モニタースピーカー論(その3)
もし私が録音の仕事をすることになり、
モニタースピーカーとしてセレッションのDitton66しかない、といわれたら、
録音する音楽にもよるが、文句を言わずにDitton66を使うであろう。
コンシューマー用スピーカーとして、
というよりも家庭用スピーカーとしてといいかえたようがいいけれど、
Ditton66は好ましいスピーカーであり、充分な性能を持っている。
それでもDitton66の銘板に”Studio Monitor”とあることには、少々違和感をおぼえる。
“Studio Monitor”のStudioとは録音スタジオを示す。
レコード会社の録音スタジオ、放送局の録音スタジオということになる。
そこでスピーカーで聴くのは、ほとんどすべて音楽といえよう。
家庭できくのもほとんどが音楽である。
ならば性能が優秀なスピーカーシステムであれば、
モニタースピーカーとしてすべて使えることになるわけではないのか。
なのに、なぜモニタースピーカーという括りがあるのか。
たしかにスタジオでも家庭でも音楽であることに相違ないが、
微妙に違う点もまたある。
まずスタジオではマイクロフォンが拾った音をそのままスピーカーから聴くこともある。
すべてが録音された音楽を聴く家庭とは、ここが大きく違う。
マイクロフォンから直に音が来る──、
そういう音を体験してみると、いかに録音された音と違うのかがわかる。
つまりスタジオモニター、モニタースピーカーとは、
マイクロフォンから直に来る音を聴くためのスピーカーでもあるということだ。