妄想組合せの楽しみ(その33)
パイオニアのExclusive M4は、1979年ごろに改良されてM4aになっている。
いちどふたつを聴きくらべる機会があった。
M4aはほぼ新品にちかいモノ、M4はずいぶん試聴用として使われていたモノ。
そういうモノでの比較ではあったが、当時の私の耳に魅力的に聴こえたのはM4のほうだった。
あのころいわれていたAクラス・アンプの音──、
やわらかくなめらかで、しっとりしたところのある音(Aクラス・アンプすべてがこういう音ではないけれども)、
そんなイメージをそのまま聴かせてくれたのがM4のほうだった。
そのときより以前に聴いた時も、そんなよさは感じていた。
とにかく、しっとりした鳴り方は、M4aと聴きくらべると、M4特有のものだといいたくなるところがある。
M4aへの改良は’80年ごろだけにDCアンプ化されてたのかと思ったけれど、
どうもそうではないようで、回路面では大きな変更はなされてなかったと記憶している。
いわゆる細部の再検討による改良(変更)だった。
他の国産アンプはマークIIになるとき、回路面でも変更が加えられることからすると、
だからM4とM4aの違いは小さいものかもしれないけれど、
M4のしっとりしたまろやかな、とくに中音域における特有の魅力に惹かれた者にとっては、
M4aの音は、そのいちばんおいしく感じられたところが薄くなっている、と感じた。
いま思うと、M4の魅力は中音域の魅力だった。
非常に質の良いフルレンジスピーカーユニットに通じるところもあって、
聴いているときには意識しないけれども、ややナロウレンジ的な音のよさだったのかもしれない。
そのへん、M4aになると変っている。ワイドレンジ的になったといおうか。
だからといって中音域が薄くなったわけではないが、高域においても低音域においても、
M4よりは音の密度が増しているためなのか、中音域の魅力は相対的に薄れてしまったのかもしれない。
パワーアンプとして、どちらが完成度が高いかととわれれば、M4aだと思う。
でも記憶に残る音の魅力に関しては、M4のほうが上だと、私は感じている。