使いこなしのこと(音の尺度)
使いこなしの過程では、こんなことでこんなにも音が変化するのか、と驚くことが意外に多い。
そんなとき、驚くほど音が変った、とつい言いたくなるし、言ってしまうこともある。
そうすると、こんなことを言う人がいる。
「音は変るけれど、スピーカーを交換したほど音が変化するわけじゃない。
それだけのことで驚くほど音が変った、という人は、スピーカーが変ったら腰を抜かすんじゃないのか」
皮肉たっぷりにそういう人がいる。
この発言が、オーディオに関心のない人のものだったら、受け流せばいい。
けれど、キャリアが長くて、使いこなしもやっているという人がこういうことを言っているのを聞くと、
この人の音の聴く時の尺度は常に一定なのか、といいたくなってしまう。
オーディオマニアで、ある程度オーディオに熱心に取り組んできた人ならば、
試聴の際、音を聴く尺度は意識するしないに関わらず変化していることを感じている。
スピーカーを比較試聴する時の尺度が、一目盛り10cmだとすると、
アンプを比較試聴の時には一目盛り1cmぐらいになるものだし、
細かな調整のときにはもっと小さくなり、一目盛り1mmくらいになるものだ。
スピーカーの比較試聴もアンプの比較試聴も、
細かな調整の時も、常に同じ尺度で聴いていると言い張る人の「耳」を私は信用しない。
尺度は状況に応じて変っている。
それが人間の感覚というものだ。
だからこそ、驚くほど音が変った、と口走りたくなる体験をするわけだ。
またこういう体験をすることで、感覚の尺度を状況にあわせて変化させていけるようになる。