Archive for category サイズ

Date: 11月 23rd, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その53)

コントロールアンプとパワーアンプを、仮に長さ2mのケーブルで接続したとものとして、
回路図を見てほしい。
そしてコントロールアンプの出力とパワーアンプの入力間に形成されるループの大きさを想像してみてほしい。
しかもこのループには、電源部も絡んでくる。
複雑で、大きいループになっている。

コントロールアンプの出力にトランスを挿入してみる。
そうすれば、トランスの2次側の巻線とパワーアンプの入力間のループとなり、
コントロールアンプの電源部は、このループに絡んでこない。
ループそのものがシンプルになり、ループもすこし小さくなる。

さらにパワーアンプの入力にトランスをいれると、コントロールアンプ・パワーアンプ間のループは、
コントロールアンプ側のトランスの2次側巻線と、接続ケーブル、
パワーアンプ側のトランスの1次側巻線だけという、さらにシンプルなループになっていく。

信号系のループをよりシンプルにし、よりサイズを小さくしていくのに、いかにトランスが有効であるか、
そしてそのためには、どうトランスを使えばいいのか、
つまりトランスの接続はどうすればいいのかは、おのずとはっきりとしてくる。

Date: 11月 19th, 2009
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サイズ考(その52)

それほど複雑な回路のものではなくてもいいから、アンプの回路図をできれば用意してほしい。
増幅部と電源部が独立して描かれている回路図であれば、
別の紙に描き写して、増幅部と電源部を線でつなぐ。できれば片チャンネルだけでなく、左右チャンネルとも描き写す。

それを眺めれば、回路のいたるところにループ(環)があることがわかる。
増幅部だけでなく、電源部、それも定電圧回路だとループの数は増す。

そしてループは増幅部、電源部で独立しているわけではなく、またがっているループが存在していることもわかる。
独立したひとつのアンプだけでもループの数は多い。
素子数が多くなれば、必然的にループの数も増えていく。

そしてアンプ同士を接続すると、ループの数はさらに増えていくのがわかる。

Date: 11月 17th, 2009
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サイズ考(その51)

信号に挿入するトランスの数をどこまでも増やしていけば、
トランスらしさだけが残ってくるというものではないことは、容易に想像できる。

極端な数で試したことはないけれど、
おそらくある数までは、トランス臭さが薄れ、トランスらしさが生きてくるだろうが、
その数を越えると、反対にトランス臭さのほうが増してくるのではなかろうか。
それでしばらくトランス臭さが増していき、次の山(谷というべきか)を越えると、
ふたたびトランスらしさが生きてくるようになる。

音には、そういう性質がひそんでいるような気がする。

トランスの数をどこまで増やしていくかの話は措いとくとして、
コントロールアンプの終段にトランスを挿入した場合について、考えてみたい。

Date: 11月 8th, 2009
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サイズ考(その50)

再生系でも、トランスがまったくないラインに、ひとつトランスを挿入すると、
いわゆる「トランス臭さ」を音の面で指摘することはできる。

トランスが挿入されたことによる音の変化のさまざまな面のどこに耳をすませるかによって、
トランス臭い音に聴こえたり、トランスらしい音と、好適にうけとめることもできる。
たしかに、トランス臭い音は、トランスのメリットを高く評価している私でも、
たとえば、あまりできのよくないトランスだったり、トランスの使い方で適切でない場合には、ある。

優れたトランスを適切に使用したとしても、メリットばかりでないことは、音の面にも、やはり現われてくる。
それでも、面白いのは、トランスひとつだけだと、トランス臭さが、多少なりとも気になるものの、
優れたトランスの適切な使用法であれば、ふたつみっつ……とトランスを数を増やしていくと、
むしろひとつだけのときよりも、トランス臭さが増すかというと、
私が体験した少ない例ではあるけれど、ふしぎとトランス臭さが、逆に薄れてくるような印象がある。

トランスが全くない系にとって、ひとつだけのトランスは明らかに異物なのかもしれない。
それが、数が増していけば、感覚的には異物ではなくなってくる、といったら、すこし大げさすぎるだろうか。

Date: 11月 6th, 2009
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サイズ考(その49)

また1次側のインピーダンスは、とうぜん使用するカートリッジのインピーダンスを考慮しなければならない。
インピーダンスの低いもので1.5Ω前後、高いものだと40Ω程度だから、
これらの値から大きく外れることは、まずできない。

つまりトランスの設計においては、扱う信号の大きさ、
1次側、2次側に接続される機器のインピーダンスなどの制約の中で、
うまくバランスをとってつくられるものである。
それに較べると、アンプの設計の自由度は、そうとうに大きいといえる。

こうやってみていくと、トランスの使用にメリットはあまりないように思われるだろう。
MC型カートリッジの昇圧手段としてぐらいならまだしも、
あえてコントロールアンプの終段やパワーアンプの入力にトランスをつけるなど、考えはしないであろう。

ネットワークのところで述べた信号系のループのことを思い出してほしい。
ループの問題に対して、トランスの有用性は高いものがあると、私は考えている。

Date: 11月 6th, 2009
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サイズ考(その48)

入力信号が増幅されるものは、アンプである。
ただ厳密に言えば、入力信号が、文字通り増幅されて出力にあらわれるわけではない

入力信号に応じて、DC電源から必要なエネルギーを取り出しているわけで、
アンプに、入力信号だけでなく、電源というエネルギー源が接がれている点が、
トランスと大きく異るところで、アンプにとって最大出力電圧は、電源電圧によって定まる。

高耐圧の素子を使い、回路を構成し、高電圧をかければ、どれだけでも高い電圧を取り出せることになる。

トランスはというと、巻線比で昇圧比が決まるため、2次側の巻線を限りなく増やしていけば、
最大出力電圧はどこまでも高くできるかというと、そうではなく、
トランスにおいては、小信号用と大信号用とでは,設計方法が異る。
まずコアの大きさがまったく違う。

微小な信号を扱うMC型カートリッジ用の昇圧トランスでは、コアの容積が小さくなり、
物理的に2次側の巻線を限りなく巻くことは不可能であるとともに、
仮に巻けたとしても、2次側のインピーダンスがおそろしく高くなってしまう。

そうなると昇圧トランスの後にくるアンプの入力インピーダンスにそれだけ高い値が要求されることになるわけだが、
実際にはMM型カートリッジ用のフォノ入力のインピーダンスは、大抵47kΩ前後である。

つまり昇圧トランスの2次側のインピーダンスは、この値よりも大きくすることはできない。

Date: 11月 5th, 2009
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サイズ考(その47)

トランスの原理は、難しいものではない。

1次側の巻線(コイル)に信号が流れると、1次側巻線が捲かれているコア内に磁束の流れが発生する。
この磁束の流れは、2次側の巻線の中を通る。そのとき2次側の巻線に電流を発生させるわけだ。
1次側と2次側の巻線数が同じであれば、入力信号と同じ電圧で出力される。

もし理想のコア、理想の巻線による、理想のトランス(つまりロスがまったくない)が存在するならば、
入力信号のエネルギーと出力信号のエネルギーは、まったく同じである。
実際にはロスがあるため、同じ巻線数でも、まったく同じにはならないわけだが、
少なくとも加えられた信号のもつエネルギー以上のものが出力に現われることは、絶対にありえない。

くり返すが、トランスを通るエネルギーは、入力信号のみなのだから。

エネルギーは電力であり、電力は電圧と電流の積である。
入力信号以外のエネルギーは、どこからも加えられないトランスにおいて、
昇圧比10のトランスがあれば、出力信号の電圧は10倍になるかわりに、出力電流は1/10になる。

つまりトランスはインピーダンス変換を行うことで、昇圧を可能にしている。
言葉をかえれば、信号が増幅されているわけではない、ということだ。

Date: 11月 5th, 2009
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サイズ考(その46)

トランスは、コア(磁性体)と2組以上の巻線から構成されるもので、1次側の巻線が入力、
2次側の巻線が出力となり、
この2組の巻線比が昇圧比であり、1次側の巻線数よりも2次側の巻線数が多ければ、信号は昇圧される。

1次側の巻線数が10、2次側が100であれば、昇圧比は10となる。
ヘッドアンプでは、ゲイン20dB(増幅率:10倍)のものを用意すれば、
入力に0.1mVが加われば、出力電圧はどちらも1mVと同じになる。

といっても、同じ性質の1mVでは、ない。
ヘッドアンプには電源というエネルギーを供給するものがあるのに、
トランスに電源はない。

トランスに加わるエネルギーは、入力信号のみ、である。

Date: 11月 5th, 2009
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サイズ考(その45)

歪率においても、トランスは、ヘッドアンプに較べて低域においては不利な面をもっている。
ヘッドアンプは、NFBのおかげで、相当に低い歪率を、静特性とはいえ達成できる。
一方トランスには、NFBといった歪低減に相当する技術がない。

トランスで歪率が問題になるのは、中高域ではなく、低域においてである。
コアに良質の材質を使い、適切に設計され、丁寧に巻かれたトランスであれば、
アンプと同等の特性を得られるときいている。

ただ低域においては、周波数特性がそれほど低域まで伸ばせないのと同じ理由で、
周波数が低くなればなるほど、歪率に関しては不利になっていく性質がある。

1次側巻線のインダクタンスの低下により、信号電流が増え、
コアの磁気特性との絡みから歪が増していく。

こういう物理特性の話を抜きにしても、トランスを嫌う理由として、
信号系に磁性体が介在することをあげる人もいる。

Date: 11月 5th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その44)

信号系にトランスがはいることをはげしく拒絶する人もいる。

トランスかアンプかということでいえば、MC型カートリッジの昇圧手段として、
ヘッドアンプか昇圧トランスか、がある。

物理特性を比較すると、周波数特性は、ヘッドアンプが断然ワイドレンジである。
DCアンプであれば、低域は0Hz(DC領域)から増幅が可能で、高域も数100kHzにおよぶ。

トランスはというと、昇圧比が高くなればなるほど、
2次側の巻線数が増え、それにともなう線間容量の増加によって高域特性はそれほど広く確保できない。
低域においても、インダクタンスの減少により、1次側のインピーダンスの、低域での低下がおこり、
やはりそれほど低い周波数までカバーすることは無理がある。

1990年ごろから、ジェンセン、マリンエアから、かなり広帯域化されたトランスが登場したが、
それまでは、どんなに特性の優秀なトランスでも、低域は10Hz前後、高域は数10kHz程度であった。

Date: 10月 31st, 2009
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サイズ考(その43)

いつのころからか、信号系からトランスを排除する方向が主流となってきた。

良質のトランスは高価なことが多い。もちろん安価でも優れたトランスはあるし、
高価で、見た目も、立派なシールドケースに収められていても(むしろ、そのことがアダになってか)、
さほどトランスを信号系に挿入するメリットを感じさせてくれないものも、ある。

それにトランスは、伊藤先生の言葉を借りれば、
生き物だから、他のパーツ以上に、気難しい面ももっているように感じている。

もっとも安価なトランスでも、トランジスターやFETとくらべるとずっと高価だし、
いまではOPアンプで簡単に代用できるところも多いので、
そうなると、トランスの使用はそうとうなコスト高になっていく。

そういう価格的なデメリットと、性能的にも、指の爪ほどのサイズのOPアンプ(価格も安いものだと100円以下)が、
NFBのおかげで、トランスよりもずっとワイドレンジな周波数特性をもっている。

その他にもトランスが使われなくなってきた理由は、いくつか挙げられるが、
とにかくコントロールアンプで、最終段にトランスをしょっている市販アンプは、皆無に近い。

Date: 10月 31st, 2009
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サイズ考(その43)

いつのころからか、信号系からトランスを排除する方向が主流となってきた。
良質のトランスは高価なことが多い。もちろん安価でも優れたトランスはあるし、
高価で、見た目も、立派なシールドケースに収められていても(むしろ、そのことがアダになってか)、
さほどトランスを信号系に挿入するメリットを感じさせてくれないものも、ある。

それにトランスは、伊藤先生の言葉を借りれば、
生き物だから、他のパーツ以上に、気難しい面ももっているように感じている。

もっとも安価なトランスでも、トランジスターやFETとくらべるとずっと高価だし、
いまではOPアンプで簡単に代用できるとこも多いので、
そうなると、トランスの使用はそうとうなコスト高になっていく。

そういう価格的なデメリットと、性能的にも、指の爪ほどのサイズのOPアンプ(価格も安いものだと100円以下)が、
NFBのおかげで、トランスよりもずっとワイドレンジな周波数特性をもっている。

その他にもトランスが使われなくなってきた理由は、いくつか挙げられるが、
とにかくコントロールアンプで、最終段にトランスをしょっている市販アンプは、皆無に近い。

Date: 10月 30th, 2009
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サイズ考(その42)

4343だと、アース線が最低でも13本になると書くと、なんと複雑なことだと思われる方もいるかもしれない。
アース線が1本のほうが、13本よりもシンプルであるわけではない。
アース線の役割から考えれば、きちんとこまかく分けた方が、実はシンプルであるということに気がついてほしい。

単純(シンプル)であるかどうかは、数によって判断されるものではない。そのものの動作で判断すべきことである。

Date: 10月 19th, 2009
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サイズ考(その41)

個人のブログやサイトで、AC電源のループを問題にしている記述をよく見かけるようになった。
この問題については、1980年代のおわりごろに、ラジオ技術誌で、富田嘉和氏が指摘されていたし、
その記事の中で富田氏が推薦されている技術書を読めば、
それ以前から、この問題が指摘されていたことがわかる。

つまり決して新しい問題ではない。だから、なぜいまごろ? という感じがするし、
それだけでなく電源系のループを問題にする前に、信号系のループにも、というか、
こちらのほうに先に目を向けるべきでないか、とも思う。

アンプ(電子機器)のなかには、いくつものループ(環)が存在している。
しかもそれらは重なっているものがある。

これは、もう直感でしかないが、これらのループをいかに減らし、
そして重なり具合を減らし、しかもループの面積をいかに小さくしていくかが、
音を良くする、というよりも、音を劣化させない(させにくい)ことにつながっていると思う。

Date: 10月 18th, 2009
Cate: サイズ

サイズ考(その40)

スピーカーのネットワークの回路図は、ちょっと探せば、いろんなところに載っている。
そのウーファー部分だけでいいから、抜き書きしてみる。

そして入力のところはオープンになっているはず。そこに、実際の使用ではアンプが接がられるわけだから、
オープンのままにしないで、アンプを示す三角マークを書いてもいいし、
アンプはスピーカーにとって信号源であるから、丸の中に「〜」を描いた記号で閉じてみる。
ネットワークのコイルやコンデンサーの値は入っていなくていい。

この回路図を見ると、いくつものループ(環)があることに気がつかれるだろう。
ネットワークなしの場合だと、アンプとスピーカーの間にはなんら素子は介在しないので、
ループは、大きいものがひとつだけである。

−6dB/oct.のネットワークの場合は、コイルが直列にはいるだけであり、このループに関しては変化はない。
−12dB/oct.以上のネットワークとなると、並列にコンデンサーが挿入されることになり、
このループが増えることになる。
しかもそのループは重なっていることに注目してほしい。