Archive for 7月, 2009

Date: 7月 26th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その11)

56号から、ステレオサウンドの新製品紹介のページは、カラーとモノクロページに二本立てになり、
それまでの井上先生と山中先生の対談中心の形式から、他の筆者の方たちも加わって、
書き原稿へと、大きく変わった。

だからといって、過去に登場した新製品が、もう一度取り上げられる理由にはならない。
弟分にあたるステイシス2、ステイシス3が登場してラインアップが揃ったことも関係していたのだろうが、
それも、ステイシス2と3を新製品として扱えばすむことである。

なぜなのか。
56号にはステイシス1の内部写真が載っている。
無線と実験に載った内部写真と見比べてみるとはっきりするだが、
天板をはずした状態で見える、青色のプリント基板の大きさと数が異ることがわかる。

Date: 7月 25th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その10)

1979年に、コントロールアンプの二作目、SL10が出て、
800Aからはじまり、400A、4000といったパワーアンプのイメージと、
私の中では、すんなりと一致するパネルの構成、質感になった。

このSL10のツマミは、そのまま1年後に登場するステイシス1にも採用されているので、
ある部分、スレッショルドの次の顔を具現化したものといってもいいかもしれない。

SL10のボリュウムのツマミ──、数少ない、個人的に好きなツマミのひとつでもある。

NS10とSL10、このふたつを2段重ねにしたコントロールアンプが、
1979年か80年の無線と実験誌に載ったことがある。
どちらが上だったのかまでは忘れてしまったが、
ステイシス1にふさわしいコントロールアンプのプロトタイプとして、
とにかく急拵えで用意されたものという感じだった。

このときのステイシス1は、ステレオサウンドの新製品紹介のページでも紹介されている。
まだ新製品紹介のページがモノクロだけで、井上先生と山中先生が担当されていたときの、
52号前後のステレオサウンドだったと思う。

そして56号で、山中先生が、ふたたび新製品の紹介記事を書かれている。

Date: 7月 24th, 2009
Cate: 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その16)

DBシステムズについて書いていたら、同時代の、どのスピーカーと組み合わせたら、
おもしろいだろうか、楽しいだろうか、と考えていたら、KEFの104aBが頭に浮んだ。

小音量で、スピーカーに接近して聴くかぎり、おそろしくデリケートで、細身の音の極致を聴かせてくれそうで、
意外にいい組合せになりそうだと、思えてきた。
そうなるとパワーアンプはなんだろう。

DB1+DB2は、パイオニアのエクスクルーシヴM4の組合せを、
瀬川先生の、熊本での講演のときにリクエストしたことがある。
「なかなか思いつかない面白い組合せだね」と言ってくださった。
M4が、だから真っ先に候補に上がったが、このアンプには冷却ファンがついている。
小音量での再生を前提しているだけに、ファンの音があっては困る。

冷却ファンがなく自然空冷で、ローレベルが美しいアンプで、1970年代後半のパワーアンプとなると、
ラックスのラボラトリーシリーズの5M20があった。
メーター付の5M21もあるが、ほんのわずかでも聴感上のSN比をよくしたいので、
あえてメーターなしの5M20を選ぶ。

ただこのままの組合せだと、艶っぽさに不足するだろうから、
カートリッジには、そこのところをうまく補ってくれるものを選ぶ。
エレクトロ・アクースティック(エラック)のSTS455Eの音の艶は、
人によっては過剰すぎると感じるぐらい濃厚だが、
ここでは、もう少し繊細でデリケートであってほしいから、
455Eの上級機のSTS555Eが、ぴったりのような気がしてくる。

音の艶っぽさを要求せずに、さらに繊細に切れ込む表現を求めるのであれば、
サテンのカートリッジも、おもしろいと思う。

Date: 7月 23rd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その9)

DBシステムズは、パワーアンプDB6を出す。
だが個人的な印象では、DB1+DB2ほどの個性の強烈さは、その内容からは感じられなかった。
その音も、DB1+DB2のほうが、尖っていた。

AGIからは、前述したようにパワーアンプは登場しなかった。
結局、どちらもデビュー作のコントロールアンプのみが、強烈な印象として残っている。

このふたつのブランドと比べると、クレル、パスラボ(スレッショルド)のデビュー作として、
まず浮ぶのは、どちらもパワーアンプである。

スレッショルドは800Aがデビュー作で、コントロールアンプのNS10は、すこし遅れて登場した。
大型のパワーメーターを、上下対称に配置した800Aのパネルフェイスは、
新しい世代のパワーアンプという魅力感じさせるのに、
どちらもルネ・ベズネのデザインにもかかわらず、
NS10のパネルからは、そういう雰囲気が感じられなかった。

Date: 7月 23rd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その8)

DBシステムズのDB1+DB2を聴いたのは、AGI・511(ブラックパネル)同じ日で、
ほかにマッキントッシュのC32、パイオニア/エクスクルーシヴC3も聴いている。

DB1+DB2の音は、511とは、また違う面をもつ強烈さだった。音が尖っていた、そんなふうに受けとった。
C32、C3を聴いたあとでは、511もDB1+DB2も、作っているのは、
きっと若いエンジニアなんだろうなぁ、と思わせるところがあった。

どちらも青年という感じで、511が短距離走のアスリートだとすれば、DB1+DB2は、文学青年か。
アメリカの新しい世代の音であるのだろうが、対照的な音のようにも感じていた。

511は、シャーシの作りも精度がきちんと出ていて、パネルフェイスも精悍な印象がある。
一方、DB1+DB2の作りは、むき出し、作りっぱなしという感じが残っている、というふうに、やはり対照的。

内部も、実はそうで、511が信号系すべてにオペアンプを採用し整然としているのに対して、
DB1+DB2は、意外にも、と言おうか、すべてディスクリート構成で、
しかも当時、他のアンプがほとんど採用していた差動回路は使わず、
電源もマイナス電源(33V)のみ、という、外観とともに、個性的な内容といえる。

聴いていて爽快だったのは511だったが、では、自分で使うとなったら、DBシステムズを選ぶかもしれない。

Date: 7月 22nd, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その39)

井上先生だけでなく、瀬川先生も長島先生も、タンノイの一連のスピーカーシステムを、
蓄音器の音に通じる共通の響きをもつものとして捉えられていた。

長島先生は、ステレオサウンド 41号に書かれている。
     ※
タンノイのスピーカーユニットの場合、他のスピーカーユニット少し異なっていて、最初から、エンクロージュアの効果が計算の中に入れられてユニットがつくられているように思われる。しかも最初に計算したエンクロージュアの効果が普通のスピーカー用エンクロージュアの考え方と少し異なったアコースティック蓄音器を原点とする考え方の中にあったように思われるのである。
     ※
瀬川先生は、ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ タンノイ」に書かれている。
     ※
そう思い返してみて、たしかに私のレコード体験はタンノイから本当の意味ではじまった、と言えそうだ。とはいうものの、S氏のタンノイの充実した響きの美しさには及ばないにしても、あのピラミッド型のバランスの良い音を、私はどうもまだ物心つく以前に、いつも耳にしていたような気がしてならない。そのことは、S邸で音を聴いている最中にも、もやもやとはっきりした形をとらなかったものの何か漠然と心の隅で感じていて、どこか懐かしさの混った気持にとらわれていたように思う。そしていまとなって考えてみると、やはりあれは、まだ幼い頃、母の実家であった深川・木場のあの大きな陽当りの良い二階の部屋で、叔父たちが鳴らしていた電気蓄音器の音と共通の響きであったように思えてならない。だとすると、結局のところタンノイは、私の記憶の底に眠っていた幼い日の感覚を呼び覚したということになるのか。
     ※
この文章は、瀬川先生が追い求められていた「音」について語るうえで、
絶対に見逃せないものだと思う。
これについては、別項の「瀬川冬樹氏のこと」のところで、あらためて書く。

Date: 7月 21st, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その10)

QUADのESLのほかに、遮断特性(減衰特性)6dB/oct.のカーブのネットワークを採用したスピーカーとして、
井上先生が愛用されたボザークが、まずあげられるし、
菅野先生愛用のマッキントッシュのXRT20も、そうだときいている。

これら以外にもちろんあり、
ダイヤトーンの2S308も、トゥイーターのローカットをコンデンサーのみで行なっていて、
ウーファーにはコイルをつかわず、パワーアンプの信号はそのまま入力される構成で、やはり6dB/oct.である。

このタイプとしては、JBLの4311がすぐに浮ぶし、
1990年ごろ発売されたモダンショートのスピーカーもそうだったと記憶している。

比較的新しい製品では、2000年ごろに発売されていたB&WのNSCM1がある。
NSCM1ときいて、すぐに、どんなスピーカーだったのか、思い浮かべられる方は少ないかもしれない。
Nautilus 805によく似た、このスピーカーのプロポーションは、
Nautilus 805よりも横幅をひろげたため、ややずんぐりした印象をあたえていたこと、
それにホームシアター用に開発されたものということも関係していたのか、
多くの人の目はNautilus 805に向き、
NSCM1に注目する人はほとんどいなかったのだろう、いつのまにか消えてしまったようだが、
井上先生だけは「良く鳴り、良く響きあう音は時間を忘れる思い」(ステレオサウンド137号)と、
Nautilus 805よりも高く評価されていた。

Date: 7月 20th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その9)

アルテックのA5、A7で使われていたネットワークは、N500、N800で、
12dB/oct.のオーソドックスな回路構成で、とくに凝ったことは何ひとつ行なっていない。

QUADのESLのネットワークは、というと──かなり以前に回路図を見たことがあるだけで、
多少あやふやなところな記憶であるが──通常のスピーカーと異り、
ボイスコイル(つまりインダクタンス)ではなく、コンデンサーということもあって、
通常のネットワークが、LCネットワークと呼ばれることからもわかるように、
おもなパーツはコイルとコンデンサーから構成されているに対し、
ESLのネットワークは、LCネットワークではなく、RCネットワークと呼ぶべきものである。

低域をカットするためには、LCネットワーク同様、コンデンサーを使っているが、
高域カットはコイルではなく、R、つまり抵抗を使っている。

アンプのハイカットフィルターと同じ構成になっている。

このRCネットワークの遮断特性は、6dB/oct.である。

Date: 7月 19th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その8)

フェイズリニアが論文として発表されたのは、1936年で、
ベル研究所の研究員だったと思われるジョン・ヘリアーによって、であると、クックはインタビューで答えている。

ウーファーとトゥイーターの音源の位置合わせを行なっていた(行なえる)スピーカーシステムは、
QUADのESL以前にも、だからあった。
有名なところでは、アルテックのA5だ。
1945年10月に、”The Voice of The Theater”のAシリーズ全10機種のひとつとして登場したA5は、
低音部は515とフロントロードホーン・エンクロージュアのH100と15インチ・ウーファーの515の組合せで、
この上に、288ドライバーにH1505(もしくはH1002かH805)ホーンが乗り、
前後位置を調整すれば、音源の位置合わせは、できる。
ほぼ同じ構成のA7は1954年に登場している。

クックは、A5、A7の存在は、1936年のアメリカの論文の存在を知っていたくらいだから、
とうぜん知っていたであろう。
なのに、クックは、ESLを、最初に市販されたフェイズリニアのスピーカーだと言っている。

Date: 7月 18th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その7)

KEFのレイモンド・E・クックは、最初に市販されたフェイズリニアのスピーカーシステムは、
「1954年、QUADのエレクトロスタティック・スピーカー」だと、
1977年のステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界」のインタビューで、そう答えている。

ただ当時は、位相の測定法が確立されていなかったため、まだモノーラル時代ということもあって、
ESLがフェイズリニアであることに気がついていた人は、ほんのひとにぎりだったといっている。
そして、QUADのピーター・J・ウォーカーに、そのことを最初に伝えたのはクックである、と。

このインタビューで残念なのは、そのとき、ウォーカーがどう答えたのかにまったくふれられていないこと。
KEF社長のクックへのインタビューであるから、しかたのないことだとわかっているけれども、
ウォーカーが、フェイズリニアを、ESLの開発時から意識していたのかどうかだけでも知りたいところではある。

Date: 7月 17th, 2009
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(その21)

黒田先生が、岩崎先生のリスニングルームを、ステレオサウンド 38号の取材で訪ねられたときに、
最初に鳴ったのは、リー・ワイリーの「バック・ホーム・アゲイン」だったと書いてある。

黒田先生がやや不審げな表情をされたぐらい、かなり小さな音量だったともある。

2曲目は、デイヴ・マッケンナ・クワルテットのレコードで、これは、そうとうな大音量で鳴らされたとある。
音楽の内容によって、ボリュウム設定は、かなり大きく変えられているということだ。

「演奏ができるだけ眼前にあるような感じがほしい」のと「小さい音もよく聴きたいという意識」から、
音量があがってきてしまうと発言されているが、それでもヴォーカルのレコードは、
大音量で聴くとおかしなことになるという理由で、むしろ一般的な音量よりも小さめで聴くことが多い、とある。

ヴォーカルのレコードに含まれている「小さな音」も十分に聴きとりたいと思われていたであろう。
それでも、控えめな音量で聴かれている。

Date: 7月 16th, 2009
Cate: 岩崎千明

岩崎千明氏のこと(その20)

ステレオサウンド 43号に、「とてもセンシティブで心優しい感じだった」と、
岩崎先生のことを、岡先生は書かれている。

岩崎先生は、 QUADのESLを所有されていた。いつからなのかははっきりしないが、
ステレオサウンド 38号で、「かなりライヴな部屋で、しかも固い壁を背にして置くというイメージが強い」ESLを、
「6畳の和室で鳴らしてみる。そういう実験というか冒険をやってみたい」と語られているから、
1976年以前に購入されたのだろう。

QUADのESLと岩崎千明が、なかなか結びつかない人もいるだろう。
岩崎先生の愛用された、数多くのオーディオ機器のなかで、ESLは、
どちらかといえば、ちょっと浮いた存在として映るかもしれないが、
岩崎先生が大音量で聴かれる理由のひとつは、ローレベルのリニアリティに対して、
きびしく追い求められていたことを思い起こせば、納得のいく選択である。

岩崎千明=大音量再生というイメージが語られすぎているようにも思う。
たしかに大音量で、よく聴かれていた、ときいている。

だが、いつでも、どんな曲でも、大音量で聴かれていたわけでは、決してない。

Date: 7月 15th, 2009
Cate: ワイドレンジ, 井上卓也

ワイドレンジ考(その38)

古き佳き時代のスピーカーに対する、井上先生の「ラッパ」という言葉の響きのうらには、
心情的にノスタルジックな意味が、あきらかに含まれている。

「いずれ鳴らすつもり」で、井上先生は、「欲しい」と思ったオーディオ機器やパーツ類を、
理屈抜きに集めておられた。
ステレオサウンドのうしろのほうに掲載されている交換欄、
ユーズド・コンポーネント・マーケットのページも、丹念にみておられたようだ。

私がいちど、ある製品を掲載したところ、すぐに「あれ、手ばなしたのか」と言われたことがある。
また、あるときは、井上先生から電話があって、
「ジェンセンのG610Bを、山中さんが手放すから、
買おうと思っているけど、中古相場はどのくらいするのか」と聞かれたこともあった。
つづけて、「G610Bのトゥイーターは気にくわないところがあるから、
以前の開口部が丸の、PR302に交換するつもりなんだけど、どこかにないかなぁ」と言われたので、
いくつかのオーディオ店に電話をかけまくり、探し出したこともあった。

ウェスターン・エレクトリックのユニットもお持ちだったと聞いているし、
マランツのModel 7にいたっては、何台所有されていたのだろうか。
オリジナルはもちろん、日本マランツが発売したキット版、
それから復刻版のModel 7SEまで所有されていたはずだ。

そういう井上先生が、「世界のオーディオ」で、こんなふうにタンノイについて書かれている。
     ※
つねづね、何らかのかたちで、タンノイのユニットやシステムと私は、かかわりあいをもってはいるのだが、不思議なことにメインスピーカーの座にタンノイを措いたことはない。タンノイのアコースティック蓄音器を想わせる音は幼い頃の郷愁をくすぐり、しっとりと艶やかに鳴る弦の息づかいに魅せられはするのだが、もう少し枯れた年代になってからの楽しみに残して置きたい心情である。

Date: 7月 14th, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ, 井上卓也

ワイドレンジ考(その37)

井上先生は、タンノイのウェストミンスターを呼ぶとき、
スピーカーではなく、「ラッパ」という言葉を使われていた。
なにも、そのときの気分でスピーカーだったり、ラッパと呼ばれたりするわけではない。
さりげなくではなるが、きちんと使いわけされていた、と私は思っている。

井上先生のタンノイのイメージは、「世界のオーディオ」に書かれている「私のタンノイ観」が参考になる。
     ※
タンノイの音としてイメージアップされた独特のサウンドは、やはり、デュアル・コンセントリック方式というユニット構造から由来しているのだろう。高域のドライバーユニットの磁気回路は、ウーファーの磁気回路の背面を利用して共用し、いわゆるイコライザー部分は、JBLやアルテックが同心円状の構造を採用していることに比べ、多孔型ともいえる、数多くの穴を集合させた構造とし、ウーファーコーンの形状がエクスポネンシャルで高域ホーンとしても動作する設計である。
したがって、38cm型ユニットでは、クロスオーバー周波数をホーンが長いために1kHzと異例に低くとれる長所があるが、反面において、独特なウーファーコーンの形状からくる強度の不足から強力な磁気回路をもつ割合に、低域が柔らかく分解能が不足しがちで、いわゆるブーミーな低域になりやすいといった短所をもつことになるわけだ。
しかし、聴感上での周波数帯域的バランスは、豊かだが軟調の低域と、多孔型イコライザーとダイアフラムの組み合わせからくる独特な硬質の中高域が巧みにバランスして、他のシステムでは得られないアコースティックな大型蓄音器の音をイメージアップさせるディスクならではの魅力の弦楽器音を聴かせることになる。
     ※
井上先生にとって、幼いときに聴かれていた、1-90に始まりクレデンザに至る、
蓄音器の音をイメージさせる音をもつ佳き時代のスピーカーを、「ラッパ」と呼ばれていた。
私は、そう受けとっている。

Date: 7月 13th, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ, 井上卓也

ワイドレンジ考(その36)

井上先生は、記事の中で、エンクロージュアの剛性の高さが、リジッドさが、音に、
特に低音に関しては、強く出ていると発言されている。

アメリカ・東海岸のスピーカーメーカー、ボザークやマッキントッシュの特徴でもある、
重厚で緻密な低域が、ごく低い周波数だけにとどまることなく、ウーファーのかなり上の帯域まで、
同じ音色で統一されている、とのことだ。

低域に関しては、アメリカ・東海岸のスピーカーに共通するものをもちながらも、
中高域になると、従来からタンノイトーンと呼ばれる、中高域の独特の輝きを、
他のタンノイのスピーカーよりも、目立たないようにバランスしている点が、
イギリスの伝統的なスピーカーにしか出せない独特の魅力へとつながっている、と指摘されている。

井上先生は、バッキンガムを鳴らすための組合せとして、
コントロールアンプに、バッキンガムのやや控えめな性格をカバーする意味合い、
音像を立体的にする目的から、コンラッド・ジョンソンのデビュー作のPreamplifier(管球式)を、
パワーアンプは、音に積極性を持たせるためにSAEのMark 2600を選ばれている。

これらのことは、バッキンガムが、どちらかといえば控えめであり、おっとりしたところを、
うまく補うためでもある。