新月に出逢う(その3)
新月だった2月12日に出逢った人形。
衝動買いしたかったけれど、手が出せなかった。
出せなかったからこそ、あれこれ妄想している。
これまで人形のある生活をしたことはない。
人形を趣味としている人が周りにいるわけでもない。
もし衝動買いしていたら、この人形、どう扱っているだろうか。
まずケースに収めて飾るのだろうか。
ホコリがつかないようにするにはガラスケースにしまうのでいいのだけれど、
なんとなくそうしたくない気持が強い。
人形を趣味としている人は、この点、どうしているのだろうか。
ケースに収めないのであれば、日頃の手入れはどうしているのか。
服についた汚れはときどき洗濯するのか。
もしくは新しい服を用意するのか。
髪は梳くのか。これも知りたいことの一つである。
人形本体についた汚れはどう落とすのか。
そういった日頃の手入れについて、あれこれ妄想していたし、
人形のある生活をおくるようになったら、
ほぼ間違いなく人形相手に、毎日挨拶するようになるだろう。
起きたら、おはよう、
寝る前に、おやすみ、
出掛ける際には、いってきます、
帰宅したら、ただいま──、
少なくとも挨拶をするようになるはずだ。
人形に向って、話しかける。
その日あったできごとを人形に話す──、
これはどうだろうか。
買えないからこそ、、そんなことを妄想しているのだが、
もう一つ考えていることは、
今回私が惚れ込んだ人形が、人間と同じ大きさだったら……、である。