MC2KWで鳴らされるXRT28の音を聴きながら思い出していた瀬川先生の文章の次のものだ。
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中でもアメリカ東海岸で作られるスピーカーにこの手の音が多いと私は感じる。東海岸というとボストンで作られるKLHやアドヴェント、ボーズなど。それにニュージャージイで生れるボザークなどだ。また、これらのスピーカーは、日本の六畳や八畳ていどのせまい部屋で鳴らすと、いっそう精彩を欠いた、ディテールの反応の鈍い音がする。鈍重でしかも乾いているというのでは、全くとりえがなさそうに思えそうだ。ところが、これらのスピーカーをライヴな広い部屋に入れて、部屋いっぱいを満たすような音量で鳴らすと、実に豊かで朗々とよく響く、耳当りの柔らかくしかも充実感のたっぷりした気持の良い音を聴かせる。
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後半部分に書かれている東海岸生れのスピーカーの良さ──、
それがマッキントッシュ・ジャパンのブースではたしかに鳴っていた。
パワーアンプの出力はどの程度必要か、ということは、
使用するスピーカーシステムの能率、部屋の広さ、響きの多い少ない、
鳴らすプログラムソースや聴く音量によって、その値は大きく異ってくる。
2kW(2000W)もの出力が、必要なのかどうかは、少なくともいまの私には不要なほどあまりある大出力だが、
この日のマッキントッシュ・ジャパンのブースでは、その必要性だけで優位性が、音として鳴っていたと思う。
ショウという条件下で、あれだけ朗々とよく響く、気持の良い音を出していたことは、
それだけでたいしたことではないだろうか。
まったく不満を感じさせない音なわけではない。
それでも、このアメリカ東海岸の音の特質を、これだけきちんと響かせていたこと、
そしてそれも1970年代までの、色濃い東海岸の音、
高域のレベルをあきらかにおさえていた時代の乾いた音ではない。
高音域の繊細さをことさら強調しないという意味では、
高域をややおさえているということにつながるのだろうが、
少なくとも帯域バランス、音色上のバランスで、
はっきりとした東海岸サウンドの特徴は、もうほとんどないのだろう。
だからなのだろう、もうひとつの特徴である部屋いっぱいを満たす豊かさが洗練されてきている。
そんな感じを受けていた。
マッキントッシュという会社は、
真空管アンプの時代から、つねにその時代時代において大出力アンプをつくってきた。
いまさらだが、このことも東海岸サウンドとつよく結びついているということも感じていた。
ただこのシステムを、狭い空間にはもち込むのはやはり無理があるだろう。
’70年代には、アルテックのA5を6畳間で鳴らしていた人がいたということを瀬川先生が書かれている。
小音量でひっそりとA5を、その人は鳴らし、飼いならされていた、とあった。
そういう鳴らし方も、XRT28とMC2KWの組合せは可能だろう(ただし電力線を引き込む必要はあるだろうが)。
でも、今回のショウで耳にすることのできた、あれだけの大音量でも耳当りの柔らかく充実した音を聴いたあとでは、
それだけの空間が得られないかぎり、別のスピーカーシステム、アンプの組合せを選ぶ。
その意味では、私個人の生活には無縁ということになる。
それだからこそ来年もマッキントッシュ・ジャパンのブースで、
今回の音が聴けることを、できれば上廻る音が聴けること望んでいる、また楽しみにしている。