使いこなしのこと(その2)
エレクトロボイスのSentry500の素っ気無い仕上げを、家庭での使用を前提に、
木目仕上げのエンクロージュアと、
木製のCD(Constant Directivity=定指向性)ホーンを採用したSentry500SFVの発表後、
しばらくしてのことだったから、1984年ごろの、ステレオサウンド試聴室でのコトだ。
その日、ステレオサウンド編集部では試聴室を使う予定はなく、
HiViの筆者の方ふたりで、Sentry500SFVの試聴をやられていた。
試聴室隣の倉庫に、工具を取りに降りていったとき、試聴がはじまって1時間くらい経過した頃だったようだ。
試聴室に入らなくても、うまく鳴っているかどうかは、すぐにわかる。
覇気が感じられない音で鳴っているなぁ……、と思いながら、工具を探していたら、
試聴室の中から、「こっちに来て、なんとかしてほしい」という声が掛かった。
ふたりとも、鳴っている音に納得できずに、あれこれ試したものの、たいした変化は得られなかったとのこと。
ざっと見渡すと、いつものセッティングとは違う。
アンプの電源を落とし、スピーカーケーブルやピンケーブルもいったんすべて外し、
ACコードもすべてコンセントから外した。
それから、いつもの試聴のようにセッティングする。
なにもすべて外す必要はないのだが、
やはり一からすべて自分でやったほうが確実だからだ。
スピーカーもアンプもいっさい移動しないので、
またケーブルやその他のモノもいっさい換えないままだったので、時間にして、5分程度だ。
ふたたび電源を入れて、音を出す。
このくらい変わるだろうな、と予測していた音が鳴ってきた。
時間は短いし、何一つ換えなかったとはいえ、ある程度の変化量は予測していた。
井上先生の試聴で、毎回体験していることだからだ。
でも、筆者の方ふたりは、こちらが驚くほど、驚かれていた。
そして、チューニングによる音の変化と受けとめられたようだ。
自慢話をしたいわけではない。
ここで、私がやったことはチューニングではなく、あくまでもセッティングであり、
それをやり直しただけだということを理解していただきたい。