KEFがやって来た(その11)
ステレオサウンド 48号で、井上先生がサブウーファーの実験をやられている。
「超低音再生のための3D方式実験リポート」という記事だ。
この記事の冒頭、
「音楽における低音の重要性を探る 低音再生のあゆみと話題のサブ・ウーファー方式について」、
そこには、こう書いてある。
*
オーディオの世界で、もっとも重要で、しかも困難なことは、いかにして音楽再生上のベーシックトーンである低音の再生能力を向上するかということである。
実際にスピーカーシステムで音楽を再生してみると、たとえば3ウェイ構成のスピーカーシステムであれば、トゥイーター、スコーカー、ウーファーと受け持つ周波数帯域が下がるほど、エネルギー的に増大することが容易にわかる。どのように強力なトゥイーターを使っても、部屋の天井や床が振動するほどのエネルギーは得られないが、ウーファーでは、たとえ10cm程度の小口径ユニットでさえも、エンクロージュアを振動させるだけのエネルギーは得られる。
低音は、音の波長からみても100Hzで3・4m程度と長く、エネルギーがあるだけに、大量の空気を振動させなければならない。そのためには、より大口径のウーファーが要求されることになる。
ディスクが誕生して以来のオーディオの歴史は、主にこの低音再生能力の向上を、常にメインテーマとして繰りひろげられてきたといってもよい。最近、サブ・ウーファーシステムが台頭し、従来の3D方式をも含めた新しい方式として注目されてきている。現実に、その効果は目ざましいものがある。そこで、ここでは、オーディオにおける低音再生の歴史をふりかえるとともに、話題のサブ・ウーファーシステムの特徴や効果などについて述べてみたいと思う。
*
低音再生能力の向上、というメインテーマ。
LS3/5Aを中心にして、このテーマを追求した場合の、
ひとつの模範解答、それもLS3/5の開発者自らの具体的な解答が、
KEFのModel 105だと、私は捉えている。
低音再生能力の向上のためには、
どうしてもある程度以上の口径のウーファーを必要とする。
400Hz以下を受け持つ30cm口径のウーファーが、Model 105の場合のそれだが、
これだけの口径のウーファーが追加されることにより、
当然ながら音源の面積は大きくなる。
点音源に近いといえるLS3/5Aであっても、
LS3/5Aの発展型といえる105のHEAD ASSEMBLYであっても、
30cm口径のウーファーがつけば、もはや点音源に近い、とはいえなくなる。
この点音源という言葉も、ある種のまやかし的要素が多分に含まれている、というか、
その使われ方はそうといえる。
そのことにはここでは触れずに先に進むが、
LS3/5の開発者ならば、できるだけ音源を小さくしながら、
低音再生能力の向上を実現したいと、考えるのではないだろうか。
このことはLS3/5Aの聴き方とも関係してくることだ。