サイズ考(その48)
入力信号が増幅されるものは、アンプである。
ただ厳密に言えば、入力信号が、文字通り増幅されて出力にあらわれるわけではない
入力信号に応じて、DC電源から必要なエネルギーを取り出しているわけで、
アンプに、入力信号だけでなく、電源というエネルギー源が接がれている点が、
トランスと大きく異るところで、アンプにとって最大出力電圧は、電源電圧によって定まる。
高耐圧の素子を使い、回路を構成し、高電圧をかければ、どれだけでも高い電圧を取り出せることになる。
トランスはというと、巻線比で昇圧比が決まるため、2次側の巻線を限りなく増やしていけば、
最大出力電圧はどこまでも高くできるかというと、そうではなく、
トランスにおいては、小信号用と大信号用とでは,設計方法が異る。
まずコアの大きさがまったく違う。
微小な信号を扱うMC型カートリッジ用の昇圧トランスでは、コアの容積が小さくなり、
物理的に2次側の巻線を限りなく巻くことは不可能であるとともに、
仮に巻けたとしても、2次側のインピーダンスがおそろしく高くなってしまう。
そうなると昇圧トランスの後にくるアンプの入力インピーダンスにそれだけ高い値が要求されることになるわけだが、
実際にはMM型カートリッジ用のフォノ入力のインピーダンスは、大抵47kΩ前後である。
つまり昇圧トランスの2次側のインピーダンスは、この値よりも大きくすることはできない。