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Date: 11月 6th, 2017
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL 4301・その17)

オーディオ機器を家電製品という括りで捉えている人にとっては、
JBLブランドの製品が、昔では考えられなかったほどの低価格で買えるのは、
文句をいうことではないのかもしれないが、
オーディオは家電製品とは違う。

そういうと、日本では家電メーカーがオーディオをやっていたではないか、と返される。
そんなイメージが残っているようだが、
オーレックス(東芝)、Lo-D(日立)、ダイヤトーン(三菱電機)は、
家電も製造しているけれど、重電メーカーである。

テクニクス(松下電器)は家電メーカーといわれれば確かにそうだったが、
オーディオを家電製品として見られるのには、抵抗したくなる。

家電メーカーの製品として見る目には、
Control 1は身近なJBLブランドの商品なのだろうが、
4301が欲しくとも買えなかった時代を送った者にとっては、
羨ましいことだと全く思えない。

私もJBLのJBL Goは持っている。
Control 1よりさらに安いJBLであり、Bluetooth対応のスピーカーである。

でも、それは4301が欲しいと思ったのと同じ気持なわけではない。
JBLというロゴのステッカー、しかも音が出る立体的なステッカー、
そういう気持もあって買った。

なのでオレンジ色を買った。
ブログを書いているとき、常に視界に入ってくるところに置いている。

その15)で、4301にヴィンテージとつけて売る中古オーディオ店があることを書いた。
時代の軽量化だ、とも書いた。

時代の軽量化はControl 1から始まった。
さらに軽量化は進んでいる。

Date: 11月 6th, 2017
Cate: 世代

世代とオーディオ(JBL 4301・その16)

私の世代にとって、4301はもっとも身近な、
いいかえればどうにかすれば手が届きそうなところにいてくれている存在だった。

当時のJBLの輸入元サンスイからは、
LE8Tを搭載したSP-LE8Tもあったが、わずかとはいえ4301のほうが廉かった。
それにユニットはどちらもJBLとはいえ、
フロントバッフルにJBLのロゴがあるのとないとは、
10代の若者にとっては、大きな違いでもあった。

つい先日のヘッドフォン祭にもJBLの製品は展示されていた。
ヘッドフォンがあり、イヤフォン、Bluetooth対応のスピーカーなどがあった。
ずいぶん身近に(安く)なったものだ──、と思ってしまうのは、
歳をとったからだけが理由ではないはずだ。

1986年にControl 1が登場した時も、同じように思っていた。
憧れの存在といえたJBLが、こんなに身近なところまで降りてきたことを、
素直に喜べない自分は、オーディオマニアからそうなのか、
それともなにか釈然としない気持は、他のところに理由があるからなのか。

Control 1でも、JBLのスピーカーである。
それでもBOSEの101MMの登場と、あの売行きがなければ、
Control 1は登場してこなかったスピーカーともいえる。

Control 1は43,800円(ペア)だった。
暫くしたから円高ドル安のおかげで四万円を切っていた。

Control 1はロングセラー商品でもあった。
コンシューマー用のControl 1は製造中止になったが、
プロフェッショナル用のControl 1 Proは現行製品だ。

Date: 11月 6th, 2017
Cate: ロマン

ダブルウーファーはロマンといえるのか(妄想篇)

2016年3月のaudio wednesdayで、
「マッスルオーディオで聴くモノーラルCD」と題して、
JBLのホーン2397に、スロートアダプター2329を使って、
ドライバー2441をダブルにして取り付けたことがある。

2441は二本しか持っていない。
そのためモノーラル再生に特化させることで、
ウーファーもエンクロージュアを二台くっつけるようにセッティングしての、
2441のダブル使い(鳴らし)であった。

2441が四本あれば、ステレオ再生でもダブルにできる。
これはなかなか実現しそうにない、と思っていたが、
いま預かりモノの375がある。

そうだ、そうだ、と気づいた。
2441と375をパラって鳴らせば、ダブル・コンプレッションドライバーとなる。
もちろん375もしくは24414が四本あったほうがいいけれど、
375と2441の混成部隊でもやれる。

コンプレッションドライバーのダブル使いに批判的な意見をもつ人はいる。
まして375と2441という、基本的には同じであっても細部が違うドライバーでダブルなんて……、
と少なからぬ人がそう思うだろうが、
スピーカーばかりは実際に音を鳴らしてみないことには、何もいえない。

うまくいく可能性だってある。
頭で考えるよりも、試せるのであれば試してみるほうがいい。

audio wednesdayで、やる予定でいる。
(ただし運搬が大変なので、いつになるかは未定である)

Date: 11月 6th, 2017
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その13)

国産のエレクトリッククロスオーバーネットワークだと、私が記憶している範囲では、
オンキョーのD655NII、パイオニアのD23、サンスイのCD10、ビクターのCF7070、
テクニクスのSH9015Cなどが、
ローパスフィルター、ハイパスフィルターのカットオフ周波数の独立可変仕様である。

これらのメーカーは、スピーカーシステムも積極的に開発してきていた。
おそらく内蔵ネットワークの開発において、
ローパスとハイパスのカットオフ周波数は離れているケースがあるのかもしれない。

古くはマランツのModel 3(1957年発表)がそうだった。
日本製になってからのマランツのAD5、AD6もそうである。
海外製品ではSAEのMark 4000があった。

マランツはスピーカーシステムも手がけていたが、
1957年当時はアンプ専門メーカーであった。
にも関らずカットオフ周波数の独立設定が可能になっていたのは、
設計者(マランツなのだろうか、シドニー・スミスなのだろうか)のノウハウから、か。

ヤマハのEC1はクロスオーバー周波数の選択はローパス、ハイパスで共通なのだが、
ローパス、ハイパスには、連続可変のクロスオーバー微調整ツマミが独立して付いている。
このツマミによって±0.5オクターヴ範囲内ではあるが、カットオフ周波数を独立可変できる。

エレクトリッククロスオーバーネットワークも製品数は、
時代とともに少なくなってきている。
それでもアキュフェーズは一貫して開発し続けてきている。
現在もデジタル信号処理によるDF65が現行製品である。

けれどそれまでのアナログ式で、
しかもカードを差し替えてのクロスオーバー周波数の変更の製品では、
ローパス、ハイパスのカットオフ周波数を独立させることはできなかった。

オーレックスのSD77は2ウェイ、3ウェイ対応で、
クロスオーバー周波数ポイントが細かく設けられているため、
2ウェイでは、ハイパス、ローパスのカットオフ周波数を独立させた使い方も可能である。

だからアキュフェーズの場合も3ウェイ用としてカードを搭載して、
ローパス、ハイパスのカットオフ周波数をそれぞれ設定することは可能なのだが、
コストのかかる使い方である。

その意味では、他社製のエレクトリッククロスオーバーネットワークでも、
2ウェイ仕様のモノを複数台使うことで、同じことはできるが、
こちらはさらにコスト的に負担が大きくなる。

アキュフェーズのエレクトリッククロスオーバーネットワークを、
スピーカーシステムを自作する側からみると、
アンプ専門メーカーとしての製品なのだ、とおもえてくる。

けれど、アキュフェーズ創立メンバーであった春日二郎氏、出原眞澄氏は、
ホーン型を中心とした自作スピーカーだったのに……、とも思ってしまう。

Date: 11月 5th, 2017
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その12)

スピーカーシステムを自作する人で、
ネットワークも自身で設計し組み立てている人は、どのくらいの割合なのだろうか。

1970年代まではスピーカーユニットが、各社から出ていた。
日本のメーカーもけっこうあったし、海外のメーカーも多かった。

ユニットの種類も多かった。
ホーン型は、特にそうだった。
ネットワークも各社から出ていた。

JBLのユニットで自作する人は、大半がJBLのネットワークを使っていた、と思う。
アルテックにはアルテックのネットワーク、
オンキョーにはオンキョーのネットワーク……、というように選択していた。

それでも自作の醍醐味は味わえるが、ネットワークも手がける人もいたはずだ。
だからこそコイルやコンデンサー、アッテネーターといったパーツも販売されていた。

自分でネットワークを設計しようとなると、カットオフ周波数、スロープ特性をどうするのか。
自作であれば、試作と試聴を重ねながら、聴感上の好ましいポイントを探っていく。
そのためにはコイルにしてもコンデンサーにしても、さまざまな値を必要となる。

これは想像以上に手間のかかることである。
ならばマルチアンプドライヴにすれば、
エレクトリッククロスオーバーネットワークのスイッチで、
クロスオーバー周波数、スロープ特性を変えられる。

パワーアンプの数は増え、システムとしては大がかりになっても、
試行錯誤のためには、マルチアンプドライヴが向いてそうだ、と誰だって思うだろう。

私も学生のころは、そう思っていた。
けれど実際のスピーカーシステムの難しさを知るにつれ、
考え方は少し変ってきた。

エレクトリッククロスオーバーネットワーク(チャンネルデバイダー)では、
カットオフ周波数を低・高域個別に設定できる仕様のモノが意外に少ないからだ。

Date: 11月 5th, 2017
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その11)

「誌上シンポジウム システムスピーカー使いこなし」での組合せ例18の中の2例。
2ウェイから、トゥイーターを加えた3ウェイへの組合せ例について書いた。

古いスピーカーの教科書に載っているやり方とはそうとうに違う、
メーカーの実際のやり方のほんの一例である。

2ウェイにしても低域・高域のカットオフ周波数は離れていて、
トゥイーターが加わることで、高域側のカットオフ周波数が変る場合と同じ場合とがある。

組み合わせるスピーカーユニットの能率が完全に同じならば、
ネットワークの設計はそれだけでも楽になるが、現実にはそうではない。

市販されているスピーカーシステムでも、厳密にいえばレベルコントロールをいじれば、
クロスオーバー周波数はわずかとはいえ変っていくものであることは、以前にも書いている。

ここではオンキョーのシステムスピーカーの詳細について書くのが目的ではなく、
ネットワークの設計(カットオフ周波数の決め方)にしても、
古い教科書に縛られていたら、
うまくいかないことがある(むしろその方が多いのかもしれない)ということだ。

記事の最後のほうで、瀬川先生が語られている。
     *
瀬川 一番初めに、スピーカーシステムの自作が難しくなっているということを言ったのですが、とくにこのシリーズで顕著なのはネットワークのフィルターの考え方なんですね。これは専門家の間でもずっと前からいわれてきたことであるにもかかわらず、スピーカーシステムの入門書、教科書を見ると、いまでも遮断周波数から6dBや12dBか18dBかというような、机の上でのネットワークしか出ていない。ところが、実際のスピーカーというのは、定規で引いたような一直線の特性ではないんだから、スピーカーの特性に合わせてネットワークの遮断周波数とカーブをかなり有機的に選んでいかないと、マルチウェイというのはうまくいかないということを、製品で示した功績は大きいと思います。
 少なくともこのインストラクションを隅から隅まで時間を眺めていますと、いままでの机の上の理論では説明できないことがいっぱい出てきます。われわれも今回、ここで音を聴きながら、そうじゃない方向、そうじゃない方向と悪あがきしてみたけれども、結局はこの不思議な遮断特性をもったフィルターがやっぱりうまくいくということを、再確認させていただいたみたいなことで、フィルターの難しさというのを、このネットワークは面白く教えてくれますね。
     *
インストラクション(レイアウトブック)と「誌上シンポジウム システムスピーカー使いこなし」。
このふたつを熟読するだけでも、スピーカーシステムの面白さが伝わってくると思う。

いまごろになって、オンキョーのレイアウトブックを手に入れておけばよかった……、
少し後悔している。

Date: 11月 5th, 2017
Cate: バランス

Xというオーディオの本質(その1)

別項「音のバランス(その4)」で、
X(エックス)というアルファベットを両天秤だと思っている、と書いた。

Xは二本の線によって描かれている。
一本は輪廻、もう一本は相剋。

Xが示しているのは、輪廻と相剋のバランスなのだろう。

Date: 11月 5th, 2017
Cate: スピーカーの述懐

あるスピーカーの述懐(その10)

聴き手を試さなくなったスピーカーは、
聴き手を育てなくなったスピーカーとするならば、
読み手を試さなくなったオーディオ雑誌は、
読み手を育てなくなったオーディオ雑誌ともいえる。

Date: 11月 5th, 2017
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その10)

システムナンバー122000も2ウェイだが、
システムナンバー100220とは、ウーファーはW3801で同じなのだが、
ドライバーとホーンが、D5020AとH2004Rになっている。

H2004Rはカットオフが420Hzのラジアルホーンで、
D5020Aとの組合せでの再生周波数の下限は600Hzと発表されている。

システムナンバー122000では、このホーンの採用により、
ネットワークはN900CLとN1800CHとなっている。

ローパスのカットオフ周波数は90Hzで、100220と同じ、
ハイパスのカットオフ周波数は1.8kHzと、100220よりもかなり低くなっている。
それでもカットオフ周波数は1オクターヴの開きがあって、
クロスオーバー周波数は1.2kHzあたりである。

この1222000にトゥイーターTW3001を追加して3ウェイにした122001のネットワークは、
N900CLとN1800CHの組合せに、N15000BLとN9900BHが追加されている。

N15000BLはカットオフ周波数15kHzのローパスフィルター、
N990BHはカットオフ周波数9.9kHzのハイパスフィルターである。

つまりドライバーD5020Aのハイパスのカットオフ周波数は1.8kHzで、
ローパスのカットオフ周波数は15kHzで、
トゥイーターTW3001のハイパスのカットオフ周波数は9.9kHz。

ネットワークのスペックだけをみると、
トゥイーターのカットオフ周波数が、スコーカーのカットオフ周波数よりも低い。
けれど3ウェイを構成する三つのユニットの出力音圧レベルには違いがあり、
ネットワークのあとにはレベルコントロールが入る。

発表されているネットワーク特性はユニットのレベルを揃えたものであり、
グラフをみるとスコーカーとトゥイーターのクロスオーバー周波数は12kHzあたりである。

Date: 11月 5th, 2017
Cate: 新製品

新製品(Martin Logan・その3)

弦楽四重奏は弦楽三重奏か、という表現は少し強すぎたかな、と思わないわけでもない。
それでもCLSはアクースティック楽器のもつ胴(ボディ)の存在をなくしてしまうような、
そんな感じがどうしてもつきまとってしまうこと、
そしてそのことをどうしても払拭できなかったから、購入を諦めた。

ブーミングは、オーディオの世界では悪い意味で使われることが多い。
けれど良い意味でのブーミングは不可欠な要素であり、
アクースティック楽器の再生において、楽器のブーミングの再現は重要である。

CLSの音に、私はアクースティック楽器のブーミングを感じとれなかった。
だからチェロにおいては、ボディがない(とまで書くと少し行き過ぎ表現だが)。

弦だけで弦楽器は成り立っているわけではない。
ボディの存在を無視したような、弦だけで音が鳴っているような感じを、
《その音の粒立ちの良さ、軽々と漂う響きのしなやか》と表現することはできないわけではない。
が、それでも音の聴き方、判断というよりも、音の表現は人によって違う、ということを、
「オーディオ名機読本」を読むと、改めて実感する。

CLSに惚れ込んだAさんは、オーディオ店でもいい音が聴けたことがない、といっていた。
それでも彼はCLSを買っている。
ここが私と違うところで、たいしたものだと素直に思う。

そういうAさんとマーティンローガンの話をしていて、
そういえば、マーティンローガンという会社もいまも存在しているのか、と思った。

日本にはいま輸入しているところはない。
輸入されなくなって久しくすると、存在も忘れがちになってしまう。
昔なら、そこでまた忘れてしまうところだが、
いまはインターネットと、優れた検索機能、それにスマートフォンがあるおかげで、
帰りの電車のなかで検索してみたら、マーティンローガンは健在だった。

CLSはなかった。CLSの後継機もない。
けれどCLX ARTがあった。

Date: 11月 4th, 2017
Cate: 新製品

新製品(Martin Logan・その2)

CLSが登場した頃の東京には、
CLSに惚れ込んだ人が店主のオーディオ店があった。

Aさんはそのオーディオ店に行き、音を聴いている。
私はステレオサウンドで働いていたから、試聴室で聴いている。

音を聴くとがっかりする。
Aさんもそうだった、ときいた。

それでもAさんはCLSを買っている。
自分のモノとして鳴らせば……、というおもいがあったからだ。

私も、きちんと鳴らせば、きっといい音が出てくるはずだ、とおもっていた。
それでもステレオサウンドの試聴室で、一度として満足な音では鳴ってくれなかった。

諦めきれなかった。
絶対にいい音で鳴るはず、そんな思い込みさえ持っていた。

とにかくCLSは低音が、ない。

傅信幸氏が「オーディオ名機読本」に、CLSの音について書かれている。
     *
良質で駆動能力の高いアンプで駆動してやると、おそろしく音の透明度が高く、晴れやかで、虫眼鏡で覗いたように音の細部を鮮明に提示する。ローレベルへの深い深い音の表現力にかけては絶品で、ヴォーカルの息遣いなどぞくぞくとさせられるリアルさである。
 左右のCLSの間には、広く深いサウンドステージが展開される。その音場の見透しのよさは清々しく、まるでCLSの周囲の空気がきれいになった感じさえする。そうしたサウンドステージに、楽器がリアルに浮かび上がる。
 大音量で体ごと振動する聴き方をしたいというのは無理だ。オーケストラを堂々と咆哮させ、往年の4ビートのジャズをねっちこい音でバリバリと鳴らすのには向かない。
 しかし、弦楽四重奏やバロックアンサンブル、ギターによる小品を聴くと、その音の粒立ちの良さ、軽々と漂う響きのしなやかさに、うっとりさせられる。
     *
残念ながら、こういう音で鳴っているCLSは聴いたことがない。
弦楽四重奏は弦楽三重奏かといいたくなるような鳴り方だ。
バロック音楽でも通奏低音はどこに? といいたくなる。

低音がいない音だと、
ヴォーカルの息遣いにぞくぞくとさせられることもない。

ステレオサウンドの試聴室だから、アンプは駆動能力の高いモノで鳴らしている。
しかも一度だけではない。
もちろん《大音量で体ごと振動する聴き方》は求めていない。

CLSにはうるおいがなかった。
これも低音がないためなのだろうか。

このうるおいのなさが、私にヴォーカルの息遣いを生々しく感じさせてくれない。
買う一歩手前だったから、CLSを諦めるのに時間がかかった。
そのくらい思い入れをもっていた。

Date: 11月 4th, 2017
Cate: 新製品

新製品(Martin Logan・その1)

昨晩(11月3日)も、友人のAさん(オーディオマニア)と飲んでいた。
知り合って12年。ふたりとも1963年生れ。
彼も私も4343に憧れていた。

音楽の好みは違う。
音の好みも同じところもあれば違うところもある。
にも関らず、思い入れをもってきたスピーカーには、いくつか同じモノがあったりする。

昨晩もそんな話をしていた。
1980年代中頃にマーティンローガンのCLSが日本に入ってきた。

いまマーティンローガンの輸入元はないから、
忘れられつつあるブランドと、日本ではなりつつあるのかもしれない。

けれどCLSを、あの時代に接した者は、そう簡単に忘れることはできない。

CLSはフルレンジのコンデンサー型スピーカーである。
湾曲した黒のパンチングメタルが二枚。
これが固定電極であり、その間に振動膜(フィルム)があるわけだが、
これが他のコンデンサー型スピーカーとは異り、透明だった。

フィルム単体で見れば、ほんのり色がついているのがわかるとのことだが、
スピーカーシステムとして二枚のパンチングメタルに挟まれた状態では、透明である。

後の壁がスピーカーを通して見ることができる。
こんなスピーカーは、それまでなかった。

当時20代前半だった私は、CLSに一目惚れだった。
Aさんもそうだった(ときいている)。

そうだろう、そうだろう、と思う。
話は続く。
CLSの音の話になっていく。

Date: 11月 4th, 2017
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(終のリスニングルームなのだろうか・その11)

話は少しそれるが、今日、ヘッドフォン祭に行ってきた。
行ってきたといっても16時40分ごろに着いて、ぐるっと一周して見てきただけ。

中野サンプラザの6偕、11階、13階、14階、15階を使って展示なだけに、
かなりの数のヘッドフォン、イヤフォン、ヘッドフォンアンプなどが並んでいる。

しかも来場者もヘッドフォン、イヤフォンをしていたりするわけだから、
一周するだけで、どれだけの数のヘッドフォン、イヤフォンを見たのだろうか。

音は聴いていない。
見ただけであるからこそ、ひときわ印象にのこったヘッドフォンがあった。
AKGのK1000である。

AKGのブースにあったわけではない。
すでに製造中止になってかなり経っているのだから。

あるヘッドフォンアンプメーカーのブースに、K1000があった。
K1000が登場した1990年に見た時の印象よりも、
今回の印象のほうがずっと強い。

いまどきのヘッドフォンの中に、ぽつんといたK1000は1990年当時よりも美しく見えた。

Date: 11月 3rd, 2017
Cate: audio wednesday

第83回audio wednesdayのお知らせ

12月のaudio wednesdayは、6日。

音出しを予定しています。
テーマはまだ決めていません。
トゥイーターは今回もJBLの075を持参します。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 11月 3rd, 2017
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その9)

「世界のオーディオ」オンキョー号の「誌上シンポジウム システムスピーカー使いこなし」では、
173の組合せ例の中から、18例の試聴が行われている。
記事には、ネットワーク特性のグラフと、
システムトータルの周波数特性グラフが載っている。

これらのグラフは、おそらくレイアウトブックに掲載されていたものだろう。
レイアウトブックは、1,500円(価格1,000円、送料500円)を、
現金書留でオンキョーの宣伝課に送付すれば手に入れることができた。

システムナンバー100220のネットワーク特性をみると、
たしかにウーファーは900Hzのカットオフ、
トゥイーターは5kHzのカットオフであることが確認できるし、
クロスオーバー周波数は1.75kHzあたりになっていることもわかる。

周波数特性をみると、1.75kHzあたりの音圧はやや低下気味ではあっても、
深く落ち込んでいるわけではない。

「誌上シンポジウム システムスピーカー使いこなし」の冒頭で、
瀬川先生の次のようなことを発言されている。
     *
 ある時期、自作というのは難しいものでした。メーカーのユニット技術がだんだん上がるにつれて、ユニットどうしをうまく組み合わせるためには、いままでの古い教科書に出ていたようなネットワークやアッテネーターでは、うまくいかないということがいわれ始めた。いわれ始めたにもかかわらず、ではどうしたらいいのかというと、そこに何の手がかりもなかったわけです。ところが、この全システムを見ると、ネットワークなどもいままでの常識から全然外れたような、メーカーサイドで製品としてやっていたことを、ユニットでアマチュアに公開してしまったみたいな、ある意味ではメーカーがスピーカーシステム作りの手の内を半ば見せてしまったような面白さもあると思います。
     *
システムナンバー100221は、
100220にスーパートゥイーターとしてTW3001を加えた3ウェイの組合せ例である。
ここでのネットワークは、ウーファーにはN900CLと100220と同じだが、
ミッドレンジはドライバーとホーンは同じにもかかわらず、N3400CBに変更されている。

N3400CBは、バンドパスフィルターで、
ローカットは3400Hz、ハイカットは17kHzとなっている。
このネットワークはTW3001用の出力ももち、
コンデンサーがひとつ直列に挿入されるようになっている。

TW3001が加わり3ウェイとしてまとめるためなのだろう、
ミッドレンジのカットオフ周波数が5kHzから3.4kHzへと低くなっている。
そのことにより、ウーファーとのクロスオーバー周波数は1.5kHzあたりとやや低くなっている。

そのことにより周波数特性のグラフにも変化がある。
高域のレンジがのびているだけでなく、
ウーファーとミッドレンジのクロスオーあたりにも変化がみられる。