Archive for category JBL

Date: 5月 19th, 2015
Cate: 4343, JBL, 組合せ

4343の組合せ(その2)

「コンポーネントステレオの世界 ’77」の取材は1976年10月ごろ行われていることが、
岩崎先生によるエレクトロボイスSentryVの組合せの記事(222ページ)でわかる。

4343はステレオサウンド 41号の新製品紹介のページに登場しているから
黒田先生はまだ4343を購入されていない。
同じJBLの4320を鳴らされていた時期である。

架空の読者である金井さんがよく聴くレコードとして挙げられている三枚は、
ベーム指揮のコシ・ファン・トゥッテ、カラヤン指揮のオテロとボエームで、
レーベルはドイツ・グラモフォン、EMI、デッカとあえて違うようにしてある。

ベームのコシ・ファン・トゥッテは三種のレコードが出ている。
ここではドイツ・グラモフォン盤なので、ウィーンフィルハーモニーとのライヴ録音である。

カラヤンのとオテロは、再録音をよく行っていたカラヤンではあるが、
旧録音(デッカ)から10年ほどでの再録音である。
交響曲や管弦楽ならばこのくらいのスパンでの再録音はあっても、
オテロはいうまでもなくオペラである。
オペラで、このスパンの短さはほとんど例がない。

カラヤンの旧録音のオテロについて、
黒田先生は「録音のあとでカラヤンはしくじったと思ったのではないのか」と推測されている。
(ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’76」より)

これらのレコードを用意しての、組合せの取材である。
しかもスピーカーは最初から4343に固定してある。

これは井上先生とレポーターの坂清也氏、ふたりによるある種のワナのようにも思えてくる。
もちろん、いま読む、とである。
黒田先生への用意周到なワナである。

黒田先生は前年の「コンポーネントステレオの世界 ’76」巻頭の、
シンポジウム「オーディオシステムにおける音の音楽的意味あいをさぐる」で、
岡先生、瀬川先生とともに4343の前身である4341を聴かれている。

Date: 5月 3rd, 2015
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ウーファーについて・その5)

JBLのウーファー2231に採用されたマスコントロールリングは、
JBLがいうとおりの効果が得られるのであれば、どこかに実測データはないのか、とさがしていたら、
JBLではないけれどオンキョーが発表していたデータが見つかった。

オンキョーは1977年9月にセプター・システムスピーカーを発表した。
セプター・スピーカーシステムではなく、システムスピーカーと名づけられたこのシリーズは、
ウーファー3機種、ドライバー3機種、ホーン4機種、トゥイーター1機種、
この他にも音響連美、ネットワーク、エンクロージュアからなる。

このウーファーにも、JBLと同じようにマスコントロールリングが装着されている。
オンキョーではウェイトリングと呼んでいた。

このとき発表されたデータに、
ウェイトリングなし、ウェイトリング30g、ウェイトリング60gの、
周波数特性、インピーダンス特性がある。

ウェイトリングを装着することでなしの状態よりも、当然のことだがf0はわずかに左にずれる。つまり低くなる。
さらにインピータンスの上昇も、なしの状態よりも60g装着時には2/3ほどに抑えられている。

周波数特性は、意外にもいうべきか500Hz以上ではほとんど変化がない。
それから50Hzの肩特性も低い方に移行する。ただし減衰カーヴは一致している。
グラフをみると150Hzから300Hzのあいだでウェイトリングによる特性の変化幅が大きい。

ウェイトリングが重量が増すと、この帯域のレスポンスは低下している。
JBLによれば、マスコントロールリングにより、
低域の下限周波数の拡張だけでなく、堅くて軽いコーン紙を使うことで中低域のレスポンスも向上する、とある。
この辺は、オンキョーの特性結果と異るところでもある。

オンキョーの発表した特性では中低域のレスポンスは低下している。
ただしJBLのそれは、アクアプラスと比較してのことだとすれば、そうなのだろう。

とにかくマスコントロールリング(ウェイトリング)を装着しても中高域は変化しないことがわかった。
そしてオンキョーも発表しているようにボイスコイルボビンとコーン紙の結合がよりしっかりするために、
コーン紙の釣り鐘振動といわれる変形が抑えられているのが、
ウェイトリングなし/ありのストロボ写真ではっきりと確認できる。

この釣り鐘振動は中低域の音の濁りの原因ともいわれているから、
JBLのいう中低域のレスポンスの向上は、このことも含まれているのかもしれない。

Date: 4月 23rd, 2015
Cate: 4345, JBL

JBL 4345(4347という妄想・その1)

ステレオサウンド 60号の特集記事の座談会、
JBLの4345のところで、次のように瀬川先生が語られている。
     *
 この前、あるアマチュアでおもしろい指摘をした人がいまして、4345の音を聴いた後、ウーンと得なって、「なるほどいいところはある。けれども、4341が4343になって完成したと同じく、これはもしかしたら4347ぐらいが出ると、もっと完成後が高まるんじゃないか」と言った人がいました。
     *
4345の後継機としての4347。
4343の後継機として4348は登場したけれど、4347というモデルナンバーのスピーカーは登場しなかった。
18インチ口径のウーファー搭載の4300シリーズは、4345だけで終ってしまった。

4345の後継機はなぜ登場しなかったのか。
その理由はいくつか考えられるけれど、はっりきとしたことはよくわからない。

瀬川先生が生きておられたら……、4347なるモデルが登場したかもしれない。
私はそうおもってしまう人間である。

いまも4347がもし登場したら、どんなスピーカーだったっのか、とあれこれ妄想してしまう時間がある。

4347、
やはりウーファーは4345と同じ18インチ口径であってほしい。
それから4341が4343になって洗練されたように、4347も絶対そうであってほしい。
となるとミッドバスが4345と同じ2122ではどうしてもうまくいかないような気がする。

18インチ口径ウーファー搭載で、システムとしてのサイズはどうしても大きくなってしまう。
ならばいっそのことミッドバスも10インチではなく12インチにしたほうが、
全体のバランス、プロポーションは整ってくるはずだ。

このことは昔からそう思っていた。
それが確信に変ったのは、タンノイのKingdomの登場があったからだ。

現在のKingdom Royalではなく、最初のKingdom。
18インチ口径ウーファーに、12インチ口径同軸型ユニット、そしてスーパートゥイーターの4ウェイ構成。
この大型のシステムは、威風堂々としていて、4345のようなずんぐりしたイメージはまったくない。

つまりミッドバスには、4350、4355に搭載されている2202となる。
そうなればミッドハイのドライバーは2420(2421)から2441にしても、
エネルギー的にバランスがとれるようになる。
スーパートゥイーターは2405のまま。

こんな4347を想像している。

Date: 4月 23rd, 2015
Cate: 4343, JBL

40年目の4343(なぜ、ここまでこだわるのか)

ブログを書いていて、われながら、なぜここまで4343にこだわるのか、と思わないわけでもない。
このブログで、オーディオ機器に関しては4343のことをもっとも多く書いている。

読まれる方の中には、「また4343か」という人がいるのはわかる。
それでも、こうやって4343について書いているのは、
オーディオ界を見渡すためにも必要なことのように感じているからでもある。

もちろん個人的な理由の方が大きいとはいっても、
4343という、いわばスタジオモニター、それも高価なスピーカーシステムが、
驚異的な本数が売れたということは、なにか象徴的な現象のように思える。

そういえば……、と思いだす。
菅野先生が、ステレオサウンド別冊「JBLモニター研究」で、次のように書かれている。
     *
 そしてその後、中高域にホーンドライバーを持つ4ウェイという大がかりなシステムでありながら、JBL4343というスピーカーシステムが、プロのモニターシステムとしてではなく、日本のコンシューマー市場で空前のベストセラーとなった現象は、わが国の20世紀後半のオーディオ文化を分析する、歴史的、文化的、そして商業的に重要な材料だと思っている。ここでは本論から外れるから詳しくは触れないが、この問題を多面的に正確に把握することは、現在から近未来にかけてのオーディオ界の分析と展望に大いに役立つはずである。
     *
1998年に書かれている。
4343に憧れてきたひとりとして、そのとおりだと思うとともに、
残念に思うのは、いまのステレオサウンドには4343という材料(問題)を、
多面的に正確に把握することは期待できない、ということだ。

「名作4343を現代に甦らせる」という記事が、強く裏付けている。

Date: 3月 20th, 2015
Cate: 4343, JBL

なぜ4343なのか(その3)

4341から4343への変化だけ見ていては断言できないことでも、
4343のあとに登場した4345、4344、4344の改良モデル、
そしてJBLスタジオモニターの4ウェイ最後のモデルとなった4348までの系譜をみれば、
4343が特別なモデルであったことがはっきりと浮び上ってくる。

4341、4345、4344も、優れたデザインとはいえない。
4348にしても、4344からすれば……、という程度に留まっている。
そんな系譜の中に、4343だけがまったく隙のないデザインに仕上げられているのはなぜなのかを考えれば、
それはやはりJBL創立30周年を記念しての、
デザイナーとしてのアーノルド・ウォルフの意図が隠されている、と私は確信している。

おそらく4343はアーノルド・ウォルフのデザインではない、と思っている。
以前も書いているように、ダグラス・ワーナー(Douglas Warner)だと思っている。
アーノルド・ウォルフの可能性も捨てきれないのだが、それでも……、である。

ダグラス・ワーナーは、
アーノルド・ウォルフが経営していたコンサルタント会社でウォルフの助手をしていた人物で、
L200は彼のデザインだということははっきりしている。
ウォルフがJBLの社長に就任した際に、
彼の会社をワーナーが引きつぎ、ワーナー・アンド・アソシエイツと改称している。

そういう男にアーノルド・ウォルフが4343のデザインをまかせた。
だから4343が生れた──。
私は、いまのところそうおもっている。

Date: 3月 19th, 2015
Cate: 4343, JBL, 五味康祐

なぜ4343なのか(五味康祐氏と4343・その2)

「人間の死にざま」に所収されている「ピアニスト」によると、
五味先生は、ステレオサウンドの試聴室で4343を聴かれていることがわかる。
コントロールアンプはGASのThaedra、パワーアンプはマランツの510、
カートリッジはエンパイアの4000(おそらく4000DIIIだろう)である。

このラインナップからすると、1976年暮から1977年にかけてのことだと思われる。
この組合せは、ステレオサウンドの原田勲氏によるものらしい。
《現在、ピアノを聴くにこれはもっとも好ましい組合せ》ということで、聴かれている。
アシュケナージのハンマークラヴィーアの第三楽章である。
     *
なるほど、うまい具合に鳴ってくれる。白状するが拙宅の〝オートグラフ〟では到底、こう鮮明には響かない。私は感服した。(中略)JBL〝4343〟は、たしかにスタインウェイを聴くに、もっとも好ましいエンクロージァである。(中略)〝4343〟は、同じJBLでも最近評判のいい製品で、ピアノを聴いた感じも従来の〝パラゴン〟あたりより数等、倍音が抜けきり──妙な言い方だが──いい余韻を響かせていた。
     *
五味先生が、JBLのスピーカーについて、こんなふうに書かれているのは、
ステレオサウンド 47号のオーディオ巡礼を読んでいなければ、少し驚きである。

五味先生はいくつかのピアノをレコードを聴かれた後で、
オペラを聴かれている。
ワーグナーのパルジファル(ショルティ盤)である。
     *
大変これがよかったのである。ソプラノも、合唱も咽チンコにハガネの振動板のない、つまり人工的でない自然な声にきこえる。オーケストラも弦音の即物的冷たさは矢っ張りあるが、高域が歪なく抜けきっているから耳に快い。ナマのウィーン・フィルは、もっと艶っぽいユニゾンを聴かせるゾ、といった拘泥さえしなければ、拙宅で聴くクナッパーツブッシュの『パルジファル』(バイロイト盤)より左右のチャンネル・セパレーションも良く、はるかにいい音である。私は感心した。トランジスター・アンプだから、音が飽和するとき空間に無数の鉄片(微粒子のような)が充満し、楽器の余韻は、空気中を楽器から伝わってきこえるのではなくて、それら微粒子が鋭敏に楽器に感応して音を出す、といったトランジスター特有の欠点──真に静謐な空間を持たぬ不自然さ──を別にすれば、思い切って私もこの装置にかえようかとさえ思った程である。
     *
ここまで読むと、47号のオーディオ巡礼を読んでいても、少し驚いてしまう。
そして嬉しくなった。

Date: 3月 18th, 2015
Cate: 4343, JBL, 五味康祐

なぜ4343なのか(五味康祐氏と4343・その1)

JBLの4343に夢中になった10代を過ごした。
4343への興味が若干薄れた20代があった。

40をこえたころから、4343への興味が強くなってきた。
そしていまも薄れることなく続いている。

10代のころ、ひとつどうしても知りたいことがあった。
五味先生は、4343をどう評価されていたのか、だった。

五味先生のJBL嫌いについては、あえて書くまでもないことだ。
そんな五味先生でも、瀬川先生が鳴らされているJBLの3ウェイの音は評価されていた。
(ステレオサウンド 16号掲載のオーディオ巡礼参照)

ステレオサウンド 47号からオーディオ巡礼が再開。
奈良の南口重治氏が登場されている。
南口氏のスピーカーはタンノイ・オートグラフとJBL・4350Aだった。

47号に書かれている。
     *
 JBLでこれまで、私が感心して聴いたのは唯一度ロスアンジェルスの米人宅で、4343をマークレビンソンLNPと、SAEで駆動させたものだった。でもロスと日本では空気の湿度がちがう。西洋館と瓦葺きでは壁面の硬度がちがう。天井の高さが違う。
     *
南口氏の4350の音も最初は「唾棄すべき」音と書かれていたが、
最後では違っていた。絶賛に近い評価の高さだった。

4343も4350も、新しいJBLの音だった。
瀬川先生も高く評価されていた、このふたつのスピーカーを、
鳴らす人次第とはいえ、五味先生も認められているのが、嬉しく感じたものだった。

JBLからでも、五味先生を唸らせる音が出せる──、
そう信じられたからだ。

それだけに、もっと4343について書かれた文章が読みたかった。
けれどずっと見つけられずにいた。

30代の終りごろに、やっと見つけた。
新潮社から出ていた「人間の死にざま」にあった。

Date: 3月 18th, 2015
Cate: 4343, JBL

なぜ4343なのか(その2)

41号からステレオサウンドを読みはじめて半年。
43号のベストバイの特集で、4343のところに瀬川先生がこう書かれている。
     *
 4341を飼い馴らすこと一年も経たないうちに4343の発売で、個人的にはひどく頭に来たが、しかしさすがにあえて短期間に改良モデルを発表しただけのことはあって、音のバランスが実にみごと。ことに中低域あたりの音域の、いくぶん冷たかった肌ざわりに暖かみが出てきて、単に鋭敏なモニターというにとどまらず、家庭での高度な音楽館商用としても、素晴らしく完成度の高い説得力に富んだ音で聴き手を魅了する。
     *
4343の前身モデルとしての4341があったこと、
4341がいつ発売されたのかは、43号を読んだ時点では知らなかったけれど、
とにかく短期間でJBLがモデルチェンジしたことを知った。

このころはJBLという会社が、どのくらいのサイクルでモデルチェンジをするのかは知らなかった。
JBLとしては、4341の全面モデルチェンジは早かった。

同じスタジオモニターの4333、4350はモデルチェンジして4333A、4350Aとなっていた。
4341は4341Aとはならずに、4343へとモデルチェンジした。

そして、4341と4343の使用ユニットはまったく同じであるにも関わらず、
なぜ4343は4341Aでも4342でもなく4343なのか。

その理由を考えると、やはり4343はJBL創立30周年モデルだったような気がしてならない。

4341から4343への、もっとも大きな変更点はデザインである。
4341はお世辞にも洗練された、とはいえなかった。
けれど4343は違う。

4343が登場したころのJBLの社長は、アーノルド・ウォルフだった。

Date: 3月 17th, 2015
Cate: 4343, JBL

なぜ4343なのか(その1)

来年登場してくるであろうJBL創立70周年記念モデルのことを、あれこれ好き勝手に想像していて、
あっ! と気づいたことがある。
4343のことだ。

1976年に登場している。つまりJBL創立30周年に登場していることに気づいた。
JBLが創立記念モデルを出すようになったのは、50周年の1996年のCentury Goldからである。

4343のころは、創立記念モデルということはまったく謳っていなかった。
30周年だから4343を出したわけではないことはわかっている。

それでも4343がJBL創立30周年1976年に登場したことは、確かなことである。

そして、私自身にとっても、1976年は「五味オーディオ教室」と出逢った年でもある。
4343は、それとも重なる。

Date: 3月 16th, 2015
Cate: JBL

D2 Dual Driverがもたらす妄想

オールホーンシステムは、その昔オーディオマニアのひとつの夢として語られていたこともある。
いまもオールホーンシステムを理想とする人はいる。

それでも低域まで、それも20Hzまでホーンに受け持たせようとすれば、
そうとうに大がかりなシステムになり、部屋ごと(家ごと)つくるシステムになってしまう。

20Hzまでホーンロードをしっかりとかけるためには、
低音ホーンのカットオフ周波数は20Hzの半分、10Hzにする必要がある。
こうなるとホーン長も開口部面積も、長く大きくなってしまう。

そこまで挑戦する人でも、
低音用のドライバーは、コーン型ウーファーを使う人が大半だった。
中低域より上の帯域にはコンプレッションドライバーを使う人でも、
低音だけはコーン型ウーファーだった。

オールホーン(コンクリートホーン)で知られる高城重躬氏が使われていたゴトーユニットのラインナップでも、
最も低い周波数といえば、SG555TT、SG555DXで、
カタログ発表値では100Hz以上になっていて、推奨クロスオーバー周波数は200Hz以上になっている。
ゴトーユニットには、だからSG38Wという38cm口径のコーン型ウーファー用意されていた。

けれどゴトーユニットとともにオールホーンシステムを目指す人にとって心強い味方といえるYL音響には、
D1250というコンプレッションドライバーがあった。

直径21.5cm、重量26kgの、このコンプレッションドライバーのカタログ発表値は、16Hz〜1000Hzとなっている。
低音ホーンに使え、最低域までカバーできるコンプレッションドライバーは、
他に同類の製品は存在したのだろうか。

オールホーンシステムにさほど関心のない私でも、D1250を思い出したのは、
JBLのD2 Dual Driverの存在である。

D1250はボイスコイル径12.8cmの、一般的なドーム状のダイアフラムである。
これがD2 Dual Driverだったら……、と想像したくなる。

JBL PROFESSIONALのM2に搭載されているD2 Dual Driverは3インチ・ダイアフラム。
JBLがそんなものをつくることはないのはわかっていても、
4インチ、もしくは5インチのD2 Dual Driverで、低音までカバーしたモノをつくってくれたら……。

いったいどんな低音が聴けるのだろうか。

Date: 3月 14th, 2015
Cate: JBL

JBL PROFESSIONALの現在(その5)

ハイルドライバーは示唆に富む動作原理のようにも思えてきた。
そうなると、他の動作方式のスピーカーにもハイルドライバーの考えを応用できないものか、となる。

たとえばホーン型のコンプレッションドライバー。
ハイルドライバ(AMT)の振動板(膜)をそのままもってくるのではなく、
コンプレッションドライバーのダイアフラムを二枚にしたら、
つまりデュアルにしたらどうなのか、と思いついた。

ただあくまでも思いついた、というレベルに留まっていた。
従来と同じドーム型のダイアフラムを二枚向い合わせに配置する。
これだけでもかなり奥行きの長いドライバーになってしまう。

でもこれだけではハイルドライバー的コンプレッションドライバーにはならない。
コンプレッションドライバーで重要なフェイズプラグをどうしたらいいのか。
フェイズプラグのデザインが、すべてを決めるといってもいいのかもしれない。

私は答を出せなかった。
JBL PROFESSIONALの技術陣は答をはっきりと出している。
その答を、だから私は見事だと思ったし、こうすればよかったのか、と少し口惜しさもあった。

ダイアフラムをドーム状にはせずに、いわゆるリングラジエーター状にする。
そしてフェイズプラグのデザイン。

D2 Dual Driverの構造図を見れば見るほど、唸るしかない。
見事な答(デザイン)ではないか。

Dual Driverは、JBLではなくハーマンインターナショナルの特許である。

Date: 3月 14th, 2015
Cate: JBL

JBL PROFESSIONALの現在(その4)

ハイルドライバーはかなり以前からあった。
ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 3、トゥイーターの総テストには登場してなかったものの、
巻末のトゥイーターの技術解説のページには、動作原理が構造図とともに載っていた。

ハイルドライバーの動作原理はなんとなく理解できたものの、
ハイルドライバーを搭載したスピーカーシステムはというと、
残念なことにメジャーなモノではなく、当時はアメリカのESSのスピーカーシステムだけだったはずだ。

ESSのスピーカーシステムを聴く機会は一度もなかった。
ハイルドライバーのトゥイーターは単売されていたと記憶しているが、これも聴く機会はなかった。

そんなわけで、私が最初に聴いたハイルドライバー搭載のスピーカーシステムは、
エラックの310ということになる。

ハイルドライバーとはもう呼ばれておらず、AMTという名称に変っていたし、
磁気回路の構造も変化がみられるが、動作原理はハイルドライバーそのものである。

ハイルドライバーに対するそれまでの印象は、
ステレオサウンドの記事によってのものだった。
ステレオサウンド 60号に、ESSのフラッグシップモデルTRANSARIIが登場している。

この記事を読む限りでは、ハイルドライバーの音はトランジェントは優れていることがわかる。

ESSはアメリカのスピーカーメーカーだけれども、音量を上げないで聴くスピーカーだと思う、
と瀬川先生が語られている。
音慮を上げない限り、切り紙細工の人形が並ぶような定位感ではまったくない音場を聴かせる、
と岡先生が語られている。

こんな印象があったから、エラックの310から鳴ってきた音には、驚かされた。
それからハイルドライバー(AMT)に対する認識が完全に変ってしまった。

Date: 3月 11th, 2015
Cate: JBL, ステレオサウンド

JBL DD77000とステレオサウンド 200号

JBL PROFESSIONALのスタジオモニターM2の存在を二年遅れで知り、
発表当時から知っていた人からすれば、いまさら……、と思われていようと、
M2というスタジオモニターは非常に興味深いだけでなく、
なぜM2に採用された技術がコンシューマー用スピーカーに採り入れられていないのかについて、
つい考えてしまう。

少なくともデュアルダイアフラムのD2ドライバーは、
すぐにもコンシューマー用に採用されても不思議でないのに……、である。

なぜか、という答はすぐに思いつく。
来年(2016年)は、JBL創立70周年である。
ということは、60周年記念モデルのDD66000に代るモデルとしてDD77000が開発中と考えられる。

JBLに関心のある人ならば、多くの人がDD77000の登場を予測しているだろう。
どういうシステム構成になるのか、DD66000と何が同じで何が違ってくるのか。

その最大のヒントとなるのが、D2ドライバーの存在といって間違いはないはず。
DD77000にはデュアルダイアフラムのコンプレッションドライバーが搭載されるはず。

ウーファーはM2と同じシングルなのか、DD66000と同じダブルなのかはわからない。
ホーンの形状もM2のホーンに多少変更が加えられるのか。
少なくとも材質は変更されるように思う。

それからM2はマルチアンプ駆動なのに対して、DD77000はネットワーク内蔵となることは間違いないだろう。
M2は単なるマルチアンプ駆動ではない。
そのへんをネットワークでどう対応するのか、もしかするとオプションでマルチアンプ駆動、
それも専用アンプとデジタル信号プロセッサーによるものが用意されるのだろうか。

M2はクラウン(アムクロン)のアンプがそうであるから、
DD77000では同じハーマングループのマークレビンソンのアンプが専用アンプとなるのか。

こんなことをM2の存在を知ってからの数日、考えていた。
この予測がどこまで当るのかは来年になればはっきりする。

仮にDD77000が登場するとして、それはいったいいつになるのか。
これに関してはけっこう自信がある。
おそらく9月になるはずだ。

2016年9月に出るステレオサウンドは200号、つまり創刊50周年記念号である。
ここに合わせてくるし、200号の表紙はDD77000のような気がしている。

つまりステレオサウンド 200号でDD77000はお目見えとなるはずだ。
発表は9月よりも少し早いかもしれない。
それでも情報解禁はステレオサウンド 200号の発売日になるのではないか。

あと一年と六ヵ月である。

Date: 3月 10th, 2015
Cate: 4345, JBL

JBL 4345(その6)

私がステレオサウンドにいたころ、JBLの4344はリファレンススピーカーであったから、
長いこと聴いていたことになる。
4343も入ったばかりのころは、まだ試聴室に置いてあったから、何度か聴くことができた。
ステレオサウンドの試聴室以外でも、4343は聴く機会はけっこうあった。

けれど4345は、ステレオサウンド試聴室で聴く機会は一度もなかった。
1982年、4345は現行製品ではあったけれど、ステレオサウンド試聴室では聴けなかった。

4345は、4343、4344と比較試聴したこともないし、
聴いた回数もごくわずか。それも販売店での試聴とオーディオフェアで、くらいでしかない。

もっと聴いておきたかったスピーカーなのに、縁がなかったのか……。
でも、同年代のオーディオマニアと話をしても、4345を聴いている人はやはり少ない。
話題になっていたスピーカーなのに、不思議なことである。

やはり大きすぎたのだろうか。

4345はステレオサウンド 58号に登場し、60号の特集「サウンド・オブ・アメリカ」にも登場している。
この60号で、瀬川先生が興味深いことを発言されている。
     *
 ただ、ぼくは今聴いているとちょっと不思議な感じを抱いたのだけれど、鳴っている音のディテールを論じたら違うんですが、全体的なエネルギーバランスでいうと、いまぼくがうちで鳴らしているJBL4345のバランスに近いんです。非常におもしろいことだと思う。もちろん細かいところは違います。けれども、トータルなごく大づかみな意味ではずいぶんバランス的に似通っている。ですから、やはり現在ぼくが鳴らしたい音の範疇に飛び込んできているわけです。飛び込んできているからこそ、あえて気になる点を言ってみると、菅野さんのところで鳴っている極上の音を聴いても、マッキントッシュのサウンドって、ぼくには、何かが足りないんですね。かなりよい音だから、そしてぼくの抱いている音のイメージの幅の中に入ってきているから、よけいに気になるのだけれども……。何が足りないのか? ぼくはマッキントッシュのアンプについてかなり具体的に自分にとって足りない部分を言えるつもりなんですけれども、スピーカーの音だとまだよくわからないです。
     *
マッキントッシュのXRT20の試聴を終えての発言である。
アメリカ西海岸のJBLの4345と東海岸のマッキントッシュのXRT20の、
全体的なエネルギーバランスが近いということ。

瀬川先生も「非常におもしろいことだと思う」といわれているように、
これは非常におもしろく、興味深いことであり、
4345の音がどうであったのかを、
もっといえば瀬川先生が4345をどういう音で聴かれていたのかを、
正確にさぐっていくうえで非常に重要なことだと思っている。

Date: 3月 9th, 2015
Cate: JBL

JBL PROFESSIONALの現在(その3)

JBLとアルテック。
同じウェスターン・エレクトリックの流れを汲むメーカーであり、
どちらもコンシューマー用とプロフェッショナル用のスピーカーを手がけていても、
JBLは早い時期からレンジの拡大に積極的で3ウェイ、さらには4ウェイのシステムを発展させてきた。
アルテックは2ウェイという枠のなかで高域レンジの拡大を図っていた。

けれどアルテックも6041を発表してからは、4ウェイ路線に奔ってしまった。
当時のスピーカー技術では、どうしても2ウェイでまだ無理なところがあったともいえよう。

そんなJBLとアルテックだが、
JBLは1981年に4400シリーズを発表する。
それまで誰も見たことのない形状をしたバイラジアルホーンを搭載した、このスタジオモニターは、
4ウェイでもなく3ウェイでもなく、2ウェイだった。

高域を受け持つユニットは、4343のミッドハイを受け持つ2420のダイアフラムのエッジを改良した2421。
2420よりは高域レンジがのびているとはいえ、2405ほどのびているわけではない。

4435、4430とも発表されている再生周波数帯域は、30Hz〜16kHz ±3dB(4430は35Hzとなっている)。
この時代のスピーカーとしては、高域に関してはナローレンジといえるモノを、
4ウェイを積極的に展開していたJBLが、あえて出してきた。

4435、4430とも、私は音を聴いていない。
けれど、4435の音を気に入っていまも鳴らされている人を知っている。

4400シリーズは続いて出た4411では3ウェイになっているし、
1983年には2404Hという、小型のバイラジアルホーンをもつトゥイーターも出している。
2404Hの再生周波数帯域は3000〜21500Hzとなっている。

それでもJBLは1989年にS9500で、2ウェイにまた挑戦している。
M2は、そういうJBLの最新の・最先端の2ウェイ・システムであり、
JBL PROFESSIONALのスタジオモニターとして今後3ウェイ、4ウェイが登場することはない、といえよう。