneの音も、そうなる。
特にSeries Vを聴いた時、アナログディスクでもここまで鳴るのか、と、
アナログディスクの仕組み上のあきらめなければならないと思っていたことを、
Series Vは見事に克服していた。

そのSeries Vに感じた、同じことをAir Force Oneにも感じていた。

Date: 11月 3rd, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(その7)

オーディオフェア・オーディオショウで音を出さないブースはない。
来場者は音を聴きに来ているわけだから、音を出さないわけにはいかない。

この音を出す行為は、なんと呼ぶのがいいのだろうか。

晴海でのオーディオフェアでの音出しは、会場がああいうものだったこともあり、
デモンストレーション(demonstration)がぴったりきていた。

インターナショナルオーディオショウのように各ブースが音響的に隔離されているわけではなかった。
晴海の見本市会場に仕切を立てて各社はブースをつくっていく。
来場者の数も多い。
会場内のS/N比は、インターナショナルオーディオショウとは比較にならぬほど悪かった。
そういう環境での音出しだからこそ、デモンストレーションだった。

いまはそうではない。
インターナショナルオーディオショウの会場となる国際フォーラムの扉は重く分厚い。
会議室としてつくられているだけに、扉を閉めてしまえば遮音は完璧とはいかないものの、悪くはない。
こうなってくると、ここでの音出しは、もうデモンストレーションとは呼びにくいし、そう呼ぶことに抵抗もある。

ではなんと呼べばしっくり来るのか。

すべてのブースではないが、半数以上のブースではオーディオ評論家と呼ばれている人たちによる音出しをやる。
これをインターナショナルオーディオショウでは講演と呼んでいる。
これも、まったくしっくりこない呼び方だ。

Date: 11月 3rd, 2013
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, ショウ雑感

Bösendorfer VC7というスピーカー(2013年ショウ雑感)

Bösendorfer VC7というスピーカー」という項を立てて、(その28)まで書いている。
まだ書いて行く。

Bösendorfer(ベーゼンドルファー)からBrodmann Acousticsに変ってから、
日本へは輸入されていない。
現行製品ではあるけれど、日本ではいまのところ買えない。

だからこそ書いていこう、と思っているし、その反面、輸入が再開される可能性も低いだろう、と思っていた。

今年のインターナショナルオーディオショウでの、予想していなかった嬉しい驚きは、
Bösendorfer(Brodmann Acoustics)のスピーカーシステムが、
フューレンコーディネイトのブースの片隅に展示されていたことだった。

目立たないように、という配慮なのだろうか。
うっかりすると見落してしまいそうな感じの展示である。

今日の時点ではフューレンコーディネイトのサイトには何の情報もない。

Brodmann Acousticsのスピーカーシステムの日本での不在の期間(三年ほどか)がひどく永く感じられた。
このスピーカーシステムは、だからといって日本でそれほど売れるとは思えない。
思えないからこそ、このスピーカーシステムの輸入を再開してくれるフューレンコーディネイトには、
感謝に近い気持を持っている。

スピーカーのあり方は、決してひとつの方向だけではない。
そんなことはわかっている、といわれそうだが、
実際に耳にすることのできるスピーカーシステムの多くがひとつの方向に集中しがちであれば、
この当り前のことすら忘れられていくのではないだろうか。

その意味でも、Brodmann Acousticsが聴けるということは、
大事にしていかなければならないことでもある。
フューレンコーディネイトが、その機会をふたたび与えてくれる。