オーディオマニアとして(その4)
音の世界、オーディオの世界では、美しさは移ろいやすさ、美しいは移ろいやすいのであるのなら、
幻想をそこに抱くのは、むしろ自然な行為なのかもしれない──、ともおもう。
幻想そのものをもってしまうこと、幻想に身をおくことも、
オーディオマニアとしての資質として必要なことなのかもしれない。
幻想があるからこそ理想もある、とはいえないだろうか。
私も幻想を、これまでもってきたことがある。
いまもなにがしかの幻想が、心のどこかにひそんでいるかもしれない。
幻想とはまったく無縁のオーディオをやってきているとは、いえない。
30年ほど前、永遠の価値をもつオーディオ機器について話し合い、考えていたことがある。
永遠とまでいかなくとも、永続する価値をもつオーディオ機器で、システムを構築したい、とさえ思っていた。
幻想は、和英辞書によれば、a fantasy (夢); an illusion (誤った希望); a vision (視覚的な)、とある。
使わずに保管しておけば新品のままであり続ける──、というのは、あきらかに an illusion だ。
誤った希望である。
なぜ人は、誤った希望を持ってしまうのか。
どこで、なぜ誤ってしまったのか。
そして、誤った希望に騙されてしまうことがあるのか。
オーディオマニアだから──、
これがその答なのかもしれない。