Archive for category 戻っていく感覚

Date: 3月 29th, 2022
Cate: 戻っていく感覚

GAS THAEDRAがやって来る(その3)

THAEDRAの音は、わりと誤解されているのかもしれない。

GASはGreat American Soundのことである。
そのGASのデビュー作がAMPZiLLAなのだから、
ユニークなネーミングと受けとる人もいれば、
ふざけたネーミングだと憤る人もいるのが世の中だし、
どちらにしてもGASと名乗る会社のアンプだけに、
いかにもアメリカンな音がするもの──、
とその音を実際に聴いていない人ならば思い込んでいたとしてもおかしくない。

GASの音は、当時から男性的といわれていた。
けれど如何にも、その力を誇示するような音では本来なかったのだが、
GASのアンプも、海外製アンプの例にもれず、
型番は同じでも製造ロットによって、けっこう音の傾向が変ってきている。

瀬川先生は、
《初期の製品だけが持っていた、素直さが魅力につながるような、控え目ゆえの好ましさ》、
そんなことを書かれている。

THAEDRAに、それはあてはまる。
むしろTHAEDRAとAMPZilLAが、特にそうだ、ともいえる。

THAEDRAはTHAEDRA IIになり、THAEDRA IIBが日本に入ってきている。
末尾に何もつかないTHAEDRAにしても、
内部をみると、こまかなところが変更されているのがわかる。

どの時期のTHAEDRAを聴いているのか、
それによってTHAEDRAの音の印象は、かなり違っていることだろう。

私は幸運なことに初期のTHAEDRAの音を聴いている。
私が20代のころに自分のモノとしたTHAEDRAもそうである。

今回のTHAEDRAは、まだ届いていないのでなんともいえないが、
ヤフオク!の写真で判断するかぎりでは、初期のモノの可能性が高い。

初期のTHAEDRAこそが最高、といいたいのではない。
私が求めているTHAEDRAは、初期のモノだというだけのことだ。

Date: 3月 28th, 2022
Cate: 戻っていく感覚

GAS THAEDRAがやって来る(その2)

GASのTHAEDRAの落札は昨晩、つまり日曜日である。
ヤフオク!にはいくつかのクーポンがある。

土日落札分にかぎり、10%割引(上限5,000円まで)というクーポンもある。
このクーポンが使えて、33,000円の落札金額は10%割引の金額になった。

こんな金額で落札してTHAEDRAに申しわけない、みたいな気持もある。
とはいっても、四十年以上のアンプを入手して、
そのまま使おう、とはまったく考えていないわけで、
メインテナンス、場合によっては修理が必要になることも、
その費用も考慮して、つねに落札金額を決めて入札している。

応札することは、なので、まずない。

ヤフオク!を眺めていると、
ジャンクと説明されているアンプを、けっこうな金額で落札する人がいる。
そういうモノのなかには、写真で判断するかぎり、かなり手入れが必要と思われるのがある。

その費用はけっこう金額になるであろうに、
そんな金額で落札するのか──、
落札した人は、どこに修理依頼するのか、それとも自分で直すのか、
まさかそのまま聴くということはないであろうに、
いったいどうするつもりなのか。よけいなことをつい考えてしまう。

話が逸れてしまったが、
今回、THAEDRAをもう一度と思ったのには、いくつかの理由がある。
といっても、欲しい、というまず気持があっての、後付けみたいな理由なのだが、
THAEDRAのヘッドフォンアンプとしての実力を知りたい、というのがまずある。

以前、別項で書いているように、ロジャースのLS3/5AをTHAEDRAで鳴らしたことがある。
私にとって、LS3/5Aの最上の音は、この時の音である。

多くの人がもっているGASのアンプの音のイメージとは、違っているのかもしれない。
LS3/5Aから、馥郁たる響きが鳴ってきた。

馥郁たる響きといっても、人によってイメージする響きは、たぶん大きく違うだろう。
ここで聴けた響きこそが、イギリスの、あの時代のスピーカーだからこそ聴けた響きであり、
THAEDRAの繊細な一面をはっきりと聴きとれた。

LS3/5Aを持っている人は割と多い。
そういう人のところで、いくつかのLS3/5Aの音を聴いてきたけれど、
THAEDRA+LS3/5Aの音を超えていない。

Date: 3月 27th, 2022
Cate: 戻っていく感覚
1 msg

GAS THAEDRAがやって来る(その1)

GASのTHAEDRAをヤフオク!で落札したばかりだ。
音が出ない、ということがあってか、33,000円(税込み)という、
予想していた価格よりもかなり安価で落札できた。

音は出ないわけだから、どこかが故障しているわけだ。
それでも写真を見る限りは、さほどくたびれた印象は受けない。
となると、音が出ない原因は、おそらくあそこだろう、という見当はついている。

実は20代のころ手に入れたTHAEDRAも、最初音が出なかった。
輸入元のエレクトリで、私のところに届く前にチェックされているにもかかわらず、である。

なので原因はここじゃないか、と思うところがあった。
事実、そこが原因だったし、簡単に修理できた。

今回も同じところが原因であれば、すぐに音は出るようになる。
もっとも実物が届いてみないことには、なんともいえないけれど、
この値段で手に入れたのだから、いろいろやって楽しむつもりでいる。

これまでいろんなオーディオ機器を使ってきたけれど、
一度手離した機種をふたたび使うようになるのは、今回が初めてだ。

それにしても2020年に、タンノイのコーネッタを、
2021年に、SAEのMark 2500を、
そして今回(2022年)に、GASのTHAEDRAである。

すべてヤフオク!で、そのころの落札相場よりもかなり安価で落札できている。

コーネッタを手に入れたとき、
アンプはマークレビンソンのLNP2とスチューダーのA68の組合せで鳴らしてみたい、
そんなことをおもっていたのに、
現実には、Mark 2500にTHAEDRAである。

THAEDRAはジェームズ・ボンジョルノの作である。
Mark 2500の回路の基本設計もボンジョルノである。

いったいどんな音がするのだろうか。

Date: 2月 20th, 2022
Cate: 戻っていく感覚

戻っていく感覚(「風見鶏の示す道を」その18)

(その17)を書いていて、思い出す。
五味先生の文章を思い出す。
     *
 とはいえ、これは事実なので、コンクリート・ホーンから響いてくるオルガンのたっぷりした、風の吹きぬけるような抵抗感や共振のまったくない、澄みとおった音色は、こたえられんものである。私の聴いていたのは無論モノーラル時代だが、ヘンデルのオルガン協奏曲全集をくり返し聴き、伸びやかなその低音にうっとりする快感は格別なものだった。だが、ぼくらの聴くレコードはオルガン曲ばかりではないんである。ひとたび弦楽四重奏曲を掛けると、ヴァイオリン独奏曲を鳴らすと、音そのものはいいにせよ、まるで音像に定位のない、どうかするとヴィオラがセロにきこえるような独活の大木的鳴り方は我慢ならなかった。ついに腹が立ってハンマーで我が家のコンクリート・ホーンを敲き毀した。
 以来、どうにもオルガン曲は聴く気になれない。以前にも言ったことだが、ぼくらは、自家の再生装置でうまく鳴るレコードを好んで聴くようになるものである。聴きたい楽器の音をうまく響かせてくれるオーディオをはじめは望み、そのような意図でアンプやスピーカー・エンクロージァを吟味して再生装置を購入しているはずなのだが、そのうち、いちばんうまく鳴る種類のレコードをつとめて買い揃え聴くようになってゆくものだ。コレクションのイニシァティヴは当然、聴く本人の趣味性にあるべきはずが、いつの間にやら機械にふり回されている。再生装置がイニシァティヴを取ってしまう。ここらがオーディオ愛好家の泣き所だろうか。
 そんな傾向に我ながら腹を立ててハンマーを揮ったのだが、痛かった。手のしびれる痛さのほかに心に痛みがはしったものだ。
(フランク《オルガン六曲集》より)
     *
《再生装置がイニシァティヴを取ってしまう》、
コレクションのイニシアティヴは、聴く本人の趣味性にあるべきはずなのに、
いつの間にやらそうでなくなっていく。

五味先生だけがいわれていることではない。
私がオーディオに興味をもつ以前からいわれていることである。

心に近い音で鳴る再生装置であれば、
その再生装置がコレクションのイニシアティヴをとっても、
それは聴く本人の趣味性から離れることはないであろう。

耳に近い音だけの再生装置によるコレクションのイニシアティヴとは、
当然違ってくる。

五味先生は、コンクリートホーンをハンマーで敲き毀された。
徹底的に破棄する──、この行為こそが示す道がある。

Date: 2月 17th, 2022
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その22)

SAEのMark 2500にはマークレビンソンのLNP2が、
私にとってのベストの組合せなのだろうが、
現実は違うわけで、いまのところメリディアンの218をダイレクトに接続している。

今年になって、
ふと思い立ってQAUDの405の相棒となっているAGIの511と組み合わせてみた。

この511はブラックパネルで、
RFエンタープライゼスの輸入品ではない。
並行輸入品である。

それでも、私にとってのAGIの511の音といえば、
このブラックパネルの音である。

以前書いているので詳細は省くが、
私が聴いた511の音は、ブラックパネルの511であって、
瀬川先生によれば、初期の511の音が聴けるのは、
並行輸入のブラックパネルの511だ、ということだった。

511の初期モデル、ブラックパネルの511に使われているOPアンプは、
一般的なFET入力型ではない。
全段トランジスターによる構成である。

511の改良モデルは、FET入力のOPアンプへの変更が主である。
アンプとしての特性は優秀になっているし、
音的にも現代的になっているともいえるが、
それでも初期の511の、音楽の表情のコントラストのはっきりとした音は、
FETが使われていないことによるものだ、と私は思っている。

そんな私の耳には、
やはりFETを使っていないMark 2500との相性も悪くないように聴こえる。

Date: 1月 10th, 2022
Cate: 戻っていく感覚

戻っていく感覚(「風見鶏の示す道を」その17)

一年ほど前の(その16)で、この項は終りのつもりでいた。
けれど、いまこうやって、また書いているのは蛇足かもしれないと思いつつも、
やっぱり書いておこう、という気持のほうが強い。

(その1)は七年ほど前。
だから、少しくり返しになるが、黒田先生の「風見鶏の示す道を」のことを書いておく。

《汽車がいる。汽車は、いるのであって、あるのではない。りんごは、いるとはいわずに、あるという。りんごはものだからだ。》

ここから「風見鶏の示す道を」をはじまる。

駅が登場してくる。
幻想の駅である。

駅だから人がいる。
駅員と乗客がいる。

しばらく読んでいくと、こんな会話が出てくる。
     *
「ぼくはどの汽車にのったらいいのでしょう?」
「どの汽車って、どちらにいらっしゃるんですか?」
「どちらといわれても……」
     *
不思議な会話である。
駅でなされる会話とはおもえぬ会話があった。

13歳のときに、「風見鶏の示す道を」を読んでいる。
それだけに記憶に強く残っている。

どこに行きたいのか掴めずにいる乗客(旅人)は、
レコード(録音物)だけを持っている。

このレコード(録音物)だけが、行き先を告げてくれる。
けれど、その携えているレコードを、乗客(聴き手)は、どうやって選んだのだろうか。

嫌いな音を極力排除して、
そんな音の世界でうまく鳴る音楽だけを聴いてきた旅人が携えるレコードが示すのは、
どこまでいっても、耳に近い音なのではないだろうか。

心に近い音を示してくれることはないはずだ。

Date: 9月 14th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その21)

ラジオ技術の1977年7月号の石田春夫氏の記事のおわりに、
Independenceの製作にあたっての試聴に使った器材が記されている。

パワーアンプは、EL156パラレルプッシプルアンプ(1977年3月号掲載)、
スピーカーはJBLの4320、パラゴン、アルテックのA7、
それにマグネパンとある。

比較コントロールアンプも挙げられている。
ここがいちばん興味深い。

マランツのModel 7とオーディオリサーチのSP3A、そしてGASのThaedra。
Thaedraが入っている、と思った。
Model 7とSP3Aは管球式、Independenceも管球式だから、
この二機種が比較機種としてあるのは、誰もが納得するところだろう。

Thaedraはソリッドステート。ブランドの歴史も浅い。
ソリッドステートのコントロールアンプとの比較もわかる。

このころソリッドステートのコントロールアンプは、というよりも、
ほとんどの市販されているコントロールアンプはソリッドステートだった。

そのなかでのThaedraである。

なぜThaedraだったのか。
石田氏が所有されていたモノなのか、
それとも周りのオーディオ仲間の誰かが所有していたモノだったか、
そのへんのところははっきりとしない。

少なくとも、どうでもいいと思っているコントロールアンプを、
比較機種として選ぶことはしないだろう。

数あるソリッドステートのコントロールアンプのなかでThaedra。
そういう人がIndependenceをつくったのか、ということが、
ラジオ技術の記事を読んで、もっとも印象に残っている。

Date: 9月 12th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その20)

石田春夫氏の名前で検索してわかるのは、
石田氏はソニーを退社されてからハルアンプを始められた、ということ。

ラジオ技術には石田春夫で登場されているが、
無線と実験には石田春雄となっている。

ラジオ技術では、1977年11月にも、パワーアンプの記事を書かれている。
EL156のプッシュプルアンプで、Junior Battlerのはずだ。

無線と実験では、
1978年5月号掲載の「理想のオーディオ・ケーブルを求めて」というテーマで登場されている。

Independenceのラインアンプはカソードフォロワーの二段構成。
カソードフォロワーだから一段であっても信号の極性は反転しない。
にもかかわらず二段構成としているのは、
レベルコントロールまわりのアースの処理からだろう。

通常のアンプではライン入力は、
レベルコントロール(ポテンショメーター)、ラインアンプという信号経路である。

Independenceは、カソードフォロワー、レベルコントロール、カソードフォロワーとなっている。
1980年代のラジオ技術に掲載された富田嘉和氏の記事を読まれた方ならば、
こういう構成にしている理由がわかるはずだ。

実際のIndependenceのレベルコントロールのアースの配線がどうなっているのかは、
実機を見ているわけではないのでなんともいえないが、
考え方として富田嘉和氏と共通するところがある、と思っている。

Date: 9月 12th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その19)

ハルアンプのIndependenceについて、知り得たことがあるので補足しておく。

週末に、Independenceの製作記事があります、という連絡をいただいた。
ラジオ技術の1977年7月号に載っている。
記事をスキャンしたものを送ってもくださった。

石田春夫氏という方が記事を書かれている。
ほぼまちがいなく、この石田氏がハルアンプの主宰者のはずだ。

ハルアンプの存在を知ってから、なぜ「ハル」なのかがわからなかった。
記事を送ってくださった方は、春夫だからハルなのでは、ということだった。

いわれてみるとそうである。
春を告げるアンプという意味も込められているのかもしれない。

ラジオ技術の記事を読むと、1977年3月号には、
EL156のパラレルプッシュプル、出力100Wの記事があることもわかる。
これが、おそらくハルアンプのBattlerのはずだ。

記事はTypeIIではないIndependenceであり、
当然のことだが、回路図と回路の説明、それからプリント基板のパターンも知ることができる。

Independence TypeIIの回路図は、無線と実験の1979年7月号に載っている。
こちらは回路図のみである。

アンプ部に関しては、IndependenceとIndependence TypeIIの違いは、
ほとんどない、といえる。
定数にわずかな変更があるくらいだ。

ただし電源部は違う。
Independence TypeIIでは、ヒーター用、B電圧、どちらも定電圧化されている。
ヒーター回路は三端子レギュレーターで、
高圧のB電源回路はトランジスター四石(うち二石は誤差増幅、残り二石が制御用)で構成。

Independence TypeIIには、
フロントパネルをゴールド仕上げにしたIndependence TypeIIGがある。
ステレオサウンド 54号の新製品紹介に登場している。

Independence TypeIIGは、高信頼管の採用とともに電源回路が左右独立している。
このIndependence TypeIIGの音にも興味はあるが、
SAEのMark 2500と組み合わせることが前提であれば、Independence TypeIIである。

Mark 2500にゴールド仕上げのフロントパネルに似合わないからだ。

Date: 9月 11th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その18)

メリディアンの218は、固定出力にも可変出力にも設定可能であるから、
SAEのMark 2500とのあいだに音量調整機能は不要といえば、そうである。

昨年まで毎月第一水曜日にやっていたaudio wednesdayでは、
218の機能を使って音量調整をやっていた。

ときおりインターネットでみかけるのは、
コントロールアンプを使うのがいいのか、
それともD/Aコンバーターが218と同じように音量調整機能があるのならば、
パワーアンプと直結してしまうのがいいのか、
デジタル領域での信号処理がイヤならば、
パッシヴ型フェーダーを介したほうがいいのか、
そんなことを悩む人がいる。

私は、どれでもいいじゃないか、と最近では考えるようになった。
どれがいいのか、ということよりも、
それぞれの方式の良さを楽しもう、と思うようになったからだ。

コントロールアンプを介するのならば、
介することの面白さを存分に楽しみたい。

なので、ここでのコントロールアンプ選びとは、
優れたコントロールアンプ選びということではない。

Date: 9月 9th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その17)

プレシジョン・フィデリティのC4は、いい管球式コントロールアンプだった、と思う。
回路的にも面白いと思っている。

それでも内部写真を見ると、回路は洗練されているといえても、
造りはそうではない。

プリント基板の採用だけでなく、プリント基板のパターン含めて、
およそ洗練されているとは言い難い。

プレシジョン・フィデリティのC4の回路そのままで、
Independence TypeIIや上杉先生発表のアンプのように配線していったら、
さらには昔ながらの管球式アンプの配線であったならば──、と思う人は、
私以外にもきっといるはずだ。

(その8)でちょっとだけ触れたKTS Audioというブランドによる
C4をベースにWaltzというコントロールアンプは、まさしくそうである。

プリント基板を使っていないのだ。
世の中、同じことを思う人がやはりいる。

Waltzがどんな音なのかはわからない。
聴く機会はない、と思う。

それでもいい。
管球式アンプにプリント基板を使うことに抵抗を感じる人がいて、
プリント基板を採用した過去のアンプを、手間のかかる配線によってよみがえらせている。
このことが嬉しいのだから。

プレシジョン・フィデリティのC4の程度のいい中古と出逢うことは、期待していない。
ならばWaltzのように、自分でつくるという手がある。

SAEのMark 2500と組み合わせるコントロールアンプとして、
ソリッドステートならば、いまでもマークレビンソンのLNP2なのだが、
管球式ならば、C4の自作ヴァージョンかな、と真剣に考えている。

Date: 9月 9th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その16)

ハルアンプのIndependence TypeIIと
上杉先生のステレオサウンド 45号発表のコントロールアンプ。

回路がまったく違うアンプであり、
上杉先生のアンプは外部電源ということもあって、
左右チャンネル対称といえる部品配置であるが、
プリント基板に頼らない配線ということは共通している。

プリント基板の採用は、大量生産するメーカーにとっては、
品質管理の上でもなくてはならないものであることは理解している。

それでも管球式アンプでは、
プリント基板に頼らないでほしい、という気持が私にははっきりとある。

とはいえラックスでもプリント基板を採用していたし、
ラックス規模のメーカーであれば、
海外の新興メーカーよりも生産台数はずっと多いはずだから、
プリント基板を採用することで、コストを下げることにつながっている。

くり返しになるが、それでも……、とやっぱり心の中でつぶやきたくなる。

ハルアンプと上杉先生のアンプは、プリント基板のメリットも活かしつつ、
プリント基板とは、そうとうに違う。

ベースに銅板かベークライトの板か。
どちらがいいのかは一概にはいえない。

銅板は導体である。
ベークライトはそうではない。

それに指で弾いた音も、銅とベークライトでは違う。

Independence TypeIIの実機を、内部をしげしげと見たことがないのでなんともいえないが、
銅板を使うことでベタアースが可能になる。
ベークライトではそうはいかない。

アースの処理をどうするのかは、昔から論争がある。
Independence TypeIIがベタアースでなかったとしても、
銅板はシールドとしても働く。

同じ回路、同じ部品配置だとしても、
銅板とベークライト板では、そうとうに音は違ってくる。

以前、テフロンのプリント基板が話題になった。
テフロンの電気特性の優秀さゆえに、音が良い、
そんなふうにいわれていたけれど、
テフロン基板と、一般的なガラスエポキシの基板とでは、指で弾いた音がそうとうに違う。

私は、このことが音の違いに大きく影響していると捉えている。

Date: 9月 3rd, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その15)

ハルアンプのIndependence TypeIIに近い配線方法なのが、
ステレオサウンド 45号に掲載されている上杉先生のアンプである。

昔のステレオサウンドには自作のページが、不定期で載っていた。
45号には、
「最新テクノロジィによる真空管式ディスク中心型プリアンプをつくる」というタイトルで、
マッキントッシュのC22の回路をベースに、
シンプルな機能のコントロールアンプを発表されている。

Independence TypeIIは銅板を配線のベースにしているのに対して、
上杉先生の、このアンプはベークライトの板をベースにしている。

ベークライトの板に、穴開け加工をして金属製のビスを立てていく。
配線に必要な数だけ立てていく。

Independence TypeIIでのバインディング端子を、ビスで代用しているわけだ。
もちろん上杉先生のアンプにバインディング端子を使っていい。

上杉先生は部品の入手しやすさを重視しての金属製ビスの採用なのだろう。

45号の時、中学三年生だった私は、
これなら作れそうと思ったほどだった。

記事には穴開け用の方眼紙的な図も載っていた。
この図を使ってベークライトの板に穴を開けていく。
ビスを立てて、部品をハンダ付けして、配線していく。

丁寧に、慌てずにやっていけば、失敗の可能性は低い。
プリント基板を自作するよりもいい方法のように思えた。

自作するほどの予算がなかった私は作ることなく終ってしまったけれど、
これはいまでもいい方法だと思っている。

ただ、当時、私の住んでいた田舎で、
上杉先生のアンプ製作に必要な大きさのベークライトは入手できなかっただろう。

とにかく上杉先生の、このアンプが頭にあったものだから、
ほぼ一年後のステレオサウンド 50号で、Independence TypeIIを見た時、
この二つのアンプが重なった。

Date: 8月 27th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その14)

いま、目の前にハルアンプのIndependence TypeIIの、
ひじょうに程度のいい中古が出てきたとしよう。
価格も手頃だとして、買うのか、と問われると、欲しいけれど……、となるかもしれない。

Independence TypeIIの回路構成は、はっきりとフォノイコライザーアンプである。
二段差動回路のユニットアンプの二段構成、ラインアンプにカソードフォロワーをもってきて、
入力セレクターとレベルコントロール機能を備えたのがIndependence TypeIIだ。

いまもアナログディスク再生がメインであれば、
SAEのMark 2500と組み合わせるコントロールアンプとしてIndependence TypeIIは、
第一候補といえるけれど、私はそうではない。

再生の軸足はデジタルである。もっといえばMQAである。
そうなるとIndependence TypeIIをラインアンプとしてみた場合、
入力セレクターとレベルコントロール(東京光音製だったはず)、
それにカソードフォロワーだけとなる。

それで音が好ましければ、それでもいい──、
そう言い切れないところが、わたしのどこかにある。

Independence TypeIIのラインアンプだけしか使わないのはもったいない、
そんな気持とともに、メリディアンの218とMark 2500のあいだに、
あえてコントロールアンプを介在させるのだから、
もっと積極的な理由(おもしろさ)が欲しい、というのが本音でもある。

とはいえ実際にIndependence TypeIIと出逢えたならば、買ってしまうだろう。

Date: 8月 26th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(コントロールアンプのこと・その13)

ステレオサウンド 50号の、新製品紹介の記事で、
マッキントッシュのC29とハルアンプのIndependence TypeIIが並んでの掲載は、
当時は感じなかったことだが、いま見るとなかなかに対照的なアンプを、
二台並べたものだな、と感心する。

それが当時のステレオサウンド編集部の意図だったのかどうかはなんともいえない。
注目度のかなり高い機種は2ページで、そこまでではないけれど高い機種は1ページ。
注目度がそれほどでもない機種は1ページに数機種という扱いだったから、
自然とそうなっただけのことだろう。

それでも偶然とはおもしろい。

C29はC28の後継機といわれていた。
C29の少し前に登場したC27はC26の後継機であった。

型番、フロントパネルからいえば、C29はC28の後継機といえる。
けれど回路構成に目を向ければ、C29はC32の機能簡略機である。

C26とC28は、いわゆるディスクリート構成だった。
C27もそうである。

C27の使用トランジスター数はかなり少ない。
この時代、すでに一般的になった差動回路を採用していない。
物理投入を得意とするアメリカとはおもえない最小限度の構成が特徴といえる。

C29はOPアンプによる構成だ。
C32もそうである。

価格的にはC27の上級機にあたるC29がOPアンプ構成である。
あのことは、マッキントッシュのアンプ設計のポリシーを考えていく上で、
見逃せないポイントである。

アメリカの、伝統あるマッキントッシュが、OPアンプを積極的に採用している。
一方の日本の歴史の浅い、規模も小さいハルアンプが、
意欲的な管球式アンプを世に問うている。