Archive for category 終のスピーカー

Date: 6月 4th, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その5)

JBLのふたつのスピーカーシステム、
Harknessと4343。
Harknessは1960年代の開発、4343は1970年代後半の開発。
Harknessはコンシューマー用として、4343はスタジオモニターとして開発されている。

Harknessと4343の違いはいくつもある。
けれど、ともにJBlを代表するかっこいいスピーカーシステムなのだが、
Harknessはサランネットをつけた状態で、4343はサランネットをはずした状態で、
それぞれかっこいいスピーカーシステムであるところが、
私にとっては両者のいちばん大きな違いである。

4343と後継機の4344はエンクロージュアのサイズは同一、
サランネットをつけた状態では型番が記されている銘板を見ないかぎり、
どちらが4343で4344なのかは区別がつかない。
背面をみれば、入力端子の取付け位置の違いで区別はつくものの、
正面からではサランネットを外さないと4343と4344は同じであるけれど、
サランネットを外してみれば、両者の違いは歴然としていて、
4344を一度もかっこいいと私は思ったことがない。

ミッドバスが2121から2122に変更になり、
振動板の形状もコンケーブからセンターキャップがドーム状の一般的なコーン型の形状となったとはいえ、
搭載されているユニットの外観は、ほとんど4343と4344は同じといえる。

けれどユニットの配置、バスレフポートの配置、レベルコントロールの配置、
フロントバッフルが二分割になっているどうかの違い、
これらによって4343と4344の印象はまるで違うものになっている。

それだけに4343は音を鳴らす時はサランネットを外して聴きたくなる。

Date: 6月 2nd, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その4)

Harknessの存在を知ったのは、
何度か書いているようにステレオサウンド 45号に載っていた田中一光氏のリスニングルームの写真でだった。

JBLの4343もかっこいいスピーカーだと思っていた。
4343はステレオサウンド 41号の表紙の写真で、このスピーカーの存在を知り憧れた。

Harknessも憧れた。
でも4343への憧れとHarknessへの憧れは、共通するところもあったし、異った憧れの部分もあった。

41号での表紙での4343は、あくまでも4343単体での写真であった。
45号でのHarknessの写真は、
田中一光という、日本を代表するグラフィックデザイナーのリスニングルームにおさめられた写真である。

オーディオ機器(スピーカー)を、ここまで見事に置けるのか、と、
Harknessへの憧れととともに、その部屋の持主とそのセンスへの憧れでもあり、
さらに、これを実現できるだけの経済力にも憧れていたんだとおもう。

Harknessをかっこいいと思っていたのは、
Harknessそのものもかっこいいけれど、それだけでなく、使われ方もかっこよかったからだ。

Date: 6月 1st, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その3)

身銭を切って買うもの──、それがオーディオ機器であり、
手に入れるまでの苦労も、その人にとっての「音は人なり」となっていく──。

そうだとは思うし、そう思っている人も多いはず。
特に私よりも上の世代、
つまり五味先生の書かれたものを読んできた人にとっては。

五味先生は「オーディオマニアの五条件」のひとつとして、
金のない口惜しさを痛感していること、とあげられていて、
こう書かれている。
     *
貧しさを知らぬ人に、貧乏の口惜しさを味わっていない人にどうして、オーディオ愛好家の苦心して出す美などわかるものか。美しい音色が創り出せようか?
     *
ステレオサウンドから出ている「オーディオ巡礼」にも、これは載っているし、
私にとっての最初のオーディオの本「五味オーディオ教室」も載っている。
13の時に、だから読んでいた。

この五味先生の、金のない口惜しさを痛感していること、を表面的にだけ捉えている人からすれば、
今回の、私が「Harkness」を手に入れることは、
そんなんでいい音なんか出せっこない、ときっと言うに違いない。

Date: 5月 31st, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その2)

JBLのハークネス(Harkness)といえば、
横型のバックロードホーンエンクロージュアC40の愛称(通称)であり、
ユニット構成にはD130を一本おさめた使い方から、
D130をベースに高域の拡張をはかるか、
D130のウーファー版130Aをベースとした2ウェイでいくかで、
正式な型番は変ってくる。

JBLのSpeaker System Component Chartによれば、
130Aと175DLH(もしくはLE175DLH)の組合せ(ネットワークはN1200)は001、
D130と075の組合せ(ネットワークはN2400)は030であり、
C40のエンクロージュアにおさめた状態では、
130A + LE175DLHではD40001となり、D130 + 075ではD40030となる。

JBLのSpeaker System Component Chartには、D130 + LE175DLHという組合せはない。
私のところにもうじきやって来るHarknessには、
おそらく、というか、ほぼ間違いなくD130が入っている。
高域用は075ではなくLE175DLHだと思われる。

そして、このHarknessは、JBLの輸入元であった山水電気が日本に最初に輸入した「Harkness」である。
岩崎千明の「Harkness」である。

Date: 5月 31st, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(その1)

人はいくつものスピーカーを鳴らすのか。

終のスピーカーがあれば、初のスピーカー(それとも始のスピーカーか)もある。
最初から、理想とするスピーカー、憧れのスピーカーを鳴らせる人もいることにいるだろう。
けれど、多くの人が、私もそうだったように、最初から理想や憧れのスピーカーという人はいない。

アンプやカートリッジを交換したり、使いこなしにあれこれ苦労しながら、
そのスピーカーを鳴らしていく。
ある時期がきたら、次のスピーカーに移ることもある。
長いつき合いのスピーカーもあれば短いつき合いのスピーカーもある。

スピーカーを手離す理由も、必ずしも次のステップとは限らない。
人にはいえぬ事情で手離すことだってある。

このスピーカーと添い遂げよう、とかたく決心していたとしても、
次の日に、スピーカーを買い替えることだってある。

終のスピーカーとは、だから言い切れないのがオーディオである。

にも関わらず、もうじき私のところにやって来るスピーカーは、終のスピーカーである。
いま住んでいるところから10kmも離れていないところに取りに行けば、
そのスピーカーは私のところにやって来る。

ほんとうはそのスピーカーが届いてから、これを書くつもりだった。
でも、はやる気持を、もう抑えられない。
だからこれを書いている。

「オーディオ彷徨」が復刊された日でもあるのだから。

Date: 5月 30th, 2013
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(序・続き)

ほぼ1年前に書いた「終のスピーカー(序)」。
この1年間は待ち遠しかった。
夢に出てきたこともある。
私にとっての「終のスピーカー」が、もうじきやってくる。
「終のスピーカー」ついて書ける日がやってくる。

Date: 6月 8th, 2012
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカー(序)

これまで、過去に使ってきた(鳴らしてきた)オーディオ機器についてはなんどかふれてきたことはあっても、
いま鳴らしているオーディオ機器については、ほとんどなにもふれてきていない。
これからもふれていくつもりはない。

ときどき、何を使っているのか、ときかれる。
そのとき答えているのは、実は、すこし前まで使っていたモノを言っているだけで、
その型番を言っている時点では、もうすでにそれは使っていない。

いまは使っている(鳴らしている)オーディオ機器についてふれていくのは、
このブログを書いていく上でも、助かることである。
こういうスピーカーシステムを選んだ、こういう理由で選んだ、それは自分にとってこういう出合いだった、とか。
そのスピーカーをどういうアンプで鳴らしてみたとか、
そのときの音の変化について細かいところまで書いていく、とか。
そんなことをこまごま書いていくのは、ある意味、ひじょうに楽なことである。
少なくとも、私は楽なことだと考えている(そうではない、という人もいるだろうけど)。

あえてふれないのは、そればかりが理由ではない。
ほんとうの理由は、違うところにある。
それは、いまはまだ書かない。

いま何を鳴らしているのか、については明かさない方針はこれからも変えない。
けれど、あるスピーカーのことについてだけは、そのスピーカーの型番を明かして、
どう鳴らしていくのか、どう鳴ってくれたのかについては、1年に1度は書いていく。
(それは、そのスピーカーに、書いていかなくては、と私に思わせる「もの」をもっているからだ)

そのスピーカーは1年ぐらいしたら、私のところにやって来てくれる。
このスピーカーは、私にとって終のスピーカーとなる、と思っている。
他のスピーカーシステムを手に入れたとしても、そのスピーカーは死ぬまで鳴らしていく。

古いスピーカーだから、私の寿命とどちらが長いか、けっこうイイ勝負ではないかと思う。
どちらが先にくたばるか、それはわからない。
くたばるまでは、どんなに時間がなくても、そのスピーカーでジャズを一曲だけは毎日聴いていくつもりだ。
そのスピーカーと共にジャズを鳴らしていく、くたばるまで。

終のスピーカーが、終のオーディオへとどう関係していくのか、
いまはまだ想像できない。
(この続きは1年後の予定)