井上卓也氏のこと(その15)
井上先生の試聴は、きまって「あそこをこうしてみろ」「次はこっちをこうしろ」という指示から始まる。
そうやって音が整っていく。まさしく整音(voicing)だ。
たいてい1時間から2時間かけて、それらを行なった上で、新製品の試聴が始まる(しかも夜遅くから)、
さらに個々の製品に対して、あれこれチューニングをされる。
終るのは午前様になるのは当り前だった。
大変ではあったが、おもしろい。だから、前回の試聴で井上先生がやられたことを、
とにかく見様見真似でやってみる。
わかってやっていたこともあれば、わかったつもりでやっていたこともあるし、
とにかくやってみようということでやっていたこともある。
けれど、そうやって自分でやってみることで、それもステレオサウンドの試聴室だけではなく、
自分のオーディオ機器でもやってみることで、いつのまにか身についていく。
そしてセッティングとチューニングを、それまでごっちゃに捉えていたことに気がついていくことになる。