Archive for category the Reviewの入力

Date: 7月 29th, 2009
Cate: the Reviewの入力
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the Review (in the past) を入力していて……(その17)

SUMOのThe Goldのこと、それにこのアンプの設計者、ジェームズ・ボンジョルノについては、
いずれ改めて書くつもりでいるが、実際に、The Goldを自分のモノとして使うと、
井上先生の言葉が正しいことが実感できた。惚れこんで、使っていた。

そうなると、やはり回路図を入手したくなる。
いまもそうだが、興味のあるオーディオ機器、自分で使っている(いた)モノについては、
回路図をできるかぎり入手してきた。

回路図を見たからといって、なにかが変わるわけでもないだろう。
その機械の回路構成を知ったからといって、それだけでいい音が出せるようになるわけではない。
それでも、やはり回路図は、どれだけ時間がかかっても、見ておかないと気が済まないところがある。
しつこい性格なのだろう。

だから、いまも、気が向いたとき、すこし時間の余裕があるときは、
じっくりとあれこれネット検索して、回路図を入手している。

最近入手したもので興味深いと思ったのは、
スチューダーのA101という電圧増幅用モジュールアンプの回路図である。
差動入力で、トランジスターの使用数はわずか4石。抵抗が5本に、コンデンサーがひとつ、という、
これ以上、どこも削りようがないくらいの素子数の少なさである。

素子数の少なさ=シンプルな回路、といえるほど単純なものではないが、
このA101の回路は、よく考え抜かれたものだと感心する。
この回路は、いろいろと使えそうだと、直観した。

Date: 7月 29th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その16)

プロトタイプのステイシス1に使われた言葉を、井上先生は、SUMOのThe Goldにも使われている。

ステレオサウンド 55号の新製品紹介の記事で、The Goldの音は、一定の姿形を持っていないため、
あらゆるいい言葉があてはまり、つまり言葉で表現しにくい、とことわられている。
さらに以前紹介したステイシス1とよく似た印象である、とも。

この記事を読んだとき、まだThe Goldの音は、当然だが、聴いていなかった。
それに、800A以来、ずっとスレッショルドのアンプには注目してきていただけに、
この、少しばかりガサツなところが感じられるアンプが、
洗練された印象のスレッショルドのステイシス1と似ている、ということは少なからずショックだった。

それにステイシス1はモノーラル構成で、規模も大きい。
価格もThe Goldの2倍以上なのに……、とも思っていた。

しかも井上先生は、ステイシス1よりも、The Goldのほうが反応が速く、より変化自在である、とも語られている。

つまりステイシス1よりも優れている、ということに、すこしThe Goldが憎く思えてきたものだ。
結局、のちに、そのThe Goldに惚れこんで購入するのだけれど……。

Date: 7月 29th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その15)

4、5年前だったか、ネルソン・パス主宰のパス・ラボのウェブサイトで、
パスが過去に設計したアンプの回路図のほとんどが公開されていたことがあった。
残念ながら、いまはダウンロードできないようだ。
でも、ここで入手したのものだろう、いくつかの海外の個人サイトでは、
主だったものの回路図が公開されている。

デビュー作の800Aはもちろん、私がいちばん知りたかったステイシス・シリーズの回路図も、そこにはあった。
回路図を実際にみると、あとに公開された概念図どおりの構成だった。
カレントミラー・ブートスラップと名づけられた回路が、出力段のトランジスターに接続され、
ステイシスアンプ(むしろステイシスセクションと呼ぶべきだろう)の要求通りの電流を、
供給するようになっている。

プロトタイプのステイシス1が、2台のアンプを組み合わせることで実現していたことを、
市販されたステイシス・シリーズは、より合理的に1台のアンプとしてまとめあげたわけだ。

とはいうもの、ここまで回路構成が異ると、設計思想は同じでも、とうてい同じ音がするわけはない。
もちろん、設計者のネルソン・パスは、市販した方のステイシス回路を、
より発展性があり(だから、ステイシス2、3が出たのだろう)、
よりスマートなものとして、進化したステイシス回路と考えているのであろう。

それでも、プロトタイプのステイシス1の音は、いちど聴いてみたかった。
見ればみるほど、プロトタイプのステイシス回路は、興味深いからだ。

井上先生は、たしか「変化自在の音」と言われていたように記憶している。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その14)

ステイシス・シリーズが出揃ったころ、ステイシス回路の概念図が、なにかに載っていた。
アンプを表わす三角形と電源ラインの間に、円をふたつ重ねたものに三角形を組み合わせた記号が、
プラス側、マイナス側にそれぞれあり、この三角形からも出力が取り出されているというものだった。

あきからにステレオサウンドで見た技術資料に載っていたものとは違う。
このときわかったのは、プロトタイプのステイシス回路と、実際に市販されたステイシス回路は、
設計思想そのものこそ同じだが、手法は異っている、ということだ。

それでも、ステイシス回路が具体的にどういうものなのか、その詳細はずっと知りたくてもわからなかった。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その13)

プロトタイプとして登場したステイシス1は、ステイシス回路で特許を取得している。
ステイシス回路とは、当時は、電圧と電流の変動を極力おさえたステイシスアンプと、
それに付随する電流供給源を組み合わせたものと、説明されていた。

ステイシスアンプもスピーカーとつながっているが、大半のパワーは、
ステイシスアンプがコントロールする電流供給源からおこなわれる。
こういう説明がなされていたが、具体的な回路構成にはついてはまったくわからなかった。

ステレオサウンド編集部にあったスレッショルドの技術資料をみると、
たしかにステイシスアンプと呼ばれるもののほかに、スピーカーとアース間にごく小さな値の抵抗が挿入され、
ここで電流検出をして、電流供給源アンプの入力へと接続されていた。
つまり小出力の、リニアリティに優れているステイシスアンプと、
大出力のアンプを組み合わせた回路、つまり2台分のアンプが必要ということになる。

この回路の概念図が、1980年にステイシス2、3を加えて市販されたあとで、じつは変更されている。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その12)

無線と実験が取り上げていたステイシス1のプリント基板は、一枚だったように記憶している。
サイズも天板とほぼ同寸法程度の大きさだったはずだ。
それがステレオサウンド 56号で取り上げられているステイシス1では、2枚構成になり、
合わせた大きさも、以前のものより小さくなっている。

当時、無線と実験、ステレオサウンド、それぞれに掲載された写真を見比べた。
無線と実験のほうはモノクロで、ステレオサウンドのほうはカラーだけど、サイズが小さいため、
細部まで比較することは無理だったけれど、プリント基板上の部品は位置もかなり異っていたはずだ。

無線と実験に、ステイシス1といっしょに紹介されていたコントロールアンプからもわかるように、
以前取り上げられた、最初のステイシス1は、プロトタイプだったことがわかる。
それにしても、基本そのものが、ここまで変わるとは……、と当時思っていた。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(余談)

6月1日からはじめた “the Review (in the past)” の記事が、1000本になった。
これでなんとかデータベースと呼べるぐらいの規模になったかな、と感じている。

とにかく1000本までは、という気持で、”the Review (in the past)” のほうを優先してきたので、
これからはすこしペースを落としていく。年内に2000本を、目標としている。
そして、こちらの “audio identity (designing)” を優先していく。

Date: 7月 26th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その11)

56号から、ステレオサウンドの新製品紹介のページは、カラーとモノクロページに二本立てになり、
それまでの井上先生と山中先生の対談中心の形式から、他の筆者の方たちも加わって、
書き原稿へと、大きく変わった。

だからといって、過去に登場した新製品が、もう一度取り上げられる理由にはならない。
弟分にあたるステイシス2、ステイシス3が登場してラインアップが揃ったことも関係していたのだろうが、
それも、ステイシス2と3を新製品として扱えばすむことである。

なぜなのか。
56号にはステイシス1の内部写真が載っている。
無線と実験に載った内部写真と見比べてみるとはっきりするだが、
天板をはずした状態で見える、青色のプリント基板の大きさと数が異ることがわかる。

Date: 7月 25th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その10)

1979年に、コントロールアンプの二作目、SL10が出て、
800Aからはじまり、400A、4000といったパワーアンプのイメージと、
私の中では、すんなりと一致するパネルの構成、質感になった。

このSL10のツマミは、そのまま1年後に登場するステイシス1にも採用されているので、
ある部分、スレッショルドの次の顔を具現化したものといってもいいかもしれない。

SL10のボリュウムのツマミ──、数少ない、個人的に好きなツマミのひとつでもある。

NS10とSL10、このふたつを2段重ねにしたコントロールアンプが、
1979年か80年の無線と実験誌に載ったことがある。
どちらが上だったのかまでは忘れてしまったが、
ステイシス1にふさわしいコントロールアンプのプロトタイプとして、
とにかく急拵えで用意されたものという感じだった。

このときのステイシス1は、ステレオサウンドの新製品紹介のページでも紹介されている。
まだ新製品紹介のページがモノクロだけで、井上先生と山中先生が担当されていたときの、
52号前後のステレオサウンドだったと思う。

そして56号で、山中先生が、ふたたび新製品の紹介記事を書かれている。

Date: 7月 23rd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その9)

DBシステムズは、パワーアンプDB6を出す。
だが個人的な印象では、DB1+DB2ほどの個性の強烈さは、その内容からは感じられなかった。
その音も、DB1+DB2のほうが、尖っていた。

AGIからは、前述したようにパワーアンプは登場しなかった。
結局、どちらもデビュー作のコントロールアンプのみが、強烈な印象として残っている。

このふたつのブランドと比べると、クレル、パスラボ(スレッショルド)のデビュー作として、
まず浮ぶのは、どちらもパワーアンプである。

スレッショルドは800Aがデビュー作で、コントロールアンプのNS10は、すこし遅れて登場した。
大型のパワーメーターを、上下対称に配置した800Aのパネルフェイスは、
新しい世代のパワーアンプという魅力感じさせるのに、
どちらもルネ・ベズネのデザインにもかかわらず、
NS10のパネルからは、そういう雰囲気が感じられなかった。

Date: 7月 23rd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その8)

DBシステムズのDB1+DB2を聴いたのは、AGI・511(ブラックパネル)同じ日で、
ほかにマッキントッシュのC32、パイオニア/エクスクルーシヴC3も聴いている。

DB1+DB2の音は、511とは、また違う面をもつ強烈さだった。音が尖っていた、そんなふうに受けとった。
C32、C3を聴いたあとでは、511もDB1+DB2も、作っているのは、
きっと若いエンジニアなんだろうなぁ、と思わせるところがあった。

どちらも青年という感じで、511が短距離走のアスリートだとすれば、DB1+DB2は、文学青年か。
アメリカの新しい世代の音であるのだろうが、対照的な音のようにも感じていた。

511は、シャーシの作りも精度がきちんと出ていて、パネルフェイスも精悍な印象がある。
一方、DB1+DB2の作りは、むき出し、作りっぱなしという感じが残っている、というふうに、やはり対照的。

内部も、実はそうで、511が信号系すべてにオペアンプを採用し整然としているのに対して、
DB1+DB2は、意外にも、と言おうか、すべてディスクリート構成で、
しかも当時、他のアンプがほとんど採用していた差動回路は使わず、
電源もマイナス電源(33V)のみ、という、外観とともに、個性的な内容といえる。

聴いていて爽快だったのは511だったが、では、自分で使うとなったら、DBシステムズを選ぶかもしれない。

Date: 7月 6th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その7)

AGIの511と同じころに現われたのが、DBシステムズのDB1+DB2だった。
DB1がアンプ本体で、DB2が外部電源の、それぞれの型番で、
DBシステムズは、DB1と同時に、MC型カートリッジ用ヘッドアンプ、チャンネルデバイダーも出していて、
DB2はすべてに共通のものだった。

1977年当時、511が260,000円、
DB1+DB2が212,500円 (DB1が171,500円、DB2が41,000円)と価格が近いこと、
それにDB1+DB2も、511同様、媚を売るようなところはいっさいなく、
一本筋がぴしっと通ったつくりも共通していたためか、比較されることも少なくなかったように記憶している。

マークレビンソンのJC2の登場以降、日本では、薄型のコントロールアンプが流行していたが、
511もDB1+DB2も、そんなことには目もくれていない。
おそらくAGIもDBシステムズ、マークレビンソンの成功に刺激を受けていただろうが、
影響まで受けていたわけではない、ということだろうか。

Date: 7月 5th, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その6)

ステレオサウンド 43号に、瀬川先生のAGI・511の評価が載っている。

熊本のオーディオ店で聴いた511のブラックパネルの音は、書かれているとおりの音だった。
ダイレクトな音とは、なるほど、こういうものかと思いながらも、
情緒的なたたずまいを拒否というよりも、最初から無視したような性格も含めて、
迷いのない徹底さと斬新さは、強烈な印象をあたえた。

正規輸入品の511を聴いたのはもっとあとのことで、記憶の中での比較にはなるが、
たしかにブラックパネルの511に感じた魅力はずいぶん失われていて、
かわりに繊細なところは出てきたようにも思えたが、511でなくては聴けないという魅力は、もう感じなかった。

ステレオサウンドにはいってすぐくらいのときに、511Bが出てきた。
もしかすると、初期の511、ブラックパネルの511の音がリファインされて聴けるのでは、と期待したのだが、
正規輸入品の511の延長線上にある音で、だから、なおさらブラックパネルの511の音が魅力的に思えてくる。

Date: 7月 3rd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その5)

このとき、瀬川先生がAGiの511の音を鳴らされたのは、それがブラックパネル(並行輸入品)だったからだ。

音出しが終ったあとにつけ加えられた。
「残念なことに正規輸入品の511は、日本仕様になってしまい、
初期の511がもっていた良さ、個性がひじょうに稀薄になってしまった。
でも、並行輸入品のブラックパネルの511だと、初期の製品がもっていた良さそのまま」であると、
だから「大きな声では言えないけれど、こっち(ブラックパネル)をすすめる」とも。

当時、511とペアになるパワーアンプが出ていなかったことと、
QUADの405も、やはりペアとなる新型コントロールアンプ(44)がまだ登場していなかったこともあって、
511と405のペアは、黄金のペアとまではいかなくても、相性のいいペアとして、
ステレオサウンドの誌面にも登場していた。

このことにも瀬川先生はふれられた。
「511と405の初期の製品同士のペアはたしかにそうだったけれども、
511が日本仕様に変ってしまった。405も入力感度切替えがついたりするなどして、変更されていて、
必ずしも、このふたつを組み合わせて、いい結果が得られるとは保証できない」と。

Date: 7月 2nd, 2009
Cate: the Reviewの入力

the Review (in the past) を入力していて……(その4)

たとえばAGI(Audio General, Inc.)は、そのデビュー作、511で高い評価を得ている。
これは音質面ばかりでなく、コントロールアンプにおけるハイスピード設計の概念を確立したことも、
大きく関係しているだろう。

AGIの511のスペックには、ライズタイム、スルーレイト、タイムディレイという、
他のアンプでは見かけたことのない項目、それも時間、速度に関係するものが並んでいた。

とうぜん511とペアになるパワーアンプの登場がまたれたが、開発中という話は伝わってきたものの、
具体的にどんな構成なのか、どの程度の規模のものなのか、といった情報はなく、
ついに登場することもなかった(バイアス回路の特許はアメリカで取得していたらしい)。

511がBタイプに改良されたのが最後で、同社はオーディオ機器の開発から手を引く。

余談だが、511にはブラックパネルがあった。
いわゆる並行輸入品だ。

私が最初に耳にした511は、じつは、このブラックパネルであり、
瀬川先生が熊本のオーディオ店にこられた時に、である。

なぜ、あえて並行輸入品の音を鳴らされたのか。
並行輸入品だ、とことわられたうえでの、音出しだった。