Archive for category 新製品

Date: 2月 27th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その2)

タンノイの輸入元であるエソテリックのサイトには、
まだLegacy Seriesについては何も公開されていない。

TANNOY Legacy Seriesで検索すれば、海外のいくつかのサイトがヒットする。
写真ももちろんある。

Ardenは、元のArdenと同じでバスレフポートが三つある。
Cheviotは一つで、元のCheviotと同じだが、位置は中央に移動している。
元のEatonは一つだったのに対し、Eatonは二つに増えている。
位置は元のEatonと同じでユニットの上側にある。
ポートの開口部は、この時代のスピーカーらしくアールがつけられている。

ArdemとCheviotは、元のモデルと同じように袴(台座)付きである。
フロントバッフルには同軸ユニットの構造図がついているのも元のモデルと同じである。

写真を見ていると、すぐにでも聴きたい、と思う。
おそらくArdenは、
ふくらみがちな低音(口の悪い人はボンつく低音といっていた)はそうではなくなっているであろう。
かといって引き締まっているわけでもないだろう。

いまのところ写真はサランネットなしの一枚だけである。
サランネットはどうなっているのだろうか。
Ardenは三分割になっていた。Berkeleyが二分割だった。

新Ardenのサランネットも三分割なのだろうか。
そうあってほしい。

タンノイは1981年にGRF Memoryを出す。
ABCシリーズとは一線を画したモデルだった。
日本では高い評価を得ていた。
ハーマンインターナショナル傘下時代を暗黒時代と呼んでいた人は、
タンノイ復活といっていた。

その後、Edinburgh、Stirling、そしてWestminsterを出していく。
確かにハーマンインターナショナル傘下時代とは大きく変っていった。

けっこうなことだと思っていたが、
タンノイのスピーカーの外観はデコレーションの方向に傾きつつあるのを見ていると、
何か方向性がズレてきているのではないか、と思うようになってきた。

10インチ同軸ユニットを搭載のStirlingは、IIILZの現代版を謳っていた。
けれど現在のStirling/GRに、IIILZの面影はない。

そこに今回のLegacy Seriesであるから、よけいに聴いてみたい気持が強い。
Eatonを特に聴いてみたい。

Arden、Cheviot、Eatonの三機種なのは、頭文字をならべるとACEになる。
エースである。
それにLegacyの中に、aとcとeはあるが、bとdはない。
そのこともBerkeleyとDevonがない理由かも、と勝手に思っている。

Date: 2月 27th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その1)

私がオーディオの世界に入った1976年は、
タンノイからArden、Berkeley、Cheviot、Devon、Eatonが登場した。
いわゆるABCシリーズ、アルファベットシリーズと呼ばれるスピーカー五機種である。

すべてイギリスの地名からとられている。
Arden、Berkeleyが15インチのHPD385A、
Cheviot、Devonが12インチのHPD315A、
Eatonが10インチのHPD295Aを搭載していた。

当時の価格はArdenが220,000円、Berkeleyが180,000円、Cheviotが140,000円、
Devonが120,000円、Eatonが80,000円(いずれも一本の価格)。

タンノイのスピーカーとしては求めやすくなっていたこともあり、
けっこう数が売れたときいている。
売れたからこそ、中古市場にもモノがあるわけだ。

この時代のタンノイはハーマンインターナショナル傘下だった。
口の悪い人は、タンノイの暗黒時代ともいう。
けれど、ハーマンインターナショナル傘下に入っていなければ、
1974年に工場の火災という危機を迎えていたのだから、どうなっていたのかはわからない。

瀬川先生は、このシリーズはよく出来ている、といわれていた。
ステレオサウンド 41号では、次のように書かれている。
     *
 新シリーズはニックネームの頭文字をAからEまで揃えたことに現れるように、明確なひとつの個性で統一されて、旧作のような出来不出来が少ない。そのことは結局、このシリーズを企画しプロデュースした人間の耳と腕の確かさを思わせる。媚のないすっきりした、しかし手応えのある味わいは、本ものの辛口の酒の口あたりに似ている。
     *
私が聴いたのはArdenとEatonだけである。
あとの三機種も揃えて聴いてみたかった、と思うけれど、その機会はなかった。
瀬川先生は、このシリーズのネーミングもうまい、といわれていた。

アーデン、バークレイ、チェビオット、デボン、イートン、
それぞれの語感から受ける印象と音の印象は近い、そうだ。

確かにアーデンは、悠揚たる味わいがあった。

このABCシリーズを、タンノイがもう一度やる。
五機種ではなく、Arden、Cheviot、Eatonの三機種で、Legacy Seriesと名づけられている。

すでにタンノイはハーマンインターナショナル傘下から離れているけれど、
その時代を代表するスピーカーを、Legacyと呼ぶのか、と感慨深いものがないわけではない。

Date: 2月 25th, 2017
Cate: 新製品

新製品(新性能のCDトランスポート・その2)

友人のAさんはPSオーディオのD/Aコンバーターを、非常に高く評価している。
音を聴いているわけではないので、私自身の評価はできないが、
少なくとも優秀なD/Aコンバーターなのだろう、と思っている。

そのPSオーディオから、CDトランスポートの新製品が登場したばかりだ。
DirectStream Momory Playerである。

1月末に発表になったCHORDのBlu MkIIも興味深いCDトランスポートだと思い、
新性能のCDトランスポートの登場とも書いた。

DirectStream Momory Playerも同じと受けとめている。
新性能のCDトランスポートが、PSオーディオからも、同時期に登場である。

セパレート型CDプレーヤーの登場から30年以上が経ち、
昂奮できるCDトランスポートが立て続けに登場してきた。

これまでにも意欲的なCDトランスポートは、確かにいくつかあった。
具体的な製品名は挙げないが、
いま私が感じている昂奮は、そこには感じなかった。

だからといってCDトランスポートとしての「性能」に不足があった、ということではない。
CDトランスポートとしての新性能を感じられなかったからなのかもしれないと、
Blu MkII、DirectStream Momory Playerの登場によって、いまごろ思い返している。

Date: 2月 14th, 2017
Cate: 新製品

新製品(新性能のCDトランスポート・その1)

CDプレーヤーは最初はひとつの筐体のモノばかりだった。
だからこそ、CDプレーヤーと呼ばれていた。

ソニーとLo-Dがセパレート型CDプレーヤーを、同時期に発表した。
CDトランスポートとD/Aコンバーターとのふたつの筐体になった。

トランスポート(transport)の意味は輸送、搬送、運送などである。
信号処理の分野では、情報、データ、信号などを伝送する、伝達する、転送する、などの意味を持つ。

CDトランスポートを、そう呼ぶのはなんとなく納得できるものの、
これまでのCDトランスポートを、素直にトランスポートと呼んでもいいのだろうか、
という気持は少しばかりあった。

それでも他にいい言葉も思いつかないし、
便宜的にはCDトランスポートと私もいっていた。

1月下旬にCHORDからCDトランスポートBlu MkIIが発表になった。
発売は3月の予定だそうだ。

Blu MkIIがどんな新製品なのかは、
ステレオサウンド、ファイルウェブでも紹介されているから、
輸入元タイムロードのサイトよりも、情報としては詳しい。

CHORD独自の信号処理技術M-SCALERによって、CDを705.6kHz(最大)までアップサンプリングする。
CDだけでなくBNC端子によるデジタル入力も備えており、M-SCALERはこちらでも使える。

聴いていない新製品の音については語れないが、
ステレオサウンド、ファイルウェブの記事を読むと、早く聴きたいと逸る。

数日前に、仕様変更のニュースがあった。
外部入力としてUSB端子が設けられるとのこと。
もちろんUSB端子からの入力信号に対してもM-SCALERによるアップサンプリング処理は行われる。
こちらは最大768kHzとなっている。

初代Bluにもアップサンプリング機能は搭載されていて、
88.2kHz、176.4kHzでも信号出力を、CHORDのD/Aコンバーターとの接続時において可能だった。

けれど初代Bluにはデジタル入力はなかった。
信号処理大幅に向上したBlu MkIIだが、
まだ聴いてもいない製品についてここで書いているのは、
デジタル入力を備えているからである。

Blu MkIIがもつ機能こそ、CDトランスポートと納得ずくで呼べる。
USB入力を装備して、ますますそう呼べるようになった。
同時に新性能の登場ともいえよう。

2017年2月25日追記
PSオーディオからも興味深いCDトランスポートDirectStream Memory Playerが登場した。
なのでこの項を続けて書くことにした。
タイトルも「新製品(CHORD Blu MkII)」から「新製品(新性能のCDトランスポート」へと変更した。

Date: 11月 5th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その12)

1993年のステレオサウンド別冊「JBLのすべて」で、
井上先生がウォームアップについて書かれているところがある。
     *
 高級アンプにとり、ウォームアップによる音質、音色などの変化は、現状では必要悪として歴然と存在する事実で、これを避けて通ることは不可能なことと考えたい。
 このウォームアップ帰還の変化を、どのようにし、どのように抑えるかは、まったく無関心のメーカーもあり、今後の問題といわざるをえないが、アンプを選択する使用者側でも、どの状態で今アンプが鳴っているかについて無関心であることは、寒心にたえないことである。
     *
1993年は、アンプのウォームアップによる音の変化が問題になってから20年近く経っている。
それでも無関心なメーカー、ユーザーがいる、ということになる。

井上先生はウォームアップによる音の変化について、必ずといっていいほど書かれていた。
いまはどうだろうか。

ステレオサウンドの試聴では、ウォームアップは行っている、とある。
やっている、と思う。
だが、瀬川先生、井上先生のように、この問題に対してつねに意識的である人が、
試聴しているのだろうか、と思うこともある。

ウォームアップの問題が形式化していないといえるだろうか。
同時にクールダウンについては、どうだろうか。

これらの問題に無関心な人はずっと無関心のようである。
私はNutubeに関して、ウォームアップの点だけでなく、
Nutubeは長時間の使用において、音が弛れてくることはないのかも気になる。

アンプの自作記事には、残念ながらこの観点が欠けている。

Date: 11月 5th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その11)

ウォームアップの問題は、やっかいな面ももっている。
ウォームアップなんて、十分な時間電源をいれておいて、
信号を流して音を鳴らしている時間も十分ならば解消だろう──、
そう思われる人もいるだろう。

ウォームアップという言葉からは、
鳴らしていくうちに本調子になってきて、それにかかる時間は製品によって違っても、
あるレベルに達しウォームアップが終ればすむ──、そういった印象がある。

けれど実際にはあるレベルに達し、そこから先はウォームアップではないということになる。
この状態を維持できれば、話は単純なのだが、
モノによっては、長時間の使用により、むしろ音が悪い方向に変化していく。

つまりクールダウンを必要とするオーディオ機器が存在する。
おそらくすべてのオーディオ機器にあてはまることなのかもしれないが、
ウォームアップほど顕著に音に出ないようであり、
まれに顕著に音として、この問題が出てくるモノがある。

私がステレオサウンドにいた間の機種では、
アキュフェーズのD/AコンバーターDC81がそうだった。

ディスクリート構成のD/Aコンバーターということ、
アキュフェーズ初のセパレート型CDプレーヤーとしても話題になったし、
ステレオサウンドの試聴室でもリファレンス機器として使っていた。

それだけの内容と音を持っていたけれど、
DC81はかなり長時間使用していると、あきらかに音が弛れてくる。
それは音の滲みと受け取る人もいるだろうし、
音にベールがかかったように聴こえるという人もいるだろう。

ウォームアップとともに音は目覚めていくわけだが、ずっと目覚めた状態を維持できるとはかぎらない。
そのため、電源を落してクールダウンを必要としていた。

一日数時間の使用であれば、この問題は出てき難い。
もっとも使用条件・設置条件によっては、たとえ数時間でも発生するとは思う。

Date: 10月 31st, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その10)

アンプのウォームアップの問題を最初に指摘したのは誰なのかは知らない。
私がステレオサウンドを読みはじめたころには、すでにウォームアップについては指摘されていた。

そのころアンプテストやその他の記事でウォームアップについて頻繁に書かれていたのは、
私にとっては瀬川先生という印象がある。

おもしろいことに瀬川先生が高い評価を与えているアンプの多くは、
ウォームアップに時間がかかるものだった。
セパレートアンプだけではなく、プリメインアンプにおいてもそうだった。

このころウォームアップに時間をたっぷりと必要とするアンプとしては、
まずトリオがそうだった。それからSAEのMark 2500もそうだった。

トリオはプリメインアンプ、セパレートアンプ、どちらもその傾向があったことが、
瀬川先生の書かれたものから読みとれた。

このウォームアップの問題は、アンプだけでなく、
サーボ技術をとりいれたアナログプレーヤーについても指摘されるようになってきた。
だからCDプレーヤーも、その点ではまったく同じである。

このウォームアップの問題が割とやっかいなのは、
すでに書いているように電源を入れておくだけでは不十分であること。

それからケーブルの好感などでいったん電源を落すと、
たとえそれが数分間という短い時間であっても、アンプによってはすぐに本来の音、
つまり電源を落す前の音に復帰できるわけではない。

少なくとも数分間の音出しを必要とするアンプがある。
同じことはサーボ採用のアナログプレーヤー、CDプレーヤーに関してもいえる。

ディスクのかえかけごとにターンテーブルプラッターを止めてしまうと、
サーボが安定状態(ウォームアップの完了)まで、いくばくかの時間を要する。
だからステレオサウンドの試聴室においては、ターンテーブルは廻しっぱなしであった。

CDプレーヤーはそうはいかないので、厳密な試聴の場合はディスクのいれかえを行わず、
さらにはストップボタンも押さずに、ポーズボタンを使っていた。

それほどウォームアップの問題は、気にしはじめるとやっかいである。

Date: 10月 29th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その9)

コルグのNutubeを使った製作記事が、いま書店に並んでいる無線と実験と管球王国に載っている。
近いうちにラジオ技術にも載るだろうし、
来年になれば、いくつかの製作記事が載っていくはずだ。

いまのところ二本の製作記事を読んだが、
私がもっとも知りたいことはどちらにもなかった。

音のことではない。
音に関係してくることではあるが、ウォームアップによる音の変化についてである。

真空管アンプはヒーター(フィラメント)が十分に暖まるまで、
音は出るには出ても、満足な音ではない。
その点、トランジスターアンプの方が、すぐに音は出る。

けれどアンプにはウォームアップの問題がある。
1970年代半ばごろから、アンプにもウォームアップが必要だといわれるようになった。
それも電源を入れておくだけではな不十分で、
音楽信号を入れてのウォームアップが必要であり、
そのアンプ本来の音が出るようになるには、
アンプによっては数時間かかるモノもめずらしくなかった。

一時間ほどで一応のウォームアップが終るアンプもあるけれど、
三、四時間ほどかかるアンプもある。
三時間といえば、仕事を終え帰宅して、夕食をとり入浴して聴きはじめても、
そのアンプ本来の音が出るころには日付が変っていることだってあるわけだ。

その点、真空管アンプのウォームアップはそれほど時間をとらない。
真空管アンプの中にもウォームアップの遅いモノはあるだろう。
でも、きちんとつくられている真空管アンプならば短い。

でも、これは従来の真空管を使ったアンプの話であって、
蛍光表示管の技術を採用したNutubeはその点、どうなのだろうか、
と非常に興味がある。

ウォームアップに関しては、従来の真空管と同じなのか、
それとも意外に時間を必要とするのか。
いまのところ、どちらの製作記事には、そのことは触れられてなかった。

Date: 9月 23rd, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その8)

Nutubeは、蛍光表示管の技術を応用して、と説明されている。
私は「蛍光表示管の技術を応用して」のところをきちんと理解しているわけではない。

最初に、こんな言い訳を書いておいて、この方面には素人の戯言を書きたい。

照明は、白熱灯が最初に登場し次に螢光灯が出て来た。

Nutube以前の、つまり一般の真空管のヒーター、フィラメントは白熱灯と同じといえる。
それがNutubeで螢光灯と同じになった──これがただしい理解とはいわないが──、
そう理解すれば、Nutubeの次に来るのは、LED技術の応用なのだろうか、と考えている。

螢光灯もLED照明に変りつつある。
ならば真空管もLEDの技術の応用が可能になる……のかもしれないし、
まったく不可能なことなのかもしれない。

でももし可能であるとしたら、真空管はもっと小型になるはずである。
消費電力もさらに小さくなる。
音はどうなるのかはわからないけれども……。

Date: 9月 22nd, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その7)

Nutube 6P1のデータシートが公開されている。
見ていくと、(その4)で書いたパワーアンプの実現は、
不可能ではないけれどけっこう困難そうだ。

ならばNutubeで挑戦してみたいことが変ってくる。
MC型カートリッジのヘッドアンプはどうだろうか。

これまでにも真空管ヘッドアンプはあった。
カウンターポイントからSA2が、ミュージック・レファレンスからRM4が出ていた。
どちらもステレオサウンドの試聴室でじっくり聴いている。

ソリッドステート式ヘッドアンプにはない肌触りのよさが感じられはするものの、
安定性、ノイズなどで実用にたえるかとなると、そうとはいえない出来だった。

でもいつかはまともに使える真空管ヘッドアンプが登場してくれるだろう、と期待していた。
結局は登場しなかった。

Nutube 6P1がヘッドアンプに向いているかどうかは、なんともいえないが、
コスト的にも複数並列接続の小出力のパワーアンプよりも、負担はずっと少ない。

これから来年にかけて、Nutube 6P1の製作記事は、
オーディオ雑誌、インターネットにいくつも登場するはずだ。
その中にヘッドアンプはあるだろうか。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その6)

コルグにメールアドレスを登録している人には、
メールが届いていているであろう、Nutubeが、やっと発売になる。
9月23日から個人向けの発売が行われる。

個人向けの販売が始まる前に、
無線と実験、ラジオ技術に製作記事が載るのであろう、と思っていた。
製作記事が広告にもなるからだ。

でも無線と実験にもラジオ技術にもNutubeを使ったアンプの製作記事は載らなかった。
なので市販はもっと先になるのか、と思っていたところに、今回の報せである。

それからデータシートも更新され、より詳細な情報が得られる。
これも嬉しい。あれこれ想像できるようになるからだ。

少なくとも年内発行の無線と実験、ラジオ技術には製作記事が載るであろう。

Date: 8月 19th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その5)

その4)を書いている時点で、
具体的なアンプの構想を考えている。
回路的には単段アンプゆえに、
入力トランスと出力トランスのあいだにNutubeが並列接続されてある、という、
これ以上省略のしようのないものだ。

Nutubeは定電流点火をしたい。
入力トランスにはあれを使いたい、
出力トランスはあれかな、とかも考えているし、
アンプのレイアウトもできるかぎり薄型に仕上げたものと、
信号経路をできるだけ短縮化したもの、
古典的な真空管アンプのスタイルのもの、などいくつかを並行して考えている。

実際に作るとしたら、製作コストはどくらいになるのか。
コストの半分以上はNutubeの価格次第といえる。
片チャンネル八本使うわけだから、一本あたりの価格の違いは、(×16)で大きく響いてくる。

こんなふうに考えていっているのだから、
頭の中では、このアンプと組み合わせるスピーカーも、はっきりと決っている。
グッドマンのAXIOM 80を鳴らしてみたい、と思っているし、
Nutubeのアンプがどういう音を聴かせてくれるのか、
そのイメージをふくらませるに必要な試聴体験はないのだけれど、
私の頭のなかでは、もう完結に向いつつある。

Date: 8月 18th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その4)

1970年代終りごろ、出力トランジスターの高周波特性が向上した。
そのころRET(Ring Emitter Transistor)が登場した。
小信号トランジスターを多数並列接続して、
ひとつのパッケージにおさめたといえるトランジスターである。

小信号トランジスターは出力トランジスターよりも高周波特性が優れている。
ならばそれを並列接続することで、より大きなパワーを扱えるようにしたモノである。
パイオニアのパワーアンプM25に採用されていた。

ネルソン・パスが数年前だったか、同じ考えに基づくパワーアンプの記事を公開していた。
小信号FETをかなりの数並列接続することで、出力トランジスターを用いないパワーアンプを作っていた。
回路的には特に難しいところはない。
ただただハンダ付けを丁寧にこなしていくことが求められるアンプ製作である。
人によっては気が遠くなるような作業に感じられるだろう。

小信号のデヴァイスを並列接続して使うという手法は、真空管でもある。
ラジオ技術で武末数馬氏がECC81を片チャンネルあたり八本使用したパワーアンプを、
1981年(だったと記憶している)に発表されている。

入力された信号はトランスによる位相反転され、その後はECC81の8パラレル・プッシュプル回路である。
いわゆる単段アンプである。出力は5W+5Wと記憶している。

コルグがNutubeの出力管版を開発していくのかどうかはわからない。
出てこないかもしれない。
出てくるにしろ出てこないにしろ、Nutubeを武末氏のECC81アンプのように複数並列接続すれば、
数W程度の出力のパワーアンプは作れるはずである。

ECC81は傍熱管だが、Nutubeは直熱管。
片チャンネル八本使っての8パラレル・プッシュプルで、どれだけの出力がとれるだろうか。
100dB超えのスピーカーう使っていれば、数Wの出力でもいける。

Nutubeによるパワーアンプ、
予想以上のパフォーマンスを発揮してくれるかもしれない。

Date: 8月 11th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その3)

そろそろアナウンスがあってもいいんじゃないか、と期待していることがある。
コルグが開発した真空管Nutubeの出力管版である。

昨年1月の発表から一年半以上が経ち、Nutubeを搭載した試作機の試聴会も行われているようだ。
オーディオメーカーからコルグへの問合せも多いようだ。
秋にはなんらかの製品が登場してくるであろう。

それから一般市販も期待したいところである。
と同時に、ぜひとも開発してほしいのが、出力管の開発だ。
Nutube同様、直熱三極管を開発してほしい、と一方的に思っている。

Nutubeの電源電圧は5Vから80Vとなっている。
もしNutubeの出力管が登場したら、低電圧からの動作も可能になるのではないだろうか。
内部インピーダンスはどの程度になるだろうか。
私が勝手に期待しているスペックで出てくれれば、
管球式OTLアンプの設計がずっと楽になるはずである。

OTLアンプでなくとも、出力トランスの一次側インピーダンスをかなり低くできる可能性もある。
それにNutubeのヒーターは電圧0.7V、電流17mAで、
Nutubeの出力管も従来の出力管よりもずっと低いヒーター電圧と電流に抑えられれば、
出力管のヒーターの定電流点火も現実味を帯びてくる。

暑い夏、真空管アンプは休ませているというオーディオマニアも少なくない。
確かにこれだけ暑い夏だと、発熱量の多い真空管アンプ、
それもOTLアンプは涼しくなるまで、この音を聴くのはがまんしよう、
という気持になるのはごく自然なことかもしれない。

けれど出力管までNutubeで構成できれば、発熱の多さをあまり気にしなくもよくなる。
しかもオール直熱三極管でパワーアンプを構成できる。
もっとも古典的な構成を、もっとも現代的な真空管を使って実現できるようになる。

コルグがNutubeの出力管の開発に取り組んでいるのかどうかは、まったく知らない。
でも、まったく考えていない、取り組んでいないとも思えないのだ。

Date: 2月 10th, 2016
Cate: 新製品

新製品(Nutube・その2)

発表から一年。
コルグのサイト内にNutubeのページができ、ようやく概要がはっきりしてきた。

FAQもある。
ここでわかるのはNutubeは傍熱管ではなく直熱管だということ。
これには驚くとともに、冷静に考えれば消費電力の低さを実現するには直熱管が有利であることに気付く。

Nutubeのヒーターは電圧0.7V、電流17mAである。
この値ならば、定電圧点火よりも定電流点火のほうが楽になる。

電源電圧は5Vから80Vだから、
トランジスターを扱う感覚で真空管を扱えるようになる。
ただし直熱管ということもあってマイクロフォニックノイズには十分な配慮は必要だ。

こういった規格よりも気になっていたのは、
Nutubeそのものを一般市販してくれるのか、であった。

FAQには、個人ユーザーへの販売も予定している、とある。
これは、ほんとうに嬉しい。