一度目の「20年」
1991年、初めてMacを手にした。
Classic IIだった。メモリーは8MB、ハードディスクは40MBで、
ディスプレイは9インチのモノクロ。
キーボードは当時アスキーが発売していた親指シフトキーボードを使った。
日本語入力プログラムは、キーボード指定のMacVJE。
その後Macは、SE/30に買い換え、アクセラレーターを載せ、
ビデオボードも装着した。
キーボードは親指シフトキーボードのままで、MacVJEも使い続けていた。
1996年、MacVJEがAI変換搭載ということで、MacVJE-Deltaにヴァージョンアップした。
AI変換がどれだけ賢いのか試してみようと思って、
たまたま取り出していた本の一節を入力してみた。
変換効率は明らかに向上していた。
面白いように変換してくれるので、ついつい次の文節も、その次の文節も、と入力していた。
この時の本が、五味先生の「西方の音」だった。
一ページほど入力し終えて、ついでだから、一冊丸ごと入力してみよう、と思った。
毎日帰宅したら入力という日が続いた。
当時インターネットのことは知っていたけれど、やってはいなかった。
自分でウェブサイトをつくって公開することも考えていなかった。
何か目的があって入力を初めて続けていたわけでもなかった。
ただ電子書籍(VoyagerのExpand Book)にしようかな、ぐらいだった。
入力作業を続けていたのは、「五味オーディオ教室」と出逢って20年、ということに気づいたからだった。
20年という節目だから、とにかく五味先生のオーディオと音楽の本を入力していこう、
ただそれだけで続けていた。
「西方の音」のあとに、
「天の聲」「オーディオ巡礼」「五味オーディオ教室」「いい音いい音楽」と入力していった。
Expand Bookにもした。
SE/30では非常に重たい作業だった。
Expand Bookにしたからといって、誰かに渡したわけではなかった。
そのままにしていた。
しばらくして、ステレオサウンドの原田勲氏に「オーディオ巡礼」をフロッピーにコピーして送った。
それきりだった。