井上卓也氏のこと(その7)
井上先生のタンノイ・オートグラフの組合せは、最初、伝統的なタンノイのいぶし銀と言われる音の魅力を、
スピーカーが高能率だけに小出力だが良質のパワーアンプで引き出そうという意図から始まっている。
だからまず組み合わされたのは、プレシジョンフィデリティのC4とマークレビンソンのML2Lである。
この組合せの音は、予想通りの精緻で美しい音がしたと語られている。
思い出していただきたいのは、ML2Lについて前に書いたことだ。
井上先生は、ML2Lのパワーの少なさを指摘されていた。
普通の音量ではなまじ素晴らしい音がするだけに、そのパワーの少なさを残念がられていた。
井上先生がそう感じられたのは、この組合せの試聴においてであることがわかる。
井上先生は、こう語られている。
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鮮明に広がるステレオフォニックな音場感のよさと音像定位の美しさが魅力的ですね。これはこれで普通の音量で聴く場合には、一つのまとまった組合せになります。ただ、大音量再生時のアンプ側のクリップ感から考えてみると、これはオートグラフのほうにはまだ十分に大音量をこなせる能力があるということになります。
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記事に掲載されているところだけ読んだのでは、井上先生が感じておられた微妙なところは、
残念ながら伝わってこない。
致し方ないだろう。書き原稿ではないし、あくまで井上先生が話されたものを編集部がまとめているものだけに。
それでも、アンプ側のクリップ感、普通の音量、といったところに、
それとなくML2Lの出力の少なさに対する不満が表れている。