2011年ショウ雑感(その1)
インターナショナルオーディオショウには約180のブランドが集まっているそうで、
それらすべて聴くことは時間的に無理があるし、気に入った音が鳴っているとついそのブースに留まってしまうと、
聴き逃してしまうモノのほうが多いかもしれない。
そういうなかで今年最も印象に残ったのは、ドイツのADAMのスピーカーシステムだった。
輸入元の太陽インターナショナル(元・大場商事)のブースの扉をあけたときに耳にはいってきた音が、
印象に残った。
素直に、いい、と思える鳴り方をしている。
何が鳴っているのかとスピーカーシステムの方をみると、初めてみるトールボーイの、
わりと素っ気ない外観の、しかもそれほど高価ではないだろうと思われるモノが立っていた。
私が聴いたのは、3機種ある中のトップ機種のColumn Mk3。
価格はペアで税込み1,008,000円。
Column Mk3よりずっと高価なスピーカーシステムはいくつもある。
優秀なスピーカーシステムも、やはりいくつかある。
でも、Column Mk3は、素直に、いいスピーカーシステムと呼べる素性がある、と思う。
太陽インターナショナルのブースの扉をあけたとき耳にはいってきたのは、トランペットの音だった。
聴いた瞬間に、マイルス・デイヴィスだと、マイルス・デイヴィスの熱心な聴き手でない私の耳でも、
はっきりとわかる音を響かせていた。
しかもかけられていたディスクは、私は持っていないマイルス・デイヴィスのディスクだった。
にも関わらず、マイルス・デイヴィスのトランペットだ、と瞬間的に感じさせてくれる表現力をColumn Mk3は、
確実に持っている。
よく聴いている演奏家のディスクが鳴っていても、
いったい誰の演奏なのだろうか……と考え込ませるような音が鳴っていることも意外と多い。
この理由については、あえてここではふれないが、
そういう音があるなかで、ADAMのColumn Mk3は、確実に音楽を捉え鳴らしてくれている。
Column Mk3よりも優秀なスピーカーシステムは、たしかにある。
けれど、音楽を信頼できる音で鳴らしてくれるColumn Mk3より、
いいスピーカーシステムとなると、意外とすくないのが現状かもしれない。