Archive for category サイズ

Date: 10月 14th, 2014
Cate: アナログディスク再生, サイズ

サイズ考(LPとCD・その1)

CDが1982年に登場して、もう30年以上が経つ。
CDは片手で持てる。
その名のとおりコンパクトなディスクである。

最初CDを見て触れた時、小さいな、と感じた。
それまでプログラムソースとしてもっとも聴いていた(さわっていた)のはLPの12インチだから、
CDのサイズはかなり小さく感じた。

CD登場以前からオーディオをやってきた者にとっては、
CDのサイズはシングル盤(7インチ)よりも小さいわけで、
けれどシングル盤が片面に一曲ずつしか記録できないのに対して、
CDは片面だけでLPよりも長い時間を記録できるから、よけいに小さく感じたものである。

それにシングル盤はドーナツ盤といわれるように中心の穴が大きい。
だから片手で持てるわけだが、実際にプレーヤーにのせるときには両手を使う必要がある。

CDはトレイにのせるのに両手は必要としない。
むしろ両手でやろうとすると面倒である。片手で持ち、片手でトレイにセットできる。
だからこそコンパクトディスクなのだと思う。

そんなCDを、いまでも小さいな、と感じることがある。
その一方で、アナログディスク(LP)を大きいと感じる人(世代)もいるようだ。

つまり12インチが私にとって標準サイズになっていることに気づかされる。
だから、いまでもCDを小さいと感じるわけだ。

Date: 9月 1st, 2014
Cate: サイズ

サイズ考(大口径ウーファーのこと・その7)

昔からいわれつづけていることで、いまもそうであることのひとつにウーファーの口径の比較がある。
15インチ(38cm)口径ウーファーと8インチ(20cm)口径ウーファー4本の振動板の面積はほぼ同じである──、
といったことである。

20cm口径1本と10cm口径4本も振動板の面積はほほ同じになり、
38cm口径1本と10cm口径16本もそういうことになる。

このことから小口径ウーファーを複数使用することで、大口径ウーファーと同じことになる、ということだ。

ウーファーの振動板が平面であれば、この理屈もある程度は成り立つ。
だが実際にはウーファーの振動板はコーン(cone、円錐)であるから、そう単純な比較とはならない。

ウーファーの振動板を手桶としてみた場合、
38cm口径のコーン状の手桶が一回ですくえる水の量、
20cm口径のコーン状の手桶が四回ですくえる水の量、
このふたつが同じになるには20cm口径のコーン状の手桶はかなり深いものでなければならない。

つまり一回の振幅で動かせる空気の量は、
38cm口径1本と20cm口径4本とでは同じにならない。38cm口径のほうが多い。

こう書いていくと、次には振幅でカバーすればいい、ということになる。
昔のユニットでは難しかった大振幅がいまのユニットでは可能になっている。
だから小口径、中口径のウーファーに足りない部分は、振幅を大きくとることで補える、という考えだ。

だが、これはスピーカーの相手が空気ということを無視している、としか思えない考えである。

Date: 8月 30th, 2014
Cate: サイズ

サイズ考(大口径ウーファーのこと・その6)

JBLの2インチ・スロートのコンプレッションドライバーの大きさは、なかなか見慣れるということがない。
毎日眺めているのだから、いつのまにか、大きいと感じられないようになるのかと思っていたけれど、
ふとしたことで、やはり大きいな、といまも感じることがある。

ただ大きいな、とおもうのではなく、その大きさに少しばかりの異様さも感じることがある。
この大きさのドライバーが、JBLのスタジオモニターのフラッグシップであった4350、4355の中に入っている。

エンクロージュアの中におさまっているから、ふだんは目にすることのない2440、2441。
だがこのコンプレッションドライバーをエンクロージュアから取り外してみると、
なぜ、このユニットだけ、これほどの物量を投入しているか、と思い、
オーディオマニア(モノマニア)としては嬉しくもなるし、
これだけのユニットとエネルギーとしてバランスを得るには、
ウーファーは15インチ口径で、しかも二発使いたくなる。

だからといって15インチ口径ウーファーをシングルで鳴らして、うまくバランスしない、といいたいのでなはい。
菅野先生のリスニングルームでは、375と2205Bが見事にバランスしている。
2205Bは一本で鳴らされている。

それはわかっている。
けれども視覚的に捉えてしまうと、2インチ・スロートのコンプレッションドライバーには、
ダブルウーファーがよく似合う。

Date: 8月 12th, 2014
Cate: iPod, サイズ

iPodのサイズ(その2)

日本の特撮において、巨大な生物(ゴジラやウルトラマンなど)やロボットが海中から現れたり、
海でのシーンでは、どうしても、そこでのゴジラやウルトラマンなどが、人の大きさということを隠しきれない。

そこに水があり、何ものかがいて動いていれば、波が発生する。
この波の大きさとそこでの何者かの大きさとを自然に比較して、
そこでの何者かの大きさを自動的に判断してしまうからである。

特撮の技術が進歩していっても、こればかりはどうにもならないことだと思っていた。
いまではコンピューターグラフィックスの進歩により、そんなことは感じなくなっている。

ゴジラにしろウルトラマンにしろ、他の実写のロボットにしろ、
街中でのミニチュアのジオラマによるシーンと水があるシーンとでは、
すべてのものが後者では縮小されてしまった感じが拭えない。

人は、何かによって、そこでの大きさを判断してしまうようだ。
その一方で、大きさを正しく判断できない写真に目にすることが何度かあった。
最近もあった。

おもに車の写真において、である。
実際の車の写真であるのに、非常に良く出来たミニカーを撮っている、とどうしても思えてしまうことがある。
人が一緒に写っていれば、そう感じることはもちろんないだが、
そうでないシーンでの撮影だと、どうしても実際の車のサイズがイメージできない写真がある。

なぜだろう、と思う。

Date: 7月 22nd, 2014
Cate: iPod, サイズ

iPodのサイズ(その1)

電車に乗ると、周りの人のほとんどはスマートフォンをいじっている。
何をしているのかまではわからないが、使っている機種を見て「デカイ!」と思うことが増えてきた。

スマートフォンの液晶ディスプレイのサイズは大きい方がいいのだろうか。
「デカイ」と感じてしまうスマートフォンを見ていると、iPodのサイズのことを思い出す。

別項(「ラジカセのデザイン!」)の(その11)で書いた──、
21世紀のカセットテープはiPodであり、
カセットテープに取って代ったのはエルカセットでもなければDCC、DAT、ミニディスクなどでもなく、iPodである。

スティーブ・ジョブズは21世紀のカセットテープ、デジタルのカセットテープを、
iPodで目指していたからこそ、iPodをカセットテープと同じ寸法に仕上げ、
Dockと呼ばれるコネクターで、さらにWiFiを利用して、
さまざまなオーディオ機器への接続が可能になっている点も含めて、
iPodこそが、この時代の、ジョブズがデザインし直したカセットテープである、との確信が強くなっている。

iPodをハードウェアとしてしか捉えていない、他のメーカーの同様のモノがiPodに勝てない理由は、ここにある。
ソニー・ウォークマンの初代モデルが誕生したとき、まずサイズがあった、という話を読んでいる。

「デカイ」スマートフォンを見ていると、サイズへの理念がまったく欠けているとしか思えない。

Date: 7月 17th, 2014
Cate: サイズ

サイズ考(大口径ウーファーのこと・その5)

ウェストレックスの1950年代の劇場用スピーカーシステムにT501Aがある。
このシステムに採用されているスピーカーユニットはJBL製。
中高域を受け持つT550Aホーンは、JBLの537-500同等品で、ドライバーのT530Aは375同等、
低域には150-4C同等のT510Aが二発、フロントショートホーン付き、
しかも2.4m四方のバッフルをもつエンクロージュアに収められている。

T501Aシステムの使用例から、
2インチ・スロートには最低でも15インチ・ウーファー二発が必要とまではいわないまでも、
こういう大がかりなシステムになっていくのも、2441+2397を毎日目にしていると当然だな、と思えてしまう。

そしてJBLが2440を搭載した4350で、ホーンに2397といった、いわゆるフルサイズのホーンではなく、
2392 (2308+2311)というショートホーンにした理由もなんとなくではあるが、想像できる。

2392のホーン部の奥行きは11.7cm(音響レンズ部は6.3cm)。
HL88の半分以下の長さしかないし、ホーン開口部の大きさもずっと小さい。

HIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙に、
エレクトロボイスの30WではなくJBLの15インチ・ウーファーを使っていたら、
手前に置かれるホーンは2392になっていたかもしれない。
そうなっていたら2392に2440は取りつけられていただろうか。

2440と2392の組合せは、ドライバーの先にちょこんとホーンがくっついている、そんな感じになる。
2440が圧倒的に存在感を示す。サイズ的にはかなりアンバランスだから、
HIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙には、こちらでもドライバーなしでの撮影になったかもしれない。

Date: 7月 17th, 2014
Cate: サイズ

サイズ考(大口径ウーファーのこと・その4)

HIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙のHL88には375なり2440が取りつけられていない。
これも疑問だった。
しかもHL88は、あの独特の音響レンズが正面を向いてではなく、上を向くように置かれている。
ならば375なり2440を取りつけるべきではないか、と感じていた。

HIGH-TECHNIC SERIES-1を手にしたとき、私はまだ375の実物も、HL88の実物に目にしたことがなかった。
カタログの寸法値を眺めて、なんとなく、このくらいの大きさだろうな……と思っていた。

HL88のサイズは、音響レンズの直径が34.3cm、奥行きが40cmとなっている。
東京に来て、HL88、それに375の実物を見て、こんなに大きいのか、と思った。
寸法値だけを見て頭のなかでの想像よりもずっと大きかった。

HL88のホーン開口部は15インチ口径のウーファーとほぼ同じだし、
奥行きに関しても375もしくは2440を取りつけると50cmを超える長さになる。

いまハークネスの上に、2441+2397をのせている。
のせているから2441の大きさを毎日見ることになる。
2397サイズのホーンでも、2441の方が大きく感じられる。
でかいドライバーだ、と思うし、2441+2397の存在によって、
D130が少し小さく感じられるようにもなってきている。

このモノとしてのサイズ感からいえば、
2インチ・スロートのドライバーに対して15インチ口径のウーファーが一本というのは、
これ以上ウーファーのサイズは小さくできない、というぎりぎりの線だと感じてしまう。

Date: 7月 13th, 2014
Cate: サイズ

サイズ考(大口径ウーファーのこと・その3)

これは私の勝手な想像なのだが、
おそらくHIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙の撮影には、他のユニット、
つまりJBLのウーファーも用意してあったと思う。

HIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙とカラー口絵の撮影は亀井良雄氏。

カラー口絵には、もっと多くのユニットが登場する。
ウーファー、フルレンジユニットとして、
30Wの他にJBLの2220B、LE8T、アルテックの405A、エレクトロボイスのSP12C、
ドライバー/ホーンとして、
JBLの375、2440、2420、075、2405、HL88、HL89、2345、2397、他ネットワークが、
アルテックの802-8D、511B、ヴァイタヴォックスのS3、CN123、CN157、
エレクトボイスの1823M+8HD、T350などである。

編集に携わった経験からいえば、表紙とカラー口絵は同じスタジオで、同じ日に撮られているはずだ。

つまりはこれだけのユニットを並べ替えた結果としての、
JBLの075、HL88、エレクトロボイスの30Wの組合せといえる。

では、なぜ2220Bではなく30Wだったのか。

HIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙では、075がほぼ中央の手前に置いてある。
075のやや後方(向って左側)にHL88があり、これらから少し離れた後方に30Wという配置。

この配置で、30Wを2220Bに置き換えたとして、これほどいいバランスの写真になったとは思えない。

Date: 7月 13th, 2014
Cate: サイズ

サイズ考(大口径ウーファーのこと・その2)

私がこれまで自分のモノとして鳴らしてきたスピーカーでは、
15インチ口径ウーファーがいちばん大きい。
それ以上の、18インチ、30インチといった大口径ウーファーは、自分のモノとして鳴らした経験はない。

いまいわゆる大口径ウーファーは少なくなってきたように感じる。
いつのまにか大口径ウーファーを鳴らすのは、あまり知的ではないような風潮が一部ではあるようだ。
小口径、中口径ウーファーを鳴らす方が質の高い低音が得られる──、
それがあたかも最新の鳴らし方のように喧伝する人たちが増えてきたようにも感じている。

低音再生とは、そういうものなのか、
それに15インチは大口径なのか。

私の感覚では、15インチをこえたサイズから大口径となる。
つまり私にとって大口径ウーファーのもっとも小さなサイズが18インチであり、
それ以上の24インチ、30インチが、まさしく大口径ウーファーという認識である。

1977年秋のステレオサウンド別冊、HIGH-TECHNIC SERIES-1。
マルチスピーカー・マルチアンプのすすめ、というテーマでつくられた一冊。

この本の表紙はJBLの075、HL88(537-500)、それにエレクトロボイスの30Wが並んでいる。
この表紙をみたときから、なぜJBLのウーファーを使わなかったのか、という疑問があった。

075、HL88、2220でもいいじゃないか、と思いながらも、
075、HL88、30Wの組合せの写真のバランスの良さにも感心していた。

Date: 7月 12th, 2014
Cate: サイズ

サイズ考(大口径ウーファーのこと・その1)

1970年代、大口径ウーファーといえば、15インチ(38cm)口径以上のユニットのことだった。
当時は、15インチの上に18インチ(46cm)があった。

さらにその上もいくつかあった。
最も有名なユニットとして、エレクトロボイスの30W(30インチのWooferを表す)があった。
30インチ=76cmの振動板は紙ではなく、発泡ポリスチレン製だった。

他にはハートレーのModel 224HSがあった。
型番の下二桁が口径を表している。
24インチ(60cm)口径。
ハートレーには218HSもあり、こちらは18インチ。

国産ウーファーにも15インチよりも大口径ウーファーはあった。
フォステクスのFW800は型番が示すように80cm口径。

ユニットとしての単売はなかったと記憶しているが、
ダイヤトーンにはハニカム振動板を採用した80cm口径、160cm口径のユニットによるサブウーファー、
D80、D160もあった。

私がオーディオに興味を持ちはじめてからでも、これだけの大口径ウーファーが存在していた。
それ以前にもいくつかある。

ナショナルは92cm口径のウーファーを試作している。
ハザマは78cm、パイオニアは80cmと63cm(PW63S)、岡原研究所が71cm、ダイヤトーンが55cm、コーラルが100cmと、
これらは市販されていた、ときいている。

Date: 7月 1st, 2011
Cate: サイズ, 冗長性

サイズ考(その71)

オーディオ機器にとっての冗長性は、
音を良くするためのものであり、オーディオ機器としての性能性を高めていくことに関係している。

けれどこういった、オーディオ的な冗長性が性能向上の妨げとなるのが、コンピューターの世界のような気がする。
コンピューターの処理速度を向上させるために、CPUをはじめて周辺回路の動作周波数は高くなる一方。

私が最初に使ったMac(Classic II)のCPUのクロック周波数は16MHz。
いま使っているiMacは3.06GHz。
CPUの構造も大きく変化しているから、単純なクロック周波数の比較だけでは語れないことだが、
もしClassic IIに搭載されていたモトローラ製のCPU、68030の設計のままでは、
いまのクロック周波数は実現できない。
68030ではヒートシンクが取りつけられることはなかったが、
次に登場した68040にはヒートシンクがあたりまえになっていた。

68040はMacに搭載されたかぎりでは、40MHzどまりだった(内部は80MHz動作)。
68030と68040はコプロセッサーを内蔵しているか否かの違いもあり集積度もかなり異る。
そのへんのことをふくめると、厳密な喩えとはいえないことはわかっているが、
68040までは、冗長性を減らすことをあまり考慮せずに最大出力を増やしていったアンプのようにも思える。

コンピューターの世界は、冗長性をそのまま残していては、速度向上は望めない。
CPUの進歩はクロック周波数をあげながらも、消費電力はそれに比例しているわけではない。
冗長性をなくしてきているからこそ、いまの飛躍的な性能向上がある。

電子1個を制御できるようになれば、コンピューターの処理速度はさらに向上する。
そうなったとき冗長性は、コンピューターの世界からはほとんど無くなってしまうのかもしれない。

冗長性を排除していくコンピューターの世界と、
冗長性がまだまだ残り続けているオーディオの世界が、これから先、どう融合していくのか。

Date: 4月 20th, 2011
Cate: サイズ, 冗長性

サイズ考(その70)

以前、冗長性について書いた。

冗長性とは、
言語による伝達の際,ある情報が必要最小限よりも数多く表現されること。
冗長性があれば雑音などで伝達を妨げられても情報伝達に成功することがある。余剰性。
と辞書(大辞林)にはある。

オーディオ機器のサイズを考えていく上で、冗長性と切り離すことはできないのではないか。

オープンリールデッキのテープ速度も、トーンアームのロングサイズも、
アナログプレーヤーのターンテーブルの慣性モーメントを増していったことも、
パワーアンプにおけるA級動作など、これらはすべて冗長性といえよう。

Date: 3月 28th, 2011
Cate: サイズ

サイズ考(その69)

アナログ全盛時代には、サイズの大きさは、性能の高さともかなり密接に関係していたところがある。
とくに入力系に関しては、その傾向が強かった。

テープデッキでは、カセットテープよりもオープンリールテープのほうが、格上の存在としてあった。
オープンリールテープデッキでも、音をよくするためにテープ速度を増していく。
それに反比例して録音時間は短くなるから、リールの号数も大きくなっていく。

アナログプレイヤーもそうだ。927Dstという存在があったし、
マイクロの糸ドライブ(のちにベルトドライブに)も、
瀬川先生がやられていたように、二連ドライブという方法もあったし、
同じ構造のトーンアームなら標準サイズのモノよりもロングアームのほうが、一般には音がよいといわれていた。

とにかく性能(音)を向上させていくには、物量を投じていく必要性が、あのときはあった。

デジタル時代になっても、しばらくは同じだったといえる。
コンパクトディスクという名称にふさわしいCDプレイヤーを最初に送り出してきたフィリップスでも、
CD63とLHH2000とでは、ずいぶんサイズは異る。
このふたつはコンシューマー用とプロ用という違いがあるため、
サイズを同列には比較できないところはあるけれど、
この2機種のサイズの差は、そのまま音の差にもなっていると、やはり思ってしまう。

最初は一体型しかなかったCDプレイヤーにも、アンプ同様、セパレート型が登場してきた。
44.1kHz、16ビットというフォーマットのなかで、音を良くしていくために物量が投じられていった。

Date: 6月 26th, 2010
Cate: サイズ

サイズ考(その68)

表面実装パーツを全面的に使用すれば、
アンプやCDプレーヤーなどのオーディオ機器のサイズはかなり小さくすることも、それほど難しくはない。

電源もスイッチング方式を採用すれば、10年、20年前では考えられなかったサイズまでコンパクトに仕上げ、
性能も維持できるようになってきた。

音のよいオーディオ機器はたいていサイズが大きいものだ、という認識は少しずつ変ってきている時期に、
いまはなりつつあるといえるだろう。
私が小学生のころは、「大きいことはいいことだ」というコマーシャルソングがよく流れていた。
だからというわけではないが、1970年代のオーディオ機器で、私が憧れていたモノは、LS3/5Aを除くと、
ほとんどすべて、そのサイズは大きいものばかりだった。

ただデカければそれでいいというわけではもちろんないが、それでもある程度の大きさ、
それも必然の大きさであれば、それはそれで憧れの対象となる。

EMTの927Dstの大きさは、30cmのLPをかけるのにはやや大げさなサイズではあるものの、
あの音を聴き、実際に927Dstのしっかりした構造にふれれば、そのサイズも憧れのなかにふくまれてくる。

Date: 6月 14th, 2010
Cate: サイズ

サイズ考(その67)

わかりやすいサイズに、部品の大きさがある。
オーディオ用パーツとして売られているもの(それらが必ずしも優れた部品とは限らない)は、
特にコンデンサーは、汎用の電子部品とくらべると、ひとまわり、ふたまわり大きなものがある。

その一方で、コンピューターの普及、クロック周波数の向上によって、表面実装パーツもふえてきた。
これらのパーツは、抵抗もコンデンサーにしても、かなり小さい。吹けば飛ぶ、そんな小ささと軽さ、である。

この表面実装パーツを採用しているオーディオ機器も、ここ数年増えてきている。
従来のオーディオ用パーツからしてみると、そのサイズだけで、音の期待はできそうにない気もしてくるが、
ここまで小ささを実現していると、信号系路のコンパクト化は、
以前では考えられなかったレベルで可能になってくる。

井上先生がよく云われていたことだが、CDプレーヤー内部のLSIは、それぞれが小さな放送局である、と。
個々のLSIの消費電力が、放送局としての出力の大きさと比例関係にあり、
当然消費電力が小さいほど、そのLSIからの不要輻射は少なくなり、CDプレーヤー内部の高周波ノイズは減っていく。

消費電力だけでなく、使用LSIの数が増えればそれだけ放送局の数が増えたのと同じことで、
LSIのサイズが小さくなれば、不要輻射の面積も小さくなる、といえるだろう。

これと同じ理屈でいけば、表面実装パーツをうまく使えば、高周波の信号が通る系路をコンパクトにし、
そこからの不要輻射を減らし、また他からの影響も受けにくくなろう。