終のスピーカー(その1)
人はいくつものスピーカーを鳴らすのか。
終のスピーカーがあれば、初のスピーカー(それとも始のスピーカーか)もある。
最初から、理想とするスピーカー、憧れのスピーカーを鳴らせる人もいることにいるだろう。
けれど、多くの人が、私もそうだったように、最初から理想や憧れのスピーカーという人はいない。
アンプやカートリッジを交換したり、使いこなしにあれこれ苦労しながら、
そのスピーカーを鳴らしていく。
ある時期がきたら、次のスピーカーに移ることもある。
長いつき合いのスピーカーもあれば短いつき合いのスピーカーもある。
スピーカーを手離す理由も、必ずしも次のステップとは限らない。
人にはいえぬ事情で手離すことだってある。
このスピーカーと添い遂げよう、とかたく決心していたとしても、
次の日に、スピーカーを買い替えることだってある。
終のスピーカーとは、だから言い切れないのがオーディオである。
にも関わらず、もうじき私のところにやって来るスピーカーは、終のスピーカーである。
いま住んでいるところから10kmも離れていないところに取りに行けば、
そのスピーカーは私のところにやって来る。
ほんとうはそのスピーカーが届いてから、これを書くつもりだった。
でも、はやる気持を、もう抑えられない。
だからこれを書いている。
「オーディオ彷徨」が復刊された日でもあるのだから。