Date: 7月 30th, 2015
Cate: ナロウレンジ
Tags:

ナロウレンジ考(その14)

アルテックのA5、A7は劇場用のスピーカーシステムとして開発されたモノだ。
劇場といっても数千人規模の大劇場ではなく数百人規模の中規模(小規模か)の劇場用としてである。
     *
 会議室や中程度のホール、またはそれ以上の広い会場で、できるだけ無理せずに楽しめる音を鳴らしたいというような条件があれば、アルテックを必ずしも好きでない私でも、A5あたりを第一にあげる。以前これを使ってコンサートツアーを組んで大成功を収めたことがある。私自身は家庭用とは考えていない。
     *
ステレオサウンド 43号で、アルテックのA5のことを瀬川先生がこう書かれていた。
いまではどのメーカーもやらなくなったけれど、
昔はレコードコンサートがよく行われていた。
メーカーの広告にもレコードコンサートの告知があったりした。
有名なところではグレースとLo-Dの共同コンサートが定期的に行われていた。

当時のレコードコンサートではA5(もしくはA7)がよく使われていた、という話をきいたことがある。
“Voice of the Theater”の面目躍如たる活躍であったと思う。

人の声をうまく伝えてくれるスピーカー(ラッパ)であることは、
今も昔も多くの人が認めるところだ。

そういえば……、とまた瀬川先生の書かれたものを思い出す。
ステレオサウンド 56号の「いま、私がいちばん妥当と思うコンポーネント組合せ法、あるいはグレードアップ法」。
     *
 日本の、ということになると、歌謡曲や演歌・艶歌を、よく聴かせるスピーカーを探しておかなくてはならない。ここではやはりアルテック系が第一に浮かんでくる。620Bモニター。もう少しこってりした音のA7X……。タンノイのスーパーレッド・モニターは、三つのレベルコントロールをうまく合わせこむと、案外、艶歌をよく鳴らしてくれる。
     *
A5、A7はアメリカのスピーカーだからといって英語でうたわれる歌(声)だけをうまく鳴らすのではない。
日本語の歌もよく鳴らしてくれるのは、
人の声を再生するに最も大切な中音域がしっかりしていることの理由のひとつである。

どういうことかといえば、音楽における中音域のこまかいところまで表現してくれるし、
この帯域における音の変化に対しても、ことさら強調するような鳴り方ではないが敏感である。

このことが音楽を楽しんで聴くうえでどれだけ大事なことであるかは、
ずっと以前からいわれていたことだし、長島先生がよくいわれていたことを思い出す。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]