同軸型ユニットの選択(その13)
川崎先生は「プレゼンテーションの極意」のなかで、特徴と特長について語られている。
*
「特徴」とは、物事を決定づけている特色ある徴のこと。
「特長」とは、その物事からこそ特別な長所となっている特徴。
*
ベッセル型フィルターの「特徴」が、同軸型ユニットと組み合わせることで「特長」となる。
川崎先生は「プレゼンテーションの極意」のなかで、特徴と特長について語られている。
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「特徴」とは、物事を決定づけている特色ある徴のこと。
「特長」とは、その物事からこそ特別な長所となっている特徴。
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ベッセル型フィルターの「特徴」が、同軸型ユニットと組み合わせることで「特長」となる。
「いま、そしてこれから語るべきこと」のなかで、川崎先生のことば「機能性、性能性、効能性」をかりて、
オーディオの効能性についてすこしばかり書いた。
この「機能性、性能性、効能性」は、オーディオそのものについてもあてはまるし、
個々のオーディオ機器について語る時にも「機能性、性能性、効能性」をどこかで意識していく必要があるだろう。
新製品紹介の記事は、どのオーディオ雑誌にもある。
そこでもっぱら語られるのは、音について、である。
読者がもっとも知りたいことも、新製品のスピーカーなりアンプが、
どういう音を聴かせてくれるのかに興味があることだろうし、
そこに重点がおかれるのも理解できないわけではない。
それでも、「音のよさ」とは、いわゆるそのオーディオ機器の「性能性」の部分でしかないともいえる。
性能性は、物理特性のことのみではない。音のよさも、ここには含まれるとすべきである。
UREIの813のネットワークに使われているのは、ベッセル型フィルターである。
おそらくESL63のディレイ回路も、ベッセル型フィルターのはずだ。
ベッセル型フィルターの、他のフィルターにはない特徴として、
通過帯域の群遅延(Group Delay)がフラットということがあげられる。
つまりベッセル型のハイカットフィルターをウーファーのネットワークに使えば、
フィルターの次数に応じてディレイ時間を設定できる。
604シリーズのウーファーのハイカットを、ベッセル型フィルターで適切に行なえば、
トゥイーターとの時間差を補正できることになり、
これを実際の製品としてまとめ上げたのが、UREIの813や811といったスピーカーシステムと、
604E、604-8G用に用意されたホーンとネットワークである。
ホーンの型番は800H、ネットワークの型番は、604E用が824、604-8G用が828、
さらに813同様サブウーファーを追加して3ウェイで使用するためのネットワークも用意されており、
604E用が834、604-8G用が838であり、TIME ALIGN NETWORKとUREIでは呼んでいる。
ステレオサウンド 61号の記事には、ESL63の回路図が載っている。
たしか長島先生の推測を元にしたものだったと記憶している。
8個の同心円状の固定電極に対して、直列に複数のコイルが使われている。
同心円状の固定電極は、外周にいくにしたがって、通過するコイルの数がふえていくようになっていた(はず)。
やはり、コイルの直列接続によって、時間軸の遅れをつくり出しているのはわかっても、
動作原理まではわからなかったし、どういうふうに定数を決定するのかも、とうぜんわからなかった。
ESL63やUREIの813に使われている回路技術はおそらくおなじものだろうと推測はできても、
具体的なことまで推測できるようになるには、もうすこし時間が必要だった。
ESL63の翌年にCDプレーヤーが登場する。
そしてD/Aコンバーターのあとに設けられているアナログフィルターについての技術的なことを、
少しずつではあるが、知ることとなる。
フィルターには、いくつかの種類がある。
チェビシェフ型、バターワース型、ベッセル型などである。
レイモンド・クックもエド・メイも具体的な方法については何も語っていない。
ふたりのインタビューが載っているのは、
1977年発行のステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界’78」で、
当時出版されていたいくつかの技術書を読んでも、
ネットワークでの時間軸の補正については、まったく記述されてなかった。
だから、どうやるのかは皆目検討がつかなかった。
ただそれでも、ぼんやりとではあるが、コイルを多用するであろうことは想像できた。
同時期、アルテックの604-8Gをベースに、マルチセルラホーンを独自の、水色のホーンに換え、
604-8Gのウーファーとトゥイーターの時間差を補正する特殊なネットワークを採用したUREIの813が登場した。
813についても、ステレオサウンドに詳しい技術解説はなかった。
可能だとわかっていても、そのやり方がわからない。
少し具体的なことがわかったのは、ステレオサウンドの61号のQUAD・ESL63の記事においてである。
長島先生が書かれていた。
ゆくゆくは604-8Gをマルチアンプ駆動で、チャンネルデバイダーはデジタル信号処理のものにして、
時間軸の整合をとった同軸型ユニットの音を鳴らしてみたい、とは思っている。
それでも最初はネットワークで、どこまでやれるかに挑んでみたい。
ネットワークの場合、時間軸の整合はとれないと考えている人が少なくないようだ。
コイルとコンデンサーといった受動素子で構成されているネットワークで、
604-8Gの場合、ウーファーへの信号を遅らせることは不可能のように捉えられがちだが、
けっしてそんなことはない。
たとえばQUADのESL63は、同心円状に配置した8つの固定電極のそれぞれに遅延回路を通すことにより、
時間差をかけることを実現している。
KEFのレイモンド・クックも、ネットワークでの補正は、高価になってしまうが可能だといっている。
またJBLに在籍した後、マランツにうつりスピーカーの設計を担当したエド・メイは、
マルチウェイスピーカーの場合、個々のユニットの前後位置をずらして位相をあわせるよりも、
ネットワークの補正で行なった方が、より正しいという考えを述べている。
ユニットをずらした場合、バッフル板に段がつくことで無用な反射が発生したり、
音響的なエアポケットができたりするため、であるとしている。
604EとN1500Aの組合せにおける、こまかな工夫にくらべると、
604-8Gと、そのネットワークの組合せは、ウーファーもトゥイーターも正相接続で、
スピーカーの教科書に載っているそのままで、おもしろみといった要素はない。
それだけN1500Aと604-8G用ネットワークの仕様は違うわけだ。
だから管球王国 Vol.25にあるように、604-8GにN1500Aを組み合わせれば、
純正の組合せの音は、同じアルテックの604というスピーカーの中での範疇ではあるものの、
かなり傾向は異ってきて当然であろう。
優れたユニットであればあるほど、活かすも殺すもネットワーク次第のところがある。
604-8Gでシステムを構築するにあたって、ネットワークをどうするか。
604-8Gについているネットワークをそのまま使うつもりはない。
ひとつのリファレンスとして、純正ネットワークの音はいつでも聴けるようにはしておくが、
ネットワークに関しては、新たに作る予定でいる。
N1500Aと同じ回路のものを試しにつくってもいいが、私が参考にするのは UREIの813である。
ループ的に独立した2系統の出力を得るのに、いまのところ最適なのはトランス出力だろう。
2次側の巻線が2つ以上あるトランスを使えば、ループの問題はほとんど解決する。
そうなるとトランスを積極的に利用したくなる。
つまりサーロジックのサブウーファーの導入が、
トランスの負性インピーダンス駆動のことを思い出すきっかけとなった。
トランスの負性インピーダンス駆動の実験の前に、トランスの2次側の巻線の接続を変えて、
2系統の出力が得られるようにしてみる予定だ。
トランスによって、サーロジックのサブウーファーの信号系と、
メインスピーカーのパワーアンプまでの信号系が、ループ的には独立する。
実際にストレーキャパシティの存在によって、トランスの、ふたつの2次側巻線は、
高周波においてはループが形成されてしまい、完全な独立とはいえない。
けれど、トランスなしの状態で、コントロールアンプの出力を並列に取り出すよりも、
ずっとすっきりし、ループのサイズも小さくなる。
オーディオの「現場」として、意見を率直に語り合う討論の場が、なぜ設けられないのか。
オーディオ雑誌の企画として、
オーディオ評論家(なかには、そう呼ばれているだけのひともいるが)が集まっての座談会ではなく、
メーカーの開発者、営業の人たち、輸入代理店の人たち、オーディオ販売店の人たち、
そしてユーザーの人たち、をも含めての討論の場の必要性を感じはじめている人はいるはずだ。
「のだめカンタービレ」の音楽の表現のほうが、直感的に伝わってくるものがあり、
それはある種普遍的な要素が多いようにも思う。
それに「のだめカンタービレ」での音楽のコマは、ほとんどが演奏シーンでもある。
「ルードウィヒ・B」での音楽の表現は、音楽そのものを直接表現することと関係していて、
手塚治虫の主観によって画となる。
だから、その主観を読み解く難しさと面白さが、「ルードウィヒ・B」にはあるともいえる。
「のだめカンタービレ」では、1コマで表現されることはない。
いくつかのコマ、数ページにわたって、表現は構成されている。
「ルードウィヒ・B」ではときに1コマで、音楽という連続している作品、
時間軸とともにある作品を表現しているのは、
手塚作品におけるモブシーンと通底しているものが感じられるとともに、
手塚治虫の、マンガという手法の限界に挑んでいた迫力が、あるといってもいいだろう。
手塚治虫が健康で長生きされていれば、1コマのもつ迫力は増し、磨かれていったはずだ。
「のだめカンタービレ」は最終回を迎え、単行本も23巻が出ている。
8年間続いた連載が終ったわけだが、すでに番外「オペラ篇」がはじまっている。
「ルードウィヒ・B」の続きを読むことはできないが、「のだめカンタービレ」は、もうすこしつづいていく。
こんどは、言葉という具象的なものが、その音楽シーンに加わる。
それを二ノ宮知子がどう処理・表現していくのかも、ストーリーとともに大きな楽しみになっている。
「のだめカンタービレ」では、音楽そのものを直接画で表現しようとはしていない、といってもいいだろう。
手塚治虫の「ルードウィヒ・B」での表現手法とは大きく異るのは、
作者の二ノ宮知子が女性であることと関係しているのかもしれないし、
性差は関係なく、世代の違いもあろうし、音楽の聴き方、というよりも捉え方の違いから生じたのかもしれない。
「のだめカンタービレ」での音楽シーンでは、必ずといってよいほど聴衆がそこにいて、
彼らの表情によって、そこに響いている音楽がどのように聴き手を捉えているのかが表現される。
「ルードウィヒ・B」に登場した平均律クラヴィーアのコマ(画)は、「のだめカンタービレ」には登場しない。
手塚治虫の作品には、ときどき、それまで見たことのない画が突如として現れる。
「ルードウィヒ・B」にも、現れている。
「のだめカンタービレ」には、現れない。
だが、どちらが音楽を、音のない画から伝えるか、という点では、二ノ宮知子の手法のほうが、
作品が長く続き、手法が洗練されてきたこともあって、完成度は高い。
音楽が、じーんと伝わってくる。
まず考えたのは、ラインアンプを2組設けることである。そうすれば出力端子は、
それぞれ独立して互いに影響し合うことを極力抑えられる。
とはいうものの、JC2やテァドラからフォノアンプのモジュールやカードを外した時の音を聴いた経験からすると、
アンプの数を安易に増やしたくはない。
フォノイコライザーアンプは、ラインアンプに対して直列に存在する。
もう1組のラインアンプは並列の関係にある。
だからフォノイコライザーアンプの存在がライン入力の音に及ぼす影響と、
ラインアンプがもう1組増えることによる音の影響は、必ずしも同じ変化で、同程度の変化ではないだろうが、
電源を完全に分離できない以上は、電源を介してのループの問題は依然残るし、
ノイズの干渉などについて考えると、2組のラインアンプを用意することは、賢明な手法とは思えない。
次に考えたのはラインアンプの出力段を複数設けることである。
この場合、ラインアンプは1組で、
トランジスターならば、エミッターフォロワーなりコレクターフォロワーの出力段を、
2組の出力が必要であればラインアンプの終段に2組設ける。
NFBはそれぞれの出力からかける。
2組のラインアンプを用意するよりは多少スマートではあるが、
アンプに電源が必要である以上、やはりループの問題を確実に解決できるわけではない。
つまり、604Eは、N1500Aを接いで鳴らすと、ウーファーは逆相接続になる。
プラスの信号が入力されると、コーン紙は前にではなく、後に動く。
もちろんウーファーを正相接続にして、トゥイーターの極性を反転させるという手もあるだろうし、
ウーファーもトゥイーターも正相接続もあるなかで、
アルテックは、ウーファーを逆相にするという手を選択している。
それに直列型のネットワークを採用する例では、ウーファーのプラス端子が、
そのまま入力端子のプラスとなることが多いはずだが、
この点でも、604EとN1500Aの組合せは異る。
スピーカーユニットを逆相にすると、音の表情は大きく変化する。
フルレンジユニットで試してみると、よくわかる。
これらのことをふまえてN1500Aの回路図を見ていると、アルテックの音づくりの一端がうかがえる。
604Eのネットワーク、N1500Aは、クロスオーバー周波数は1.5kHzで、
減衰特性はウーファーは6dB/oct.、トゥイーターは12dB/oct.。
604-8Gのネットワークとはスペックの上では減衰特性が異るわけだが、
もっとも大きな違いはスペックに、ではなく、回路構成にある。
いま市販されている大半のスピーカーのネットワークは、並列型であろう。
604-8Gのネットワークも並列型である。
パワーアンプから見た場合、ウーファーとトゥイーターに、それぞれネットワークの回路がはいったうえで、
並列接続されたかっこうになっている。だからこそ、バイワイアリングという接続方法も可能になる。
直列型は、文字通り、ユニットを直列接続した回路構成となっており、
ウーファーのマイナス端子とトゥイーターのプラス端子が接続される。
12dB/oct.の場合は、並列型と同じようにトゥイーターの極性を反転させることもある。
604Eと直列型のネットワークN1500Aの組合せもその例にもれず、
ウーファーとトゥイーターのマイナス端子同士が接続される。
一見、トゥイーターの極性を反転しているかのように思えるが、
N1500Aの入力端子のプラス側は、トゥイーターのプラス側に接がっている。
黒田先生がアクースタットからアポジーに替えられた理由について、や、「同軸型ユニットの選択」の項を、
これから書いていくにあたってはっきりしておかなくてはならないと思っていることとして、
「ひたる」と「こもる」がある。
たとえば、異常に高価なアクセサリーのはびこりは、「こもり」から生れてきたといえるのではないか……。
音楽性を歪める大きな要因のひとつとなっていくのではないか……。
「こもり」は、オーディオが本来的にもつ性質でもあるからこそ、
聴き手がそこに嵌ってしまうことは、オーディオの罠に知らぬうちに嵌ってしまうことでもあろう。
しかも、「こもり」「こもる」は、ネットワークと結びついてひろがり、
それを本人には気づかせない面ももちはじめているようでもある。