オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(その3・続×五 補足)
「Don’t think. Feel!」
これは、ブルース・リーの有名なセリフ。
「考えるな、感じろ!」は、オーディオにおける観察にも、そのままあてはまる。
井上先生がよく言われていたのは、
「頭で聴いている人を、音でひっかけるのは、別に難しいことでもなんでもない」
音は耳で聴くものだが、先入観をもって聴いている人をさして、「頭で聴いている人」という。
どんなにオーディオのキャリアのある人でも、うまく先入観をもたせることができたら、
その人の耳を騙そうと思えば、わりと簡単に騙せるわけだ。
わずかばかりの先入観によって、
いま鳴っている音、観察すべき対象を正しく感じとれなくなる危険性がある。
だから「Don’t think. Feel!」を私なりに訳すとしたら、
「まず感じろ、考えるのはそれからだ」としたい。
とにかく感じとることから、はじまる。
感じとる力(感応力)がない人は、技術書に活字として載っていることのみが、
事実となり、己で事実を感じとることができなくなるのだろう。