Date: 5月 20th, 2012
Cate: 現代スピーカー

現代スピーカー考(その27)

スピーカーの振動板を──その形状がコーン型であれ、ドーム型であれ、平面であれ──
ピストニックモーションをさせる(目指す)のは、なぜなのか。

スピーカーの振動板の相手は、いうまでもなく空気である。
ごく一部の特殊なスピーカーは水中で使うことを前提としているものがあるから水というものもあるが、
世の中の99.9%以上のスピーカーが、その振動板で駆動するのは空気である。

空気の動きは目で直接捉えることはできないし、
空気にも質量はあるものの普通に生活している分には空気の重さを意識することもない。
それに空気にも粘性があっても、これも、そう強く意識することはあまりない。
(知人の話では、モーターバイクで時速100kmを超えるスピードで走っていると、
空気が粘っこく感じられる、と言っていたけれど……)

空気が澱んだり、煙たくなったりしたら、空気の存在を意識するものの、
通常の快適な環境では空気の存在を、常に意識している人は、ごく稀だと思う。

そういう空気を、スピーカーは相手にしている。

空気がある閉じられた空間に閉じこめられている、としよう。
例えば筒がある。この中の空気をピストンを動かして、空気の疎密波をつくる、とする。
この場合、筒の内径とピストンの直径はほぼ同じであるから、
ピストンの動きがそのまま空気を疎密波に変換されることだろう。

こういう環境では、振動板(ピストン)の動きがそのまま空気の疎密波に反映される(はず)。
振動板が正確なピストニックモーションをしていれば、筒内の空気の疎密波もまた正確な状態であろう。

だが実際の、われわれが音を聴く環境下では、この筒と同じような状況はつくり出せない。
つまり壁一面がスピーカーの振動板そのもの、ということは、まずない。

Date: 5月 19th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(微小か微弱か)

MC型カートリッジは、一部の製品を除けば出力電圧はMM型(IM型、MI型などを含め)カートリッジよりも低い。
おおまかにいって一桁低い出力電圧である。

カートリッジの信号がもともと微小信号で、
MC型ではさらに低くなるためか、微弱な信号という表現をする人もいる。
オルトフォンのSPU-Aのカタログ上の出力電圧は、0.25mV(5cm=/sec.)、
シュアーのV15 TypeIIIは3.5mVだから、この電圧の差は大きいと感じるし、
SPU-Aの出力を、V15 TypeIIIよりも微弱だという思いたくもなるだろう。

このふたつのカートリッジを例にあげたのは、
1978年秋にステレオサウンドから発行されたHIGH-TECHNIC SERIESのVol.2、
「図説・MC型カートリッジの研究」で、
長島先生が「MC型カートリッジの特性の見方」の章で取り上げられているからだ。

1978年秋だから私は高校1年になっていた。オームの法則は中学校で習うからもちろん知っていた。
知ってはいたものの、「図説・MC型カートリッジの研究」を読んで、知っていただけなのを知った。
そしてカタログの数値の見方も知ることとなった。

長島先生はSPU-AとV15 TypeIIIを比較されている。
このふたつの出力電圧は上に書いた通り。
SPU-AはMC型だから負荷インピーダンスは低く、1.5Ω、V15 TypeIIIはMM型だから47kΩ。

電圧と抵抗(負荷インピーダンス)がわかっているから、出力電流がオームの法則から導き出せる。
SPU-Aの出力電流は166μA、V15 TypeIIIは0.106μAと、
出力電圧ではV15 TypeIIIのほうが10倍以上高い値だったが、電流値は逆転して1000倍以上SPU-Aが高くなる。

このことは出力電力の大きさに関係してくる。
電力は電圧×電流だから、SPU-Aは41.66nW、V15 TypeIIIは0.2606nWと、
約160倍近く SPU-Aの方が大きいわけだ。
(説明のため電流を書いているけれど、電力は電圧の二乗を負荷インピーダンスで割れば算出できる。)

これだけの電力の違いがあると、MM型カートリッジよりもMC型カートリッジの信号が微弱とは書けない。
そしてつねにインピーダンスに注意を払うようになった。

Date: 5月 18th, 2012
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(原音→げんおん→現音)

現音──、現れた音は、つまりは再生音のことである。

マイクロフォンが捉えた空気の疎密波を電気信号に変換し処理し、
LP、CD、ミュージックテープという形態で聴き手に届けられたモノから、
ふたたび電気信号に変換しスピーカーを駆動して空気の疎密波をつくり出すことで、
音が、そして音楽が聴き手の前に現れるわけだから、現音=再生音ということになる。

ただこれではあまりにも当り前すぎて、あえて当て字を当て嵌めて考えていく意味がない。
現音=再生音から離れたところでの現音とは、
何かを変えたり調整がうまくいったこ聴き手に姿を現す音のことだともいえよう。

昔はよく「レコードにはこんな音まで刻まれていたのか!」という表現が使われていた。
それまで聴こえてなかった音、意識されなかった音がはっきりと意識できるようになれば、
これはまさに現音であり、現音のいい例でもある。

調整の過程では時として使っているオーディオ機器の限界が見えてくることもある。
それまではそのオーディオ機器の音の個性として感じられていたのに、
そうなってしまうと音のクセとして気になってしまう。これも現音の一例だと思う。

「現」という漢字には、いままでみえなかったものがみえるようになるという意味がある。
だから、いままで聴こえてこなかった音がきこえてくるようになるのも現音であるわけだが、
その一歩先には、まさに目に見えるような音としての現音がある。

この現音は、ただ単に音像定位がいいとか、音像が浮び上る、とか、そういったこととは違う。
はっきりと、そういう音像とは違うものとしての現音を聴いた体験があるからだ。

Date: 5月 18th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その23)

アナログプレーヤーとテープデッキを対比してみると、
アナログプレーヤーのカートリッジはテープデッキのヘッドである。
モーターはアナログプレーヤーにもテープデッキにも欠かすことのできない重要なパーツである。
アナログプレーヤーのターンテーブルは、テープデッキ(オープンリール)ではリールだろう。
トーンアームがキャプスタンか。

テープデッキの再生用アンプが、アナログ再生でのフォノイコライザーにあたるわけだが、
再生用アンプがコントロールアンプからテープデッキに統合・搭載されるのがごく当り前の流れとなったのに対し、
フォノイコライザーはコントロールアンプにずっと搭載されたままだった。

なぜフォノイコライザーは、コントロールアンプ(またはプリメインアンプ)の中に存在し続けたのだろうか。

カートリッジの出力レベルは低い。
MC型カートリッジで、しかも低インピーダンスで鉄芯を省いた空芯型ともなれば、さらに低くなる。
まさしく微小信号であり、RIAA録音カーヴにより低域では加えてレベルが低くなる。

この微小信号をトーンアームのパイプ内の細いケーブルを通し、
トーンアームの出力のところから出力ケーブルが延びている。
ヘッドシェル内に昇圧トランスを内蔵したオルトフォンSPU-GTは特殊な例で、
それ以外のカートリッジは微小信号のまま、アンプまで伝送するという、不合理性が残ったままである。

ヤマハが発表したヘッドアンプHA2は専用ヘッドシェルが付属していて、
ヘッドシェル内にヘッドアンプ初段のFETを収め電圧−電流変換を行い、
ヘッドアンプ本体まで電流伝送するという、微小信号の扱いに配慮した製品だった。
最近では同様の手法を、DCアンプの製作者として知られる金田明彦氏が無線と実験に発表されている。

微小信号は、さまざまな影響を受けやすい。
接点の汚れや接触の不完全さ、外来ノイズ、それにケーブルそのものの影響も、
レベルの高い信号よりも受けやすいのは当然といえる。

いまはどうなんだろう──。
ずっと以前はトーンアームの出力ケーブルは、
MM型カートリッジ用とMC型カートリッジ用をきちんと用意しているメーカーがいくつかあった。

MM型用は静電容量の少ないもの、MC型用は直流抵抗の低いもの、とわけられ、
本来ならばカートリッジをMM型、MC型の両方を交換して使うのであれば、
交換のたびごとに出力ケーブルも交換したほうがいい(プレーヤーによってはひどく面倒なものもあるけれど)。

Date: 5月 17th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その22)

国内メーカーは総合メーカーと呼ばれるだけあって、
いくつものメーカーが、カートリッジからフォノイコライザーまで揃う。

たとえばテクニクス。
ターンテーブルは、有名なSP10がある。専用ベースのSH10B3がある。
開発時期は後にずれているがトーンアームにはEPA100があり、
カートリッジはそれこそいくつもの機種が存在するが、
EPA100と同時期に登場し型番的にも組み合わせることを前提としていると思われるEPC100Cがある。

これらの組合せがテクニクスによる、1970年代後半のアナログプレーヤーのひとつのかたちと受け取っていい。
フォノイコライザーは、どうだろう。

単体のフォノイコライザーは同時期に発売されていないから、
コントロールアンプに搭載されているフォノイコライザーを対象とするわけだが、
この時期のテクニクスのコントロールアンプには、SU-A2とSU9070IIがある。
価格は前者が160万円で後者が12万円と大きな差がある。
SP10MK2は15万円、EPA100とEPC100Cはどちらも6万円、SH10B3が7万円だからトータルで34万円。
価格的にはSU9070IIのほうが近くても、トップモデルということではSU-A2か。

SP10MK2+EPA100+EPC100C+SH10B3の組合せに、SU-A2をもってきてもSU9070IIをもってきたとしても、
そこにコンプリートされたという印象は、ほとんど感じられない、というのが正直な感想。

これはなにもテクニクスだけにいえることではない。
デンオンには有名な、誰でも知っているDL103があるけれど、
このDL103の本領を発揮するためのプレーヤーシステムということになると、
いったいどういうシステムになるのだろうか。
ターンテーブルは? トーンアームは? フォノイコライザー(コントロールアンプ)は?
(デンオンには業務用のプレーヤーが存在しているから、この機種がそうなるのか。)

デンオンにはDP100にストレート型のトーンアームを搭載したDP100Mというプレーヤーシステムがある。
このDP100Mの登場は1981年ごろ。トーンアームの造りをみてもDL103というよりも、
軽針圧のDL303、DL305のほうが適しているように見える。
フォノイコライザー(コントロールアンプ)はPRA2000ということになるのか。

こんなふうにビクターは? ヤマハ? Lo-Dは? トリオは? マイクロは?……と考えていっても、
EMTの930st、927Dst、928といったプレーヤーシステムが使い手に与えるコンプリート感は稀薄である。

Date: 5月 17th, 2012
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(原音→げんおん→)

ハイ・フィデリティ(High-Fidelity)再生は、高忠実度再生と訳され、
一般的には原音に対して高忠実度再生ということになっている。

この「原音」の定義がやややっかいなのだが、ここではあえてふれずに、
原音は(げんおん)であって、パソコンで「げんおん」と入力すると、大抵は原音と変換される。
けれど、「げん」と「おん」に分解して変換すれば、
原音以外に、限音、源音、現音、弦音、幻音、減音……などと変換することができる。

弦音(つるおと)以外は当て字なのだが、限られた音の限音、源(みなもと)となる音の源音、
現れた音の現音、幻の音の幻音、減りゆく音、減ってしまった音の減音……とすれば、
それぞれに、どういう音なのかを考えてもよさそうな気もしてくる。

Date: 5月 16th, 2012
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past)を入力していて……(続・作業しながら思っていること)

まず国内メーカーでやってみた。

国内メーカーとして思いつくままあげていくと、
アキュフェーズ、ヤマハ、ソニー(エスプリ)、トリオ(ケンウッド)、パイオニア、テクニクス、デンオン、
ナカミチ、フォステクス、ラックス、ダイヤトーン、サンスイ、オーレックス、Lo-D、オンキョー、
オーディオテクニカ、オーディオクラフト、フィデリティ・リサーチ、サエク、コラール、スタックス、ティアック、
ビクター、マイクロ、こういったところがぱっと浮ぶ。

これらのメーカーの中で、まず最初に「欲しい!」という意味で浮んできたのは、
自分でもやや意外なのだが、ヤマハのCT7000である。

型番からわかるようにチューナーである。
スピーカーやアンプ、カートリッジでもなく、個人的にもあまり関心のないチューナーが真っ先に浮んできた。

ヤマハには代表的なオーディオ機器はいくつもある。
まず浮ぶのは、やはりスピーカーシステムのNS1000M。
それからプリメインアンプのCA2000(もしくはCA1000III)、
コントロールアンプのC2かCI、パワーアンプではBI、あとはカセットデッキのTC800などが、頭にすぐ浮ぶ。
1970年代の製品ばかりになってしまう。
もっと新しいヤマハの製品を思い出そうとしても、私にとってはヤマハというイメージと強く結びついているのは、
やはり上に挙げたモノということになる。

NS1000Mがこれらの中ではもっともヤマハを代表する製品かもしれない。
1970年代なかごろにはスウェーデン放送局で正式モニターとして採用されたし、
上に挙げた製品の中でもロングセラーといえるのはNS1000Mである。

MS1000Mは、ステレオサウンドの試聴室で井上先生が鳴らされた音は良かった。
一般にイメージされているNS1000Mの音より、ずっとこなれた鳴り方をしてくれて、
やっぱりいいスピーカーなんだぁ、と認識を改めたことがある。

私にとってのヤマハのオーディオ・イコール・NS1000Mであっても、
あえてひとつだけ選ぶとしたら、実物を見ることもなかったCT7000である。

Date: 5月 16th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その21)

ステレオサウンドの43号に瀬川先生が書かれている。
     *
ずいぶん誤解されているらしいので愛用者のひとりとしてぜとひも弁護したいが、だいたいTSD15というのは、EMTのスタジオプレーヤー930または928stのパーツの一部、みたいな存在で、本当は、プレーヤー内蔵のヘッドアンプを通したライン送りの音になったものを評価すべきものなのだ。
     *
EMTのTSD15についての文章だ。

昔からTSD15の音は、EMTのプレーヤーで聴いてこそ、といったことがいわれている。
けれどEMTがSMEのトーンアームとの互換性をもたせた、
アダプターなしに一般的に使えるXSD15を出したためにXSD15は、
EMT以外のトーンアームに取り付けられ、その昇圧手段もEMT以外のトランスやヘッドアンプ、
それにフォノイコライザーに関してもさまざまなモノと組み合わされていった。

そうやって聴いたTSD15の音は、果して「オリジナル」といえるのだろうか。

カートリッジ・メーカーはいくつものメーカーが存在してきた。
モノーラルLP時代から数えても、いくつあるのだろうか。
早々と消えてしまったメーカーも多い。
多いけれど、カートリッジだけでなくトーンアームやターンテーブル、
さらにはフォノイコライザーまでつくってきたメーカーとなると、数は少ない。
古くはフェアチャイルドがある。そしてEMTがある。あとはノイマン、他には何があるだろうか……。

オルトフォンは古くからカートリッジを製造してきたものの、
専用トーンアームはあってもターンテーブルはない。
昇圧トランス、ヘッドアンプはあってもフォノイコライザーはない。

Date: 5月 16th, 2012
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past)を入力していて……(作業しながら思っていること)

the Review (in the past)のために入力作業をしていると、
そういえば、こういうオーディオ機器もあったな、とか、
これは聴いてみたかったけど聴く機会がついになかったな、とか、
そんなことなどをついあれこれ夢想してしまうとともに、これはいまでも欲しいと思うこともある。

欲しい、といっても、なんとかして手に入れたいと欲しいものあれば、
美品がたまたま目の前に現れてきて、それがたまたま購入できる金額であったら欲しいだったりするし、
ずっと手もとに置いとくわけではないけれど、数ヶ月とかもっと短くて1ヶ月でもいいから、
いちど自分のモノとして使ってみたい(確認してみたい)、という欲しいもある。

そんないくつもの欲しいを感じながら入力作業をしているわけで、
せっかくそんなことを思いながら入力作業をするのであれば、もう少し楽しみながらという気持から、
各ブランドから欲しいモノをひとつずつ選ぶとしたら、何になるだろうか、という考えつつ作業を進めている。

国産のオーディオメーカー(ブランド)はすでに消えていったものを含めるとかなりの数がある。
それらのメーカーがこれまで出してきた製品の数は、ほんとうに厖大で、すべてを聴いてるわけではなくて、
雑誌でしか見たことのないモノのほうがはっきりいって多い。

実際に聴いて憧れているモノもあれば、聴くことがかなわず憧れているモノもある。
そういったモノをふくめて、これまで聴いたことがあるなしに関係なく、
いまでも欲しいと思えるモノを、各メーカーからひとつずつ選ぶという行為は、
私だけなのかもしれないけれど、意外に楽しい。

すぐに、これ! とひとつ選べるメーカーのものあれば、
いくつかの候補の中から絞り込んでひとつにする場合もある。
選ぶにあたっては記憶を掘り起すことにもなる。
そして選んだ理由を、自分なりに考えてみると、何か浮び上ってくるものがあるのではないだろうか。

Date: 5月 15th, 2012
Cate: オリジナル

オリジナルとは(その20)

1970年代はCD登場前のことだから、市場にはじつにヴァラエティに富んだカートリッジが文字通り溢れていた。
価格もローコストのものからかなり高価なものまであり、
カートリッジのブランドもいろいろな国のものがあり、発電方式も多彩だった。

それにカートリッジまわりのアクセサリーも豊富だった。
ヘッドシェルの種類も多かった。材質の違いもいろいろあったし、
同じ材質でカートリッジのコンプライアンス、自重にあわせて重量の異るものがいくつか用意されてもいた。
カートリッジをヘッドシェルに取り付けるビスもアルミの他に真鍮製もあったり、
それにカートリッジのリード線も、いったいどれだけの数が出廻っていたのだろうか。

カートリッジは、シェル一体型のモノもいくつかあったけれど、
このように、大半のカートリッジはヘッドシェルを自分で選び、リード線もときに交換することがある。
つまり同じカートリッジでも、これだけでもいくつものヴァリエーションが存在するわけだ。

さらにカートリッジはトーンアームに取り付けられる。
そのトーンアームはプレーヤーベースに取り付けられ、
プレーヤーベースにはフォノモーター(ターンテーブル)も取り付けられている。
だから、プレーヤーシステムと呼ばれる。

ヘッドシェルでもいくつも種類があったのだから、トーンアームに実に多くのヴァリエーションがあった。
ヘッドシェルは固定するためのものであり可動部分はないけれど、
トーンアームはスタティック型とダイナミック型にまず大きくわけられ、
長さも通常のサイズとロングアームがあり、軸受けの構造もパイプの材質、太さなど、
興味深い違いが存在していた。

ここでまた同じカートリッジでも、そのヴァリエーションはさらに増えてくる。

こんなふうに書いていってもキリがないから、ここから先は省略することになるが、
とにかく同じカートリッジを使っていたとしても、
使う人が違えば、そのカートリッジを機能させるための周辺の環境は同じであることは稀であり、
そうとうに違うわけだ。

しかも、そこにカートリッジの使いこなしが関係しているのである。

Date: 5月 15th, 2012
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続々続々・JBL SA600)

三角形の記号であらわすOPアンプは、
+側と−側のふたつの入力端子をもつためほとんどのOPアンプの初段は差動回路になっている。
2個のトランジスター(もしくはFET)のエミッター(ソース)をひとつにし、
それぞれのトランジスター(FET)のベース(ゲート)を+側、−側の入力端子としている。

半導体の動作の原理がはっきり理解できていなくても回路図を見ていくと疑問に感じることが見えてくる。
むしろ原理がまだ理解できていないからこそ、
回路図をグラフィックとして見ているから気づきやすいこともあると思う。

初段が差動回路で出力段がエミッターフォロアーになっている、とする。
入力は+側と−側のふたつあるのに対し、出力はひとつのみである。
出力が入力同様+側、−側のふたつあれば、それぞれから反対の極性の入力端子へとNFBを戻すことになる。
けれど大半のアンプはアンバランス出力だから出力はひとつ。
NFBも出力端子から−側の入力端子とへかけている。これは非反転アンプも反転アンプもいっしょである。

回路図をただ眺めていたとき、
非反転アンプの場合、初段の+側のトランジスター(FET)はNFBの範囲に入っていないように見えた。
反転アンプだと入力信号を受ける−側の初段のトランジスター(FET)はNFBの中に入る。

これは非反転アンプと反転アンプの大きな違いではないか、
とまだ詳しいことは何もわからずとも、直感的にそう思えてくる。

このことと前に書いたことをあわせて考えると、
NFBをかけたアンプであれば反転アンプの方が実は理に適っているのではないか、と、
これも30数年前に思ったことである。

Date: 5月 14th, 2012
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続々続・JBL SA600)

私がこんなことを考えていた時は、まだLPの時代でありCDは登場していなかった。
だからシンプル・イズ・ベストがほんとうに最上の方法であると仮定して、
その極端な例としてカートリッジに直接スピーカーを接ぐということを考えてみる。

MC型カートリッジの出力は小さい。MM型カートリッジでもMC型よりも大きいとはいえ数mVの値。
けれど、ステレオサウンド 43号に広告が載っているウイン・ラボラトリーのSDT10というカートリッジは、
0.5Vの出力をもつ(最大出力1V/RMSとある)。

しかもこのSDT10にはRIAAイコライザーを必要としない。
だからコントロールアンプのライン入力、もしくはボリュウム付きのパワーアンプであれば直接接続できる。

SDT10は実物を見ることもできなかった。
どういう音を聴かせてくれるのかはわからない。
けれど、カートリッジの発電方式によってはかなり高い電圧を得ることもできる。

そしてスピーカーの能率がそうとうに高いものがあれば、
カートリッジとスピーカーを、
音量調整さえ必要としなければ直接接続し鳴らすことも技術的には決して不可能ではない。

これは非常に極端な例をあえて考えているわけで、
オーディオを理解しようとしたとき、ときにはこういうふうに極端な例を考えたり、
極端な値を想定してみることも、私は必要だと思っている。

カートリッジとスピーカーの直接接続は極端すぎるから、
そこに音量調整もでき、音量もさらに得られるようにと考えたとき、
カートリッジとスピーカーの間に挿入するのは、非反転アンプなのか、反転アンプなのか。

アンプの動作の理屈はどうであれ、直感的には反転アンプのほうが、
カートリッジとスピーカーの直接接続に、より近い、と概略図を描いてみると、そうなる。

非反転アンプはNFBをかけようがかけまいが信号はアンプを通ることになる。
けれど反転アンプはNFBをかけたときとかけないときとでは、その信号経路が変ってくるようにも見える。
NFBをかけなれば反転アンプでも非反転アンプと同じにみえる。

だがNFBをかけた反転アンプであれば、
カートリッジとスピーカーを結ぶラインに直列にはいるのは、
昨日も述べたように入力抵抗と帰還抵抗であり、アンプは帰還抵抗に対して並列にはいるかたちとなる。

これはあくまでもOPアンプと抵抗だけの概略図を見た印象での話であることはわかっている。
それでも非反転アンプと反転アンプではNFBの作用が異るのではないか、と疑問をもったのが、
いまから30数年前のことである。

Date: 5月 13th, 2012
Cate: トーラス

同軸型はトーラスなのか(続々・JBL SA600)

“straight wire with gain”(増幅度をもったワイアー)がアンプの理想像と、一時期よくいわれたもので、
ちょうどそんなころオーディオに関心をもちはじめた私は、
単純にも、どうしたらワイアーに増幅度を持たせることができるのだろうか、と考えたことがある。

いくつかばかげたことも考えた。
次に考えたのは増幅度をもったワイアーが無理だったら、増幅度をもった部品ということを考えた。
中学3年から高校1年にかけてのころの話だ。

抵抗を直列にいれれば、電流×抵抗値分の電圧降下が生じる。
これはロスなのだが、マイナスの増幅度といえなくもない、と考えた。
そんなことを考えながら、OPアンプの教科書的な本を読むと、
そこには反転アンプと非反転アンプの解説が載っている。

世の中の大半のアンプは非反転アンプであり、
そのOPアンプの本もどちらかといえば非反転アンプにページをより割いてあったように記憶している。

OPアンプは三角形の期号。これに入力が+側と−側のふたつあり、出力はひとつ。
非反転アンプはその名が表すように入力と出力の信号が同相である。
つまり信号は+側の入力端子に加えられる。
NFB用の抵抗は−側端子に接続する。

反転アンプは−側の入力端子を使う。
NFBの抵抗も−側の端子に接続する。もちろん入力信号と出力信号は180度、つまり位相が反転する。

非反転アンプも反転アンプの概略図は抵抗2本(ギザギザののこぎりの記号)とOPアンプ(三角形の記号)だけ。
これは自分で描いてみるのがてっとり早いのだが、
非反転アンプの場合、信号はOPを通って出力される。当り前のことである。

反転アンプはどうかといえば、概略図の描き方次第なのだが、通常の描き方では非反転アンプ同様、
信号はOPアンプ通って出力されるように見える。
けれど、入力抵抗とNFB用の帰還抵抗をまっすぐに直列に描いて、
帰還抵抗に並列になるようにOPアンプの三角形を描いてみると、
信号は抵抗2本だけを通って出力されるようにもみえる図になる。

その図は、”register with gain”(増幅度をもった抵抗器)といえなくもない。

Date: 5月 13th, 2012
Cate: Digital Integration

Digital Integration(続DNA)

CSIを見ているとDNAをグラフィカルに表示したものがいくつか出てくる。
表示方法にもいくつかあるようで、そのうちのひとつにCDのピットを思わせるものも登場する。

これを見て、DNAはデジタルデータなんだ、と思った次第である。
そういえば映画「ジュラシックパーク」で琥珀にとじこめられた蚊が吸った恐竜の血液からDNAを取り出して、
現代に恐竜を甦らせていたことも、
DNAがデジタルデータであるからこそ可能なこと(空想可能なこと)だとも思った。

もしDNAがアナログデータであったとしたら、犯罪捜査においてこれほどDNAに役に立たないのでは、とも思う。

つまり情報伝達手段としてデジタルの優位性、それも圧倒的な、といいたくなるほどの優位性があるし、
デジタルデータのDNAの塩基配列が蛋白質のアミノ酸配列に対応して生き物の体がつくられているわけだから、
「デジタルなんて非人間的」と簡単に言い切ってしまっている発言を見かけるたびに、
ほんとうにデジタルだから非人間的なのか、デジタルだから冷たい、のかと問い返したくなる。

デジタルだから……、という気持がまったく理解できないわけではない。
ただ言いたいのは、それがほんとうにデジタルだからなのか、ということである。

CDが登場したときに、デジタルだから音が冷たい、とか、非人間的な音だ、といった否定的なこともいわれた。
それは果してデジタルだから、そういう音になったのか、ということである。
デジタルそのものの本質的なところに非人間的なものがあったり、冷たく感じさせるものがあると考えるよりも、
実は違うところにそう感じさせる問題点がひそんでいたと考えべきではないのか。

Date: 5月 12th, 2012
Cate: Digital Integration

Digital Integration(DNA)

facebookにタイムラインが導入され、3月からはfacebookページにおいてもタイムライン表示にできるようになった。
facebookページこそタイムライン表示が使えればいいのに、と思っていたから、
facebookページの「オーディオ彷徨」はすぐさまタイムライン表示へと切り換えた。

それまでは記事を公開した日付順に並んでいくだけで、
記事を年代順にするためには年代順に公開していくしかなかった。
タイムライン表示は公開順に関係なく、記事の年月日を自由に設定できるおかげで、
「オーディオ彷徨」では、いま記事の並び替えを行っている。
年代順に並び替えていくと、それまで気がつきにくかったことがはっきりとしてくる。

だから、もうひとつのブログ、the Review (in the past)も年代順に、いま並び替えているところである。
すでに公開記事が5000本を超えているので、一挙に並び替えることは無理で、
時間が空いたときにまとめて行っている。

ひとつの記事の公開日を変更するのに、こちら側の手間としては年月日を指定するだけだが、
更新ボタンをクリックしてから処理が終るまでには、Movable Typeでブログを構築している関係で、1〜2分かかる。
10秒、20秒で終るのであれば、ずっと作業効率は捗るし、
逆にもっと時間がかかればほかの作業を平行して、ということもできるけれど、
1〜2分間というのは、その意味では中途半端な間隔で、結局ほかの作業もできず日付変更だけになってしまう。

とはいっても頭を使う作業ではないので、Huluで海外ドラマを見ながらやっている。
いまはCSI:科学捜査班を横目でみながら、である。

CSI(Crime Scene Investigation)では、当然DNAという単語がよく登場する。
DNA(デオキシリボ核酸)、遺伝情報を担っている、この物質はデジタルではないか、とCSIを見ていて思った。