KEFがやって来た(その10)
LS3/5Aをきちんとセッティングした音にまいってしまった人は、けっこういる。
至近距離で聴く、その音は、精巧な、と表現できるほどである。
しかも聴いた者には、しっかりと余韻を残していく。
けれど低音に関しては、無理がきかない。多くは望めない。
だからLS3/5Aにウーファーをつけて……、と考えた人は少なくないはずだ。
瀬川先生もステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」で、
LS3/5A(チャートウェル製)に、サブウーファーを追加するという組合せをやられている。
ここではJBLの136Aを、サンスイのエンクロージュアEC10に収めたモノを使われている。
クロスオーバー周波数は300Hzである。
このころ、ロジャースからは、L35Bという型番をもつサブウーファー、
専用のデヴァイダーとパワーアンプを同一筐体におさめたXA75から成るシステムを、
Reference Systemとして発売していた。
L35Bに収められているウーファーの口径は33cmだった。
クロスオーバー周波数は150Hzである。
L35Bのエンクロージュア上部にはLS3/5Aの設置位置がマーキングされていた。
ロジャースは、その後AB1というモデルも出している。
これらはうまくいったのだろうか。
私はどちらのモデルも聴く機会はなかった。
「コンポーネントステレオの世界 ’79」で瀬川先生が興味深いことをいわれている。
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じつはぼく自身が、かつてマルチアンプをさんざん実験していたころ、たとえばウーファーに15インチぐらいの口径のものをもってきて、その上に小口径のコーン型ユニットを組合わせた場合、理論的にはその小口径のコーンだって100Hz以下の、70とか60Hzのところまで出せるはずです。特性をみても実際に単独で聴いてみても、100Hzが十分に出ています。
したがって、たとえば100Hzぐらいのクロスオーバーでつながるはずですが、実際にはうまくいかない。ぼくにはどうしてなのかじつはよく分らないんだけれど、15インチ口径のウーファーで出した低音と、LS3/5Aのような10センチぐらいの小口径、あるいはそれ以上の20センチ口径ぐらいまでのものから出てくる中低音とが、聴感上のエネルギーでバランスがとれるポイントというのは、意外に高いところにあるんですね。
いいかえると、100Hzとか200Hzあたりでクロスオーバーさせていると、ウーファーから出てくるエネルギーと、それ以上のエネルギーと、バランスがとれなくてうまくつながらないわけです。
そしてぼくの経験では、エネルギーとして聴感上、あるいは感覚的にうまくクロスオーバーするポイントというのは、どんな組合せの場合でも、だいたい250Hzから350Hzあたりにあるわけです。それ以上に上げると、こんどはウーファーの高いほうの音質が悪くなるし、それより下げると、こんどはミドルバスのウーファーに対するエネルギーが、どうしてもつながらない。とういことで、この場合でも、300Hzでいいんですね。
もちろん、そうしたことを確認するなり実験するなりしたい方には、クロスオーバーをもっと下げられたほうが面白いわけで、そういう意味でほかの、100Hzまで下げられるデバイダーをお使いになるのは、まったくご自由ですよ、ということですね。
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この瀬川説があてはまるのならば、
ロジャースのReference Systemのクロスオーバー周波数は、低すぎる、ということになる。
KEFのModel 105は、この瀬川説が証明しているのかのように400Hzであり、
ウーファーの口径は30cmである。