Archive for category ショウ雑感

Date: 11月 12th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その13)

どんな人にでも、いわゆる粋がっていた時代はあるのではないか。
それがいつなのか、どのくらいだったのかは人によって違ってくるだろうし、
いまも粋がっていたいという人だっている。

そんな粋がっていた時には、定番のモノよりも、
エキセントリックだったり、エキゾティシズムのモノにより惹かれることがある。

私のように若いころからEMTの930stを欲しい、と思ってきた者は、
さしずめ定番のモノを使って、人よりもいい音を……、と考えているのだろう。
それでも定番とは対極に位置するモノに魅力を感じてこなかったわけではない。

むしろ定番の良さをしっかりと認識することで、
その対極にあるモノの魅力もよりはっきりとみえてくることだってある。
つまり定番を頭から拒否している人は、
エキゾティシズム、エキセントリックなモノに騙されてしまうこともあるような印象をもっている。

いま市場に出廻っているアナログディスク再生に関するオーディオ機器を眺めていると、
素晴らしいモノといっしょにどうにもこうにもおかしなモノがある。

そんなモノを高く評価する一部の人が、またいる。
そんな人の書く、アナログディスク再生に関するものを読むと、
この人にはアナログディスク再生に対しての、その人なりの基準がないように感じられる。

アナログディスク再生は、昨日今日のものではない。
長年続いてきているものであり、
私と同世代、そして私よりも上の世代の人はそれだけの時間、
アナログディスク再生に時間を割いてきているわけだ。

人はその中で、その人なりのアナログディスク再生とはこうあるべき、という考えを構築形成してきたはず。
そうやってつくられた基準によって、アナログディスク再生に必要なオーディオ機器を評価判断する。

それは人によって違ってくるところがあるし、ひとりの人の中でもこれだけ、というわけではない。
少なくともオーディオ雑誌で不特定多数の人にアナログディスク再生に関する文章を書く人ならば、
そういう基準をしっかりと持った上で評価判断してほしい、と思っている。

だが実際には一部の人は、あきらかにそれが感じられない。
おそらくないのだと思う。
だから、あきらかにおかしなモノを高く評価したりする。

Date: 11月 12th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その12)

オルトフォンのSPU-GとSMEの3012-Rの組合せは、定番中の定番といえたかもしれない。
オルトフォンのRMG309よりも、SMEのロングアームの方がSPUと組み合わされることは多かったかもしれない。

SPUのように針圧が3g前後のカートリッジにはダイナミックバランス型のトーンアームが向く。
そういう思い込みにとらわれている人にとっては、
SMEの3012-Rはスタティックバランスということで関心を持たないかもしれない。

でもこの組合せは、ステレオサウンドの試聴室で何度聴いたのかは忘れてしまったほど聴いている。
私がいたころのステレオサウンドの試聴室にあったのは、SPU-Goldだった。

ほとんどのレコードを難なくトレースしてくれた。
トレースに不安を感じて調整をしなおした、ということは一度もない。
安心してさまざまなレコードをかけられる組合せだった。

定番同士の組合せだから、といえるだろうし、
そういうモノだから定番と呼ばれている、ともいえる。
定番と呼ばれているモノは、その多くがこういう良さを有している。

モノマニア的なところがないオーディオマニアはいないのかもしれない。
だから、人とは違うモノに魅力を感じてしまうのかもしれない。

誰もが使っている定番はできれば使いたくない。
そういう視線で目新しいモノを選んでしまうと、それは時としてエキセントリックだったり、
エキゾティシズムの魅力のモノだったりすることがある。

オーディオ機器には、昔からそういうモノが存在しているし、いまも存在している。
特に一部のアナログ関係のモノ、スピーカーシステムに見られる。

それらすべてがそうゆうわけではないが、中には以前書いているように欠陥スピーカーといいたくなるモノがある。

Date: 11月 12th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その11)

どのようなモノにも定番と呼べる存在がある。
オーディオにもある。

定番とは辞書には、
流行にかかわりなく,毎年一定の需要が保たれている基本型の商品。白のワイシャツ・白のブラウスなど、
とある。
だからこの意味通りの使い方からはズレてしまうのはわかっているが、
オーディオのジャンルでいえば、
トーンアームはSMEの3012や3009、
カートリッジではシュアーのV15シリーズ、オルトフォンのSPUなどがすぐにあげられる。
そういう意味での、ここでの定番という使い方である。

オーディオに関心のある人ならばほとんどすべての人が少なくともブランド、型番は知っている。
使っている(持っている)人も多い。
持っていなくとも、オーディオ店やオーディオ仲間のリスニングルームで聴いたことがある。
そういうモノが、他にもいくつもある。

こういう定番のオーディオ機器は、すでに評価が定まっている、ともいえる。
だから、そんなモノは使いたくない、と思う人もいることは知っている。
人と同じモノは使いたくない。
しかも定番と呼ばれるモノは、多くの人が使っているのだから、
そういう気持をもっている人にとっては、なおさら自分のモノにはしたくない、という気持も生まれるだろう。

この気持は、誰しも持っていることだろう。
私だって持っている。
以前に比べればそういう気持はほとんどなくなってしまっているともいえるけれど、
それでもまったくなくなってしまったわけでもない。

そういう気持は、オーディオには必要な要素かもしれない。
でも、だからといって定番のモノに対し、まったく見向きもしないということはやらない。

Date: 11月 11th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その10)

カンターテ・ドミノも聴いた、グールドのゴールドベルグ変奏曲も聴いた。
それにノイズの出方も充分にチェックできた。
これでテクダスのAir Force Oneの実力は、すべてとはもちろんいえないけれど、
相当はっきりと掴めた、といえる。

となると、そのあとに架けられたレコードを聴いている時は、
私の頭の半分ほどは妄想に使われていた。

たとえばワーグナーのパルジファル。
クナッパーツブッシュのバイロイト祝祭劇場でのライヴ、
カラヤンのスタジオ録音。
どちらがより名盤か、ということではなく、
クナッパーツブッシュのパルジファルをかけるアナログプレーヤーとしては、
私はなんら迷いなくEMTの927Dstを選ぶ。

927Dstで聴くクナッパーツブッシュのパルジファルは、
バイロイトに行ったことのない者にさえ、
バイロイト劇場の音とは、きっとこの感じそのままなんだろう、と思わせるだけの強い説得力がある。
そこで行われたクナッパーツブッシュのパルジファルにふさわしい、と迷いもなく思わせるのは、
927Dstの、このプレーヤーでしか聴けない音のみである。

だがカラヤンのパルジファルとなると、そのへんの事情は違ってきて当然である。
カラヤンの演奏の精妙さを、927Dstは十全に再現してくれるかは、
いくら927Dstに惚れ込んでいる私でも、そうはいえないところがあるのは認める。

カラヤンのパルジファルをかけるプレーヤーとしては、圧倒的にAir Force Oneだろう。
グールドのゴールドベルグ変奏曲でのアリアのハミングを、
ああも自然に、しかも特に耳を欹てなくとも容易に聴きとれるのは、
しかもそれがうなり声ではなくハミングだといえるAir Force Oneの音を聴いていて、
これでカラヤンのパルジファルを鳴らしたら……、
そう思えるほどのAir Force Oneの精妙さであり、
大編成のものを再生するに不可欠の安定性でもあった。

パルジファルのレコードは、クナッパーツブッシュのだけ、とか、
カラヤンのだけ、とか、どちらかひとつに決めなくてもいい。
どちらも持っていればいい。
他の指揮者のパルジファルも併せ持つこともできる。

だが、927DstとAir Force Oneの両方をもつことのできる人は、
世の中は広いからいることにはいるだろうが、
どちらかひとつでも自分のモノとできるだけでもすごいことである。

どちらを選ぶかは、パルジファルにおいてどちらを選ぶか、でもある。

Date: 11月 11th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その9)

Air Force Oneと927Dstの音を同じ基準で評価することは果して可能なのだろうか。
そんな気もする。

927Dstで聴ける、圧倒的と、誰もがいいたくなるであろう、あの音を聴いたあと、
そして927Dstの音を、仮に正しいとするならば、Air Force Oneの音は物足りなさを憶えるだろう。

Air Force Oneの音を正しいとするならば、927Dstの音はなにかが過剰な音と感じても不思議ではないし、
日常的に聴く音ではない、と思われるかもしれない。

インターナショナルオーディオショウの最終日、
ステラのブースで、カンターテ・ドミノのレコードの数枚後にグールドのゴールドベルグ変奏曲がかけられた。
1981年録音の方だ。
このレコードも、CDとアナログディスクで、いくどとなく聴いている。
ステレオサウンドの試聴室で聴いた回数はカンターテ・ドミノの方が多いが、
自分のオーディオで聴いた回数はグールドの方が多い。

アリアが鳴る。
Air Force Oneで聴くと、アリアのところでのハミングが、
これまで聴いたどのアナログプレーヤーよりも聴きとりやすい。
そこで鳴っているピアノも、ヤマハのグランドピアノというイメージがしっかりとある。

数年前に聴いた、非常に高価なスピーカーシステムによるアップライトピアノのような音ではない。

第一変奏曲が鳴る。
ここでアリアのときとピアノの音像の大きさが変化しているのもはっきりと出す。
お見事、と思いながら、
Air Force Oneと927Dstの違いについて考えてもいた。

いま別項で書いているカラヤンのパルジファルのことを思っていた。

Date: 11月 11th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その8)

テクダスのAir Force Oneとじっくり比較試聴してみたい現行製品となると、
ノッティンガムアナログスタジオのAnna Logである。
外観的には、まるで方向性の違うプレーヤーであるだけに、どういう結果になるのか非常に興味がある。
そういう機会はおそらくない、と思うのだが、
それでもこのふたつのアナログプレーヤーは実物を前にして、音だけにとどまらず、
アナログディスクを再生するメカニズムとしてプレーヤーをどう捉え考えているのかを、
じっくりと比較しながら見ていくことは、おもしろい記事になるとも思っている。

音は聴かなければわからないもの、というよりも、
わからないところがあるものだが、
それでもAir Force OneとAnna Logとでは、前者のクォリティが全般的に上のような気がする。
それでも、アナログディスクを再生することの面白さとなると、
それは必ずしもAir Force Oneがいいとはいえなくなるような気もする。

アナログディスク再生のためのメカニズムをある種のカラクリとして捉えているのであれば、
Anna Logに非常に興味深い存在である。

現行製品の中ではAnna Logぐらいだが、
実際にアナログプレーヤーの購入を検討するときには、必ずしも現行製品だけとは限らない。
過去の製品も比較対象となってくる。

そうなるとAir Force OneとEMTの927Dstはどうなんだろうか。
おそらくずいぶんと傾向の異る音のはずだ。

Date: 11月 10th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その7)

カンターテ・ドミノは、ステレオサウンドの試聴室では井上先生の試聴の時に、
それこそ数え切れないほど聴いている。
オーディオ機器のチューニングのとき、これ一枚だけでかなりの部分でやられるときも少なくなかった。
だからこそ、井上先生のチューニングによって、カンターテ・ドミノの鳴り方がどう変化していくのか、
それを数多く体験できたのは、こういう場での音の確認の時に役立っている。

ステラのブースに響いていたカンターテ・ドミノの教会は、まぎれもなく木の印象のものだった。
それもピントのあまい音だった、ぼけた感じの音、そういう類の音で木の響きを、
いわばごまかしながら表現しているのではなく、
細部まできっちりと表現しながらも、木の独特の、やわらかな響きが無理なく拡がっていくのがわかる。

このカンターテ・ドミノのレコードを聴いて、
ステラのブースで、いま鳴っている音は信用できる音だと確信できた。
確信できたからこそ、カンターテ・ドミノのあとにかけられたディスクを楽しむことができた。

ステラのブースの、この時の音が、最高の音だとはいわない。
けれど、少なくとも、音楽を聴いていく上で、
しかもこういう場では、聴いたこともないディスクもかけられる。
そういうディスクであっても、そこでの音を信用できる、
という保証をカンターテ・ドミノのレコードの音で得られた。

そのことがAir Force Oneの凄さだと素直に認める。
現行製品のアナログプレーヤーとしては、音だけに関しては最高のモノといえるだろう。

Date: 11月 10th, 2013
Cate: ショウ雑感, 瀬川冬樹

2013年ショウ雑感(瀬川冬樹氏のこと)

今日は瀬川先生の三十三回忌法要に行ってきた。

ほんとうに近しい人たちだけの、ということで、私が行っていいものなのか、と思いもしていた。
瀬川先生が熊本のオーディオ店に来られることはかかさず通っていた。
いわばおっかけである。

私がステレオサウンドで働くようになったのは1982年1月から。
瀬川先生が亡くなられた後のことだ。
そういう者がはたして行っていいものか、とは思いながらも、
来てください、といわれていたので、行ってきた。

行ってよかった、とおもっている。
なぜ、よかった、とおもっているのかについては、いずれ書いていくかもしれない。
書かないかもしれない。

いまのところ、ひとつだけ書いておきたい。
ショウに関することだからだ。

瀬川先生がメーカーのショールームで、
定例プログラムを行われていたことは、この時代にオーディオに興味を持っていた方ならば、
多くの方がご存知だし、楽しみにしていた方も多かったはず。

瀬川先生の回は、どのメーカーのショールームでも人が多く集まっていた、ときく。
瀬川先生は、来る人拒まず、の姿勢だった、ときいた。
そして重要なのは、一人として最後まで誰も帰さない。
そういう覚悟で毎回行われていた、ということだった。

インターナショナルオーディオショウでもそうだが、
オーディオ評論家と呼ばれる人が講演という名の音出しをやっていても、
瀬川先生と同じ覚悟でやっている人は何人いるのだろうか。

Date: 11月 10th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その6)

カンターテ・ドミノは、スウェーデンのマイナーレーベルといっていいプロプリウスを有名にした一枚である。

プロプリウスは1960年代末にスタート。カンターテ・ドミノは1976年の録音。
教会でのワンポイント録音、テープデッキはルボックスのA77だった、ときいている。

1979年にスウェーデンのレコード賞を得て、
ヨーロッパのAESのコンヴェンションやオーディオショウでデモンストレーションのレコードと使われることが増え、
注目されるようになっていく。

1981年秋に来日したJBLのジョン・アーグルも、
この時の新製品、4435、4430のセミナーにおいて、カンターテ・ドミノを使っていた、とのこと。

このころになると日本でも話題になっていて、
1982年にマークレビンソンやSAEの輸入元でもあったRFエンタープライゼスが輸入を行うようになった。
日本で広くカンターテ・ドミノが知られるようになり、売れるようになったのは、このころからだろう。

カンターテ・ドミノのディスクは持っていないという人はいるだろうが、
一度も聴いたことがない、という人は少ないように思う。
どこかで耳にしていることが、きっとあるはず。

これほど有名なディスクにも関わらず、
日本人には教会ときくと、石造りのイメージがあるためか、
カンターテ・ドミノの録音が行われた教会もまた石造りだと思っている人がいる。

すでに何度か書いているように、カンターテ・ドミノで使われた教会は石造りではない。
だからカンターテ・ドミノで聴くことができる残響・反響は木の響きをイメージさせるものでなくてはならない。

テクダスのAir Force Oneで鳴ったカンターテ・ドミノは、
木の教会の響きを、実に自然な感じで再現してくれた。

Date: 11月 10th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その5)

エルプのレーザーターンテーブルのスクラッチノイズの出方が特徴的なのに対し、
テクダスのAir Force Oneでは、いわゆる一般的なアナログプレーヤーの出方なのだが、
ノイズは出ていても、あまり耳につかない。ノイズが尾を引かない。
ノイズの音そのものも低く抑えられている印象である。
つまりいいノイズの出方だった。

このへんは自分で操作しての印象ではないから断定まではてきないけれど、
おそらくノイズの出方の印象に関しては大きく変ってくることはないはず。

このノイズの出方を聴いていると、安心してアナログディスクが聴ける、という感じがしてくる。

ローズマリー・クルーニーの次はバリー・ベラフォンテだった。
その次はエリー・アメリングがかけられた。
このとのアメリングが、私の中にあるアメリングの印象よりもすこしばかり細めに聴こえて、
おやっ、と思うところもあったが、
アンプもスピーカーシステムも初めて聴くものばかりだから、
どこにそう聴こえる要因があるのかははっきりとはしない。

四枚目がプロプリウスのカンターテ・ドミノだった。
カンターテ・ドミノはCDもアナログディスクも何度となく聴いている。
自分のシステムでもかなりの回数聴いてきた。

このディスクの鳴り方で、ほぼおおよそのことは判断できる、ともいえる。

歌が始まる。
この瞬間で、Air Force Oneの実力の高さを確信できた。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(その10)

インターナショナルオーディオショウの今年の講演スケジュール表をすみずみまでみていたわけではなかった。
なんとなく眺めて、今年はこんな感じか、という程度の眺め方だったから、
各ブースの各講演はすべて一時間だと思い込んでいた。

ステラの柳沢功力氏のときも三時すこしすぎてから入った。
四時までだな、とするともうひとつどこかのブースに行けるな(最終日は五時終了)と思っていた。

次々にアナログディスクをかけられる。
テンポもいい。
ふと時計をみると四時近くになっていた。
そろそろかなと思っていても、少しも終る気配が感じられなかった。

四時をまわってもまったく時間を気にすることなく進んでいく。
もしかすると、二時間なのか、とやっと気がついた。
つまりステラのブースに最後までいると、終了の時間になってしまう。
他のブースにはもういけない。

しかもずっと立ちっぱなし。
人も多い。

それでも結局最後までいたのは、くり返すが、柳沢氏のオーディオの楽しみ方が伝わってきたのが大きい。
柳沢氏との対比で書いた人のブースには、がまんにがまんを重ねても、30分はいられなかった。
会場に着いてからそれほど時間は経っていなかったから、
別にしんどかったわけでもない。
それでも、もうこれ以上、ここにいたくないとおもい、ブースの外に出た。

各ブースのメーカー、輸入商社の人たちは、
講演を依頼する人をどうやって決めているのだろうか。

なぜ、この人にしたんだろう? そうおもってしまうことが今年に限らず必ずある。

Date: 11月 7th, 2013
Cate: アナログディスク再生, ショウ雑感

2013年ショウ雑感(アナログディスク再生・その4)

スクラッチノイズの出方で、今回のインターナショナルオーディオショウで印象に残っているのは、
タイムロードのブースに鳴っていた、いわゆるレーザーターンテーブルである。

カートリッジという機械式のピックアップではなく、
レーザー光を使った、非接触型のピックアップによるアナログディスク再生を可能にした、
エルプのプレーヤーのことだ。

ちょうどタイムロードのブースにはいったときに、
エルプのレーザーターンテーブルによる音出しだった。
入った瞬間、不思議な質感の音だな、と思って正面をみれば、
アナログディスクのジャケットが、いまかけているディスクとして置いてあった。

しかもスクラッチノイズの出方も、聴きなれた感じとは違う。
どのアナログプレーヤーが鳴っているのか確認してみれば、エルプのレーザーターンテーブルだった。

ダイアモンドの針先が音溝と接触している、これまでのカートリッジによる再生と、
光学式では、トーンアームの振動の問題も含めて、
アナログディスク再生といても、条件はそうとうに異る面・要素をもつ。

そのためなのかどうかは、タイムロードでの短い時間で聴いただけでははっきりしたことはいえないのだが、
それでもノイズが皆無なのではなく、その出方が、これまでとははっきりと違っている。

これだけノイズの出方が違っているということは、
音に関してもそうとうに違う質感で鳴ってきても不思議ではない。

ここでも比較対象となるアナログプレーヤーの音が聴けなかったので、
これ以上音について触れるのはやめておくが、
アナログディスクの音について考えていく上で、決して無視できない存在である。

Date: 11月 7th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(その9)

今回は会場にいた時間はそれほどながくはなかったので、
聴きたいブースの音のためには、時間に余裕がある時ならば、
あまり関心の持てない人の話をきかずにすむのだが、今回はそうはいかなかった。

そのブースを音を聴くには、オーディオ評論家と呼ばれている人の時間帯にあたってしまった。
それでも、どういう話を、どういう話し方でする人なのだろう、という関心はあった。

話が始まった。
五分もきいていたら、いいかげん音を聴かせて欲しい、と思っていた。
でも話は続く。
しびれがきれる寸前で、やっと音を鳴らすことになったのだが、
ここでもまた少し話があって、それこそ、やっと音が鳴った。

一曲終り、また話が始まる。
そして二曲目、話、三曲目……。

話と音楽が交互にくるのは、どの人でも同じである。
同じであるからこそ、話の内容、かける音楽の違いが、より鮮明になってくる。

今回のショウで最終日の最後にステラのブースで柳沢功力氏によるテクダスのAir Force Oneをきいていた。
きいていて、上に書いた人とは正反対で、こちらがしびれをきらすようなことはほとんどなかった。
話もきいていて面白い。
話の内容すべてに同意できるわけではないし、疑問があるところもないわけではないけれど、
それでも、柳沢氏の話をきいていて感じていたことは、
話の巧拙ではなく、ああ、この人はプライベートでは、こういうオーディオの楽しみ方をしているんだ、
そういうことが話をきいて想像できるから、おもしろかったし、退屈することがなかった。

そこで感じられた楽しみ方が、自分の楽しみ方と完全に一致する必要はない。
とにかく、その人がどういう楽しみ方、オーディオと音楽との接し方をしているのかが、
きちんと伝わってくれば、話をしている人と私とのあいだに、いろいろな違いがあっても、
そんなことは問題にはならない。

上に書いた人の場合、私にはその人のオーディオの楽しみ方が伝わってこなかった。
話をきいていて、この人は、オーディオで音楽を聴くことを楽しんでいるのだろうか……、とさえ思っていた。

Date: 11月 5th, 2013
Cate: ショウ雑感
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2013年ショウ雑感(行けば楽しい・その2)

国際フォーラムに搬入するということは、その前に各メーカー、輸入商社は自社からの搬出作業がある。
その搬出作業の前には機材のチェックがあるはずだし、梱包作業がある。
そうやって搬出し、会場に搬入し、開梱して設置する。
場合によっては、梱包資材はブースに置ければいいけれど、そうもいかなければ持って帰ることにもなる。
搬出作業はこの逆を行う。

実際にやってみると、たいへんなことである。
しかも今週末(8、9、10日)は大阪でまたオーディオショウがある。
ほとんどの会社が前日には大阪入りすることだろうから、
インターナショナルオーディオショウとハイエンドオーディオショウの両方に出展する会社は、
例年よりも大変であろう。

いま東京で開催されるオーディオ関係のショウはほとんどが無料である。
インターナショナルオーディオショウもハイエンドオーディオショウも入場するのにお金は要らない。
もっとも会場で欲しい、と思ったモノを手に入れるには、かなりの金額を必要とするけれども。

けれど会場を借りるのにはお金が必要となる。
搬入搬出作業にもお金はかかる。
お金はそれ以外にも出ていく……。

そういうオーディオショウが無料で入場できるわけだ。
なのに、人が多いとか、まともな音なんか聴けないから、とか、
電車に乗るのが面倒だから、とか、家族サービスをしなければならない、とか、
行かない理由なんて、いくらでもつけようと思えばつけられる。
そうやって行かない人は、もしオーディオショウが開催されなくなったら、
なんというだろうか。

毎年開催してくれている、とおもっている。
それも営業活動だろう、といえばそうである。
けれど、直接的な営業活動ではない。
あくまでも間接的な営業活動でしかない。

Date: 11月 4th, 2013
Cate: ショウ雑感

2013年ショウ雑感(行けば楽しい・その1)

今年のインターナショナルオーディオショウには初日と最終日に行った。
行くまでは、人が多いんだろうな……、そんなことを思っている。
でも会場に着き、それぞれのブースを廻っていると、やはり楽しい。

音なんて、ブースに入って瞬間にわかる、
だから一分もいないよ、
──こんなことを堂々と語る人を知っている。
インターネットにも同じようなことを書いている人もいる。
同じ人なのかどうかはわからないけれど、
こんなことを言って、何が楽しんだろう……、と思う。

自分の耳の良さでも自慢したいのだろうか。
そうやって自慢しなければならないほどの耳なのか。

どのブースにしても100%の状態で鳴っているわけではない。
そんなことは、このインターナショナルオーディオショウに何度か来ている人ならばみなわかっている。

だから聴く価値がない、という人もいる。
ほんとうにそう思っているのだろうか。

いくつか注文をつけたくなるところは私も持っている。
それでも、行けば楽しい。

おそらくショウ初日の前日の夜に、
各ブースの人たちは搬入作業をやっているはず。
エレベーターの数は限りがあるから順番を守っての搬入になるはずだ。

インターナショナルオーディオショウで使うブースはほとんどが会議室としてつくられているわけだから、
展示場として設計されている施設よりも搬入条件はよくない、と思う。

そうやって搬入してオーディオ機器の設置、それにブースの設置などの作業。
それから音を出しての調整。

初日の朝も、調整しているところもある、と思う。
実際に数年前、ショウの二日目の朝、あるブースで調整の最中だった場に遭遇している。