使いこなしのこと(誰かに調整してもらうこととインプロヴィゼーション・その1)
音楽は好きだけど、オーディオ機器の使いこなしに煩わされたくない。
だから信頼できる人に調整してもらい、そして定期的にチェックしてもらいその音を維持したい、という方が、
自分の手で自分のオーディオをいっさい調整しないことについては、別に否定的なことはいっさい言わない。
そういう方たちは音楽が好きでいい音で聴きたい、と思い、それなりにオーディオに投資をされていても、
オーディオ好き、オーディオマニアではないから、結構なことだと思っている。
とはいいながらも、ひとつ疑問がある。
その音楽好きの方が、ものすごく熱心なジャズの聴き手であり、
もし「ジャズはインプロヴィゼーションこそが大事なこと」といわれているのであれば、
たとえその方がオーディオに関心のない方でも、やはり自分で調整すべきではないか、という疑問だ。
オーディオに特に関心がなければ、最初に誰かに調整してもらい、
ここまできちんと調整すれば、こういう音が出るんだという、そのオーディオがもつ可能性を知ることは大事だ。
やれば、いつかはあの音が出せる、さらにはあの音以上の音が鳴らせる、という確信があるとないのとでは、
やはり使いこなしにかける情熱も変ってこよう。
だから最初は誰かに調整してもらうのもいい、と思う。
でも、ジャズにおけるインプロヴィゼーションをほんとうに大切にしたいのであれば、
調整してもらった後に、自分の手でケーブルを外し、スピーカーシステムの位置も変え、
つまり一度システムをバラして、一から自分の手でセッティングして調整していかなくて、
なにがインプロヴィゼーションだ、とすこし悪態をつきたくなる。
どんなに信頼できる人に調整してもらったからといっても、
その人は所詮赤の他人である。
その赤の他人に、己のインプロヴィゼーションをまかせてしまう。
それがジャズの聴き方なのだろうか。ジャズなのか。
ジャズをオーディオで聴くということなのか。