Archive for category アナログディスク再生

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その5)

購入したターンテーブルシートは、アメリカのWATERLOOという会社のPLATTER PADだった。
ヤマハ(当時は日本楽器製造)が輸入販売していたものだった。

素材は、熱可塑ポリエーテル系ウレタンゴムと書いてあった。
厚みは6.5mm。当時使っていたアナログプレーヤーのゴムシートよりも若干厚い。
重量は470g。もった感じでは附属シートよりも重い程度だった。
価格は7500円だった。

色は茶色だったと記憶している。
硬めのシートだったはずだ。
附属シートと取り換える。
厚みが違うのでトーンアームの高さを調整し直して音を聴く。

30年以上前のことだから記憶もぼんやりとしているが、
少なくとも附属のシートよりもいい感じで鳴ってくれた。

それにターンテーブルシートがかわると、プレーヤーの雰囲気も変わる。
これに関しても附属のシートよりもいい感じになってくれたので、満足していた。

このときはジュエルトーンのGL602Jにしなくてよかった、と思っていた。
PLATTER PADは透明ではないから、ターンテーブルプラッターの、いわばボロを隠してくれる。
GL602Jはそうではないのだから。

でも30年くらい経ち、やっぱりGL602Jを買っておけばよかった、と思っている。
GL602Jは川崎先生が手がけられたモノであることを知ったからだ。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その4)

EMTの927Dstはガラス製のターンテーブルシートである。
まだ927Dstの音は聴いていなかったけれど、927Dstがどんなにすごいプレーヤーであるのかは知っていた。

普及クラスのアナログプレーヤーのシートをガラス製にしたからといって、
927Dstに近づけるわけではないことはわかっている。
こんなことは高校生にだってわかる。
それでも気分だけでも927Dstに近づけたい。

だからジュエルトーンのGL603Jにしようと思ったのだった。
けれどガラスということは透明な素材である。
つまりターンテーブルプラッターの上に、GL602Jを置くと、
ターンテーブルプラッターの上面が丸見えになる。
そのことに気づいた。

普及クラスのアナログプレーヤーのターンテーブルプラッターはアルミ製。
仕上げはお世辞にもいいとはいえなかった。
たとえばマイクロのRC5000のようなプレーヤーであれば、
ターンテーブルプラッターに直接レコードを置くことを前提としているため、
プラッターの上面の仕上げも丁寧になされている。

RC5000の上にGL602Jを置くのであれば、何も問題とするところはない。
だが現実に、そのころの私が使っていたのRX5000のような仕上げのプラッターではない。

レコードをのせてしまえば気にならないだろうが、
レコードをかけ替えるごとに、ターンテーブルプラッターのあまりよくない仕上げを見ることになる。
これは気持ちのいいことではないし、GL602Jを買わなかったいちばんの理由である。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その3)

トリオのセラミック製のTS10も重量は1.2kgで、ぎりぎりだったが、これは26000円していた。
価格的に候補から外した(というより外れていった)。

サエクかジュエルトーンか。
サエクのSS300は16500円、ジュエルトーンのGL602Jは10000円。
どちらもなんとか買える範囲の価格。

ただサエクのSS300はレコードのレーベルが接触するところにネジ穴が切ってあった。
なんのためのネジ穴かというと、レコードのレーベルに穴を開けて、
レコードをSS300にネジ止めするためのものだった。

SS300を買っても、このネジ穴を使わなければそれで済む話だろうか。
レコードに穴を開ける。それがレーベル面であろうと、そういうことを考えるメーカーのシートを買ってしまったら、
レコードそのものがひどく傷つくような気もしたし、
そんな発想をしてしまうメーカーの製品は買いたくない、というのが強かった。

GL602Jを買おう、と決めていた。
10000円で1kg。価格、重量ともに問題はない。

ゴムや革とは違い、この手の硬質な素材のシートではレコードが傷つきやすくなるのでは、と危惧する人はいた。
私も考えた。
けれど軟らかい素材のシートでも、シート上にホコリがあり、
レコードをその上でスリップさせてしまえば、レコードは傷ついてしまう。
シートが硬いか軟らかいではなく、シートをどれだけきれいにしているか、それとレコードの扱い方である。

このころすでにマイクロの糸ドライヴRX5000+RY5500は登場していた。
RX5000は砲金製のターンテーブルプラッターに、直にレコードを置く。
マイクロという、アナログプレーヤー専門メーカーから、こういう仕様のプレーヤーが出ていたことも、
私の考え方が間違ってないことを裏付けてくれた。

だがGL602Jは、結局買わなかった。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その2)

アナログプレーヤー関連のアクセサリーの価格は、ひとつひとつはそれほど高価でなくとも、
あれこれ買っているとそこそこの金額になってしまう。
ならば、アクセサリーに使う分を貯めておいて、
アナログプレーヤーそのものをグレードアップするという考えもある。

それはわかってはいた。
けれど実際にグレードアップした、という手応えが得られるのは、
いま使用している機器の価格の倍程度のモノまでいかなければならない。
五万円のアナログプレーヤーを使っているのならば、
次のステップとしては十万円クラスのモノということになる。

ここで六万円のプレーヤーを買ったところで、音の違いはあっても格の違いはまず得られない。
それにアクセサリーをあれこれ使ってみることで得られることもある、ということで、
カタログを見ては、次はこれにしよう、か、あれにしようか、と迷っていた。

1970年代の終りには、アナログプレーヤーの音に関係してのことがらがオーディオ雑誌の誌面をにぎわしていた。
慣性質量を増すのが効果的とも書く雑誌(オーディオ評論家)もいた。
ただし普及クラスのダイレクトドライヴ型は軸受けが弱いので、それほど重量化は無理だともいわれていた。

それでもできる範囲で試してみたい。
当時すでにゴム以外の素材のターンテーブルシートが登場していた。
鉛もあったし、セラミック、大理石、銅、ステンレス、ガラス、特殊金属などもあった。
これらが、それまで一般的だったゴムシート、セーム革などの軟らかい素材に対して、硬い素材のシートだった。

硬い素材のシートは、軟らかい素材のシートよりも比重があり、重量もある。
大理石、ステンレスのシートは3kg超えていた、銅のシートも1.8kgあった。
普及クラスのプレーヤーを使っていたので、これではあまりにも重すぎる、と判断した。
1kgが上限のような気がしていた(とくに根拠はなかった)。

サエクのSS300(特殊金属、870g)とジュエルトーンのGL602J(クリスタルグラス、1kg)が条件に合っていた。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その1)

私がオーディオを始めたころはCDはなかった。
当然プログラムソースのメインはアナログディスク(LP)ということになる。
カセットデッキも持っていたけれど、あくまでも補助的な存在であった。
あれば便利な機器という印象が私の場合、最後まで拭えずそれほど真剣に取り組んでいたとはいえない。

アナログプレーヤーに関しては、これが唯一のメインなのだから、
それに当時はプレーヤー関連のアクセサリーが各社からいくつも出ていた。
値段も、当時高校生だった私にも、それほど無理せずとも買える範囲のモノが大半だった。

シェルリード線が各社から出始めていた。
ヘッドシェルも各社から出ていた。素材もアルミだけでなく、いくつかの種類が用意されていた。
カートリッジをヘッドシェルに取り付けるネジも、ヘッドシェルやカートリッジ附属してくるのはアルミ製だったが、
ここでも音が変化するということで真鍮製も発売されていた。

ヘッドシェルは音だけでなく、見た目も重要だったし、
それ以上に指掛けの形状が操作面に大きく関係してくることを実感できるようになると、
自分の感覚に添うヘッドシェルを探すようになってくる。

ヘッドシェルもいくつか試した、シェルリード線も、真鍮製のビスも買った。
このへんはカートリッジ関連のアクセサリーとなる。

アナログプレーヤーのアクセサリーは、ターンテーブル関連のアクセサリーもあれこれあった。
ターンテーブルシート、スタビライザーなどである。
これらももちろん買っていた。

Date: 10月 22nd, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その23)

電子制御トーンアームを搭載したアナログプレーヤーを出したソニー、ビクター、デンオン三社で、
デンオンだけが業務用アナログプレーヤーを開発製造していた。
その意地なのか、後発のデンオンの電子制御トーンアームが、完成度という点では良くできていたと思える。

デンオンのDP100は、ダイレクトドライヴに不信感をもっていた私でも、
一度聴いてみたい、と思わせるだけの内容だった。

業務用に準ずる、と先に書いているが、
それまでの国産プレーヤーにはほとんどなかった形態で(唯一マカラがあった)、
どこかEMTの930stに通じる、というよりも、意識したところがある。
決して嫌いではないプレーヤーだった。

ただ930stに憧れていた私には、電子制御トーンアームを搭載したDP100Mになると、
トーンアームの部分だけがコンシューマー用になっている感じを受け、
そのわずかなちぐはぐさが、業務用に準ずる、といいたくなる点でもある。

だから当時は、DP100Mではなく、アームレスのDP100のほうに関心が強かった。
DP100MとDP100の差額(200000円)があれば、当時市販されていたトーンアームならばどれでも選べる。
ならば他のトーンアームを選択したい、などと夢想していた。

でも、いまはDP100Mの方に興味がある。

DP100MもDP100も販売店で実物をみたことはあるけれど、
ステレオサウンドの試聴室で聴く機会はなかったし、どこかで聴く機会もなかった。

Date: 10月 21st, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その22)

デンオンのDP100Mに搭載された電子制御トーンアームは、
価格的にソニー、デンオンのモノより高価だったのが違いではない。
違いはトーンアームのデザインにあった。

すでに書いてきたようにソニーのモノもデンオンのものも、ひと目で電子制御とわかる外観だった。
それもいい意味ではなく、悪い意味でそうであって、電子制御という新しい技術に対して、
オーディオマニアに期待を抱かせるようなデザインにはなっていなかった。

デンオンのDP100Mのトーンアームは、見た目で電子制御がどうかの判断はできない。
デンオンのトーンアームは、DA307、DA308、DA309、DA401に共通している外観、
柳腰といいたくなる外観が特徴であった。

DP100Mのトーンアームは、柳腰的なイメージはまったくなくなっている。
リジッドなトーンアームに仕上っている。

アームパイプはS字型とストレート型のふたつが附属している。
パイプの径はストレートの方が細く、しかも仕上げは黒ということもあって、
ストレートパイプを装着すると、DP100Mのトーンアームの軸受け部のマスの大きさはより強調される。
ここにマスの大半が集中している。

DAシリーズのトーンアームの面影は完全になくなっているかというと、そうでもなく、
カウンターウェイトの形状はDAシリーズのイメージを残っている。
この部分で、何も知らずにこのトーンアームも見せられても、デンオンのトーンアームかな、とわかる。

Date: 10月 21st, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その21)

デンオンもソニー、ビクターに続いて電子制御トーンアームを搭載したプレーヤーシステムを出した。
デンオンは、ダイナミックサーボトレーサーと呼んでいた。

デンオンは、ソニー、ビクターとは少し違っていた。
ソニーの最初の電子制御トーンアームを搭載したPS-B800は200000円だった。
PS-B800の上には1977年発売のPS-X9(380000円)があった。
PS-X9はカートリッジ附属(XL55Pro)、イコライザーアンプ搭載のプレーヤーシステムであるから、
PS-B800とは製品としての性格が異る面ももつため、
完全な比較はできないというものの、
PS-B800は少なくともソニーにとって最上級のプレーヤーシステムではなかった。

PS-B800は1981年ごろ製造中止になっている。
後継機種といえば、PS-X700、PS-X75、PS-X600Cといった、PS-B800の普及モデルでなっていた。

ビクターも最上級機に電子制御トーンアームは搭載していなかった。

デンオンは普及クラスだけでなく、最上級機のDP100Mにも電子制御トーンアームを搭載していた。
DP100Mは、プロ用機器に準ずる内容をもったプレーヤーシステムである。
DP100MにはアームレスタイプのDP100もあった。

価格はDP100Mが900000円、DP100が700000円。
単純に計算すれば、DP100Mの電子制御トーンアームの価格は200000円ということになる。
1981年当時、トーンアーム単体の価格として、200000円は最も高価だった。

とはいえすば抜けて高価だったわけでもない。
フィデリティ・リサーチのFR66Sは140000円、パイオニアのExclusive EA10は130000円、
マイクロのMAX282は150000円、サテンのAR1Sは148000円だった。

Date: 10月 17th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その20)

ソニーは電子制御のトーンアームをバイオ・トレーサーと呼んでいた。
ソニーからやや遅れてビクターも、電子制御トーンアームを発表した。
ビクターはED(electro-dynamic)サーボと呼んでいた。

ビクターの電子制御トーンアームは、ソニーのバイオ・トレーサーと形状は異るが、
複数のセンサーをもち、垂直・水平、ふたつのリニアモーターをもつのは共通している。

ステレオサウンド 53号のビクターのQL-Y7、QL-Y5の広告には、
EDサーボ・トーンアームの分解図が載っている。
EDサーボ・トーンアームは従来のトーンアームの軸受け右側に、
垂直方向の電子制御のための機構を後付けしたような感じがしている。
水平方向のための機構は、トーンアームの下部にある。

センサーは垂直速度、水平速度、位置、高さを検出している。
プロセッサーについての記述はないが、
ソニーのバイオ・トレーサーに使われているものと性能的に大差はないはずだ。

ソニーはバイオ・トレーサーの特徴として、
 最低共振周波数のピークを3dB以内に抑制
 徹底したフロントオペレーション
 機械的なインサイドフォースキャンセラー、カウンターウェイトの除去
この三点をあげている。

ビクターのEDサーボにはカウンターウェイがあるのが、ソニーと異るが、
電子制御の特徴として挙げているのはソニーとほぼ同じである。

Date: 10月 15th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その19)

ソニーの電子制御トーンアームとは、いったいどういうものだったのか。
ステレオサウンド 49号に載っているソニーの広告をみてみる。

センサーは垂直速度センサー、トーンアーム姿勢検出器、水平速度センサー、トーンアーム回転角検出器で、
構造図をみるかぎり、どれもけっこうなサイズである。
これだけのサイズであればトーンアームの軸受け周辺で動きを検出する以外にない。

けれどセンサーが小型軽量化されれば、軸受け周辺だけでなく、アームパイプにもつけられるし、
さらにはヘッドシェルに取り付けることも、いまでは無理なことではないと想像できる。

電子制御トーンアームが搭載されたソニーのPS-B80が登場した1978年では、
センサーが小型であっても、数を増やすことはもしかすると無理だったかもしれない。
なぜなら、電子制御にはプロセッサーを必要とするわけで、
センサーの数をふやし、センサーから贈られてくる情報量をむやみに増やしても、
プロセッサーが処理できなくなるからである。

ソニーの広告には、128ワード×4ビットの「電子頭脳」と書いてある。
いまiPhoneには64ビットのプロセッサーが、非常に高いクロック周波数で動作している。

プロセッサーの処理能力はインプットだけでなく、アウトプットにも大きく関わってくる。
PS-B80のトーンアームには、垂直リニアモーターと水平リニアモーターがある。
プロセッサーは、このふたつのリニアモーターを制御している。

検出と制御、このふたつの精度を高めるにはプロセッサーの処理能力が高くなければならない。

Date: 10月 14th, 2014
Cate: アナログディスク再生, サイズ

サイズ考(LPとCD・その1)

CDが1982年に登場して、もう30年以上が経つ。
CDは片手で持てる。
その名のとおりコンパクトなディスクである。

最初CDを見て触れた時、小さいな、と感じた。
それまでプログラムソースとしてもっとも聴いていた(さわっていた)のはLPの12インチだから、
CDのサイズはかなり小さく感じた。

CD登場以前からオーディオをやってきた者にとっては、
CDのサイズはシングル盤(7インチ)よりも小さいわけで、
けれどシングル盤が片面に一曲ずつしか記録できないのに対して、
CDは片面だけでLPよりも長い時間を記録できるから、よけいに小さく感じたものである。

それにシングル盤はドーナツ盤といわれるように中心の穴が大きい。
だから片手で持てるわけだが、実際にプレーヤーにのせるときには両手を使う必要がある。

CDはトレイにのせるのに両手は必要としない。
むしろ両手でやろうとすると面倒である。片手で持ち、片手でトレイにセットできる。
だからこそコンパクトディスクなのだと思う。

そんなCDを、いまでも小さいな、と感じることがある。
その一方で、アナログディスク(LP)を大きいと感じる人(世代)もいるようだ。

つまり12インチが私にとって標準サイズになっていることに気づかされる。
だから、いまでもCDを小さいと感じるわけだ。

Date: 10月 12th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その18)

カートリッジ、トーンシーム関連のアクセサリーのいくつかは自分で試したことがある。
試していないアクセサリーもけっこうある。
いま思うと、使ってみたかったアクセサリーがいくつかある。

アナログディスク再生について考えていると、
昔は気がつかなかったことが気になってくることがある。
そうなると、そういえば……、とアナログディスク全盛時代に登場したアクセサリーのことをふと思い出す。

そうやって思い出したのが、電子制御トーンアームであった。

いまの時代、街に出ると、多くの人がiPhoneに代表されるスマートフォンを持っているのがわかる。
東京にいると街を歩いていても、電車に乗っていても、駅のホームで電車待ちをしているときも、
スマートフォンが目に入らない時間はない、といっていいくらいあふれている。

私もiPhoneを使っている。
このiPhoneの内部にはさまざまな電子部品が使われていて、その中にはセンサーも含まれている。
そのセンサーの種類も、iPhoneが新しくなれば増えていっている。

電子制御トーンアームが登場した1980年ごろの常識からすると、
iPhoneのサイズに、これらのセンサーが収まっているとは考えられないのだが、
それだけセンサーは小型化されている。おそらく精度も高くなっているはずだ。

ならば、これらのセンサーを使えば、
30数年前には考えられなかったレベルでの電子制御が可能になるはすである。
CPUにしても、処理能力は格段に増し、小型化されている。

30数年前にiPhoneと同程度の性能と機能をもつモノを、金に糸目をつけずに実現しようとしたら、
いったいどれだけの大きさになるのだろうか。畳一枚に収まるのだろうか。もっと大きくなるのかもしれない。

それがいまは手のひらにおさまっている。
だから、いま電子制御の夢をみたい。

Date: 8月 22nd, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(インサイドフォースキャンセラーのおもり・その4)

SMEのトーンアームでは、Bias Guideという、
金属の先に滑車がついたパーツが、アームベースの内側にとりつけるようになっている。

このバイアスガイドの滑車にバイアスウェイトからでている糸を通す。
この糸の、トーンアームに対する方向によってインサイドフォースキャンセル量、
つまりはトーンアームにかかるアウトサイドフォースがわずかとはいえ変化する。

そのためSMEの取り扱い説明書には、バイアスガイドの位置調整の項目がある。
インサイドフォースキャンセル量を変えるたびに、このバイアスガイドの位置(向き)も変えていく必要がある。

こんなことでもインサイドフォースキャンセル量は変化を受けるわけで、
厳密にはバイアスガイドの高さ調整も、場合によっては必要となってくる。

トーンアームの調整には、アーム自体の高さ調整がある。
使用するカートリッジによって、アームパイプが水平になるのを原則とし、
その後は音を聴きながらほんのわずか上げ下げをすることがある。

SMEの取り扱い説明書にあるバイアスガイドの調整は、
トーンアームを真上からみたときの位置(向き)の合わせ方である。
これは、水平における調整であり、トーンアームの高さ調整機構が備わっているのであれば、
本来はバイアスガイドの高さ調整も必要であり、連動しているのが望ましい。

トーンアームの高さをあげたとき、真正面からみてバイアスウェイトを吊り下げている糸は、
水平と垂直をなしていなければならない。
トーンアームから滑車までは水平、滑車からは垂直というようにである。

だがSMEのトーンアームの場合、バイアスガイドはスライドベースに取り付けられている。
つまりバイアスガイドの高さ(滑車の高さ)は、そのままでは変えられない。
そうなるとトーンアームの高さ次第では、水平になっていなければならない部分が、
水平でなくなっている場合も出てくる。

そうなると垂直方向の分力を生じ、針圧に変化を与えてしまう。

Date: 8月 22nd, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(インサイドフォースキャンセラーのおもり・その3)

インサイドフォースの問題がややこしいのは、
レコードの溝の波形、針圧、針先の形状、
針先からみたカートリッジの振動系の機械インピーダンスなどが絡んできていて、
一枚のレコードでも同じキャンセル量で解消されるというわけではない。

つまりインサイドフォースを完全にキャンセルすることは、非常に困難なことである。
つまりインサイドフォースキャンセラーの調整は、妥協点をさぐる行為ともいえる。

妥協点だからといって、安易に調整していいわけでもない。
SMEのトーンアームに代表されるおもりを糸吊りしている機構では、
おもり(Bias Weight)が、なにかの拍子で揺れていると、はっきりと音に影響を与える。

インサイドフォースキャンセルを、カートリッジへの水平バイアスと考えれば、
おもり、つまりバイアスウェイトの揺れは、バイアスの揺れと同じであり、
これでは安定した音は得られなくなる。

そんなことはないだろう、と訝しがる人で、
SMEの糸吊り式のインサイドフォースキャンセラーをもつトーンアームをもっているならば、
ためしにバイアスウェイトを意図的に揺らしてみればいい。

それでも音は変らない、という場合は、SMEのトーンアームの調整がうまくいっていないか、
システム全体の調整も、またそうだ、ということである。

Date: 8月 21st, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(インサイドフォースキャンセラーのおもり・その2)

以前、「型番について(その17)」で書いているように私は、
針圧は垂直方向のバイアス量であり、
インサイドフォースキャンセラー量は水平方向のバイアス量、と考えている。

インサイドフォースキャンセラーについてはかなり以前から議論されている。
インサイドフォースキャンセラー不要論を唱える人も少なくない。
針圧を多めにかけることでインサイドフォースの問題は無視できる、いう記事も読んだことがある。

おそらくインサイドフォースキャンセラーが必要なのか不要なのかは、
これから先も決着がつかないままのような気がする。

私はインサイドフォースキャンセラー量は水平方向のバイアス量と考えているから、必要とする。
昨夜のブログを書いた後、facebookにコメントがあった。

SMEのインサイドフォースキャンセラーのおもりの重量はロットによって変更されている、とのことだった。
軽いのは3gくらいで、重いのになると6gくらいのものもある、とのこと。

インサイドフォースキャンセラーのおもり──、
と書いているが、やや長い。
SMEは、インサイドフォースキャンセラーのおもりのことをどう呼んでいるのか。

SMEのサイトをみると、Bias Weightとある。
ということは、SMEのアイクマンも、
インサイドフォースキャンセラーはカートリッジの針先への水平方向のバイアスと考えていた、
とみていいだろう。