LNP2について(その7)
最初、0、+10、+20dBだったゲイン切換えに、なぜ+30、+40dBの2ポジションを足したのか。
+30、+40dBのポジションにすれば、使い難さが生じることは、
マーク・レヴィンソン自身、よくわかっていたはずだ。
なのに、あえてつけ加えているのは、+30、+40dBのポジションの音に、
彼自身、良さを感じとっていたからではないだろうか。
インプットアンプのゲイン切換えはNFB量を変えて行なっている。
+20dBと+40dBのポジションでは、NFB量が20dB異る。かなりの違いだ。
つねに細かい改良が加えられているLNP2だから、完全な同一条件での比較は無理だが、
おそらく初期のLNP2の+20dBの音と、+40dBまで増えたLNP2の+20dBの音は、基本的には同じだろう。
モジュールのLD2も外部電源も同じなら、多少外付けパーツに変化があっても、
基本的な素性は同じはずだ。
LNP2の良さ──というよりもJC2を含めた、このころのマークレビンソンの音──は、
同社の他のアンプとくらべてみると、どんな微細な音をあますところなく緻密でクリアーに表現するところにある。
音の冴えが研ぎ澄まされている。
この音の特質を追求した結果、ややオーバーゲインといえるポジションが追加されたと考えていいだろう。
+30、+40dBのポジションを使うと、インプットレベルコントロールをかなり絞ることになる。
従来、ボリュームをあまり絞り過ぎた位置で使うと、音が極端に悪くなるので、
できるだけ減衰量の少ないところを使ったほうがいいとも言われていた。
たしかに質の悪いボリュームだと、絞り気味にすると、
左右の減衰量に差が生じるギャングエラーを起こすものがあった。
こういうボリュームは論外だが、少なくともLNP2が採用しているボリュームでは、
絞ったからといって、音が痩せたり、悪くなったりする印象は感じられなかった。
むしろ、私の個人的な印象だが、インプットアンプのゲインを+40dBまであげて、
インプットレベルコントロールを絞りぎみにしたときの音は、
むしろLNP2の良さが映えてくるとさえ思っている。
さすがにあまり絞り過ぎると、左右独立だけにレベル合わせが面倒になるので、
アウトプットレベルコントロールのほうも、かなり絞りぎみにするというよりも、
どちらのレベルコントロールも、基本的には絞りぎみで使う。
こういう設定でのLNP2 (L) の音を、機会があれば、聴いてみてほしい。