「ルードウィヒ・B」(その3)
手塚治虫の作品を、ある量読んだことのある方ならば、
手塚作品の特長のひとつとして、モブシーンがわりと使われていることに気がつかれているだろうし、
その素晴らしさ、面白さにも気づかれていると思う。
それまでコマ割りという時間軸によって流れてきていたストーリーが、
大きなコマ、ときに2ページ見開きを使ったモブシーンによって、時間軸をとめてしまう。
そのモブシーンは、じつに丁寧に描かれているし、手塚治虫自身が、嬉々として描いているようにも感じられる。
時間軸はとまるが、物語全体を俯瞰するときもあり、手塚作品のモブシーンは、さっと読み飛ばすわけにはいかない。
このモブシーンが、「ルードウィヒ・B」における音楽そのものの表現手法へと変化している、と思っている。