私にとってアナログディスク再生とは(その24)
ノッティンガムアナログスタジオのAnna Logで、とにかくまず確認したいことは、
オルトフォンのSPUを取りつけて、そのときのリードインの、あのボッ、とか、ポッとかいうノイズの音だ。
おそらくリードインの音が、これまでSPUをとりつけて聴いてきたいかなるプレーヤーとも異る音がしそうなのだ。
このリードインの音は、アナログディスク再生の経験をじっくりと積んできた人ならば、
このわずかな、短い音だけで、音楽が鳴ってくる前に、ある程度のことを掴むことができる。
しかも、リードインのノイズ音には、ごまかしがない。
たとえこちらの体調が悪くて鼻が詰まっていて、耳の調子もいまひとつ、というようなときでも、
このリードインのノイズ音を注意深く聴き、永年の経験から判断すれば、これだけでも判断を間違えることはない。
たとえばこのリードインのノイズ音でわかることのひとつに、レコードの偏芯がある。
レコードには、スピンドルを通すための孔がある。
この孔の寸法は規格で決っていても、多少の誤差は認められているし、
スピンドルも同じようにメーカーや製品によって多少の寸法の違いがある。
私の経験ではわりとアメリカのLPに多かったのが、
レコード側の孔が小さくてぐっと力をこめないとターンテーブルに接しないものもあったが、
一般的にはレコード側の孔のほうがスピンドルの径よりもやや大きい。
だからスムーズにレコードがおさまるわけだが、レコード側の孔が大きいということは、
スピンドルの中心軸ととレコードの中心が完全に一致するわけではない、ということが起る。
というよりも、なかなか完全に一致することの方が少ない。
完全一致は少ないけれど、それよりも大きく、つまり誤差の範囲で最大限に芯がズレてしまうことがある。
といっても、そのズレ(偏芯)は目で見てわかるレベルではない。
けれど、リードインのノイズ音を聴けば、
どの程度芯があっているのかは、馴れていれば瞬時に判断できるようになる。