通常のボリュームは、絞れば絞るほど、回路に直列に入る抵抗値が高くなる。
このこともあってか、ボリュームは絞って使うと、音が悪くなると言われることがあるが、
果たしてそのとおりなのだろうか、とも思う。
以前は、確かにそう思っていた、というより信じ込んでいた。
でも現実には、良質のボリュームであれば、絞って使ったほうがいいと感じることもある。
そのことに対する理屈は、人によってはどうでも良いことなんだろうが、
私はやっぱり気になる。何か、少なくとも納得のいく理由がひとつくらいはあってもいいはずだ。
LNP2でいえば、インプットアンプの入力端子から見れば、信号源の出力インピーダンスは、
直前に設けられているインプットレベルコントロールも含めてのものである。
ラインレベルの信号受け渡しは、ローインピーダンス出しの、ハイインピーダンス受けのため、
それほどインピーダンスについて語られることはないが、
内蔵のフォノイコライザーアンプにしろ、
ライン入力に接続されるチューナーやCDプレーヤーの出力インピーダンスの、
周波数特性はどうなっているだろうか。
NFBがかけられている半導体アンプで考えてみる。
NFBを、ある一定量、掛けるアンプのオープンループ(NFBをかける前の裸特性)の周波数特性は、
それほど広いものではない。可聴帯域のかなり低い周波数からゲインは落ちていく。
つまり周波数によって、NFB量は同じではない、ということだ。
低域ほどNFB量は多く、20kHzでは少なくなっているため、
出力インピーダンスもNFB量によって改善度が異り、低域ではかなり低い値でも、
1kHz、20kHzと周波数があがれば、少なからず出力インピーダンスも上昇していると見ていい。
それにインプットアンプにたどりつくあいだにケーブルの存在があり、
そのインダクタンスによっても、高域のインピーダンスは、また上昇する。
仮に信号源の出力インピーダンスを、20Hzでは100Ω、20kHzで300Ω、
ボリュームの値が10kΩとして、インプットアンプから見た出力インピーダンスの計算してみてほしい。
ボリュームをそれほど絞らない状態で、直列に入る値が1kΩ、並列に入る値が9kΩ、
絞った状態としての値が、9kΩ、1kΩとしよう。
実際にボリュームをかなり絞った状態では、直列の値はもっと高くなるが、
ここではボリュームの角度による出力インピーダンスの傾向を知ってもらうためなので、
計算しやすい値にしている。
抵抗を並列にした時の合成値は、それぞれの抵抗値を掛け合わせた値を、抵抗値を加算した値で割る。
信号源の出力インピーダンスも直列にはいるわけなので、
(信号源のインピーダンス+直列に入るボリューム値)×並列に入るボリューム値を、
(信号源のインピーダンス+直列に入るボリューム値+並列に入るボリューム値)で割る。
20Hzで、ボリュームをそれほど絞らない場合は、
(100+1000)×9000を100+1000+9000で割るわけだ。
こうやって、4つの場合の値を出してみてほしい。
そして、20Hzと20kHzの値を較べてほしい。
ボリュームを絞った場合とそうでない場合、20Hzと20kHzの値がほぼ同じになるのは、
どちらなのかが、はっきりする。
ボリュームを絞ることにも、メリットがあるといえよう。