Archive for category JBL

Date: 12月 15th, 2013
Cate: JBL

JBLのユニットのこと

いまもJBLにはプロフェッショナル用の製品がラインナップされているけれど、
輸入元はコンシューマー用とは別になっている。
以前(1980年代ごろまで)は、どちらも同じ輸入元だった。
サンスイが取り扱っていたときも、ハーマンインターナショナルに移ってからも、
コンシューマー用、プロフェッショナル用、どちらも取り扱っていた。

スピーカーシステムにもスピーカーユニットにも、
コンシューマー用とプロフェッショナル用の両方が用意されているモノがあった。

スピーカーシステムではコンシューマー用がL300、L200プロフェッショナル用が4333、4331などがあった。
スピーカーユニットも、例えばドライバーでは375のプロフェッショナル用は2440、
LE85のプロフェッショナル用は2420、LE175は2410という具合に、
トゥイーター、ウーファー、フルレンジに、コンシューマー用とプロフェッショナル用があった。

このころJBLのスピーカーユニットに夢中になっていた人にはこれから書くことはわかりきったことではあるけれど、
そうでなかった人にとっては、
コンシューマー用とプロフェッショナル用のユニットの重量の違いが気になる、らしい。

たとえば375のカタログ発表値は11.8kg、そのプロ用の2440は11.3kg。
500g、プロ用のほうが軽い。
これは375と2440だけではなく、ほかのユニットに関しても同じで、
コンシューマー用のユニットの方が重く表示されている。

なぜ、わずかとはいえ重量の差が出ているかといえば、
コンシューマー用ユニットの重量は梱包材を含めての重量であり、
プロフェッショナル用の重量はユニットそのものの重量であるからだ。

なぜJBLが、コンシューマー用ユニットでは梱包時の重量を表示するのか、
その理由はわからない。

2441を眺めていて、そうだ、と思い出したので。

Date: 11月 18th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その19)

私が瀬川先生がJBLのD44000 Paragonを手に入れられたはず、と思える理由のひとつに、
岩崎先生の不在がある。

何度かこれまでも書いているように、
瀬川先生にとってのライバルは岩崎千明であったし、
岩崎先生にとってのライバルは瀬川冬樹であった。

だからパラゴンは、岩崎先生のメインスピーカーのひとつであった。
ステレオサウンド 38号に掲載されている岩崎先生のリスニングルームには、
パラゴンがいい感じでおさまっていた。

あの写真をみてしまったら、
同じオーディオ評論家としてパラゴンには手を出しにくい。

欲しければ、それが買えるのであれば何も遠慮することなく買ってしまえばいいことじゃないか──、
こんなふうに思える人はシアワセかもしれない。

岩崎先生にも瀬川先生にもオーディオ評論家としての、自負する気持があったと思う。
その気持が、パラゴンが欲しいから、私も……、ということは許せなくする。

もし岩崎先生が健在であったなら、
ステレオサウンド 59号の瀬川先生のパラゴンの文章は違った書き方になっていたはず。
その意味で、59号の文章は、瀬川先生のパラゴンへの気持・想いが発露したものだと思えてならない。

Date: 11月 17th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その18)

ステレオサウンド 59号の瀬川先生のパラゴンについての文章を読み返すたびに、
あれこれおもってしまう。

だから何度も引用しておこう。
     *
 ステレオレコードの市販された1958年以来だから、もう23年も前の製品で、たいていなら多少古めかしくなるはずだが、パラゴンに限っては、外観も音も、決して古くない。さすがはJBLの力作で、少しオーディオ道楽した人が、一度は我家に入れてみたいと考える。目の前に置いて眺めているだけで、惚れ惚れと、しかも豊かな気分になれるという、そのことだけでも素晴らしい。まして、鳴らし込んだ音の良さ、欲しいなあ。
     *
この200字くらいの文章から読みとれることはいくつもある。
それは私の、瀬川先生への想い入れが深すぎるからでは決してない、と思う。

この文章を最初によんだ18の時には気づかなかったことが、いまはいくつも感じられる。

「外観も音も、決して古くない」
ここもそうだし、
「しかも豊かな気分になれる」
ここもだ。

瀬川先生とパラゴンについて、こまかいことう含めて、長々と書いていくことはできるけれど、
この文章だけで、もう充分のはずだ。

私は断言する。
瀬川先生はバラゴンを手に入れられたはずだ、と。

Date: 11月 9th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その26)

何もスピーカーはフルレンジがベストである、と強調したいわけではない。
現実としては、優秀なマルチウェイのスピーカーシステムを私もとる。
フルレンジユニットだけでは鳴らせない領域の音を優れたマルチウェイのスピーカーシステムは提示してくれる。

そして優れたフルレンジは、優れたマルチウェイのスピーカーシステムが、
いまのところどうやってもうまく鳴らせない、フルレンジならではの領域をもっている。

井上先生は、2ウェイのスピーカーシステムは二次方程式、3ウェイは三次方程式、4ウェイは四次方程式、
こんなふうにユニットの数(帯域分割)がふえてくると、解くのが難しくなってくる、
といわれた。

そのとおりだと思うし、むしろユニットの数が増えることは、
つまりはフィルターの数がふえることでもある。

2ウェイであれば、ウーファーとトゥイーターにそれぞれひとつずつで二つ。
3ウェイになるとウーファーとトゥイーターはひとつずつに、
スコーカーはハイカットとローカットのふたつのフィルター(バンドパスフィルター)が必要になり、
フィルターの数は四つになる。2ウェイの二倍になる。

4ウェイになるとウーファーとトゥイーターはひとつずつ、
ミッドバスとミッドハイはふたつずつで、合計すると六つのフィルターが必要となる。

フィルターの数だけで考えれば、
2ウェイは二次方程式、3ウェイは四次方程式、4ウェイにいたっては六次方程式といえる。
しかもフィルターで難しくなるのは、
ひとつのユニットにハイカットとローカットを使うことであり、
しかもその帯域幅が狭いほど難しさは増してくる、といえる。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その25)

アルテックの405Aを、SUMOのThe Goldの前に使っていたアキュフェーズのP300Lでも鳴らしている。
そんなに聴いていたわけではない。
とりあえず、どんな感じになってくれるかな、という軽い気持で聴いていたし、
1日だけだった、と記憶している。

そのときの405Aの印象はそれほど残っていない。
10cmのフルレンジで、さほど高級なユニットでもないし、これくらいの音だな、というあなどりがあった。

そのあなどりがThe Goldで鳴らしていた時にもあった。
405Aを鳴らしていた1週間、そのあなどりがあった。

あなどりがあったからこそ、スピーカーをセレッションにSL600に変えたとき、
その変化はP300Lとの経験をもとに、このぐらいになるであろう、と想像していたし、
405Aを聴いていて感じていた良さは、SL600でも同じくらいに出るであろうし、
もしかするともっとよく出るかもしれない、と思っていた。

それが見事にくつがえされた。

405Aをあなどっていたことが、音として出たわけだ。

P300LとThe Goldという、ふたつのパワーアンプの違いは、
SL600の方がよりはっきりと出してくれる、という思い込みがあった。
けれど結果は、405Aの方がよりはっきりと出してくれた、ともいえる。

Date: 11月 8th, 2013
Cate: 4343, JBL

4343とB310(その24)

トータルでの音の良さということではセレッションのSL600に素直に軍配をあげるし、
その方が所有している者としてはうれしいわけだが、
それでもなおアルテックの10cm口径のフルレンジが聴かせてくれた良さにおいては、
SL600がかなわないこと。
それもセッティングをどうつめていこうとも適わない(敵わない)ということは、癪であった。

アルテックの405Aに関しては、SUMOのThe Goldの様子見のために鳴らしていたのだから、
セッティングもいいかげんだった。床に直置きだった。
スピーカーケーブルもそのへんに適当なものを接続しただけだった。

にもかかわらずSL600をきちんとセッティングして注意を充分にはらって鳴らしているにも関わらず、
405Aが易々と出してくれる良さが、どうしても出てこない。

それがスピーカーの面白さであることはわかっていても、
だからこそさまざまなスピーカーが存在している理由のひとつでもあるわけだが、
少なくとも価格が拮抗しているのであれば納得できても、
価格も製品としてのつくりもまったく違う、ふたつのスピーカーを鳴らして、
こういう結果になるのは腹立たしい部分もないわけではない。

しかもその部分は、どんなに強力なパワーアンプをもってきたところで、うまく鳴らない。
結局のところ、フルレンジユニットが鳴らす音の良さが身にしみた。

フルレンジユニットをそのまま鳴らす。
ユニットとパワーアンプの間にはネットワークを構成する部品(コンデンサーやコイル)を介在させない。
介在するのはスピーカーケーブルと端子ぐらいにしたときの、
フルレンジの良さは、マルチウェイのスピーカーシステムを聴くことがあたりまえになりすぎている世代にとって、
どういう位置づけになるのだろうか。

Date: 10月 7th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その17)

「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」の
瀬川先生の「いま、いい音のアンプがほしい」の書き出しを読んだ時、
仕事場として、都内の高層マンションの10階の部屋を借りられたのだと思った。

病気で入院され、退院されて復帰されたばかりだったから、
少しでも交通の便がよく、出版社やメーカーに近い都心の方が身体への負担も少ないだろうから……、
そんなふうに考えてしまった。

これ以外に、本漆喰の、あのリスニングルームの他に、もう一部屋、
そこに住まわれる理由が私には思いつかなかった。

ほぼ理想に近いとも思われるリスニングルーム、
ずっと借家住まいをされてきて、やっと建てられたリスニングルームだけに、
そこから瀬川先生が離れられるわけがない──、
そう思い込もうとしていた。

なぜ高層マンションに移られたのか、
その理由を知るのは、ステレオサウンド 62号、63号に掲載された追悼記事による。

独りになられたんだぁ……、とそう思った時、
ステレオサウンド 59号のパラゴンの文章を読み返していれば、といまは思うのだが、
当時は、なぜか59号の文章のことは頭になかった。

それだけ瀬川先生がいなくなられたことのショックが大きかったからでもあるし、
59号の、短いパラゴンについての文章よりも、
「いま、いい音のアンプがほしい」を読み返すことに気がとられてもいたからだろう。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その7)

すでに書いているようにステレオサウンド 60号の318ページには図面も載っている。
4520エンクロージュアのホーン開口部にHL88ホーンを取り付けた側面図である。

この図を見た人ならば、そこにパラゴンの図面が重なってくるであろう。

JBLのバックロードホーン型システムとして、C40 Harknesがよく知られているが、
このC40 Harknesより前にC34 Harknesと呼ばれる、やはりバックロードホーン型システムがある。

C40は横置きのエンクロージュアで、C34は縦置きでコーナー型という違いがある。
そのことを知っている人ならば、318ページの側面図を頭の中で90度傾けてしまうのだはないだろうか。

4520エンクロージュアのホーン開口部にHL88ホーンを取り付け、横置きにする。
ウーファー用のホーンに構造の違いはあるものの、パラゴンの思い起すには充分である。

C55は1957年に登場しているが、C55はC550の型番を変更しただけであり、
C550は1955年の登場である。
パラゴンは1957年。

登場した年代はパラゴンのほうが後ではあるが、
パラゴンは構想から製品化まで10年近い年月がかかっている、ときいている。
とすれば、C55(4520)エンクロージュアのホーン開口部にHL88を取り付けるという発想は、
パラゴンのユニット配置が先にあったから生れてきたものかもしれない。

Date: 10月 5th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その6)

ステレオサウンド 60号、318ページの写真と図面を見た人ならば、
このシステムがいったいどういう音を出したのか──、
この手のシステムにあまり関心をもてない人であっても、気になるのではないだろうか。

この記事(スピーカーユニット研究)の筆者、園田隆史氏は次のように書かれている。
     *
 さて、今度は低音ホーン内部にHL88を据えつけたシステムに移ろう。最初は、中高音がウーファーより下から聴こえてくるのではないかという心理的な不安と、今まで見たことのないような面構えになかなか慣れることができなかった。ところが実際に音を出してみると、音源はウーファーとホーンレンズの中間にできることがわかった。これは標準的なフロアーシステムとほぼ等しい高さで、聴きなじんでゆくうちに、ドライバーとウーファーのつながりの良さも相まって、とても自然な音場が得られることに気づいた。前システムと比べると、ややドライバー帯域のレベルが下がり、ハイエンドがまるめこまれた印象になる。気掛かりな低音ホーン内部での回折効果も少なく、センターのファンタムチャンネルが抜けてしまうということもない。また、低音によってドライバーの音が妙な変調を受けることもなかった。
 むしろ、エネルギーの重心が明らかに下がり、ホーンドライバーの存在を意識させないメリットのほうが大きい。HL88をエンクロージュアに載せたシステムとは、明らかにスペクトラムが変ったという印象で、今まで聴いてきた数々の組合せのなかでは、最も滑らかな中高域が聴ける。ハイエンドがそれほどのびているわけではないにもかかわらず、トゥイーターの必要性をまったく感じさせないのは、帯生きないのクォリティが揃っているからだろう。聴かされているという印象の強かったこのPAシリーズのなかで、そうした威圧感が最も少なかったシステムだ。かといって迫力やエネルギー感に不満がないのは、こうした大型システムの余裕だろう。
     *
この試聴で使われている4520エンクロージュアは、プロ用なだけに黒の塗装仕上げで、
見た感じは、いかにも業務用スピーカーという印象が強い。
もちろんサランネットなどついてこないから、
バックロードホーンの開口部にHL88を取り付けると、
見慣れるまではかなり奇異な感じがつきまとうことだろう。

人によっては見慣れるということがないかもしれない。

だが4520の元となったC55には、
4520と同じ黒の塗装仕上げの他に、サランネットのついたウォールナット仕上げも用意されていた。

サランネット付きであれば、HL88を隠すことができる。
4520(C55)はかなり大型のエンクロージュアではあるが、
ウォールナットでサランネットがついて、
ホーンを含めてユニットがいっさい見えないのであれば、ずいぶん部屋に置いた感じも変ってくる。

Date: 10月 2nd, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その16)

JBLのパラゴンを「欲しいなあ」と書かれたステレオサウンド 59号とほぼ同時期に、
特別増刊として「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」が出た。
この別冊の巻頭言は、瀬川先生の「いま、いい音のアンプがほしい」だった。

書き出しはこうだった。
     *
 二ヶ月ほど前から、都内のある高層マンションの10階に部屋を借りて住んでいる。すぐ下には公園があって、テニスコートやプールがある。いまはまだ水の季節ではないが、桜の花が満開の暖い日には、テニスコートは若い人たちでいっぱいになる。10階から見下したのでは、人の顔はマッチ棒の頭よりも小さくみえて、表情などはとてもわからないが、思い思いのテニスウェアに身を包んだ若い女性が集まったりしていると、つい、覗き趣味が頭をもたげて、ニコンの8×24の双眼鏡を持出して、美人かな? などと眺めてみたりする。
 公園の向うの河の水は澱んでいて、暖かさの急に増したこのところ、そばを歩くとぷうんと溝泥の匂いが鼻をつくが、10階まではさすがに上ってこない。河の向うはビル街になり、車の往来の音は四六時中にぎやかだ。
     *
おそらく誰しもが、あれっ? と思われたはず。
私も、あの世田谷の、本漆喰のリスニングルームはどうなったのか? とまず思った。
なぜ、都内の高層マンションを借りて住まわれているのか。

いまの歳だった、そういうことなのか、と察しがつく。
けれど、1981年の時点で18だった若造の私には、その理由がなんともわからなかった。
ただ、あのリスニングルームではないということだけがわかっていた。

このこととが、59号のパラゴンが「欲しいなあ」が、この時は結びつかなかった。
だが、いまは違う。
だから、59号のパラゴンについて書かれた文章を読み返すことで見えてくるものが出てきたのだ。

Date: 10月 1st, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その5)

言葉で説明されるよりも、一枚の写真、一枚の図のほうが、
それこそ「好奇心の輪」をひろげてくれる。

ステレオサウンド 60号を、1981年6月に手にした時、
特集のカラーページの写真も迫力があり、ページをめくる指がとまった。
同じようにページをめくる指がとまったのが、317ページ、318ページに載っている写真だった。

バックロードホーン・エンクロージュアのC55のプロフェッショナル版であり現代版である4520、
そのホーン開口部に蜂の巣ホーン(HL88)が取り付けてある。

最初はぱらぱらとめくっていただけで内容は読んでいなかったけれど、
すぐさまスピーカーユニット研究の最初のページに戻り、読み始めた。

C55(4520)は縦型のエンクロージュアだから、
ウーファーはエンクロージュア上部に、ホーン開口部は下部に位置する。

ホーン開口部にHL88を取り付けるということは、
ウーファーが上に来て、ホーン・ドライバーが下部、それもかなり床に近いところに位置することになる。

60号318ページの全形写真は、4520のホーン開口部だけでなく、
エンクロージュア上部にもHL88を乗せている。
横一列に並んでいるE145-8を上下のHL88でサンドイッチしている。

迫力があるともいえるし、奇異ともいえる。

Date: 10月 1st, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その15)

ステレオサウンド 59号の瀬川先生の文章の最後に出てくる「欲しいなあ」。
それは「欲しい」ではなく「欲しいなあ」であった。

本心では、この項に関しては、これ以上各のは蛇足だと思っている。
「欲しいなあ」に込められている瀬川先生のおもいを感じとれる人ならば、
ここまでで充分ではないのか……、そう思いながらも書いていくつもりでいる。

Date: 9月 30th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その4)

ステレオサウンドのスピーカーユニット研究の筆者は園田隆史という人だった。
それ以前のステレオサウンドにはまったく書かれていなかったはず。
いきなり登場した人が、熱っぽい企画をやっている、という印象で読んでいた。

園田隆史がどういうひとなのかは、ステレオサウンドで働くようになってわかった。
いまはまだ書かないでおこう。

スピーカーユニット研究は、面白い企画だと思いながらも、
記事が私にとって面白かったか、というと、正直、不満がないわけではなかった。

スピーカーユニット研究は、筆者の園田さんの嗜好が強烈に出ている。
そこが、この記事の魅力であり、
私にとって、もうひとつのめり込むことができなかった理由ともなっている。

それでも興味深い内容ではあった。
スピーカーユニット研究はJBL篇ではじまり、アルテック篇へと続いていった。
JBL篇の最終回は60号だった。

この60号の誌面に、非常にそそられる写真と図面が載っている。
現代版080システムの再現である。
どんなシステムかについては、記事を引用しておこう。
     *
たまたま、今回の取材で編集部をおとずれたときに、C55エンクロージュアの図面のコピーを見せられ、ホーン開口部にHL88ホーンレンズをマウントした状態の側面図に目が止った。HL88をC55のホーン開口部にそっくり納めたシステムが存在したことを聞かされたことはあったが、実際に図面を手にしてみると、むらむらと好奇心の輪がひろがりどうしても実現させてみないと気がすまなくなった。
     *
私もスピーカーユニット研究に出てきた、いくつもの組合せで、
もっとも興味津々だったのは、この080システムの再現だった。

Date: 9月 30th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その3)

JBLの最初の製品は、D101である。
スピーカーシステムではなく、スピーカーユニットからJBLの歴史は始まっている。

JBLの創立は1946年だから、いまの時代のスピーカーメーカーとは事情が違うところがあるとはいえ、
まずスピーカーユニットありき、であるJBLには、
“JBL Speaker System Component Chart”があった。
どのウーファー(L.F.Unit)とどのトゥイーター(H.F.Unit, H.F.Horn)、
それにネットワーク(X-over Network)、そしてエンクロージュアの組合せ一欄表である。

この一欄表に080というシステムがある。
ウーファーは150-4(ダブルで使用)、ドライバーは375で、組み合わせるホーンは537-500(蜂の巣)、
エンクロージュアはバックロードホーンのC55である。

この080と同等のシステムを1980年ごろに組もうとしたら、
エンクロージュアはプロ用の4520、
ウーファーはE145-8、ドライバーは376、ホーンはHL88ということになるだろう。

この時代はJBLのスピーカーユニットのラインナップは豊富だった。
コンシューマー用、プロ用が用意されていた。
エンクロージュアも、当時の輸入元のサンスイがJBLと協同で開発したECシリーズもあったし、
バックロードホーン・エンクロージュアの4520、4530、
フロントショートホーンの4550、4560もあった。

これらを組み合わせていくことを連載記事としたものが、
このころのステレオサウンドに、スピーカーユニット研究と題して載っていた。

Date: 9月 29th, 2013
Cate: D44000 Paragon, JBL, 瀬川冬樹

瀬川冬樹氏とスピーカーのこと(その14)

瀬川先生がパラゴンについて書かれた文章をもっと読みたい方は、
私が2010年11月7日に公開した電子書籍(ePUB)で、「パラゴン」で検索してみてほしい。

ステレオサウンド 56号のように長い文章もあれば、47号のように短い文章もある。
パラゴンのことが直接のテーマではなくても、パラゴンのことを文章内に登場させていることも少なくない。

パラゴンについて書かれた文章を読めば、
D44000 Paragonというスピーカーシステムが、瀬川冬樹のなかでどういう位置づけにあったのかが、
おぼろげながら形をもってくるはずだ。

瀬川先生は60号での発言にもあるように、
オーディオ評論家として積極的に活動をされる前は工業デザイナーだった。
そのデザイナーとしてのパラゴンへのまなざしも、これらの文章には含まれている。

瀬川先生がパラゴンについて書かれた文章をすべて読んだから、すべてがわかるわけでもない。
ひとつしか読まなくても、伝わってくるものは確実にある。

私がもういちどしっかりと読んでほしいと思っているのは、
ステレオサウンド 59号の文章である。
あえて、もういちど書き写しておく。
     *
 ステレオレコードの市販された1958年以来だから、もう23年も前の製品で、たいていなら多少古めかしくなるはずだが、パラゴンに限っては、外観も音も、決して古くない。さすがはJBLの力作で、少しオーディオ道楽した人が、一度は我家に入れてみたいと考える。目の前に置いて眺めているだけで、惚れ惚れと、しかも豊かな気分になれるという、そのことだけでも素晴らしい。まして、鳴らし込んだ音の良さ、欲しいなあ。
     *
最後のひとこと──、「欲しいなあ」、
ここにすべてが語られている、と感じている。