Archive for category 組合せ

Date: 12月 23rd, 2010
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その34・余談)

オラクルのプリメインアンプ、Si3000(S3000でもかまわない)は、
ジャーマン・フィジックスのUnicornをぜひ鳴らしてみたい、とも考えていた。
つい過去形で書いてしまったが、いまでもぜひ鳴らしてみたい、とつよく思っている。

それもUnicornIIではなくて、初代のUnicornを、だ。
この組合せを思いついたときも、Si3000をプリメインアンプではなくて、パワーアンプとして使うつもりでいた。
どうしてもUnicornにサブウーファーを足したいから、で、そのためにはコントロールアンプがあったほうがいい。
ならば別にSi3000でなくても、単体のパワーアンプを選べばいいという声もあるだろうが、
Si3000のフォルティシモでも吹き上げてくるような音の豊かさに、
スレッショルドの800Aの清楚な凄みに共通するなにかを感じるし、
そして意外にもクリーミーな印象のある音触は、チタン膜振動板のDDDユニットの肌ざわりに寄りそう予感がある。

それにサブウーファーが使わないにしても、Si3000にはあえてコントロールアンプを、
あれこれぴったり合うモノを見つけたくなる。

Si3000と規模も価格もぐんと身近なものになっているけども、
同じようにプリメインアンプなのに、ついパワーアンプとして捉えたくなるものに、ビクターのAX900がある。

AX900にはフォノイコライザーアンプも搭載されていて、どこから見てもプリメインアンプなのだし、
出力は70W×2と、プリメインアンプとしても最近のなかでは少ないほうだ。
それでもAX900をパワーアンプとして使ってみると、意外におもしろい。

話がそれてしまったが、UnicornもSi3000、どちらも手に入れる前に製造中止になってしまった。
UnicornはII型になって、まだ健在とはいうものの、現実には日本に輸入代理店はなくなってしまった。

それだけの購入力はいまのところない。
でもないながらも、いつか手に入れたいと思っているモノから、
消えてなくなってしまうのは、なんともサビシイ……。

ジャーマン・フィジックスのDDDユニットは、現代のグッドマンAXIOM80といえよう。

Date: 12月 3rd, 2010
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その34)

Exclusive M4で鳴らすパラゴンの音を聴いてみたい、と思うし、
いちどは自分で、この組合せを鳴らす機会が、たとえ1日でもいいからあれば、どんなに楽しいだろうか、と思う。
でも、現実にパラゴンを自分のスピーカーとして手に入れたときに、
M4で試しに鳴らすことはあっても、とり組むことはないだろう。

妄想組合せ(机上プラン)であっても、
なにもかもいまは新品で入手できないもので組合せを考えようとは思っていない。
やはり、いまパラゴンを鳴らすことを、あくまでも考えているわけだから、
アンプ、CDプレーヤー、アナログプレーヤーは、いまのオーディオ機器を選ぶ。

とにかく最初に選びたいのは、やはりパワーアンプだ。
ここが決れば、あとはわりとすんなり決ってくれるだろう。

実は、最初に頭に浮んだのは、オラクルのSi3000だった。
プリメインアンプだ。
といっても、このSi3000は、入力セレクター、ボリュウムつきパワーアンプというふうにもみれる。
実際にパラゴンと組み合わせた音は聴いたことはないけれど、うまくいきそうな予感は強い。
それに見た目も、わりとパラゴンと合いそうな気もする。

だが、残念なことにSi3000は製造中止になっている。後継機ももう出ないのだろう。

いまのオーディオ機器を選ぶ、といっておきながら、舌の根も乾かないうちに製造中止のアンプを選んでいる。
でも、そんなに古いアンプでもないし、やはりSi3000での組合せは、私のなかでは考える楽しみに満ちている。

Si3000にすれば、CDしか聴かないのであれば、あとCDプレーヤーを選ぶだけでいいのだが、
そうであってもSi3000はパワーアンプとしてあくまでもとらえて、コントロールアンプをなにか選びたい。

Date: 10月 29th, 2010
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その33)

パイオニアのExclusive M4は、1979年ごろに改良されてM4aになっている。
いちどふたつを聴きくらべる機会があった。
M4aはほぼ新品にちかいモノ、M4はずいぶん試聴用として使われていたモノ。
そういうモノでの比較ではあったが、当時の私の耳に魅力的に聴こえたのはM4のほうだった。

あのころいわれていたAクラス・アンプの音──、
やわらかくなめらかで、しっとりしたところのある音(Aクラス・アンプすべてがこういう音ではないけれども)、
そんなイメージをそのまま聴かせてくれたのがM4のほうだった。

そのときより以前に聴いた時も、そんなよさは感じていた。
とにかく、しっとりした鳴り方は、M4aと聴きくらべると、M4特有のものだといいたくなるところがある。

M4aへの改良は’80年ごろだけにDCアンプ化されてたのかと思ったけれど、
どうもそうではないようで、回路面では大きな変更はなされてなかったと記憶している。
いわゆる細部の再検討による改良(変更)だった。

他の国産アンプはマークIIになるとき、回路面でも変更が加えられることからすると、
だからM4とM4aの違いは小さいものかもしれないけれど、
M4のしっとりしたまろやかな、とくに中音域における特有の魅力に惹かれた者にとっては、
M4aの音は、そのいちばんおいしく感じられたところが薄くなっている、と感じた。

いま思うと、M4の魅力は中音域の魅力だった。
非常に質の良いフルレンジスピーカーユニットに通じるところもあって、
聴いているときには意識しないけれども、ややナロウレンジ的な音のよさだったのかもしれない。
そのへん、M4aになると変っている。ワイドレンジ的になったといおうか。

だからといって中音域が薄くなったわけではないが、高域においても低音域においても、
M4よりは音の密度が増しているためなのか、中音域の魅力は相対的に薄れてしまったのかもしれない。

パワーアンプとして、どちらが完成度が高いかととわれれば、M4aだと思う。
でも記憶に残る音の魅力に関しては、M4のほうが上だと、私は感じている。

Date: 10月 25th, 2010
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その32)

パラゴンを愛用されていた岩崎先生、
その岩崎先生の音を聴かれて、感銘を受けられた井上先生──
すこし話は脱線するが、ステレオサウンド 38号をお持ちの方はぜひ読みなおしてもらいたい。
井上先生が、それぞれの評論家のかたのシステムについての紹介文を書かれている。
もちろん音についても書かれている。
そのなかで、もっとも音について多く書かれていたのが岩崎先生について、だった。なぜなのかは、書かない──、
そしてパラゴンではないけれど、菅野、瀬川のおふたかたも、4350を鳴らすのにM4はいいといわれる。

結局のところは、これはドライバー──、つまり375であり、そのプロフェッショナル版の2440に対して、
M4は相性がいい、といわれているようにも受けとれる。

そういえば、M4は瀬川先生も、SAEのMark2500を導入されるまでは、4341を鳴らすのに使っておられたはず。

たしかにパラゴンの構造上、低音の鳴らしかたが難しいのは予想できる。
ただそこにばかり目が向きすぎがちにもなるのではなかろうか。

意外にも中音域(375)をうまく鳴らせば、
鳴らすのが難しいといわれているパラゴンの低音もすんなり鳴ってくれるのかもしれない。

別項にも書いているように、音に境界線は存在しない。
中音域がうまくなってくれれば、自然と低音域もよくなってくれるもの。

もちろん、組み合わせるパワーアンプだけですべて解決するわけではないとわかってはいても、
パラゴンにどんなパワーアンプをもってくるか、そのことについてM4から空想を拡げてみたい。

Date: 10月 18th, 2010
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その31)

注目したいのはM60ではなくて、Exclusive M4である。

4350のミッドハイのドライバーは2440。375のプロ用ヴァージョンであり、
菅野先生自宅の3ウェイの中音域は、あらためて書くまでもなく、375と537-500の組合せ。
パラゴンの中音域も375だ。

はっきりと記憶しているわけではないけれど、スイングジャーナルでの組合せでも、
JBLのユニットを組み合わせての3ウェイのマルチアンプドライブの組合せにも、
M4を使われていたような気がする。

JBLの375(2440)とパイオニアのExclusive M4は、意外にも相性がいいのではないか、と思いたくなる。
コンポーネントの相性は、簡単には言い切れない難しさがあることは承知のうえで、
ここでは「相性がいい」といいたい。

「コンポーネントステレオの世界 ’78」のなかで、
「JBLの中・高域ユニットを、あるレベル以上のいい音で鳴らすためには、
M4を組合すのがいちばん安全だというふうに、私は思っています」とある。
これに対して瀬川先生も
「ぼくもいろいろなところで4350を鳴らす機会が多いんだけど、
M4を中・高域に使うとじつにうまくいんですよ」と語られている。

4343とM4の組合せは聴く機会があった。
M4の改良モデルM4aで鳴らした音を聴いたことがある。
M4はたしかに魅力的なアンプだ。
パワーアンプとしての完成後はM4aの方が高いのだろうが、個人的に魅力を感じるのはM4だ。

パラゴンに組み合わせるパワーアンプになにをもってくるのか、
そのヒントは、M4にあるのかもしれない。

Date: 10月 18th, 2010
Cate: D44000 Paragon, JBL, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その30)

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’78」のなかで、
オーディオ・ラボのレコード(つまり菅野録音)を、
制作者の意図したイメージで聴きたい、という読者の要望に菅野先生がつくられた組合せがある。

スピーカーシステムはJBLの4350A、
パワーアンプは低域用がアキュフェーズのM60、中高域用がパイオニアのExclusive M4だ。
ちなみにコントロールアンプはアキュフェーズのC220、エレクトロニック・クロスオーバーもアキュフェーズでF5、
プレーヤーはテクニクスのSP10MK2にフィデリティ・リサーチのFR64SにカートリッジはオルトフォンMC20。
目を引くのは、グラフィックイコライザー(ビクターSEA7070)を使われていること。

ただ、本文を読んでいただくとわかることだが、菅野先生は/SEA7070を、トーンコントローラーといわれている。
その理由として、イコライザーという言葉が好きではない、ということだ。
それにSEA7070は、その後に登場してきた1/3バンドの33分割のグラフィックイコライザーではなく、10分割。

すこし話がそれてしまった。
パワーアンプに話を戻すと、このころ、菅野先生が自宅でJBLの3ウェイのマルチシステム用は、
低域用がやはりアキュフェーズのM60、中域用がこれまた同じパイオニアのExclusive M4、
高域用はサンスイのプリメインアンプAU607のパワーアンプ部を使われている。

低音用のM60は、その後、ステレオサウンド 60号の記事中でも変らず。いま現在も使われている。
M60に落ちつくまでには、マッキントッシュのMC2105、アキュフェーズのP300,
パイオニアのExclusive M3などを試された、とHigh Technic シリーズVol. 1に書かれている。

Date: 10月 11th, 2010
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その29)

岩崎先生は、パイオニアのExclusive M4だった。

High Technic シリーズVol.1に、井上先生の記事がある。
既製スピーカーシステムのマルチアンプ化、
既製スピーカーシステムにユニットを加えてのマルチアンプ化、
スピーカーユニットから組み合わせるマルチアンプシステム、
これらについてさまざまな組合せを提案されている。
そのなかに、パラゴンの3ウェイ・マルチアンプドライブの組合せがある。

パワーアンプは、やはりM4だ。
コントロールアンプは、クワドエイトのLM6200R。
エレクトロニック・クロスオーバー・ネットワークは、JBLの5234。
お気付きのように、LM6200RとM4のは、岩崎先生の組合せそのものである。

井上先生は、この組合せのアンプの選択について、こう書かれている。
     *
パラゴンを巧みに鳴らすキーポイントは低音にあるが、特にパワーアンプが重要である。ここではかつて故岩崎千明氏が愛用され、とかくホーン型のキャラクターが出がちなパラゴンを見事にコントロールし、素晴らしい低音として響かせていた実例をベースとして、マルチアンプ化のプランとしている。このプランにより、パラゴンを時間をかけて調整し、追込んでいけば、独得の魅力をさらに一段と聴かせてくれるだろう。
     *
岩崎先生は、M4について、つぎのように書かれている。
     *
わが家には昔作られた、昔の価格で1000ドル級の海外製高級システムから、今日3000ドルもする超大型システムまで、いくつもの大型スピーカーシステムがある。こうした大型システムは中々いい音で鳴ってくれない。トーンコントロールをあれこれ動かしたり、スピーカーの位置を変えたり。ところが、不思議なのは本当に優れた良いアンプで鳴らすと、ぴたりと良くなる。この良いアンプの筆頭がパイオニアのM4だ。このアンプをつなぐと本当に生まれかわったように深々とした落ちつきと風格のある音で、どんなスピーカーも鳴ってくれる。その違いは、高級スピーカーほど著しくどうにも鳴らなかったのが俄然すばらしく鳴る。昔の管球式であるものは、こうした良いアンプだが、現代の製品で求めるとしたらM4だ。A級アンプがなぜ良いか判らないが、M4だけは確かにずばぬけて良い。
     *
岩崎先生の書かれている「大型システム」とは、JBLのハーツフィールドであり、パラゴンであり、
エレクトロボイスのパトリシアンのことである。

パラゴンとM4の組合せ──、想い出すのは、パラゴンではないけれども、菅野先生の組合せだ。

Date: 10月 10th, 2010
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その28)

パラゴンに関心のある人ならば、いちどは夢想したであろうことは、
デジタル信号処理によって、3つの各ユニットの時間差を補整することだろう。

トゥイーターの075とミッドレンジの375はわりと近接した位置にあるが、
ウーファーのLE15Aだけは奥まったところにあり、しかもユニットそのものを外側から見ることは無理である。
井上先生は、パラゴンはへたに扱うと(下手なアンプと組み合わせると)、
八岐大蛇の声みたいなになる、と言われていた。

パラゴンの存在を頭から認めない人は、この構造、とくにウーファーの位置について、とやかく言う。
言われなくて、そんなことは、パラゴンに関心のある人はわかっている。
わかったうえで、パラゴンに対して、つよい関心をもち続けているのだから。

ウーファーの時間差だけ解消できれば、パラゴンの3つのスピーカーユニットの配置は、
仮想同軸型ともいえるわけで、そのメリットが存分に生きてくる……、誰しもそう考える。

昔は夢物語に近かったこのことも、いまではマルチアンプ駆動にして、
デジタルプロセッサーを導入すれば、実現できる、そういう時代にきている。
しかもそのための選択肢も、いくつかある。

でも、私の性格がアマノジャク的なところがあるのか、そうなるとあえて、そういうことはせずに、
内蔵ネットワークで、あえて鳴らしてみたい、と思うようになる。

パワーアンプ、1台でも、素晴らしい音で鳴る可能性をっているのがパラゴンなのだし、
瀬川先生が耳にされたパラゴンの素晴らしい音は、マルチアンプ駆動の音ではない、
岩崎先生もパイオニアのM4、1台で鳴らされていた。

なにかひとつのリファレンスとして、
パラゴンを上記のようにマルチアンプにして時間差を補整して鳴らすのは、ひじょうに興味がある。
いちどはぜひ聴きたい、とつよく思う。
けれども、自分のモノとしてパラゴンを鳴らすのであれば、この手段はとらない。

Date: 10月 9th, 2010
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その27)

「確信していること」を書きながら、パラゴンの組合せのことも考えている。

瀬川先生のパラゴンの組合せは、「コンポーネントステレオのすすめ(改訂版)」のなかにある。
ひとつは、「コンポーネントステレオの価格をしらべる」という項目の中での、
豪華な組合せ例としてあげられている。
アンプはマッキントッシュのC28とMC2300のペア。
パラゴンにマッキントッシュという組合せでは、へたをすると図太い大柄なグラマーに音になりかねないのを、
適度におさえるために、カートリッジにはB&OのMMC4000を選択されている。
多少、この組合せは、話のネタ的なところがある。

もうひとつは、「特選コンポーネント28例」のなかにある。
こちらの組合せは、本気だ。
コントロールアンプはマークレビンソンのLNP2L、組み合わせるパワーアンプはSAEのMark2500。
このころの瀬川先生の常用(愛用)アンプだ。

アナログプレーヤーは、ラックスのPD121にSMEの3009/S2 Improved。
瀬川先生のこのころのメインのプレーヤーはEMTの930stだったが、
カートリッジを交換して楽しまれたりテストされたりするために、
もう一台、PD121にオーディオクラフトのトーンアームをとりつけたモノを使われていた。

スピーカーシステムが4341からパラゴンになっただけで、
ほかは愛用されていたシステムそのものをもってこられている。

この組合せについては、こう書かれている。
     *
その豪華で豊かな音質に加えて、パラゴンのもうひとつの面である、どんな細かな音にも鋭敏に反応するおそろしいほどのデリカシーを生かすには、ここにあげたようなマークレビンソンのコントロールアンプにSAEのパワーアンプ、という組合せが最上だ。現にこれは私の知人が愛用しているものとほとんど同じ実例といってよい。
     *
いま、瀬川先生だったら、どんな組合せをつくられるだろうか。

Date: 12月 24th, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その26)

いま手もとにあるアルテックの604-8Gは、早瀬さん所有のものだった。
譲ってもらった、というよりも、いただいたものである。

瀬川先生が620Bの組合せをつくられ、
試聴の最後に「俺がほんとうに好きな音は、こういう音なのかもなぁ……」とぽつりとつぶれかれたとき、46歳。

あと数日で今年も終るが、1月生れの私は今年の大半を46歳で過ごした。
同じ46歳のときに、604-8Gが手もとにあることは、単なる偶然であろう。
それでも、そこになんらかの「意味」を見出したい。
それがこじつけであっても、他人には理解されなくても、「意味」があれば、それでいい。

オーディオから離れていた時期が、かなり長くあった。
いまのシステムは、再開したシステムが基になっている。誰にも聴かせてはいないし、
これから先、システムは変っていくが、私ひとりしか、その音を聴く人はいないということは変らない。

まだ先のことだが604-8Gを鳴らした時、
エリカ・ケートのAbendempfindungの一曲だけは、早瀬さんに聴いてもらおう。
これだけが唯一の例外となるはずだ。

Date: 12月 23rd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その25)

エリカ・ケートのドイツ歌曲集のCDにある石井不二雄氏による対訳を書き写そう。
     *
夕暮だ、太陽は沈み、
月が銀の輝きを放っている、
こうして人生の最もすばらしい時が消えてゆく、
輪舞の列のように通り過ぎてゆくのだ。

やがて人生の華やかな情景は消えてゆき、
幕が次第に下りてくる。
僕たちの芝居は終り、友の涙が
もう僕たちの墓の上に流れ落ちる。

おそらくもうすぐに──そよかな西風のように、
ひそかな予感が吹き寄せてくる──
僕はこの人生の巡礼の旅を終え、
安息の国へと飛んでゆくのだ。

そして君たちが僕の墓で涙を流し、
灰になった僕を見て悲しむ時には、
おお友たちよ、僕は君たちの前に現われ、
天国の風を君たちに送ろう。

君も僕にひと粒の涙を贈り物にし、
すみれを摘んで僕の墓の上に置いておくれ、
そして心のこもった目で
やさしく僕を見下しておくれ。

涙を僕に捧げておくれ、そしてああ! それを
恥ずかしがらずにやっておくれ。
おお、その涙は僕を飾るものの中で
一番美しい真珠になるだろう!
     *
1981年、瀬川先生はアルテックの620Bで、聴かれたのだろうか……。

Date: 12月 23rd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その24)

この年、瀬川先生はスイングジャーナルの記事で、
604EとマッキントッシュC22、MC275の組合せの再現ともいえることをやられている。

604Eが604-8Hに、612の銀箱のエンクロージュアが620型に、MC275がマイケルソン&オースチンのTVA1に、
C22がアキュフェーズのC240に変ってはいるが、
この組合せは、あきらかにエリカ・ケートのモーツァルトの1曲のためだけに、欲しい、と思われた音を、
もういちど聴きたいと欲されたのではないだろうか。

それが無意識的にであったのか、それとも意識的に行なわれたのかは、誰にもわからないが、
無意識のうちに、この組合せをつくられたように感じるのは、私だけではないだろう。

この歌の歌詞も、偶然とは思えないのだ。

K.523 Abendempfindung(夕暮の想い)

Abend ist’s, die Sonne ist verschwunden,
Und der Mond strahlt Silberglanz;
So entfliehn des Lebens schönste Stunden,
Fliehn vorüber wie im Tanz.

Bald entflieht des Lebens bunte Szene,
Und der Vorhang rollt herab;
Aus ist unser Spiel, des Freundes Träne
Fließet schon auf unser Grab.

Bald vielleicht -mir weht, wie Westwind leise,
Eine stille Ahnung zu-
Schließ ich dieses Lebens Pilgerreise,
Fliege in das Land der Ruh.

Werdet ihr dann an meinem Grabe weinen,
Trauernd meine Asche sehn,
Dann, o Freunde, will ich euch erscheinen
Und will himmelauf euch wehn.

Schenk auch du ein Tränchen mir
Und pflücke mir ein Veilchen auf mein Grab,
Und mit deinem seelenvollen Bli cke
Sieh dann sanft auf mich herab.

Weih mir eine Träne, und ach! schäme
dich nur nicht, sie mir zu weihn;
Oh, sie wird in meinem Diademe
Dann die schönste Perle sein!

Date: 12月 23rd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その23)

1988年9月号の無線と実験に、伊藤先生製作の7027Aプッシュプルアンプの記事が載っている。
出力トランスはパートリッジのP5201、1次側のインピーダンスが10kΩのもの。
出力段はAB1級のUL接続で、出力はおよそ20W。

RA-1574-Dは五極管接続で、7027Aの規格表をみると、
AB1級で、出力トランスに6.5kΩのものを使えば、76Wの出力となっている。

1次側インピーダンスが6.5kΩのトランスで70Wを超える出力でも使えるものとなると、まずないと思っていたが、
スウェーデンのトランス専門メーカー、ルンダールのラインナップのなかに、6kΩのものがある。
7027Aは、やはりAB1級で6kΩのトランスを使えば、50Wの出力を取り出せる。

伊藤先生の製作例があること、ウェストレックスのカッターヘッド用のドライブアンプに使われていたこと、
このふたつの理由に、ぴったりのトランスがいまでも入手できることがわかり、
7027Aのプッシュプルアンプをつくるのもよさそうだと、ひとり納得していたところで思い出したことがある。
     *
 しかしその試聴で、もうひとつの魅力ある製品を発見したというのが、これも前述したマッキントッシュのC22とMC275の組合せで、アルテックの604Eを鳴らした音であった。ことに、テストの終った初夏のすがすがしいある日の午後に聴いた、エリカ・ケートの歌うモーツァルトの歌曲 Abendempfindung(夕暮の情緒)の、滑らかに澄んで、ふっくらとやわらかなあの美しい歌声は、いまでも耳の底に焼きついているほどで、この一曲のためにこのアンプを欲しい、とさえ、思ったものだ。
     *
瀬川先生が、1981年に書かれた文章だ。

Date: 12月 22nd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その22)

真空管アンプでは、出力が50Wをこえるあたりから(できれば70W以上はほしい)、
トランジスターアンプにくらべれば小さな値ではあっても、
出力の余裕から生れてくるものが感じとれるような気がする。

70Wクラスのパワーアンプといえば、マッキントッシュのMC275が75W+75W、マランツのModel 9が70W。
もう少し新しいところではマイケルソン&オースチンのTVA1が70W+70W、ジャディスのJA80が80W。
マランツだけが出力管はEL34のパラレルプッシュプルで、あとの3機種はKT88のプッシュプル。

個人的には出力管をパラレル使用はしたくない。
となると使える真空管は限られてくる。

ウェストレックスに、RA-1574-Dというアンプがある。
出力管は7027のプッシュプルで、出力は75W。
このアンプは、WESTREX 3D STEREODISK SYSTEM に使われている。
つまりカッターヘッド用のアンプである。

パワーアンプ部を見ると、初段は12AU7で、次段が12AU7のP-K分割、12BH7で増幅したあと、
7027の固定バイアスの出力段となっている。

RA-1574-Dの回路図を見たときから、これでスピーカーを鳴らしてみたら……と妄想していたのである。

Date: 12月 22nd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その21)

アルテックの604-8Gが来てから、あれこれ考えるのが楽しい。
エンクロージュアをどうするか、ネットワークは、あれを試してみたい、
それにユニットの取り付け方でも試してみたいことがあって、
時間が空くと、とにかく妄想をふくらませている。

パワーアンプについても、妄想している。
やはりいちどは真空管アンプで鳴らしてみたい、とも思っている。

604-8Gは、型番が示すように604Eまでの16Ω仕様から、
トランジスターアンプで鳴らすことを前提に8Ω仕様に変更されている。

最新のトランジスターアンプで鳴らすことも考えながら、真空管アンプまで自作しようかな、などと、
いったいいつ実現するのかわからないくらいに、妄想的計画は大きくなっていく。

出力管は何にしよう、と考えると、たしかにウェスターンの300Bに惹かれるものはあるが、
プッシュプルで20W弱。
604-8Gを鳴らすには、これでも十分といえるものの、最新のプログラムソースに対応するためには、
正直もうすこし出力の余裕がほしい、と思ってしまう。

トランジスターアンプも、真空管アンプにしても、
良質の大出力アンプのもつ余裕から生れる特有の魅力は、
オーディオにとって必然の条件ともいいたくなる。