Archive for category JBL

Date: 1月 8th, 2014
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(続ホーンについて)

JBLのプロフェッショナル用スピーカーのカタログには、
コンシューマー用スピーカーのカタログには記載されていない注意書きがある。

Where the length of throw does not exceed 30 feet.
30フィートを越える距離には放射できない、とある。

30フィートは9.144m。

この注意書きがあるのは、Acoustic Lenses Family に関してである。
つまり音響レンズ付のホーンに関しての注意書きである。

2305(コンシューマー用の1217-1290のプロ用、LE175DLHのホーン/レンズ)、
2391(HL91ホーンのプロ用)が、それにあたる。

9.144mといえば、家庭内で聴くとき、
これ以上スピーカーとの距離が長くなることは、よほどの広さの部屋でしかありえない。

つまりコンシューマー用ホーンに音響レンズしかラインナップしていなかった理由のひとつが、
ここにあると考えていいだろう。

プロフェッショナル用に、音響レンズ付ホーンと、
なしのラジアルホーンやディフラクションホーンが用意されているのは、
プロフェッショナルの現場として、録音スタジオとコンサートホール・映画館という、
スペースが大きく異る空間があるためだろう。

Date: 12月 18th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(先入観・その3)

先入観は思い込みでもある。

思い込みであれば、先入観は決していいイメージではない。
はっりきと悪いイメージといっていい。

先入観は思い込みだけだろうか。
思い入れも、ある種の先入観といえなくはないだろうか。

思い込みの「込み」と思い入れの「入れ」は、
「入」という字が共通してある。
先入観にも「入」が共通してある。

またくり返すことになるけれど、
五味先生の文章からオーディオをスタートした。
それを核として、瀬川先生、岩崎先生、菅野先生、岡先生、黒田先生といった人たちの文章を読み、
肉付けしていった、ともいえる。

そんな私にとってはタンノイのオートグラフは特別な存在のスピーカーであり、
JBLの4343も、やはりまた特別なスピーカーシステムである。
他にもいくつかの特別な存在のスピーカーがある。

これらのスピーカーを鳴らす機会があったとする。
うまく鳴らなかった、としても、そこには思い入れという先入観が私にはあるから、
そこで目の前にあるスピーカーのせいだとは、決して思わない。

うまく鳴らない理由は、自分の側にある、と判断することになる。
特別な思い入れがあるから、たとえひどい音からスタートしたとしても、
いつかは必ず、と思い、鳴らし込んでいくことだろう。

Date: 12月 18th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(先入観・その2)

ステレオサウンド 4号から10年後に出た別冊HIGH-TECHNIC SERIES-1でも、
井上先生はJBLの130AとLE175の組合せについて書かれている。
ここでのホーンはパーフォレイテッドプレート型ではなく、
スラントプレート型の音響レンズつきのHL91である。

130Aをおさめるエンクロージュアは、
ステレオサウンド 4号ではC40(つまりハークネス)で、
HIGH-TECHNIC SERIES-1では4530。
どちらもバックローディングホーン型式である。

そういう違いはあるものの、基本的には同じユニット、エンクロージュアの組合せで、
スピーカーシステムを構成されている。

HIGH-TECHNIC SERIES-1でも、こう書かれている。
     *
システムトータルの音は、いわゆる、現在でいうJBLサウンドではないが、比較的に小音量で鳴らすときにはハイファイというよりは、ディスクならではの蓄音器的なノスタルジックな響きである。
     *
いま私は、これと基本的に同じといえるシステムで聴いている。
D130とLE175DLH、エンクロージュアはC40である。

たしかに比較的に小音量で鳴らしたときの、このシステムの音は穏やかであるし、
「蓄音器的なノスタルジックな響き」を、帯域を拡げた音とも感じられる。

Date: 12月 18th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(先入観・その1)

ステレオサウンド 4号の井上先生の文章では、「先入感」とあったので、
そのまま先入感としたわけだが、いうまでもなく先入観が正しい。

辞書には、前もってつくられた固定的な観念。それが自由な思考を妨げるときにいう、とある。
観念は、物事について抱く考えや意識、である。

「らしからぬ音」と口走ってしまうのは、先入観があるから、といえるし、
その先入観をつくってきたのは、オーディオ雑誌ではないか、という声もある。

そうだともいえるし、そうではない、ともいえる。
私は、そう思っている。

井上先生の、JBLのユニットについて書かれた文章は、
ステレオサウンド 4号に載っている。
ステレオサウンドが創刊されて、四冊目の号である。

ここで井上先生が書かれている「先入感」とは、何によってどうやってつくられたものなのか。
そのことを考えてみる必要はある。

先入観をつくってきた責任は、オーディオ雑誌だ、と言い切ってしまえば、
読み手としては、ある意味、楽である。
けれど、オーディオ雑誌が先入観をつくってきた、と考えることそのものが、
実は先入観であることもある。

Date: 12月 17th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ある文章)

「JBLらしからぬ音」
「JBLってこういう音がするんですか」。

どんなスピーカーであっても、そのブランドイメージがあって、
そのブランドイメージによって音が語られ、音が判断されてしまうことがある。

その人なりのブランドイメージがあって、
そのイメージとそぐわない音が鳴ってきたときに、
らしからぬ音、という表現を口にするのかもしれない。

JBLらしからぬ音、タンノイらしからぬ音、アルテックらしからぬ音……、
世の中にはブランドの数だけ、この「らしからぬ音」が存在しているといえるのだが、
その中でも、JBlほど、「らしかぬ音」が使われるブランドは、他にない。

JBLが古くから知られるブランドであるから、ということは理由にはならない。
アルテックにしてもタンノイにしても、古くから同じくらいに有名なブランドである。
にもかかわらずJBLだけが突出して「らしからぬ音」が語られるのは、なぜなのか。

ある文章を引用しよう。
     *
少々のクセはあるかも知れぬが高能率のスピーカーに悪いものは少ない。どうも昨今JBLブームの感もあるが、その意見について、どうも相当な誤解のある事は事実で、JBLと云えば派手なアメリカ的な音を想像されるだろうが巷で鳴らされているJBLは、まさしくその様子である。
 然しメーカーの指示に従い正しく使用すれば使い込む必要もなく最初から、使用者の意を受ける如く、おだやかな音を出してくれるのには驚かされる。臨場感というのか将に楽器が、そこにあり、音楽を聞くものに迫ってくる感じは、装置の存在をさえ忘れる想いがする。よくクラシック向きとジャズ向きときに装置のプログラムソースに対する順応性が云われるが、この組合せ程度以上になると、どうも余り、何とか向き、を感ずる事は少なくなる。常々思う事にどうもステレオファンには固有の感覚上と定義的な先入感で楽器の音を評価する方が多い。例えば全金属性ピアノ?(響板も金属性)等どうも音の評価のみに捕われている場合によれば音楽は、苦痛の原因ともなる。先ず音を聞いて、それから音楽を聞くのならまだ幸せだろう。音を聞いて感激した事は数多いが、音楽をレコードを通して聞いて感激する事の極めて稀になってしまった私にとってJBLのスピーカーは又夢を与えてくれた様子である。
     *
井上先生の文章だ。
ステレオサウンド 4号の特集記事(組合せ)で、
JBLの130Aと175DLHを中心とした組合せについて書かれたものである。

ステレオサウンド 4号は1967年に出ている。

Date: 12月 16th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(ホーンについて)

JBLのスピーカーユニットにおけるコンシューマー用とプロフェッショナル用の違いがあるように、
コンプレッションドライバーと組み合わせるホーンに関しても、
JBLには、ある違いがあった。

JBLのコンシューマー用のホーンには、すべて音響レンズがつく。
スラントプレートの音響レンズ(4343などのスタジオモニターに採用されたタイプ)、
パーフォレイテッドプレートの音響レンズ(LE175DLHとHL88の、いわゆるハチの巣)、
このどちらかがつくことになる。

例外といえるのはH5038Pである。
このホーンには音響レンズはないけれど、
このホーンを採用しているJBLのスピーカーシステムはD44000 Paragonであり、
Paragonはホーンの開口部を聴き手に直接向けているわけでなく、
中央の、大きく湾曲している反射板に向けているわけで、
音響レンズをつけなかった理由もここにあり、
なんらかの拡散を行っている。

ちなみにH5038Pのプロフェッショナル版は2343である。

プロフェッショナル用のホーンにも、スラントプレート、パーフォレイテッドプレート、
どちらの音響レンズつきのホーンはある。
スラントプレート型は2391、2392、2390、2395であり、パーフォレイテッドプレートは2305である。

プロフェッショナル用では、これらの他に、ディフラクション型の2397、
ラジアルホーン2340、2345、2355、2350がある。
1980年代にはいり、バイラジアルホーンがいくつも登場してくる。

当然これらのホーンの開口部には音響レンズはない。
プロフェッショナル用では、音響レンズつきとなしがラインナップされている。

Date: 12月 15th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと(375と2440の違い)

JBLのスピーカーユニットは、コンシューマー用とプロフェッショナル用で、
振動板に違いはない。

375と2440をくらべてみれば、磁気回路も同じである。
振動板も同じであれば、いったい何が違うのか。
375と2440(これに限ることはないけれど)を比較試聴してみれば、
コンシューマー用ユニットとプロフェッショナル用ユニットには、あきらかな音の違いがある。

375と2440を並べてみると、まずすぐにわかる違いとしては端子の違いがある。
どちらもプッシュ式の端子だが、2440についている端子の方がひとまわり大きい。

とはいえこの部分だけの違いで、375と2440の違いが生れるとは考えられない。

他に何が違うのか。
375と2440の例でいえばバックカバーの形状に、わずかな違いがある。

375のバックカバーは基本的に円である。
入力端子の取り付け位置だけ内側に凹んでいるだけで、
375の裏側となる水平面はフラットである。

2440はこの部分にわずかな傾斜がつけられている。
中心部はフラットなのだが、外周部に近くなるところで傾斜している。

375と2440のバックカバーの形状の違いはさわってみれば、すぐにわかる。

この違いが、なぜ音に影響するのか。
多少強度の違いは発生するだろうが、
これもそれほどはっきりとした音の違いになるとは考えにくい。

実はバックカバーの、このわずかな形状の違いにより、
同じ仕様の磁気回路なのだが、2440のほうが磁束密度が高くなる、という話をずっと以前にきいている。

そのころJBLの取扱いはサンスイだった。
サンスイの人たちもコンシューマー用とプロフェッショナル用のユニットの音の違いが、
なぜ生じるのか、そのことをはっきりとさせるために実験した結果、
バックカバーの形状の違いで磁束密度が変化することが判明した、とのことだ。

Date: 12月 15th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと

いまもJBLにはプロフェッショナル用の製品がラインナップされているけれど、
輸入元はコンシューマー用とは別になっている。
以前(1980年代ごろまで)は、どちらも同じ輸入元だった。
サンスイが取り扱っていたときも、ハーマンインターナショナルに移ってからも、
コンシューマー用、プロフェッショナル用、どちらも取り扱っていた。

スピーカーシステムにもスピーカーユニットにも、
コンシューマー用とプロフェッショナル用の両方が用意されているモノがあった。

スピーカーシステムではコンシューマー用がL300、L200プロフェッショナル用が4333、4331などがあった。
スピーカーユニットも、例えばドライバーでは375のプロフェッショナル用は2440、
LE85のプロフェッショナル用は2420、LE175は2410という具合に、
トゥイーター、ウーファー、フルレンジに、コンシューマー用とプロフェッショナル用があった。

このころJBLのスピーカーユニットに夢中になっていた人にはこれから書くことはわかりきったことではあるけれど、
そうでなかった人にとっては、
コンシューマー用とプロフェッショナル用のユニットの重量の違いが気になる、らしい。

たとえば375のカタログ発表値は11.8kg、そのプロ用の2440は11.3kg。
500g、プロ用のほうが軽い。
これは375と2440だけではなく、ほかのユニットに関しても同じで、
コンシューマー用のユニットの方が重く表示されている。

なぜ、わずかとはいえ重量の差が出ているかといえば、
コンシューマー用ユニットの重量は梱包材を含めての重量であり、
プロフェッショナル用の重量はユニットそのものの重量であるからだ。

なぜJBLが、コンシューマー用ユニットでは梱包時の重量を表示するのか、
その理由はわからない。

2441を眺めていて、そうだ、と思い出したので。

Date: 11月 18th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その19)

私が瀬川先生がJBLのD44000 Paragonを手に入れられたはず、と思える理由のひとつに、
岩崎先生の不在がある。

何度かこれまでも書いているように、
瀬川先生にとってのライバルは岩崎千明であったし、
岩崎先生にとってのライバルは瀬川冬樹であった。

だからパラゴンは、岩崎先生のメインスピーカーのひとつであった。
ステレオサウンド 38号に掲載されている岩崎先生のリスニングルームには、
パラゴンがいい感じでおさまっていた。

あの写真をみてしまったら、
同じオーディオ評論家としてパラゴンには手を出しにくい。

欲しければ、それが買えるのであれば何も遠慮することなく買ってしまえばいいことじゃないか──、
こんなふうに思える人はシアワセかもしれない。

岩崎先生にも瀬川先生にもオーディオ評論家としての、自負する気持があったと思う。
その気持が、パラゴンが欲しいから、私も……、ということは許せなくする。

もし岩崎先生が健在であったなら、
ステレオサウンド 59号の瀬川先生のパラゴンの文章は違った書き方になっていたはず。
その意味で、59号の文章は、瀬川先生のパラゴンへの気持・想いが発露したものだと思えてならない。

Date: 11月 17th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その18)

ステレオサウンド 59号の瀬川先生のパラゴンについての文章を読み返すたびに、
あれこれおもってしまう。

だから何度も引用しておこう。
     *
 ステレオレコードの市販された1958年以来だから、もう23年も前の製品で、たいていなら多少古めかしくなるはずだが、パラゴンに限っては、外観も音も、決して古くない。さすがはJBLの力作で、少しオーディオ道楽した人が、一度は我家に入れてみたいと考える。目の前に置いて眺めているだけで、惚れ惚れと、しかも豊かな気分になれるという、そのことだけでも素晴らしい。まして、鳴らし込んだ音の良さ、欲しいなあ。
     *
この200字くらいの文章から読みとれることはいくつもある。
それは私の、瀬川先生への想い入れが深すぎるからでは決してない、と思う。

この文章を最初によんだ18の時には気づかなかったことが、いまはいくつも感じられる。

「外観も音も、決して古くない」
ここもそうだし、
「しかも豊かな気分になれる」
ここもだ。

瀬川先生とパラゴンについて、こまかいことう含めて、長々と書いていくことはできるけれど、
この文章だけで、もう充分のはずだ。

私は断言する。
瀬川先生はバラゴンを手に入れられたはずだ、と。

Date: 11月 9th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その26)

何もスピーカーはフルレンジがベストである、と強調したいわけではない。
現実としては、優秀なマルチウェイのスピーカーシステムを私もとる。
フルレンジユニットだけでは鳴らせない領域の音を優れたマルチウェイのスピーカーシステムは提示してくれる。

そして優れたフルレンジは、優れたマルチウェイのスピーカーシステムが、
いまのところどうやってもうまく鳴らせない、フルレンジならではの領域をもっている。

井上先生は、2ウェイのスピーカーシステムは二次方程式、3ウェイは三次方程式、4ウェイは四次方程式、
こんなふうにユニットの数(帯域分割)がふえてくると、解くのが難しくなってくる、
といわれた。

そのとおりだと思うし、むしろユニットの数が増えることは、
つまりはフィルターの数がふえることでもある。

2ウェイであれば、ウーファーとトゥイーターにそれぞれひとつずつで二つ。
3ウェイになるとウーファーとトゥイーターはひとつずつに、
スコーカーはハイカットとローカットのふたつのフィルター(バンドパスフィルター)が必要になり、
フィルターの数は四つになる。2ウェイの二倍になる。

4ウェイになるとウーファーとトゥイーターはひとつずつ、
ミッドバスとミッドハイはふたつずつで、合計すると六つのフィルターが必要となる。

フィルターの数だけで考えれば、
2ウェイは二次方程式、3ウェイは四次方程式、4ウェイにいたっては六次方程式といえる。
しかもフィルターで難しくなるのは、
ひとつのユニットにハイカットとローカットを使うことであり、
しかもその帯域幅が狭いほど難しさは増してくる、といえる。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その25)

アルテックの405Aを、SUMOのThe Goldの前に使っていたアキュフェーズのP300Lでも鳴らしている。
そんなに聴いていたわけではない。
とりあえず、どんな感じになってくれるかな、という軽い気持で聴いていたし、
1日だけだった、と記憶している。

そのときの405Aの印象はそれほど残っていない。
10cmのフルレンジで、さほど高級なユニットでもないし、これくらいの音だな、というあなどりがあった。

そのあなどりがThe Goldで鳴らしていた時にもあった。
405Aを鳴らしていた1週間、そのあなどりがあった。

あなどりがあったからこそ、スピーカーをセレッションにSL600に変えたとき、
その変化はP300Lとの経験をもとに、このぐらいになるであろう、と想像していたし、
405Aを聴いていて感じていた良さは、SL600でも同じくらいに出るであろうし、
もしかするともっとよく出るかもしれない、と思っていた。

それが見事にくつがえされた。

405Aをあなどっていたことが、音として出たわけだ。

P300LとThe Goldという、ふたつのパワーアンプの違いは、
SL600の方がよりはっきりと出してくれる、という思い込みがあった。
けれど結果は、405Aの方がよりはっきりと出してくれた、ともいえる。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その24)

トータルでの音の良さということではセレッションのSL600に素直に軍配をあげるし、
その方が所有している者としてはうれしいわけだが、
それでもなおアルテックの10cm口径のフルレンジが聴かせてくれた良さにおいては、
SL600がかなわないこと。
それもセッティングをどうつめていこうとも適わない(敵わない)ということは、癪であった。

アルテックの405Aに関しては、SUMOのThe Goldの様子見のために鳴らしていたのだから、
セッティングもいいかげんだった。床に直置きだった。
スピーカーケーブルもそのへんに適当なものを接続しただけだった。

にもかかわらずSL600をきちんとセッティングして注意を充分にはらって鳴らしているにも関わらず、
405Aが易々と出してくれる良さが、どうしても出てこない。

それがスピーカーの面白さであることはわかっていても、
だからこそさまざまなスピーカーが存在している理由のひとつでもあるわけだが、
少なくとも価格が拮抗しているのであれば納得できても、
価格も製品としてのつくりもまったく違う、ふたつのスピーカーを鳴らして、
こういう結果になるのは腹立たしい部分もないわけではない。

しかもその部分は、どんなに強力なパワーアンプをもってきたところで、うまく鳴らない。
結局のところ、フルレンジユニットが鳴らす音の良さが身にしみた。

フルレンジユニットをそのまま鳴らす。
ユニットとパワーアンプの間にはネットワークを構成する部品(コンデンサーやコイル)を介在させない。
介在するのはスピーカーケーブルと端子ぐらいにしたときの、
フルレンジの良さは、マルチウェイのスピーカーシステムを聴くことがあたりまえになりすぎている世代にとって、
どういう位置づけになるのだろうか。

Date: 10月 7th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その17)

「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」の
瀬川先生の「いま、いい音のアンプがほしい」の書き出しを読んだ時、
仕事場として、都内の高層マンションの10階の部屋を借りられたのだと思った。

病気で入院され、退院されて復帰されたばかりだったから、
少しでも交通の便がよく、出版社やメーカーに近い都心の方が身体への負担も少ないだろうから……、
そんなふうに考えてしまった。

これ以外に、本漆喰の、あのリスニングルームの他に、もう一部屋、
そこに住まわれる理由が私には思いつかなかった。

ほぼ理想に近いとも思われるリスニングルーム、
ずっと借家住まいをされてきて、やっと建てられたリスニングルームだけに、
そこから瀬川先生が離れられるわけがない──、
そう思い込もうとしていた。

なぜ高層マンションに移られたのか、
その理由を知るのは、ステレオサウンド 62号、63号に掲載された追悼記事による。

独りになられたんだぁ……、とそう思った時、
ステレオサウンド 59号のパラゴンの文章を読み返していれば、といまは思うのだが、
当時は、なぜか59号の文章のことは頭になかった。

それだけ瀬川先生がいなくなられたことのショックが大きかったからでもあるし、
59号の、短いパラゴンについての文章よりも、
「いま、いい音のアンプがほしい」を読み返すことに気がとられてもいたからだろう。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その7)

すでに書いているようにステレオサウンド 60号の318ページには図面も載っている。
4520エンクロージュアのホーン開口部にHL88ホーンを取り付けた側面図である。

この図を見た人ならば、そこにパラゴンの図面が重なってくるであろう。

JBLのバックロードホーン型システムとして、C40 Harknesがよく知られているが、
このC40 Harknesより前にC34 Harknesと呼ばれる、やはりバックロードホーン型システムがある。

C40は横置きのエンクロージュアで、C34は縦置きでコーナー型という違いがある。
そのことを知っている人ならば、318ページの側面図を頭の中で90度傾けてしまうのだはないだろうか。

4520エンクロージュアのホーン開口部にHL88ホーンを取り付け、横置きにする。
ウーファー用のホーンに構造の違いはあるものの、パラゴンの思い起すには充分である。

C55は1957年に登場しているが、C55はC550の型番を変更しただけであり、
C550は1955年の登場である。
パラゴンは1957年。

登場した年代はパラゴンのほうが後ではあるが、
パラゴンは構想から製品化まで10年近い年月がかかっている、ときいている。
とすれば、C55(4520)エンクロージュアのホーン開口部にHL88を取り付けるという発想は、
パラゴンのユニット配置が先にあったから生れてきたものかもしれない。