Date: 7月 1st, 2018
Cate: 快感か幸福か
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快感か幸福か(秋葉原で感じたこと・その8)

秋葉原にあるテレオンが、まだテレビ音響だった時代なのか、
それともすでにテレオンになっていたのか、そのへんのところははっきりしないが、
テレオンが、いまのビルではなく、ラジオ会館がどこかのビルで営業していたころの話だ。

当然、そのころ私はまだオーディオマニアではなかったし、
東京に住んでもいなかった。
人から聞いた話だ。

彼も、もちろんオーディオマニアだ。
彼が学生のころに、テレオンのその店にカートリッジを買いに行った。
そのテレオンは、創業者の奥さんと思われる人が仕切っていた。
ショーケースの中には、市販されている大半のカートリッジが並んでいる。

シュアーのV15が欲しい、というと、まず訊かれる。
いまどのカートリッジを使っているのか、
システムの構成、それからどういう音楽を好むのか、聴く音量、
オーディオの知識、キャリアなどを見透かす質問をしてくるそうだ。

それに合格しなければ、希望のカートリッジを売ってくれなかったりする。
「あなたにはまだV15は早すぎる」、
そんなことを言って売ってくれないんだそうだ。

そしてシュアーの安価な、けれどしっかりしたカートリッジを薦めてくれる。
買いたいモノが買えるだけの余裕があって買いに行く。

なのに売ってくれない。
理不尽だ、と思う人もいるけれど、私はそうは思わない。
こういうオーディオ店が昔はあった。
トロフィー屋ではないオーディオ店があった。
いまのテレオンがそうなのかは知らないけれど、そうあってほしい。

ならば、他のオーディオ店に行けばいい、と思う人もいる。
けれど彼は、テレオンでカートリッジを買っている。

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