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Date: 12月 9th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その18)

なにも、349Aのアンプが、はじめて聴いた真空管アンプではない。
それ以前にも、それほど数は多くないものの、主だったもののいくつかは聴いている。

管球式であることを、どちらかといえば悪い意味で意識するアンプはあった。
よい意味で、つよく意識したのは、349Aのアンプがはじめてだった。
最初は、349Aという、この小さな出力管のよさだと思った。
次に、これがウェスターンなのか、とも思った。

だから、349Aのアンプを自作しよう、と思った。
もっとも自作するしか、他に手はないのだが。
最初は、ウェスターンの資料を見ながら、どの回路構成にするか、迷っていた。
ウェストレックスのA10の回路を元にした伊藤アンプのデッドコピーをつくるという考えは、
なぜだかなくて、すこしでも、もっといい349Aのアンプをつくろうという欲があって、
他の回路に目移りしていた。

けれど、そんなとき、思い出したことが、あった。

整流管を274Bに交換した時の音、であった。

Date: 12月 8th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その17)

音が歇んでいく様の美しさに関係することでいえば、低音の透明感の違いも大きい。
ウーファーが鳴りやんでいなければならないときでも、
どこかしらざわざわして、落着きのない子供のように、じっとしていることができなかったのが、
349Aのアンプでは、息をひそめたかのように鳴りやむ。

こういう低音の鳴り方、質感は、それまで聴いたことがなかった。
MC2300の低音とも違うし、このとき比較したわけではないが、
別の場所、別の機会で聴くことができた、他のパワーアンプとも違う。
マークレビンソンのML2Lとも、SUMOのTHE GOLDとも違う。
トランジスター式のパワーアンプで、こういう低音の鳴り方に近い音を出してくれたのは、
スレッショルドの800Aだったように思う。

その800Aでも、記憶のなかでの比較になってしまうが、こうまで、
歇んだ静寂の美しさはなかったように思うし、
349Aのアンプによる静寂さには冷たさはなく、ぬくもりのようなものを感じられる。

だから、349Aのアンプにころっとまいってしまった。

Date: 12月 7th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その16)

伊藤先生製作の349Aプッシュプルアンプと、マッキントッシュのMC2300の違いで、
そのときの私にとって、いちばん大きな違いであり、決定的な違いだったのは、
気配の静けさだったように、いまふりかえってみると、思えてくる。

6畳ほどの、特に広くない部屋で、能率の高いJBLの2220Bと2440+2397の組合せ、
それも長辺方向に置いてあったので、スピーカーとの距離はかなり近い。

そういう条件下で聴いていると、MC2300の音の気配には、どこかざわざわしたものがついてまわる。
だから音が消えゆくときにも、ざわざわした気配が感じられ、物理的な音圧は減衰していっても、
聴感上、心理的な音圧はそれほどさがったようには感じられない。

349Aのパワーアンプのほうはというと、静かな気配がある。
だから物理的な音圧の減衰以上に、音が消えゆくように感じられたのではなかろうか。

同軸型ユニットの選択(その5)

おそらく杉井氏は、604-8Gと604-8Hのネットワークを混同されていたのだろう。
勘違いの発言だったのだろう。

604-8Hはマンタレーホーンを採用している関係上、ある帯域での周波数補正が必要となる。
それに2ウェイにも関わらず、3ウェイ同様に中域のレベルコントロールも可能としたネットワークであるため、
構成は複雑になり、使用部品も増えている。

だから、杉井氏の発言は、604-8Hのネットワークのことだろう。
勘違いを批判したいわけではない。

この記事の問題は、その勘違いに誰も気がつかず、活字となって、事実であるかのように語られていることである。

この試聴記事に参加されている篠田氏は、エレクトリでアルテックの担当だった人だ。
アルテックについて、詳しいひとのはずだ。
604-8Gと604-8Hのネットワークについて、何も知らないというのはないはずだ。

本来なら、篠田氏は、杉井氏の勘違いを指摘する立場にあるべきだろうに、
むしろ「アルテックの〝あがき〟みたいなものがこの音に出ている」と、肯定ぎみの発言をされている。

Date: 12月 6th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その4)

手もとに604-8Gがあるから、ネットワークの内部を見ることができる。
シャーシー内部には、鉄芯入りのコイルが2個、コンデンサーが3個、
あとはレベルコントロール用の巻線型のアッテネーターだけである。

12dB/oct.のハイカットフィルターには、コイルとコンデンサーがひとつずつ、
18dB/oct.のローカットには、コイルはひとつ、コンデンサーはふたついる。
ハイカット、ローカットあわせて2個のコイルと3個のコンデンサーは、最低でも必要である。

インピーダンス補正や周波数特性をいじるのであれば、さらにコンデンサーやコイルが必要になる。
604-8Gの専用ネットワークには、必要最小限の部品しか収められていない。
インピーダンス補正も周波数のイコライジングを行なう部品は、何ひとつない。

アルテックのサイトから、604-8Gのネットワークの回路図がダウンロードできる。
見れば一目瞭然である。どこにも杉井氏が指摘されるようなところは、ない

杉井氏の「解析」とはどういうことなのだろうか。

Date: 12月 6th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その3)

604-8Gに関して、こんな記事が出ていたことがある。
管球王国 Vol.25において、604シリーズ6機種の試聴記事が載っている。

そこで、篠田寛一氏が、604-8Gに604EのネットワークN1500Aを使うと、
「604Eに限りなく近い音で鳴る」と発言されている。
これを受けて、杉井真人氏(どういう方なのかは知らない)が、
「8Gのネットワークを解析するとわかるのですが、かなりイコライジングしているんです。
音質補正回路みたいなものが入っていて、
ある帯域にピークやディップを持たせたりして独特の音作りをしています」と補足されている。

604-8Gのネットワークには型番はない。
クロスオーバー周波数は1.5kHzで、ウーファーのハイカットは12dB/oct.、
トゥイーターのローカットは18dB/oct. となっていて、レベルコントロールは連続可変で、ツマミはひとつ。

この専用ネットワークは、ほんとうに杉井氏の指摘のとおり、
回路構成によって独特の音作りを行っているのだろうか。

Date: 12月 6th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その2)

同軸型ユニットを中心としたワイドレンジのスピーカーシステム構築を考えれば、
タンノイとアルテックの同軸型ユニットを、私と同世代、上の世代の方は、最初に思い浮かべるだろう。

タンノイにするかアルテックにするか……。
別に迷ってはいなかった。最初に手にしたほうを使おう、そういうつもりでいたからだ。

主体性のない、やや受け身のスピーカー選びだが、それでも、モノとの巡り合いがあるだろうから、
ひとつくらい、こんなふうにスピーカーを選ぶのもいいかもしれない。

タンノイには、五味先生の本でオーディオと出合っただけに、その想いは簡単には語れない。
アルテックは、ここに書いたことをきいて知っていただけに、
一度は、自分の手で鳴らしてみたいと、ここ数年想い続けてきた。

タンノイとアルテック、ふたつとも手に入れてシステムを組むというのは、いまは無理だ。
だから、最初に私のところに来てくれたほうを使おうと決めた。そしてアルテックが到着した。

Date: 12月 5th, 2009
Cate: 録音

ショルティの「指環」(その9)

なにも初期LPに、高価で売買される価値がない、といいたいわけではない。

ただマスターテープの劣化を理由に、再発盤の価値を不当に貶めたり、
初期LPの価値を高めるというよりも、価格を高くするための口実として、
マスターテープの劣化のことをとやかくいうのはおかしいといいたいだけである。

初期LPを高く売りつけることだけを考えている人たちは、
エソテリックがSACDで出すショルティの「指環」についてもおそらく否定的だろう。
録音から50年前後経過している。
彼らの論理でいえば、そうとうにマスターテープの劣化は激しいはずだろうから、
それをどんなにていねいにマスタリングしても無駄だということになるだろう。

エソテリックから10月末に発売されたマゼール指揮のシベリウスのSACDを聴く機会があった。
聴く前は、正直、マゼールのシベリウスなんて興味ない、という気持があったが、
鳴りだしてすぐに、色彩ゆたかな音が融け合った、輝かしいばかりの響きに、
すこし大げさにいえば度肝を抜かれ、これぞオーディオの醍醐味だとも思っていた。

このマゼールのシベリウスも、ショルティの「指環」と同じころの録音だし、プロデューサーはカルショウだ。
これと同程度の仕上りだとすれば、ショルティの「指環」のSACDは、想像するだけでわくわくしてくる。
この期待が裏切られることはないはずだ。

Date: 12月 5th, 2009
Cate: 録音

ショルティの「指環」(その8)

短期間、というよりも保存期間の長さからすると短時間といったほうがいいだろうが、
とにかくアナログ録音のマスターテープの音の劣化は、録音経験のない人には、信じられないほど速い。
そして急激に劣化してから先は、きちんと保管されていれば、かなりゆるやかともいえる。

初期LP、オリジナル盤で商売している人たちは、なぜ、このことについてふれないのだろうか。

それとも、彼らは、初期LPのプレスのために必要なラッカー盤のカッティングは、
録音されて1か月以内に行われていると思っているのだろうか。
レコードの制作過程は、録音が終ればすぐにカッティングに移れるわけではない。
そのことは、LPの発売時期と録音日時をみてみれば、すぐにわかることだ。
以前のレコードでは、録音は前年ということもざらにある。

すくなくともマスターテープの劣化は、ゆるやかな状態の安定期にはいっているといっていいだろう。
ほとんどのレコードのカッティングは、そういう時期に行われているはずだ。
マスターテープの鮮度のいい時期は、過ぎ去っているということでもある。

Date: 12月 5th, 2009
Cate: 録音

ショルティの「指環」(その7)

いつのころからだろうか、初期LP、オリジナル盤といったものが、高値で売買されるようになってきた。

理由は、音がいいから。
再発盤は、マスターテープの劣化により、音がよくない、かんばしくない、ということになっている。

マスターテープの音は、たしかに劣化する。このことを否定する気はない。
けれど、その劣化の具合は、直線ではなくカーブしている。

デジタル録音が主流になりはじめたころ、録音に携わっている人からきいたことがある。
アナログ録音とデジタル録音を同時にやった場合、
録音してすぐの再生時には、アナログ録音のほうが、音がいい。
でも3日後に聴くと、どちらがいいとはいえなくなる。
そして1週間後だと、あきらかにデジタル録音のほうが音がいい、というよりも、
アナログ録音は、ごく短期間に急激に音が劣化する。

それにくらべてデジタル録音の劣化は、かなりゆるやかなため、日が経てば、評価は逆転するということだった。

この3日後と1週間後は、人によって多少違い、1週間後と1ヵ月後だったりすることもあるが、
アナログ録音の劣化は、急激だ、ということは一致している。

Date: 12月 4th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その15)

ずっと以前、伊藤先生がつくられた、ウェスターンの349Aを使ったプッシュプルアンプを聴く機会があった。
無線と実験に発表された、そのものだ。

出力は8W。増幅部の回路構成は、ウェストレックスのA10と同じ。
電源部はチョークは使っていないが、直列に1kΩの抵抗が入っている点は同じだ。

このアンプの音は、静かだった。音が鳴り止むときに、このアンプの特長が発揮される。
がさついたり、よけいな付帯音がつきまとうことなく、すーっと消えていく。
その消え際の美しさに、はっとする。
こういう音の消えかたのするアンプは、それまで聴いたことがなかった。

それに低音の透明度の高さも、印象に残っている。

スピーカーは、JBLの2220Bに、2440+2397の組合せ。
マッキントッシュのMC2300で鳴らしたときの音は、なんども聴いていたから、驚きが増した。

MC2300は300W+300Wの出力をもつ。349Aプッシュプルアンプのほぼ40倍。
349Aのアンプは、持とうとすれば、2台まとめて片手でもてる。
MC2300は両手で持ち上げるのもたいへんな大きさと重量なのに、
どちらが、この高能率のJBLのスピーカーを巧みにドライブしたかというと、わずか8Wのアンプの方だった。

Date: 12月 4th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その14)

チョーク・インプット方式のパワーアンプには、ウェストレックスのA10がある。
このA10の電源部も、アンコール・パワーとはすこし違う意味で、また興味深い。

目を引くのは、直列にはいっている抵抗の、その値である。1kΩとなっている。
通常、電源部はレギュレーションをよくするために、そして音質向上の意味もあって、
できるかぎりインピーダンスを低くしようとする。
電源部の配線にプリント基板ではなく銅版を使うのも、そのためである。

なのにA10では、大胆にも1kΩという、
パワーアンプの電源にとっては──真空管式とはいっても──、大きなロスが発生する値にしている。

A10の出力段は350Bのプッシュプルで、A級動作。電流の変動は少ない。
だから1kΩの抵抗によって生ずる電圧降下は、出力に関係なくほぼ一定。
だからアンプの動作には問題ない、とはいえるものの、なぜこれだけ高い値の抵抗を直列に挿入するのか。
電圧のロスだけでなく、この抵抗が発する熱量もけっこうなものがあるというのに。

Date: 12月 4th, 2009
Cate: 電源

電源に関する疑問(その13)

パフォーマンスで、パワーアンプではめったにやらない別電源という形態を採用しながらも、
アンコール・パワーでは同一筐体内に、電源部とアンプ部をおさめている。

なぜなのかを考えていくと、アンコール・パワーはチョークは採用していても、
コンデンサー・インプット方式なのかもしれないし、
チョーク・インプット方式でも、前に述べたように臨界電流をこえるまでは、
つまりある出力以下ではチョーク・インプットとして動作しないため、
チョークが発生する振動も小出力においては少ない、つまり影響も少ないものと思われる。

だからあえて一体化という手法をとり、
電源部を含めたアンプ全体のサイズのコンパクト化を目指したのかもしれない。

マークレビンソン、チェロのパワーアンプのなかで、アンコール・パワーは、
入力から出力までの配線の長さが、もっとも短いアンプであろう。
電源部まで含めて眺めても、もっともコンパクトなパワーアンプである。

アンコール・パワーはB級動作、チョーク・インプット方式の電源の組合せという、
頭の中でだけアンプを設計する者には考えつかない、ある意味、大胆さがある。

Date: 12月 3rd, 2009
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(その34)

いまや、オーディオ評論よりもオーディオ概論ばかりになりつつある。
しかも、こんな当て字をしたくなる──、オーディオ骸論……。

Date: 12月 2nd, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その1)

JBLの4343について、これまで書いてきた。ワイドレンジについては、いまも書いている。
これらを書きながら考えていたのは、放射パターンを考慮したときの同軸型ユニットの優位性について、であり、
同軸型ユニットを中核としたスピーカーシステムの構想について、である。

アルテックの604シリーズ、タンノイのデュアルコンセントリック・シリーズ──、
両社の伝統的ユニットを使い、最低域と最高域を、ぞれぞれ別のユニットで補う。

すでに、実際の製品として、アルテックには6041があり、タンノイにはキングダム・シリーズがある。
にもかかわらず、自分で確認したいこと、試してみたいことが、いまもくすぶっている。
そのくすぶりが、書くことで次の段階へとうつろうとしている。

今日、604-8Gが届いた。