Date: 11月 17th, 2010
Cate: ショウ雑感
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2010年ショウ雑感(その6)

“The Sonus faber” でつよい印象を残してくれたのはアナログディスクでの音だった。
そして、今年のショウは、昨年よりもアナログディスクの音を鳴らしていたブースが多かった──
たまたま私がそのブースに入ったときに鳴っていただけなのかもしれないけれど──ように思う。

いくつかのブースでアナログディスク再生の音を聴いてはっきりするのは、
出展社によるアナログディスク再生の技術にけっこうな差があること。
ディスクの扱い方、カートリッジを盤面におろすときなどを見ていると、
アナログディスク再生にのめり込んだ経験がないのではなかろうか、
とそんなことを感じさせたブースがあったのは、残念だと思う。

もっと残念なことは、そのレベルの未熟さを自覚していない、と思われること。

たまたま私が聴いた、アナログディスクを鳴らしていたブースのなかにはいくつか、
操作面での都合上だろうが、カートリッジを降ろす際に、ボリュウムをあげたままのところがある。
そのことは否定しない。
こういう場において、このときのノイズは、的確な判断材料となるためで、
このときの音は、ボソッ、ボコッ、ボッ、ポコッ、ポッ……とか、じつにさまざまな音であり、
アナログディスク再生にながくつきあってきた人は、どれが好ましい音なのかわかるはずだ。

あるブースでは、実に気持のいい感じで、このときの音が鳴っていた。
そのあとに続いて鳴ってきた音もよかった。

でもあるブースでは、実に汚い感じで、やや間延びしたような、
とにかく耳にした瞬間「あれっ?」と思うような音があった。
案の定、鳴ってきた音は “The Sonus faber” で聴けたアナログディスクの音とは対極の、
死んだような音で、まったく楽しめない。
そのブースで、CDは、まあ、そこそこの音で鳴っていた。
使っていたアナログプレーヤーも、世評の高い、価格もけっこうな額のきちんとしたモノだ。
断定はできないけれども、そのブースのアナログディスク再生に関する知識・技術・ノウハウの不足だろう。

それぞれの出展社の社員のなかには、
自分の意思で聴く音楽を選び、自分のお金でディスクを買うようになったとき、
すでにCD全盛時代のなかで育ってきた世代も増えてきたのかもしれない。
そういう人たちに、きちんとしたアナログディスク再生を望むのは、酷なことだろうか。

アマチュアならば、そういういいわけはできる。
けれど、少なくとも彼らはオーディオのプロフェッショナルであるべきだ。
そして、会社という組織は、プロフェッショナルを育てていくべきである。
そういう余力がないのか。もし個々の会社にそういう余力がなければ、
このショウの主催者である日本インターナショナルオーディオ協議会が協力して、
若い世代たちを、会社という垣根をこえて育てていくべきだ、と私は思う。

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