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Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その7)

このリード線の処理は、
ステレオサウンド 87号(1988年)の時代よりも、
いまのほうがより重要なポイントといえる。

いうまでもなくカートリッジ出力信号は微小信号である。
しかも低域においては中域よりもレベルが下っていくし、
ローレベルの信号はさらに下るわけである。

実際に自分で計算してみると、ぞっとするような小さいな値になる。
リニアトラッキングアームではリード線の可動範囲がどうしても大きくなる。
この部分をうまく処理しないと、
アナログディスク再生の魅力を大きくスポイルすることになってしまう。

最近のハイエンドのトーンアームの中にも、
リード線の処理について無頓着な製品をみかける。

自走式プレーヤーとなると、このリード線の処理がネックになる。
なにせトーンアーム自体が毎分33 1/3回転、それが約20分ほど続くわけだから、
どの部分からリード線を引き出して、どうするのかをきちんと考えないと、
実際の再生はおぼつかなくなる。

解決策は、ひとつは考えてある。
ただし、この解決策では実験は可能でも、製品とすることは難しい。
なので、なんらかの工夫がさらに必要となってくる。

それでは実際にサウザーのSLA3と同じ機構のリニアトラッキングアームで、
自走式プレーヤーにするかといえば、
ここにもさらなる工夫が必要となる。

リニアトラッキングアームを自分のモノとして使ってはいないが、
ステレオサウンドの試聴室で使っている。
気づいている点がいくつかある。

その点に関しても、考えていることがある。

Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その6)

ステレオサウンド 87号に「スーパーアナログプレーヤー徹底試聴」が載っている。
副題として、
「いま話題のリニアトラッキング型トーンアームとフローティングがたプレーヤーの組合せは、
新しいアナログ再生の楽しさを提示してくれるか。」
とつけている。

私が担当した企画(ページ)である。
ここで取り上げたのはSOTAのStar SapphireにエミネントテクノロジーのTonearm 2、
オラクルのReferenceにエアータンジェントのAIRTANGENT II、
ゴールドムンドのStudietto、
バーサダイナミックスのMODEL A2.0にMODEL T2.0である。

ゴールドムンドだけがサーボコントロールを採用している、
いわば電動型のリニアトラッキングアームである。

これら四機種は、どれも未完成品といえるアナログプレーヤーばかりである。
87号が手元にある方はページを開いてほしい。

大見出しに
「趣向をかえたプレーヤー試聴。いずれも『未完成』の魅力をもっている。」
とつけている。

この時の試聴は輸入元の担当者にあらかじめセッティングと調整をお願いした。
試聴は、そのセッティングをいじることなく、場所の移動もすることなく、始めた。

それでも一部の機種では不都合が生じ、私が調整しなおすことになった。

実際にこれらのアナログプレーヤーを触ってみると、
未完成品といいたくなる。

もちろんすべてのオーディオ機器が100%完成品といえるわけでもなく、
その意味では少なからず未完成の部分も保留しているけれど、
そういう意味ではなく、もっと積極的な意味での未完成品である。

だから、この記事ではリード線の処理について、写真とともに解説をつけている。

Date: 12月 21st, 2016
Cate: アナログディスク再生

自走式プレーヤーの領域(その5)

1980年代なかば、アメリカからSOUTHER(サウザー)というブランドの、
カートリッジの送りにモーターを使っていた、それまでのリニアトラッキングアームとは違う、
モーターに頼らないタイプのリニアトラッキングアームSLA3が登場した。

日本での当時の輸入元はサエク・コマース。
価格は220,000円していた。

SMEのトーンアームと比較すると、完成度という点では劣る、といえた。
でもモーターを使わないリニアトラッキングアームは、新しく見えた。

サウザーの評価はアメリカの一部では高かったようだ。
その後、エミネントテクノロジー、エアータンジェント、
バーサダイナミックスといったブランドが、
リニアトラッキングアームをひっさげて登場してきた。

サウザーのSLA3はモーターを使わないだけではなく、
アームパイプが存在していないことも目を引く。
パイプがなければ、パイプに起因する問題は起こらないわけで、
このメリットはかなり大きい、といえる。

パイプをなくしたリニアトラッキングアームはSLA3が最初ではなく、
ルボックスのB790もパイプをもたない機構のはずだ。

私がいま思い描いている自走式プレーヤーは、サウザーのSLA3に近いといえば近い。
SLA3は通常のプレーヤー、つまりターンテーブルが回転するプレーヤーに取りつけて使う。

ここで発想を逆転させて、ターンテーブルをストップさせて、
なんらかの方法で SLA3を回転させたら……。
これが出発点になっている。

Date: 12月 20th, 2016
Cate: オーディオ評論

ミソモクソモイッショにしたのは誰なのか、何なのか(その22)

イギリスの英オックスフォード大学出版局が、
今年注目を集めた言葉として「post-truth」を選んだことはニュースにもなった。

客観的な事実や真実が重視されない時代を意味する形容詞「ポスト真実」ということだ。

私の中では、このpost-truthが、
「理解なんてものは概ね願望に基づくものだ」と深く重なってくる。

そしてこのことが現代の資本主義における広告とも密接に絡んでくる、
と受けとめている。

post-truth、
願望に基づく理解、
現代資本主義の広告。

じっくり考える必要がある。

Date: 12月 20th, 2016
Cate: ジャーナリズム

オーディオの想像力の欠如が生むもの(その12)

オーディオの想像力の欠如がしたままでは、おもしろいオーディオ雑誌はつくれない。
それはたがやされていないからだ。

Date: 12月 20th, 2016
Cate: 単純(simple)

シンプルであるために(ミニマルなシステム・その18)

CHORDのHUGOに接ぐのがソナス・ファベールのMinima Amatorではなく、
ロジャースのLS3/5Aだったら……、と想像してしまう。

見た目はMinima AmatorもLS3/5Aもそう大きくは違わない。
サイズも、ユニット構成も近い。
けれどネットワークは大きく違う。

LS3/5Aの特に15Ωのネットワークは、
6dB/oct.のネットワークからすれば、部品点数も多いし、
スロープ特性も、それからロス(損失)に関しても違う。

Minima Amatorのように、LS3/5Aは鳴ってくれるだろうか。

LS3/5Aを、昔GASのコントロールアンプThaedraで鳴らしたことは書いている。
精緻で緻密な音がした。
私にとって忘れられないLS3/5Aの音である。

Thaedraのラインアンプの終段は、
パワーアンプのドライバー段に相当するといえるもので、発熱量もかなりある。
電源も十分ゆとりのある構成だったからこそ、
LS3/5Aから、あの音が聴こえてきた、ともいえるところがある。

Thaedraのラインアンプと電源部と比較すれば、HUGOはスマートすぎる。
それに規模も小さい。
ネットワークが複雑なLS3/5Aをうまく鳴らせるのか、とどうしてもおもう。

うまく鳴るのかもしれない。
インピーダンス的には15Ωという値は、負荷としては軽くなる。
けれど……、という部分がどうしてもつきまとう。

オーディオは鳴らしてみなければわからないところがある。
LS3/5Aの15Ω版も、HUGOはうまく鳴らしてくれる可能性はある。

けれどMinima Amatorとのシステムほどにミニマルといえるだろうか。

Date: 12月 20th, 2016
Cate: 単純(simple)

シンプルであるために(ミニマルなシステム・その17)

その16)にコメントをいただいている。
ソナース・ファベールのMinima Amatorを、
CHORDのHUGOで、直接鳴らされている方からのコメントである。

いい音が鳴っている、とある。
そうだろうと思う。

Minima Amatorは大きなスピーカーではない。
小口径ウーファーとドーム型トゥイーターの小型2ウェイ。
このころのソナス・ファベールのスピーカーシステムのネットワークは、
6dB/oct.のシンプルなものだったはずだ。

6dB/oct.のネットワークはシンプルといえるし、
部品点数からいってミニマルな構成のネットワークでもある。

同じ小型スピーカーで、Minima Amatorと同じ程度の能率のスピーカーであっても、
ネットワークが複雑な構成であったならば、
HUGOで直接鳴らしての結果は、少し違ったものになる可能性がある。

HUGO + Minima Amatorhは、ミニマルなシステムといえる。
もちろん制約もある。
Minima Amatorの能率はさほど高くない。
パワーアンプなしなのだから、音量を望むことはできない。

その意味で、音量面でのミニマルといえる。
それだけに、深夜ひとりでしんみりと、
ひっそりとした雰囲気を漂わせる音楽に聴き耽るのであれば、
これで充分ではないか、と思わせてくれるだけでなく、
これ以上はむしろ邪魔なのでは、と思わせてくれるのかもしれない。

Date: 12月 20th, 2016
Cate: 型番

デンオンの型番(その4)

DL103が登場する前に、モノーラルのMC型カートリッジDL102がある。
DLナンバーになったのは、DL102の方が先である。

facebookでのコメントには、DLのLは、
DL102になり、それまでのPUCシリーズよりも針圧が軽くなっていて(それでも3g)、
当時としては軽量針圧カートリッジということで、
ライト(light)ではないだろうか、とあった。

なるほど、そういう考えもあるな、と思った。
Lから始まる単語は多い。
知っている単語よりも知らない単語の方が多いのだから、
何が正解なのかは、当時のデンオンの人以外わからない。

だからこそ、こうやって考える楽しみがある、ともいえる。

デンオンの型番では、オープンリールデッキのそれもはっきりとしない。
DHから始まる型番なのだが、
DはDENONの頭文字だろうが、Hがまったく見当がつかない。

ちなみにカセットデッキはDRで始まる型番で、
こちらはおそらくDENON Recorderであろう。

Date: 12月 20th, 2016
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その9)

ダイヤトーンのDS1000は、レスポンスに優れたという意味では優秀なスピーカーといえる。
クセのまったくないスピーカーとはいわないが、
特に目立った大きなクセはない。

これはレスポンスの良さを追求した結果であろう。
その意味で、DS1000はスピーカーを鳴らす基本を身につけるための道具としては、
相当に優秀といえる。

オーディオマニアとしての腕。
それを身につけ磨くためには、何が必要なのか。
まず道具が要る。
オーディオのシステムである。
特にスピーカーシステムは重要といえる。

そしてひたすら鳴らして込んでいくわけだが、
オーディオはどうしても、いわば独学となってしまうことが多い。

リスニングルームという個室で、ひとりで音を追求していく。
誰かのリスニングルームに行き音を聴き、
自分のリスニングルームに来てもらい音を聴かせる──、
ということをやっても、実際の音の追求はひとりでの作業であり、
その作業において、誰からに見られているわけでもないし、
誰かのその作業をつぶさに見ているわけでもない。

私は使いこなしについてきかれると、
セックスにたとえる。
たとえが悪いと眉をしかめる人もけっこういるが、
どちらも密室での行為である。

誰かのセックスという行為を、
最初から終りまで傍らでじっと見ていたという経験を持っている人は、ごくわずかだろう。
他人のセックスという行為を見る機会はまずない。

アダルトビデオがあるとはいえ、あれは一種の見せ物としての行為であり、
あそこでの行為のすべてを、実際の行為への参考とするわけにはいかない。

結局相手の反応をみながら、身につけていくというところは、
オーディオの使いこなしもセックスも同じ行為と考えている。

つまり、どちらもひとりよがりになる、という点も共通している。

Date: 12月 20th, 2016
Cate: オーディオ評論

オーディオ評論をどう読むか(その3)

オーディオ雑誌の編集者は、何をわかっているべきなのだろうか。
そのことを考えることが多くなった。

ステレオサウンドをはじめ、オーディオ雑誌がつまらなくなった、
もっといえばダメになっているからだ。

ダメになったオーディオ雑誌に何を期待する?
と言われようが、私はやはりおもしろいオーディオ雑誌を読みたい。

オーディオには読む楽しみが確実にある。
その楽しみを満たしてほしい、と思いながら、ブログを書いているところがある。

おもしろいオーディオ雑誌に、いまあるオーディオ雑誌がなってくれたら、
ブログを書くのは終りにしてもいい、と思っている。

残念ながら、その傾向は感じられないから、書いている。
今日も書いている。

書き手には書き手の気持がある。
読み手には読み手の気持がある。
時として、書き手と読み手の気持が重なるところに発する光がある、
私はそう感じている。

その光を感じたいのだ、オーディオ雑誌に、オーディオ評論に。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これまで(ラックスCL32・その7)

型番とは、そのオーディオ機器のいわば名前である。
名前をおろそかにつける親はいないのとと同じで、
きちんとしたメーカーであれば、自社製品の型番をおろそかにはしない。

そして型番にはそれぞれのメーカーにつけ方のルールがあろう。
アルファベットと数字の組合せからなるのが、大半の型番だけに、
アルファベットが示す意味と、数字が示す意味とは分れる。

ラックスの型番にもルールがあった。
あえて過去形で書いている。

前回(その6)で書いているように、
最初のアルファベットが二文字のときは数字との間にハイフンは入らない、
一文字の場合は数字との間にハイフンがはいる、というルールがあった。

どういう意図で、この型番のつけ方が決ったのかはわからない。
これは知りたいと思っていることのひとつである。

歴史の長いメーカーだと、そのルールをつくった人がすでにいないことも多い。
明文化されていないルールなのかもしれない。

だからいまのラックスはアルファベットが二文字でもハイフンを入れている。
ルールは時代によって変っていってもいい、と考えている。

でも、ラックスの型番に関しては、アルファベット二文字でもハイフンが入るのには、
わずかとはいえ違和感を感じてしまう。
ラックスらしさが消えてしまったかのようにも感じるのだ。

ささいなことといえば、確かにそうだ。
でも、そのささいなルールを変えたのか、破ってしまったのか、
それともルールがあったことすら知らないのか。

ならば型番自体も大きく変えてしまえばいいと思うのだ。
以前からある型番を受け継ぎながらつけていくのであれば、
そこにあったルールを守るべきだ、と私は思う人間だ。

しかも、同じことがラックスの場合、
アンプのパネルフェイスに関してもいえるのが、深刻なように感じてしまう。

LX380を見て、伝統のデザインといえるだろうか。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: 型番

デンオンの型番(その3)

カートリッジと書いているけれど、
正確にはピックアップカートリッジ、フォノカートリッジであり、
カートリッジ(cartridge)には、薬莢、弾丸という意味がある。

デンオンのカートリッジの型番DLのLが何をさすのか。
ロード(load)と思ったのは、このことと関係する。

loadにはいくつかの意味があり、そのひとつに、
〈銃砲に〉弾丸を込める、装填する、がある。

ピックアップカートリッジ(そういえば、DL以前はPUCという型番だった)を、
トーンアームに装着する意味をこめてのロード(load)かもしれない。

さらにloadには、読み込むという意味もある。
〔ディスクなどから〕 〈プログラムなどを〉(本体の主記憶に)ロードする、読み込む、である。

アナログディスクから情報を読み込むのもloadである。

このふたつの意味からDLのLをロード(load) と考えたわけだ。
これが正しいのかはわからない。
他の意味があるのは、それとも意味などなかったのかもしれない。

さらにロードには、lordもある。
映画「ロード・オブ・ザ・リング」のロードであり、
イギリスのドラマ「Doctor Who」に登場するタイムロードのロードも、lordのロードである。
(オーディオの輸入商社のタイムロードは、ここからとられている。)

lordは主君、支配者のことである。
ディスクの主君のDL。これもあるのかもしれない。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: オーディオ評論

ミソモクソモイッショにしたのは誰なのか、何なのか(その21)

沖縄でのオスプレイの不時着。
このニュースで放送された海中の写真。
オスプレイの残骸のひとつに、計測用のマークがあった。

円を四等分して黒と黄色で塗り分けたマークである。
このマークを放射性物質のマークと捉えた人がいて、
SNSでオスプレイには放射性物質が積まれていた、
そのことを多くの人に知ってもらうために拡散してほしい、と書いている人がいた。

「オスプレイ 放射性物質」で検索すれば、
その後、その人がどういう訂正(とはいえない手直し)を行ったかもわかる。

計測用のマークと放射性物質を表すマークは色だけが共通しているだけで、
図そのものは大きく違う。
にも関わらず、その人は計測用のマークを放射物質のマークと捉えた。

これも願望に基づく理解である。
その人にとっての願望とは沖縄からの米軍の徹底であろうし、
そのためにオスプレイを貶めることでもあろう。

そういう願望のもとに、計測用のマークを見れば、
放射性物質のマークという理解になるのかもしれない。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: ジャーナリズム

オーディオの想像力の欠如が生むもの(その11)

オーディオの想像力の欠如によってたがやせないのは情報だけではない。
技術もである。

Date: 12月 19th, 2016
Cate: ジャーナリズム

オーディオの想像力の欠如が生むもの(その10)

オーディオの想像力の欠如が生むのものひとつに、「たがやすことのできない人」がいる。