Archive for category 真空管アンプ

Date: 2月 21st, 2009
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その33)

カウンターポイントのデビュー作SA1の設計者は、エドワード・スマンコフ(彼が創業者でもある)、
SA2とSA1の後継機SA5の設計は、1982年から社長に就任したマイケル・エリオットに手による。
SA5になり、SA1にあった不安定さはなくなった。
SA2と同じ設計者とは思えないくらい、不安は感じることなく安心して使えるようになった。

ただ、それでも、マランツ#7のようにSPUをダイレクトに接続できるかというと、
全段NFBを排した無帰還設計で、当然RIAAイコライザーはCR型となり、
NF型イコライザーと比較すると物理的なSN比の面では不利なのは仕方ないとしても、
エリオットがいうところの「真空管のローレベルのリニアリティのよさ」が、
全面的に音に反映されていたのかというと、どこかしら、まだ抜け切っていないところが感じられた。

SA1とSA5は、シャーシーもパネルフェイスも共通、内部コンストラクションもほぼ同じ。
真空管は水平方向に、細長いプリント基板に取りつけられ、小さなゴムプッシュで、
申し訳なさそうにフローティングされている。

#7も、真空管を水平方向で使っている。
それでも真空管を取りつけているサブシャーシーは、
プリント基板のようなフレキシブルなものではなく、
しっかりしたものに固定した上で、フローティングしている。

外部振動による影響が、トランジスターよりも、音や性能に出やすい真空管を、
フレキシブルなものに取りつけ、それをフローティングしたら、
振動対策としては、逆効果な面も生じてしまう。
ただフローティングすれば終り、というわけではない。

#7は真空管全てにシールドケースを被せている。
SA1もSA5も熱対策のためシャーシーの天板、底板には大きめの空気穴が開けられていて、
シールドケースも使っていない。
いろんな電波が飛び交っている環境下で使うには、やや不安を感じてしまう。

といっても、ただシールドケースを被せればそれで解決するわけでもなく、
昔から真空管アンプをいじってこられた方ならば、
シールドケースの違いによって、音がときには大きく変化することに気がつかれているはず。

私が個人的に使った範囲でいえば、IERCのシールドケースがもっともよかった。
黒の艶消しの塗装で、内部には魚のウロコ上のフィンが多数ついているタイプである。
中には、絶対真空管には被せたくないと、音の面で、そう思わせるものもあった。

Date: 2月 21st, 2009
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その32)

マークレビンソンもカウンターポイントも、創業時は、どちらもガレージメーカーと呼ばれる規模から、だった。
それでもマークレビンソンは、それまでのトランジスターアンプと比較して格段のSN比の高さを誇っていた。
音に関しては、人それぞれ評価は異るだろうから、ここではあえて言わないが、
少なくとも性能面において、素晴らしい面を誇っていた。

カウンターポイントはどうだろう。
それまでの真空管アンプ、つまりマランツ#7やマッキントッシュのC22などの、
真空管アンプ全盛時代の、つまり20数年前のアンプと比較して、性能面で圧倒的に優れていたといえるだろうか。
SN比、安定度の面で、少なくとも、私は不満を感じていた。

この項の最初のほうで述べたように、なにもカウンターポイントに限ったことではない。
なのに、カウンターポイントばかりを取りあげるのは、
前述したように、SA5000(3000)で、それらの不満点をほぼ解消しているからだ。

Date: 2月 21st, 2009
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その31)

マークレビンソンのコントロールアンプは、型番にLNP(Low-Noise Preamplifier)とつけているだけあって、
SN比の高さは見事だった。

井上先生も、マランツ#7以降、トランジスターアンプの時代になっても、
オルトフォンのSPUをダイレクトに接続できるコントロールアンプは、LNP2が登場するまで、
ほとんど存在していなかった、と言われていた。

LNP2のSN比の高さもさることながら、
真空管式であること、登場は1958年ということを考え合わせると、
マランツ#7のSN比の高さ(聴感上のSN比も含めて)は、驚異的といえるだろう。

カウンターポイントのイメージを、勝手にマークレビンソンと重ね合わせ、
ローノイズを期待していたのは私の一方的な思いにしかすぎないのだが、
それでも、マランツが実現できていたSN比を、
20数年あとのカウンターポイントが、なぜできないのかと思うのは、当り前のことだろう。

Date: 2月 21st, 2009
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その30)

正確に、どのくらい後だったのかは憶えていないが、井上先生から、
マランツの#7に、トランスもヘッドアンプも通さずに、
オルトフォンのSPUをダイレクトに接続したことがあるという話をきいた。

初期の#7だと、SPUのダイレクト接続では発振してしまうが、
位相補正が変更された後期の#7では発振は起こらなかったそうだ。
ただし、すこし不安要素は残っていたようだとも話された。

肝心のSN比に関しては、驚くことに、問題なく鳴ったとのこと。
真空管アンプで、なんらかの昇圧手段を使わずにSPUが使え、鳴ってしまうというのは、
井上先生にとっても考えられなかったことだったらしい。
それでも実際に試されているところが、井上先生のオーディオの楽しみ方のすごいところだ。

マランツ#7でSPUが実用になるのかぁ。
#7は、電源トランス内蔵だし、コントロールアンプとしての機能もきちんと備えているにも関わらず、
ノイズレベルに関しては、ほぼ問題ないわけだ。

なのにカウンターポイントのSA2はなぜ……、と当然だけど、そう思ってしまう。

Date: 2月 21st, 2009
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その29)

High-TechnicシリーズのVol.2をくり返し読んでいた私は、
真空管でヘッドアンプをつくるならば、ノーロイズの真空管の選定のほかに、
2本、3本……と並列接続するんだろうな、と漠然と考えていた。

それに機械的な電極をもつ真空管だから、振動によるマイクロフォニックノイズ対策はしっかりと必要になるし、
ヒーターの電源にも、十分な注意が必要になる。
それにすこしでもノイズレベルを下げるために、誘導ノイズの原因となる電源トランスは外付けにして……、
そんなこと考えているだけで、この頃は楽しかった。

こんなこともあって、ステレオサウンドで働きはじめたばかりのころ、
いきなり聴く機会にめぐまれたカウンターポイントのSA2への期待は、
試聴が始まるまでの、わずか数時間のうちにみるみる高まっていった。

山中先生の試聴だった。
真空管でヘッドアンプは無茶な試みなのか……。
そう感じてしまった。

Date: 2月 21st, 2009
Cate: Mark Levinson, 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その28)

ご存じの方も多いだろうが、
ジョン・カールのローノイズ化の手法は、増幅素子(トランジスターなりFET)を、
複数並列にして使用するものである。

ひとつひとつの増幅素子から発生するノイズは、時間的にランダムな周波数特性とレベルなため、
2個の増幅素子の並列接続では、それぞれの僧服素子から発生するノイズ同士が打ち消し合い、
1個使用時に比べて約3dB、ノイズレベルが低下する。
さらに3個、4個と並列する数を増やしていけば、少しずつノイズレベルは低下していく。

この方式を最初に採用したヘッドアンプが、マークレビンソンのJC1だと言われている。
瀬川先生は、JC1と同時期のオルトフォンのヘッドアンプMCA76、
このふたつの優秀なヘッドアンプの登場が、
1970年代後半からのMC型カートリッジのブームを支えていた、と言われたことがあった。

これらのヘッドアンプと出現のタイミングがぴったりのオルトフォンのMC20は、
いっそう得をした、とも言われていた。
MCA76は、おそらく測定器メーカーB&Kの協力もあっただろうと推測できる。

低歪化、ローノイズ化していくアンプの高性能化を確実に測定していくためには、
測定器はアンプよりも低歪、ローノイズでなければ、
アンプの歪を測っているのか測定器自身の歪を測っているのか、ということにもなりかねない。
世界一の測定器メーカーとして知られていたB&Kだけに、そのあたりの技術力、ノウハウは確かなものであったはずで、
その協力・バックアップがあったからこそ、
他のアンプメーカーに先駆けて優秀なヘッドアンプの開発に成功したのだろう。

Date: 2月 21st, 2009
Cate: 真空管アンプ, 長島達夫

真空管アンプの存在(その27)

ステレオサウンド別冊として刊行されていたHigh-TechnicシリーズのVol.2は、
長島先生が一冊すべてを書き挙げられたMCカートリッジの本だ。
すこし脱線するが、世界のMC型のいろいろと題して、
当時発売されていたMCカートリッジの内部構造図が、21機種分掲載されている。
ダンパーの形状、マグネットの形状や大きさ、コイルの巻き方、引き出し線がどこから出ているかなど、
個々のカートリッジの詳細がわかる、
ひじょうに充実した内容で、ここだけでも、この本は価値は十二分にあるといえるものだ。

この内部構造図を、実際にカートリッジを分解して、わかりやすいイラストを描かれたのは、
目次のイラストのところに名前がある、神戸明(かんべ・あきら)さんだ。
瀬川先生のデザインのお弟子さんだった方だ。

長島先生による「すぐれたMC型カートリッジの性能をひきだすための七章」、
 第一章:MC型カートリッジからみたヘッドシェルについて
 第二章:MC型カートリッジとトーンアームの相性
 第三章:MC型カートリッジとヘッドアンプおよびステップアップ・トランス
 第四章:プレーヤーシステムはMC型カートリッジにどんな影響をおよぼすか
 第五章:MC型カートリッジからみた望ましいプリアンプとは
 第六章:MC型カートリッジからみた望ましいパワーアンプとは
 第七章:すぐれたMC型カートリッジの性能を十全に発揮させるためのスピーカーシステムとは

この記事も、オーディオの勉強に役立った。
オーディオに興味をもちはじめて2年目、15歳の時に、この本を読んだ。
中途半端な技術書を、この時期に読んでいなくてよかった、といまでも思う。
私にとって、この本は、絶妙のタイミングで現われてくれた。幸運だった。

第三章:MC型カートリッジとヘッドアンプおよびステップアップ・トランスで、
ジョン・カールが考案したローノイズの手法を紹介されている。

Date: 2月 21st, 2009
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その26)

マークレビンソンのLNP2やJC2に魅力を感じていた私は、
カウンターポイントのデビュー作SA1に期待を寄せていた。

真空管を水平に配置すること、外部電源の採用で、JC2と同じ1Uシャーシー。
ツマミのレイアウトもスマートで好感がもてる。
新鮮な印象をまとまった真空管アンプとして、その音には期待していた。
左右のレベルコントロールのツマミの形状も、マークレビンソンに似ている。
なんとなくではあったが、私の中では、真空管アンプにおけるマークレビンソン的存在だった。

山中先生がステレオサウンドに、新製品紹介で記事を書かれていた。
それを読むと、やはり期待できる感じだ。
ただ動作面に関しては、すこしネガティヴなことも書かれていたように記憶しているが……。

そしてステレオサウンドで働きはじめたばかりの時、
カウンターポイントから真空管でMCカートリッジ用のヘッドアンプを実現したSA2が出てきた。
真空管によるヘッドアンプは、私も、あれこれ妄想したことがある。

Date: 1月 14th, 2009
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その25)

「遅れてきたガレージメーカー」と、私は、真空管アンプの新興メーカーのことを、こっそりと、そう呼んでいる。

マークレビンソンに代表されるガレージメーカーは、トランジスターによるアンプで、
規模は小さいながらも、少なくとも日本に輸入されたものは、それなりの完成度だった。

繰り返し書いているが、新興ブランドの真空管アンプは完成度が低い、と言わざるを得ない。

真空管をトランジスターのように扱っているから、と説明してくれた人もいるが、
そうだとしても、先に登場したガレージメーカーのトランジスターアンプよりもお粗末だ。

トランジスターアンプのガレージメーカーの技術者が、NASAや軍事関係のメーカーから、だとしたら、
「遅れてきたガレージメーカー」の人たちは、どういうキャリアなのか。

趣味でアンプを自作してきた人たちなのだろうか……。

Date: 1月 14th, 2009
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その24)

1970年代は、ガレージメーカーと呼ばれる規模のアンプメーカーが、いくつもアメリカで誕生している。
1972年にLNP2を送りだしたマークレビンソンがそうだし、AGI、SAE、GAS、DBシステムズ、
ジェニングスリサーチ、スレッショルド、ダンラップクラーク、アナログエンジニアリングなどだ。
これらのブランドは日本に輸入されたもので、
輸入されなかったブランドは、もっと多く誕生し消えていったのだろう。

なぜこれほど多くのブランドが誕生したのかは、アポロ計画の終焉によるNASAの規模縮小や、
ベトナム戦争からの撤退による関連企業から優秀な技術者の流出が理由だと言われている。

それにこの時代は、信頼性、精度が高く、性能も優れているパーツが数多く開発されたことだろう。
そして、これらのパーツも、70年代に入り、
一般市場において容易に入手できるようになったのではないかと思っている。

LNP2が登場したころから、MILスペック(軍規格)のパーツを使用した、と謳うアンプが増えている。

真空管アンプの新興メーカーの登場は、数年後である。

Date: 12月 13th, 2008
Cate: 五味康祐, 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その23)

五味先生は、オーディオ愛好家の五条件として、次のことをあげられている。

①メーカー・ブランドを信用しないこと。
②ヒゲのこわさを知ること。
③ヒアリング・テストは、それ以上に測定器が羅列する数字は、
 いっさい信じるに足らぬことを肝に銘じて知っていること。
④真空管を愛すること。
⑤金のない口惜しさを痛感していること。

それぞれについては、ステレオサウンドから刊行されていた「オーディオ巡礼」を読んでいただくとして、
ここでは、④の「真空管を愛すること」から、もう一度引用する。
     *
分解能や、音の細部の鮮明度ではあきらかに520がまさるにしても、音が無機物のようにきこえ、こう言っていいなら倍音が人工的である。したがって、倍音の美しさや余韻というものがSG520──というよりトランジスター・アンプそのものに、ない。倍音の美しさを抜きにしてオーディオで音の美を論じようとは私は思わぬ男だから、石のアンプは結局は、使いものにならないのを痛感したわけだ。これにはむろん、拙宅のスピーカー・エンクロージァが石には不向きなことも原因していよう(私は私の佳とするスピーカーを、つねにより良く鳴らすことしか念頭にない人間だ)。ブックシェルフ・タイプは、きわめて能率のわるいものだから、しばしばアンプに大出力を要し、大きな出力Wを得るにはトランジスターが適しているのも否定はしない。しかしブックシェルフ・タイプのスピーカーで”アルテックA7”や”ヴァイタボックス”にまさる音の鳴ったためしを私は知らない。どんな大出力のアンプを使った場合でもである。
     *
五味先生は、倍音の美しさを真空管アンプに認めておられる。

ステレオサウンドの筆者の中で、真空管アンプのよさを積極的に認めておられた長島先生は、
「真空管アンプの方が、トランジスターアンプよりも音の色数が多い」とよく言われていた。

五味先生も長島先生も、表現は違うが、同じことを言われている。

カウンターポイントの主宰者、マイケル・エリオットも、同じ趣旨のことを言っていた。
真空管を使いつづける理由は?、という問いに、
「ローレベルのリニアリティが優れていること、
それと真空管でなくては得られない音色があるから」と答えていた。

真空管だからこそ得られる音色とは、五味先生、長島先生が感じられていたことと同じだろう。

カウンターポイントの初期の製品、SA5、SA4を聴くと、納得できる。
けれど、少なくともSA5を聴いて、私はローレベルのリニアリティが優れているとは感じられなかった。

マイケル・エリオットの言葉どおりのアンプは、SA5000になって、はじめて実現できたと思っている。

Date: 12月 11th, 2008
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その22)

新興ブランドの真空管アンプに使われることの多い真空管のひとつに6DJ8がある。
この6DJ8を最初にアンプに使ったのは、(民生用としては)マランツのパワーアンプ#9が最初のはずだ。

#9は、入力部(初段と2段目)に6DJ8を使っている。
まず6DJ8の半分を使ったP-K分割回路で、入力信号を、正相、逆相に切り換えられるようにしている。
6DJ8ののこり半分が、いわゆる増幅回路の初段にあたるわけだ。

不思議なのは、なぜマランツのパワーアンプの中で、#9にだけ位相反転機能がつけられているかである。
#9の発売は1960年。
このころ、アメリカではシステム全体のアブソリュートフェイズ(絶対位相)が問題になっていたのだろうか。

スピーカー端子のプラス側に電池をつないだときに振動板が前に動くのを正相と決っているように、
アナログディスクの再生にも、もちろん決り事があり、各メーカーは基本的に従っている。

ただしスピーカーでもJBLのように逆相のものがあるように、カートリッジの中にも逆相の製品がいくつかあった。
その代表格がEMTのTSD (XSD)15である。ただしEMTのプレーヤーに装着し、
内蔵イコライザーアンプを通した出力は正相になっている。
その他にも、たしかシュアーやデッカが逆相になっていた。

TSD15のトーレンス版のMCH-I(II)は、製造時期によって、逆相のものもあれば、正相のものも存在していた。
それだけでなくカートリッジ内部に高域補正のためのコンデンサーが並列に接続してあるが、
このコンデンサーの容量、銘柄も時期によって異っている。

CDは、井上先生からきいた話では、初期の頃は、正相、逆相の決り事は正式に決っていなかったらしい。
そのため一部には逆相出力のCDプレーヤーがあったようだし、逆相になっているディスクもあった。

私が知っている限りでは、プロプリウス・レーベルの「カンターテ・ドミノ」がそうだ。

1987年か88年だったか、「カンターテ・ドミノ」の輸入CDが店頭に並びはじめたころ、
すこし時期をずらして2枚購入したことがある。

最初に購入したディスクはレーベルが黒色、2枚目は赤色。
当時すでにレーベルの色の違いで音が変ると言われていたが、
この2枚のディスクの音の違いは、そういう差ではなく、絶対位相の違いだった。
もう手もとにないので記憶によるが、黒色レーベルが逆相、赤色が正相だった。

これが意図的になされたものか、そうでないのかは不明だが、
同じディスクの正相と逆相が揃っているのは、試聴の時にはけっこう便利なものである。

逆相と言えば、カウンターポイントとミュージックリファレンスのアンプもそうだ。
SA5とRM4は、ラインアンプは6DJ8の一段増幅。カソードフォロアーではない。
ラインアンプの出力は反転する。逆相アンプである。

もしマランツ#9が登場したころに、アメリカで絶対位相の問題が取りあげられていたとしよう。
その約20年後に登場した新興ブランドの真空管アンプは絶対位相に関心をはらっていないのか。

このことだけにとどまらず、真空管の使い方にも、技術の断絶と言いたくなるものを感じる。

Date: 12月 11th, 2008
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その21)

ユニットからエンクロージュアに伝わる振動の大きさや周波数分布、Qの鋭さなどは、
ユニットの反作用が大きいか少ないかで、ずいぶん異ってくるはずだ。

ユニットのフレームから伝わってきた振動はエンクロージュアを震わす。そして放射される。
これも一種のノイズである。
このノイズの質(たち)や量が、聴感上のSN比に深く関係している。

トランジスターアンプと真空管アンプのノイズの聴こえ方が違うように、
スピーカーの方式、設計思想などによって、やはりノイズの聴こえ方が違ってくるのは当然のことだ。

そして、このことはアンプのノイズがどう聴こえてくるかにも関係してくるだろう。
もしかすると、新興ブランドの真空管アンプのノイズも、アメリカでそのころ台頭してきた、
フィルム状の振動板(振動膜といったほうがいいだろう)のスピーカーで聴くと、
JBLの4343で聴くよりも、案外気にならないのかもしれない。
それはスピーカーの能率の問題というよりも、ノイズの相性なのではないだろうか。

Date: 11月 21st, 2008
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(余談)

真空管パワーアンプの出力端子は、通常、4Ω、8Ω、16Ωとなっている。

ほとんどやる人はいないと思うが、真空管パワーアンプで、
たとえば公称インピーダンス2Ωのアポジーのカリパーを鳴らしたいとき、どこの端子につなげばいいのか。

4Ωの端子でもならないことはない。じつは一度試したことがある。
マッキントッシュのMC275でカリパーを鳴らしたのだ。

4Ω端子でもいけるといえばいけるが、精神衛生上はあまりよくない。
そのときは試さなかったが、8Ω端子と16Ω端子をつかうという手がある。
8Ω端子にマイナス、16Ω端子にプラスを接続するわけだ。

一般的な出力トランスの場合、8Ω端子と16Ω端子間のインピーダンスは、1.32Ωである。
ちなみに4Ωと8Ω端子間は0.68Ωである。

まぁ大丈夫なはずだが、試したことはないので保証はできない。

Date: 11月 15th, 2008
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(その20)

スピーカーユニットに、+(プラス)の信号が加わると、
振動板が前に動こうとすると、フレームがその反発を受けとめる。

大砲から弾が発射されるとき、砲身が後ろに下がるのと同じで、
振動板が前に動く(作用)には、かならず反作用が発生する。
その反作用はフレームを振動させ、振動板が前に動き出して音を放出するよりも先に、
振動板まわりのフレームから音を出している。
その振動は、エンクロージュアにも伝わり、側板、リアバッフル、天板、底板を鳴らす。

フレームから先に音が出ることは、1980年代に、ダイヤトーンが測定で捉えている。

その反作用は、振動板のマスに比例する。
ドーム型やコーン型のダイレクトラジエーターよりも、
コンプレッションドライバーのほうが大きいだろう。

平面型のスピーカーユニットでも、日本とアメリカでは異ることを書いた。

薄いフィルム状の振動板だと、日本のメーカーが採用したハニカム振動板よりも、
磁気回路、フレームに与える反作用が相当に小さいのは、容易に想像がつく。

トランジェント特性のよさを追求していても、コンプレッションドライバーとでは、
もちろん、フィルム状振動板の方が圧倒的に小さいだろう。

フレームが受ける反作用が小さければ、
フレームを介してエンクロージュアに伝わる振動も比例して減っていく。

このことは、スピーカーシステムとしてまとめられたときに、
大きな違いとして形態に現われてくる。