菅野沖彦氏のこと(その1)
不謹慎なヤツとか薄情なヤツとかいわれそうだが、
10月になると、ここ数年、もしかすると……、とおもっていた。
もう十年以上前になる。
菅野先生と話していて、グレン・グールドのことが話題になった。
そのとき、菅野先生の誕生日とグールドの誕生日が近いことを言った。
二人とも1932年9月生れで、
グールドは25日、菅野先生は27日である。
グールドはトロント、菅野先生は東京。
時差はけっこうある。
グールドが何時ごろなのかはしらないが、
もしグールドが26日になる寸前に生れていて、
菅野先生が27日になったと同時ぐらいだったら、ほぼ同時ぐらいではないか、
そんなことを菅野先生に言った。
菅野先生も、グールドには、他の演奏家(クラシック、ジャズ関係なく)には感じない、
強いつながり、ひじょうに近いものを感じている、といわれた。
だから10月は気になっていた。
グレン・グールドは10月4日に亡くなっている。
誕生日が近いだけじゃないか──、
それだけのことと思う人はそれでもいい。
でも、私はここ数年、10月の第一週あたりは、特に気になっていた。
今年も何もなく10月の第一週は過ぎた。
少しだけ、ほっとしていた。
けれど、やはり10月だった……。