オーディオ評論家の才能と資質(その6)
スピーカーをうまく鳴らせるのは誰なのか。
そのスピーカーを設計・開発した人でしょう、という人がいる。
本気でそんなことをいう人が意外にいる。
どうして、そういう考えになるのか、不思議に思う。
例えばカメラ。
カメラメーカーの技術者が、もっともいい写真を撮れるのか、というとそうではない。
プロのカメラマン、写真家がいる。
写真家よりも、そのカメラについては開発した人のほうがずっと詳しい。
だからといって、写真家よりいい写真が撮れるわけではない。
そんなことはほとんどの人がわかっている。
車にしてもそうだ。
車の開発者が、いちばん速く走らせられるか、というとそんなことはない。
このことだって、ほとんどの人がわかっている。
そんなわかりきったことが、なぜかオーディオでは通用しなかったりすることがある、
通用しない人がいる。
(その1)で、オーディオ評論家はスピーカーをうまく鳴らすことが求められる、
と書いた。
(その5)では、どんなに耳がよくても、
スピーカーをうまく鳴らせなければ、それはオーディオ評論ではなくサウンド批評だ、とも書いた。
車の評論家を考えてみてほしい。
車の評論家で、運転できない人がいるだろうか。
助手席に座っているだけで車の評論ができると思っている人が、
スピーカーがうまく鳴らせなくとも、オーディオ評論家というのだろう。