リヒターのマタイ受難曲(その1)
カール・リヒターのマタイ受難曲は、日本では古くから評価が高い。
特に旧盤(1958年)の評価は群を抜いていたといえる時期もある。
この旧盤のドラマティックともいいたくなる表現の緊迫感からすると、
新盤(1979年)のマタイ受難曲は、どこかなまぬるく感じもした。
だから20代はリヒターのマタイ受難曲は旧盤だけがあれば、それでいい、
新盤は必要なのだろうか……、とさえ思っていた。
それがいつのころからか新盤のほうに手が伸びるようになってきた。
旧盤の演奏をやりすぎ、といわないけれど、そんな印象につながるようなものを感じていた。
なぜそう感じるように変ってきたのか。
その理由というか、きっかけがよく思い出せずにいる。
きっかけらしいきっかけはなかったのか。
何かあったけど、忘れてしまったのか。
ひさしくどちらも聴いていない。