Archive for 11月, 2022

Date: 11月 19th, 2022
Cate: German Physiks

Troubadour 40とウーファーのこと(その2)

ユニバーサルウーファーというテーマで、別項をいくつか書いている。
これは、いつかはTroubadour 40かUnicornを鳴らす日がきっとくる──、
それを夢見てのことだ。

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットは水平方向無指向性である。
ウーファーを考えるにあたって、このことにとらわれないようにしたい。

低音部も無指向性とすることが、
DDD型ユニットとうまくつながるとは考えないことだ。

低音はもともと指向特性が広いからだ。
ジャーマン・フィジックスにしても、HRSシリーズはウーファーを床に向けているが、
Gaudíやそれに次ぐモデルは、そんなことをしていない。

HRSシリーズのようなやり方を否定はしないものの、
DDD型ユニットと組み合わせるということを考えるのではなく、
良好な低音再生を、まず考えるのが先である。

別項「スーパーウーファーについて(その21)」では、
ユニバーサルウーファーではなく、
Universal Bass(ユニバーサルベース、ユニバーサルバス)と呼ぶべき、
Universal Bassは、それが鳴らされる環境において、
時間と手間と知恵をかけて形成されるものである、と書いた。

Universal Bassこそ、目指すみちである。

Date: 11月 18th, 2022
Cate: High Resolution

MQAのこと、TIDALのこと(MQairのこと・その2)

つい先日、BOSEのSoundLink Revolve IIを聴いた。
個人宅の広いリビングルームのほぼ中央に置かれてあるのを、なんとなく聴いていた。

これが、悪くない音を聴かせてくれる。
一台だけなのでモノーラルで鳴っているのだが、なんとなく聴いていると、
水平方向無指向性ということがうまく効いていて、けっこう拡がってきこえてくる。
音量はBGMとして、会話の邪魔にならないくらいだから、大きかったわけではない。

それでもふとした拍子に、いいかも、と思えるくらいには鳴っていた。

もしこのSoundLink Revolve IIがMQairに対応したらどうなるのだろうか。
そんなことも想像しながら聴いていた。

BOSEがMQairに対応するのかどうかはいまのところなんともいえないが、
他社のスマートスピーカーで対応してくるモデルは、いくつか出てくるであろう。

オーディオマニアは、ついこんなモノ……、と捉えがちになるが、
もうあなどれない時代になってきている。
しかもMQairは、確実に底上げしてくれる。

そういう時代になったときのことを、少しは想像してほしい。
いろんなことを想像してみてほしい。

Date: 11月 18th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その1)

私が初めて聴いたジャーマン・フィジックスのスピーカーは、
これまで書いているようにUnicornである。

タイムロードがジャーマン・フィジックスを扱うようになったころからラインナップにあった、
ときいている。
けれどDDD型ユニットだけでは低音の十全な再生は望めない、
それで輸入は見送られた、ときいている。

日本に入ってきたジャーマン・フィジックスのスピーカーシステムは、
現在入ってきているHRS130と同じ構成のモデルだった。

これを聴かれた菅野先生は、DDD型ユニットの可能性を高く評価され、
Unicornというモデルが本国にあることを知り、輸入をすすめられたことで、
Unicornの取扱いが始まった。

DDD型ユニット単体のUnicorn、
このスピーカーシステムの音を聴けば、DDD型ユニットの可能性を、さらに知ることになる。

そうなるとDDD型ユニットを単体で手に入れ、自分でシステムを構築したら──、
そんなことを夢見ることになる。

菅野先生もそうだったのだろう。
菅野先生は、当時のタイムロードの社長の黒木弘子さんに、
DDD型ユニット単体というか、独立した製品としての開発を話された。

タイムロードの黒木さんは、ジャーマン・フィジックスにかけ合う。
そうやって誕生したのが、Troubadour 40である。

菅野先生はいわれた、
黒木さんがTroubadour 40の、いわば生みの親で、
自分が育ての親だ、と。

黒木さんの情熱がなければTroubadour 40は登場してこなかったし、
菅野先生の育ての親ということは、試作モデルをかなり試聴されたからなのだろう。

Date: 11月 17th, 2022
Cate: ちいさな結論

ちいさな結論(「音は人なり」の「人」とは)

「音は『かたち』なり」と、2008年9月10日に書いていることが、
音は人なりの「人」なのだろう。

Date: 11月 17th, 2022
Cate: ロマン

好きという感情の表現(その11)

火曜日(11月15日)の夜、四人の集まりだった。
あれこれ楽しい会話が続いた。

そこで、好きということについてが話題になり、一つ思い出したことがあった。
いまから二十年以上昔の話だ。
まだスマートフォンは存在していなかった。

インターネットも普及しているとは、まだいえないような、そんな時代のころだ。

夜、電車に乗っていた。
私の近くに、二十代と思われる男女のカップルがいた。
男が、「キューブリック監督のファンなんだ」と女に話した。
女は「キューブリックって、どんな監督? どんな作品が好きなの?」と訊く。
それに対して男は「フルメタル・ジャケット」と答える。
女は「フルメタル・ジャケット?」「他にはどの作品が好きなの?」と。

男は少し間をおいてふたたび「フルメタル・ジャケット」という。
女はさらに「他には?」と。
男は、また「フルメタル・ジャケット」と答えていた。

キューブリック監督のファンとはいえない私でも、
他の作品はもちろんいくつか知っている。

それでも二人は見つめ合っていた。
女があきれた、とか、蔑むように男を見ていたのではなかった。
なんら二人の仲に変化はなかったように見受けられた。

男は、おそらく「フルメタル・ジャケット」しか、
キューブリック監督の作品は観ていないのだろう。
もしかすると、「フルメタル・ジャケット」も観ていないのかもしれない。
「フルメタル・ジャケット」について、何かを話していたわけでもなかったからだ。

笑い話でもあるわけだが、これでもいいようにも、いまは思うことがある。
当人同士が惚れ合っているのだから、それでいいのだろう。

「フルメタル・ジャケット」しか挙げられようでは、
キューブリック監督のファンとはいえない──、そう言うのはできるけれど、
本人が好きだ、というのであれば、周りがとやかくいうことではない。

まして好きということは、比較するようなことではない。
キューブリック監督の作品をすべていえる人は、
そしてすべての作品を観ている人は、電車の男よりも、
一般的にはキューブリック監督のファンということになる。

私も、そう思う。
それでも当人同士がしあわせなのだから、それでいいじゃないか、
本人(男)がキューブリック監督のファンだといい、相手(女)は疑わないのだから。

Date: 11月 17th, 2022
Cate: 新製品

新製品(ヤマハ YH5000SE)

ヤマハのヘッドフォン、YH5000SEが正式に発表になった。

プロトタイプがヘッドフォン祭で発表展示されていたようなのだが、
ヘッドフォン祭には再開されてからも行っていない。

今年は、このヤマハのヘッドフォンが聴けたのであれば、行けばよかった──、
YH5000SEのプロトタイプの紹介記事を読みながら思っていた。

このヘッドフォンは、ヤマハのフラッグシップ5000シリーズとしての位置づけ。
そうとうに気合いの入ったヘッドフォンのように感じられる。

外観も、写真だけの判断なのだが、精悍な感じが、
他の5000シリーズとはあきらかに違う。ここも気に入っているところだ。

技術内容については、上のリンク先を読んでもらうとして、
以前、別項「オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのヘッドフォン)」で、
ヤマハの現行ヘッドフォンのデザインには違和感をおぼえる、と書いている。

今回のYH5000SEには、そういう違和感はないどころか、
むしろ、とてもヤマハらしい、とも感じている。

価格は五十万円ほど、らしい。
とにかくじっくり聴いてみたい、ひさびさのヤマハの新製品だ。

Date: 11月 16th, 2022
Cate: German Physiks

Troubadour 40とウーファーのこと(その1)

ジャーマン・フィジックスのTroubadour 40は、
いわばスピーカーユニット単体といえる存在ゆえに、
なんらかのウーファーを用意する必要がある。

Troubadour 40を単体で鳴らしたこともある。
Troubadour 40に見合うウーファーとはいえない、
たまたま知人宅にころがっていたといえる25cm口径のユニット、
バスレフ型のエンクロージュアを足して鳴らした音も聴いている。

これでも意外なほど鳴ってくれることは確認している。
それでもTroubadour 40に見合うだけのウーファー(低音)を用意する必要がある。

菅野先生はJBLの2205をお使いだった。
Troubadour 40を持っていた知人は、JBLの1500ALを購入した。
けれどエンクロージュアを用意する前に、Troubadour 40も1500ALも手放している。

私も、そのころは1500ALは最良の選択の一つと考えていた。
このころ、1500ALは販売されていた。
1500ALは1501ALとなったが、もうこのウーファーだけの販売は行われていない。

購入できるできないは別として、
どういう低音部がいいのだろうか、とあれこれ考える。

別項「2022年ショウ雑感」で、
Brodmann Acousticsのスピーカーは聴けなかったことを、あえて書いたのは、
Troubadour 40のことがあったためでもある。

現実的に、そういう使い方はしないのだろうが、
Troubadour 40とBrodmann Acousticsのスピーカーの低音の組合せ、
かなりうまくいきそうな予感だけはある。

そんなことを想像していたから、Brodmann Acousticsのスピーカーを、
今一度聴いてみたかったわけだ。

Date: 11月 16th, 2022
Cate: plain sounding high thinking

オーディオはすでに消えてただ裸の音楽が鳴りはじめる(その14)

《オーディオはすでに消えてただ裸の音楽が鳴りはじめる》
終のスピーカーを迎える私は、そういう音をはたして鳴らせるのだろうか。

Date: 11月 16th, 2022
Cate: 1年の終りに……

2022年をふりかえって(番外)

別項「オーディオと偏愛」で、ルコントのことを書いている。
私の大好きなケーキ店がルコントだ。

別項で書いているように、2010年に閉店し、2013年に復活した。
規模は縮小しての復活だったけれど、あきらめていたルコントの洋菓子が、
ふたたび食べられるようになったのは、
ルコントと同じくらいに大好きだった和菓子の三はし堂が、
やはり一度閉店しての復活だったのと同じで、やはり味のわかる人がいる──、
そうおもえて心強かった。

けれど三はし堂も、この店のことも別項で書いているが、
二度目の閉店でもう復活することはないだろう。
ルコントも、今年8月で全店が閉店した。

その前から、少しずつ店舗が減っていたから、厳しいのかなぁ、とは心配ではあった。
こういう不安だけは的中する。

おそらくもうルコントの洋菓子を食べることはないだろう。
予想できていたことだから、とてもさびしいというほどではないが、
私にとってルコントの洋菓子にかわる存在は、いまのところない。

東京には、いくつの洋菓子店があるのかわからないほどある。
デパートの食料品売場のフロアには、そういう店が入っている。

そういう店の洋菓子と比較すると、
いまとなってはルコントの洋菓子は地味な見映えだったような気もする。

そうであったとしても、変らぬ魅力を維持していたとも感じていた。

Date: 11月 15th, 2022
Cate: 朦朧体

ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(そしてMQAのこと)

その1)を書いたのは、2010年4月25日である。
十二年ほど前だから、まだMQAは登場していなかった。

MQAの音、つまりメリディアンのULTRA DACを初めて聴いたのは2018年9月だった。
2010年から2018年までの八年間、
ここでのテーマである朦朧体、音の朦朧体について考えていくうえで、
プログラムソースはどうするのか、それを再生するプレーヤーは? という問いが常にあった。

ULTRA DACの音は、MQAの音は、必要なコマがすべて揃った、
私にそうおもわせた。

とはいえ、2018年の時点で、
朦朧体の再生を実現するに必要なオーディオ機器は、私の元には何ひとつなかった。

2019年9月にメリディアンの218を導入。
これでMQA再生が日常的になった。

ここからが、私にとっての朦朧体の実現の第一歩になった。
だからこそ218には少しずつ手を加えていった。

ジェームズ・ボンジョルノの最高傑作は、SUMOのTHE GOLDである。
これはもう確信である。

とはいえ、コンディションのいいTHE GOLDはほとんど残っていない、といっていい。
いま手元にあるアンプは、GASのTHAEDRAとSAEのMark 2500。
どちらもボンジョルノの設計であり、基本設計である。

そしてジャーマン・フィジックスのTroubadour 40がやって来る。
本気で、THAEDRAとMark 2500のブラッシュアップを行う。

THAEDRAとMark 2500が最終的な答ではないだろうが、
だからといって、何があるのか、と考え込むことになる。

クォリティの高いアンプ、ついでに価格も高いアンプは、いまやいくらでもある。
それでも音の朦朧体に近いアンプは、いったいどれだけあるのだろうか。

朦朧体と書いてしまうと、朦朧ということで、
私がイメージしている音の朦朧体と正反対の音をイメージする人もいるだろう。
そういう音では決してないのだ、と力説しても、私が朦朧体だと感じる音を、
聴く機会はほとんどない、といっていいだろう。

それでもULTRA DACでMQAの音を聴く機会はあるはず。
ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットの音を聴く機会もあるはず。

どちらか片方でも聴く機会があれば、そしてその音に良さを感じることがあれば、
私がこれまで書いてきている朦朧体という音についての手がかりにはなることだろう。

Date: 11月 14th, 2022
Cate: 終のスピーカー

ベンディングウェーヴとアンプのこと(その1)

別項「D130とアンプのこと(その22)」で、こんなことを書いている。

スピーカーに関しては、
ホーン型とかコーン型とか、その動作方式で分類する前に、
まずピストニックモーションかベンディングウェーヴかに分類できる。

そしてスピーカーの駆動についても、
真空管アンプかトランジスターアンプかという分類もあり、
回路や出力段の動作方式によって分類する前に、
定電圧駆動か定電流駆動かに分類できる。

つまりスピーカーとアンプの組合せでみれば、
現在圧倒的主流であるピストニックモーションのスピーカーを定電圧駆動があり、
ベンディングウェーヴのスピーカーを定電圧駆動、
ピストニックモーションのスピーカーを定電流駆動、
ベンディングウェーヴのスピーカーを定電流駆動、
──この4つのマトリクスがある。

この4つのマトリクスのなかで、私がもっとも聴いてみたいのは、
ベンディングウェーヴのスピーカーの定電流駆動の音である。

うまくいくいかない、そのことも大事なのだが、
それ以上にベンディングウェーヴのスピーカーを定電流駆動することで、
ベンディングウェーヴについての理解が深まる予感があるからだ。

Date: 11月 14th, 2022
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカーがやって来る(余談)

ウォルシュドライバーを採用したオーム・アコースティックスは、
いまも活動しているブランドである。

伊藤忠が取扱いをやめてからどこもやらなかった。
情報も入ってこなかったので、つぶれてしまったと勝手に思い込んでいた。

けれど今もニューヨークにある。
細々と──、とではなく、製品数もけっこうある。

古いモデルのスペアパーツも、古いモデルのアップグレードも行っているようだ。

Date: 11月 14th, 2022
Cate: High Resolution

MQAのこと、オーディオのこと(その13)

その9)で、MQAをマンガーやジャーマン・フィジックスといった、
ベンディングウェーヴのスピーカーで聴いたら、どんなに素晴らしいだろうか、
と書いているし、
別項「黄金の組合せ(番外)」でも、
MQAとベンディングウェーヴのスピーカーこそ、
ごく私的な黄金の組合せとも書いている。

どちらも今年の2月に書いている。
この時点では、ジャーマン・フィジックスの取扱いはまだ再開されていなかった。

7月にジャーマン・フィジックスのHRS130が輸入されるようになった。
9月に銀座のサウンドクリエイトで、
十年ぶり以上のひさしぶりのジャーマン・フィジックスの音を聴くことができた。

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その3)」でも、
MQAで、それもULTRA DACとの組合せで聴いてみたい、と書いた。

書きながら、ほんとうに聴ける日がやってくるのかなぁ、ともおもっていた。

どこかで聴く機会はあまり期待できないことはわかっている。
となると自分でなんとかするしかない。
そんなことをなんとなく思い始めていたときに、Sさんからのメールが届き、
終のスピーカーが私のところにやって来ることになった。

これでMQAとベンディングウェーヴの組合せが実現する。
しかもグールドもMQAで聴ける時代になっている。

Date: 11月 14th, 2022
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカーがやって来る(その7)

ジャーマン・フィジックスのスピーカーを聴いたのは、
2002年のインターナショナルオーディオショウでのタイムロードのブースであった。
Unicornが鳴っていた。

DDD型ユニットの原型といえるウォルシュドライバーの音は、
1980年代後半、オームのスピーカーシステムが、伊藤忠によって輸入されていたので、
ステレオサウンドの試聴室で聴いている。

動作原理に関しては、
ステレオサウンド別冊のHI-FI STEREO GUIDEに載っていた用語解説で知ってはいた。

なのでUnicornを初めて見ても、特別奇妙なスピーカーとは思わなかった。
けれど、その音には驚いた。

オームのスピーカーとは完成度がまるで違っていた。

そうなのだ、今年はジャーマン・フィジックスのUnicornを聴いて、ちょうど20年目である。
傍からすれば、単なる偶然でしかないし、20年というきりのよい数字に何の意味があるのか、
そう問われれば、何もない、と答えるのだけれど、それは本心からではなく、
やっぱり何かあるんだろうな、とおもっている。

そういうことを含めての、私にとっての終のスピーカーである。

Date: 11月 13th, 2022
Cate: 終のスピーカー

終のスピーカーがやって来る(その6)

2021年をふりかえって(その3)」で、こう書いている。
     *
2020年が、五味先生没後40年、
2021年の今年が、瀬川先生没後40年。

2020年には、タンノイのコーネッタを、ヤフオク!で手に入れた。
ステレオサウンドがキット販売したのを、誰かが組み立てたモノではなく、
別項で書いているように、はっきりと専門とする職人の手によるコーネッタである。

今年になって、そのことがわかり、いい買物をしたな、と実感している。

2021年には、SAEのMark 2500を手にいれた。
これもヤフオク!であり、ヤフオク!の相場よりも半分以下で落札できた。
こちらも程度はいい。

五味先生の没後40年の2020年にタンノイ、
瀬川先生の没後40年の2021年にMark 2500である。

不思議な縁が二年続いた。
     *
ほぼ一年前に、これを書きながら、さすがに来年(つまり今年、2022年)は、
こんなことはもう起らないだろう……、と思っていた。

今年、2022年はグレン・グールド没後40年である。
だからといって、グールドになにがしか関係のあるオーディオ機器が、私のところにやって来る、
そんなことは起りようがない。

だいたいにして、グールドに関係のある(深い)オーディオ機器って、
いったいなんだろう──、そういう状況なのだから、
不思議な縁といえるオーディオ機器がやって来ることはない、そう思っていた。

今年、別項で書いているようにGASのTHAEDRAがやって来た。
これも不思議な縁からやって来たモノといえる。

それでもグールド没後40年とはまったく関係ない。

THAEDRAがやって来たことは、嬉しかった。
ジェームズ・ボンジョルノ設計(基本設計)のアンプのペアが実現したからだ。

夏にはこれも別項で書いているように、
ラックスキットKMQ60と自作の真空管アンプがやって来た。
今年も、もうこれで充分じゃないか、
グールド没後40年ということとはどれも関係なかったけれど。

10月26日、夕方に、一通のメールが届いた。
そのメールの内容は、ほんとうに夢のようなことだった。

そして一週間後の11月20日に、私にとっての終のスピーカーがやって来る。
グレン・グールドを、このスピーカーで聴けるだけでなく、
自分の手で鳴らし、グールドを聴くことができる。

グールド没後40年の2022年に、
ジャーマン・フィジックスのTroubadour 40がやって来る。
エラックのリボン型トゥイーターとともに、やって来る。