Date: 3月 4th, 2017
Cate: 新製品
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新製品(TANNOY Legacy Series・その7)

元のEatonは、IILZの後継機といえる。
IIILZといえば、日本ではラックスのSQ38FD、それにオルトフォンSPUとの組合せが、
いわゆる黄金の組合せとして、古くからのオーディオマニアのあいだでは知られている。

残念なことに私は、この「黄金の組合せ」の音は聴いていない。
瀬川先生は「続コンポーネントステレオのすすめ」では、こう書かれている。
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 ところで、数年前のこと、ラックスの管球アンプSQ38FDとタンノイのIIILZ(スリーエルゼット)というスピーカーの組合せを、ステレオサウンド誌が〝黄金の組合せ〟と形容して有名になったことがある。絶妙の組合せ、ともいわれた。こういう例をみると、スピーカーとアンプとに、やはとり何かひとつ組合せの鍵があるではないかと思えてしまう。だがそれはこういうことだ。タンノイのIIILZは、数年前の水準のトランジスターアンプで鳴らすと、概して、弦の音が金属的で耳を刺す感じになりやすく、低音のふくらみに欠けた骨ばった音になる傾向があった。それを、ラックスのSQ38FDで鳴らすと、弦はしっとりとやわらかく、低音も適度にふっくらとしてバランスがよい。ここにオルトフォンのSPUというカートリッジを持ってくると、いそうそ特徴が生かされる。
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この瀬川先生の文章以前に、「五味オーディオ教室」でも、
IIILZの黄金の組合せについては読んでいた。
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 かつてヴァイオリニストのW氏のお宅を訪れたとき、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを聴かせてもらったことがある。そのあと、オーケストラを聴いてみたいと私は言い、メンデルスゾーンの第四交響曲が鳴り出したが、まことにどうもうまい具合に鳴る。わが家で聴くオートグラフそっくりである。タンノイIIILZは何人か私の知人が持っているし、聴いてきたが、これほどナイーブに鳴ったのを知らない。「オリジナルですか?」とたずねた。そうだという。友人のは皆、和製のエンクロージァにおさめたもので、箱の寸法など寸分違いはないのに、キャビネットがオリジナルと国産とではこうまで音は変わるものか。
 スピーカーだけは、ユニットで買ったのでは意味がない。エンクロージァごとオリジナルを購入すべきだと、かねて私自身は強調してきたが、その当人が、歴然たる音の違いに驚いたのだから世話はあるまい。
 私は確信を持って言うが、スピーカーというものを別個に売るのは罪悪だ。スピーカーだけを売るから世間の人はスピーカーを替えれば音が変わると思ってしまう。スピーカーというのは要するに紙を振動させるものなので、キャビネットが音を鳴らすのである。スピーカー・エンクロージァとはそういうものだ。
 でも本当に、わが耳を疑うほどよい響きで鳴った。W氏にアンプは何かとたずねるとラックスのSQ38Fだという。「タンノイIIILZとラックス38Fは、オーディオ誌のヒアリング・テストでも折紙つきでした。〝黄金の組合わせ〟でしょう」と傍から誰かが言った。〝黄金の組合わせ〟とはうまいこと言うもので、こういうキャッチフレーズには眉唾モノが多く、めったに私は信じないことにしているが、この場合だけは別だ。なんとこころよい響きであろう。
 家庭でレコードを楽しむのに、この程度以上の何が必要だろう、と私は思った。友人宅のIIILZでは、たとえばボリュームをあげると欠陥があらわれるが、Wさんのところのはそれがない。カートリッジはエンパイアの九九九VEだそうで、〈三位一体〉とでも称すべきか、じつに調和のとれた過不足のないよい音である。
 畢竟するに、これはラックスSQ38Fがよく出来ているからだろうと私は思い、「ラックスもいいアンプを作るもんですな」と言ったら「認識不足です」とW氏に嗤われた。そうかもしれない。しかしIIILZと38Fさえ組合わせればかならずこううまくゆくとは限らないだろうことを、私は知っている。つまりはW氏の音楽的教養とその生活が創造した美音というべきだろう。W氏は、はじめはクォードの管球アンプで聴いていたそうである。いくらか値の安い国産エンクロージァのIIILZでも聴かれたそうだ。そのほかにも、手ごろなスピーカーにつないで試した結果、この組合わせに落着いた、と。
 私事ながら、私はタンノイ・オートグラフを鳴らすのにじつに十年を要した。それでもまだ満足はしていない。そういうオートグラフに共通の不満がIIILZにもあるのは確かである。しかし、それなら他に何があるかと自問し、パラゴン、パトリシアン、アルテックA7、クリプッシ・ホーンなど聴き比べ(ずいぶんさまざまなアンプにつないで私はそれらのエンクロージァを試聴している)結局、オートグラフを手離す気にはならず今日まで来ている。それだけのよさのあることを痛感しているからだが、そんな長所はほぼW家のIIILZとラックス38Fの組合わせにも鳴っていた。
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アンプはどちらもラックスだが、SQ38FとSQ38FDの違いはあるが、
他のアンプとの組合せからすれば、この違いは小さいといえよう。
カートリッジもオルトフォンSPUとエンパイアの999VEの違いはあるが、
ここではIIILZとSQ38F(D)との組合せにウェイトとしては重心がある。

1976年にEatonが登場した。
「コンポーネントステレオの世界 ’77」で、山中先生が組合せをつくられている。
そこではパイオニアのセパレートアンプC21とM22、
アナログプレーヤーはトーレンスのTD160CにカートリッジはAKGのP8Eだった。

「黄金の組合せ」的な要素はなかった。
むしろ上杉先生によるDevonの組合せの方が近かった。
アンプはラックスのSQ38FD/II、カーリトッジはデンオンのDL103だった。

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