なぜ4343なのか(五味康祐氏と4343・その1)
JBLの4343に夢中になった10代を過ごした。
4343への興味が若干薄れた20代があった。
40をこえたころから、4343への興味が強くなってきた。
そしていまも薄れることなく続いている。
10代のころ、ひとつどうしても知りたいことがあった。
五味先生は、4343をどう評価されていたのか、だった。
五味先生のJBL嫌いについては、あえて書くまでもないことだ。
そんな五味先生でも、瀬川先生が鳴らされているJBLの3ウェイの音は評価されていた。
(ステレオサウンド 16号掲載のオーディオ巡礼参照)
ステレオサウンド 47号からオーディオ巡礼が再開。
奈良の南口重治氏が登場されている。
南口氏のスピーカーはタンノイ・オートグラフとJBL・4350Aだった。
47号に書かれている。
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JBLでこれまで、私が感心して聴いたのは唯一度ロスアンジェルスの米人宅で、4343をマークレビンソンLNPと、SAEで駆動させたものだった。でもロスと日本では空気の湿度がちがう。西洋館と瓦葺きでは壁面の硬度がちがう。天井の高さが違う。
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南口氏の4350の音も最初は「唾棄すべき」音と書かれていたが、
最後では違っていた。絶賛に近い評価の高さだった。
4343も4350も、新しいJBLの音だった。
瀬川先生も高く評価されていた、このふたつのスピーカーを、
鳴らす人次第とはいえ、五味先生も認められているのが、嬉しく感じたものだった。
JBLからでも、五味先生を唸らせる音が出せる──、
そう信じられたからだ。
それだけに、もっと4343について書かれた文章が読みたかった。
けれどずっと見つけられずにいた。
30代の終りごろに、やっと見つけた。
新潮社から出ていた「人間の死にざま」にあった。