Mark Levinsonというブランドの特異性(その28)
ML3Lの音は、穏やかである。
LNP2のところで書いているが、JC2、 LNP2L、ML2Lに共通する過剰さが感じられない。
LNP2だけでなく、JC2にもML2Lにも、ある種の過剰さがある。
その過剰さが過激さにつながっている、と書いた。
JC2のように、音質向上のため、トーンコントロールを省き、モードスイッチの簡略化などを行い、
多少の使い難さも、音のために我慢して当然というスタイルは、
いまでこそあたりまえのことになり、抵抗もなく受けとめられているが、
JC2が登場した1974年当時では、過激ですらあった。
マーク・レヴィンソンは、アメリカのオーディオ関係の人間から、
JC2の使い難さを指摘されて、すこし不機嫌になりながら、
「これ(JC2)は、車に例えるならフェラーリだから」
と答えたという(RFエンタープライゼスの広告に、そうある)。
しかも外部電源にすることで、1Uサイズという薄型を実現したことも、
その後に続くアンプへの影響は、そうとうに大きかった。
ML2Lもそうだ。
片チャンネルあたり400Wの消費電力ながら、出力はわずか25W。
しかもそれまでどのアンプも実現できなかった、2Ωまでの計算通りに倍々で増えていくパワーを可能にしている。
しかも2台ブリッジ接続にすることで、A級動作では大出力といえる100Wも可能としている。
これらのアンプに見られるマーク・レヴィンソンの徹底的なこだわりは過剰であり、過激であり、
そのことが、神経質なまでの、音の過敏さを生み出している。
この過敏さが、ML3Lにない。少なくとも、私は感じとれなかった。