Archive for category ユニバーサルウーファー

Date: 10月 10th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(続々・低音再生とは)

低音再生は、部屋との兼ね合い・折り合いのなかでやっていくものである。
自分の部屋でいい音・いい低音を出せればいい、ということである。
つまり、自分のとっての、自分の部屋、スピーカーシステムにとっての最適解を求めていくこと、である。

だから、他の人がその人の部屋で好結果を得られた手法が、
そのまま自分の部屋でも好結果を出してくれる、とは限らない。
あくまでも、それはその人、その人の部屋、その人のスピーカーシステムなど、
いくつもの要素に対しての最適解なのだから、
それを、自分にとっての最適解とすることには無理がある。

もちろん熱心に取り組まれている人が出した最適解から学べること、参考にできることはある。
それでも、それはあくまでもその人にとっての最適解であって、自分にとっての最適解では決してない。

自分のとっての最適解は、自分の部屋で、自分のスピーカーシステムで、しかも自分で出していくしかない。

だからスピーカーシステムの下に敷く置き台に関しても、すべての人にとっての最適解、
いいかえれば普遍解、そういうものは存在しない、と思っていたほうがいい。

よくスピーカーのシステムの置き台に関して、断言的な口調で、
あれがいい、とか、これはダメだ、とか、そんなことを軽々しく口にする人がいる。
もちろん、その人はその人なり、自分の部屋、自分のスピーカーシステムで、
自分が納得できる音を出した手法であるから、
それがそのまま他の人、他の部屋、他のスピーカーシステムにもあてはまることだ、とつい思ってしまうのだろう。

でもくり返すが、あくまでもそれはその人によって、その人の環境においての最適解であって、普遍解ではない。
だから、ある人にとっての最適解は、
あくまでもそういう手法がある、という参考例として受けとめておいたほうがいい。

Date: 10月 9th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(続・低音再生とは)

スピーカーのセッティングに定石はない、と瀬川先生はよくいわれていた。
たしかにそうで、与えられた部屋の中で、少しでもいい音をスピーカーから引き出すためには、
思いつくかぎりのことをやってみたらいい、と私も思っている。

低音再生に関しても、というより、低音再生のほうがスピーカーのセッティング以上に定石はない、と思って、
取り組んだ方がいいと思っている。

アクースティック楽器にはピストニックモーションで音を発しているものはひとつもない。
だがスピーカーはベンディングスピーカー以外は、ほぼすべてピストニックモーションで音を出す。
このことがオーディオの難しさであり、面白さであり、
本来は部屋の広さが低音の最下限の周波数の半波長分の長さを必要とするはずなのに、
実際には狭い空間でも、ごく低い周波数の再生は決して不可能ではないことにも関係している、と考えている。

つまりピストニックモーションだから、ある程度、無理が通る。そんなふうにも受けとめている。
だからというわけではないが、いわばオーディオの正攻法だけではうまくいかない、
いいかえれば常識にとらわれていては、突破できない領域が出てくる。

たとえばスピーカーの置き台。
私がオーディオに関心をもち始めたころ(1976年)は、
ブックシェルフ型スピーカーシステムの置き台は、まずコンクリート・ブロックだった。
ちょっとつよい力でひっかくと、端のほうがぽろぽろ欠けてくる。これが標準だった。
音に配慮したスピーカーの置き台がメーカーから発売されるようになるのは、もっと後のことだ。

いまの若い人は、そんなコンクリート・ブロックを使ったことのある人はいないだろうが、
私と同じ、そして私より上の世代の方ならば、いちどはコンクリート・ブロックを使われた経験をお持ちだろう。

いまオーディオ店には、いろんな材質の、高価な置き台がいくつもある。
もうコンクリート・ブロックを使っている人なんていない、かもしれない。
それにコンクリート・ブロック、と聞いただけで、そんなもの音を悪くするだけ! と切って捨てる人もいる。

そんな扱いを受けているコンクリート・ブロックだが……。

Date: 10月 8th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(低音再生とは)

低音の波長は長い。
可聴範囲の最下限の20Hzの波長は、音速を340mとすれば17mになる。

オーディオの本には、低音の再生には部屋の一辺の長さが再生したい低音の最下限の半波長分が必要となる、
と書かれている。
つまり20Hzまで再生したければ、当然そこまで再生できるスピーカーが必要になるばかりではなく、
最低では20Hzの波長、8.5mの距離が部屋のどこかになくてはならない、ということだ。
天井高が8.5mの部屋なんて、そうないだろう。
となると部屋の縦方向か横方向の一辺が8.5m。
仮に正方形の部屋とすれば、8.5m×8.5mは72.25㎡になる。40畳ほどの、かなり広い部屋だ。
もうすこし一辺が8.5mより短いとしても、極端に短くなってしまうとプロポーションがひどいものになり、
音響的に好ましくない結果を生むことになる。
となると常識的な比率からもう一辺を決めれば、やはり日本では贅沢な空間となってしまう。

理想をいえば半波長なんてけちくさいことをいわずに20Hzの一波長分、
つまり一辺が17m以上ある部屋ということになる。
17m×17mは289㎡……。もう夢の話になる(私にとっては)。

だから広い空間を用意できない人は、低音再生はあきらめたほうがいい、というふうにも、
ここのことを持ち出していわれる。
そして「部屋が狭いから低音はいさぎよくあきらめました」とか
「質の悪い低音を無理に出すよりも出さない方が、音全体のクォリティは高くなる」などいう人もいる。

半波長の長さを必要とする──、
これは果してスピーカー(ウーファー)から音を出している場合にもあてはまることなのだろうか。

ウーファーのほほすべてはピストニックモーションで空気を、いわば強制駆動している。
実際の楽器が低い音をだしているときの空気のふるまいと、
ウーファーが低い音を再生しているときの空気のふるまいを、同一視していいのだろうか。

共通するところは多い、とは思う反面、音の出し方そのものが大きく異るため、
違う捉え方も要求されるはずである。

私の経験からいえば、たしかに広い空間のほうが、無理を感じさせない、自然な低音を出しやすい。
そのことは否定しないし、広い部屋は欲しいけれど、
狭い部屋だからといって、質の高い低音が出せないわけではない。
ただ難しい、というだけにすぎない。

だから部屋が狭いから……、などという言い分けはせずに、
そして固定観念、それに一般的な常識にはいっさいとらわれずに、
あれこれ挑戦してこそ、低音再生はおもしろい、といえる。

つまり低音再生は、鳴らす部屋込みで考えるべきもの、ということを忘れないでほしい。

Date: 9月 26th, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々続々余談)

このレベル調整の大事なところのひとつは、ものには順番がある、ということ。
これは、スピーカーシステムのレベル調整だけではなくて、システム全体の調整についても同じことがいえる。

基本的にシステムの調整は、音の入口側(上流側ともいう)、
つまりアナログプレーヤー、CDプレーヤーから手をつけていく。
ここが一通り終ったら、次はアンプにうつり、スピーカーシステムへと手をつける。
長年愛用してきて、ずっと調整をしてきたシステムであれば、どこか一箇所に手をつけることのほうが多くなるが、
システムを構築したばかりのころは、今日はアンプ関係を、明日はスピーカーシステムを、と、
気のむくままにあちこちに手をつけるのではなくて、基本にしたがい音の入口側からきちんとやっていく。

スピーカーシステムのレベルコントロールの調整も同じで、
初めて鳴らすスピーカーシステムで、しかも4343のようにレベルコントロールが3つのあるような場合、
音を鳴らして気になった帯域を気のむくままいじっていても、全体のバランスをうまくとることはむずかしい。
めんどうくさいと感じても、ここでも順番を守って調整していくことで、基本的なバランスを得られる。

この基本的なバランスを得ずに、気の向くままいじっていては、オーディオはいつまでたっても泥沼のままだ。
とにかく基本的なバランスを最初に得ることが大事である。
そして、低音を基本として、という意識をつねにもっていたい。

低音こそ音楽の土台であり、この土台をしっかりと構築していくことが基本である。
土台をいいかげんなままにしておいて、その上に築き上げられる帯域をあれこれいじっても、うまくいくわけがない。
そうやっていても、たまたまうまく鳴ることがあるけれど、ほかのところをいじって、その音がくずれたとき、
もう一度、その音を再現できるかというと、難しいはずだ。
それは土台となる低音域が構築されていないからである。

五味先生は「音の清澄感を左右するものは、低音である」と「五味オーディオ教室」に書かれていた。

低音という土台・基本を出発点としているならば、この言葉を実感できるはずだ。

Date: 9月 26th, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々続余談)

ミッドバス(2121)のレベル調整がいちおう決まったら、
次はミッドハイのレベルコントロールを上げていきレベル調整を行う。
ここでも、くり返すが、モノーラル音源を使うことを忘れないこと。

ミッドハイのあとはトゥイーター(2405)のレベル調整を行う。
もちろん、ここでもモノーラル音源を使う。

モノーラル音源は、なにもモノーラル録音である必要はない。
コントロールアンプにモードスイッチがついていれば、モノーラルにすればいい。
思い出してほしいのは、コントロールアンプについている機能は、
音を調整していくためにも必要な機能でもある、ということだ。

こうして4343を構成する4つのスピーカーユニットのレベル調整が終ったら、
しばらくの期間は、好きな音楽を聴いて過ごすのがいいと思う。

もちろんモノーラルでのレベル調整を終えた後にステレオで再生して、さらに細かいレベル調を続けて行っていい。
けれど、トゥイーターのレベル調整を終えるのに、ひとりでこの作業を行っているとけっこうな時間をとらえる。
誰か協力してくれる人がいて、4343の脇でこまかくレベルコントロールをいじってくれる人がいれば、
椅子から立ち上らなくても済むだけでなく、それ以上にレベル調整の作業ははかどるものである。

でもひとりだと、そうはいかない。
何度も何度も椅子から立ち上り4343のところへ行きレベルコントロールを動かしては、
また椅子に坐り音を聴き……、をくり返さなければならない。

まとまった時間のとれた時にこの作業を行ったとして、けっこうくたくたになる人もいるはず。
2405のレベル調整を終えた時点で疲労を感じていたら、その日はもうやめたほうがいい。

微調整は残っているとはいえ、ここまできちんと調整を行っていれば、
4343が変なバランスで鳴っている、ということはないからだ。

Date: 9月 22nd, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々余談)

ここからのレベル調整で気をつけたいのは、レベルコントロールの位置を左右で合わせようとしないこと。
スピーカーユニットにはバラツキがある。
これは以前も書いていることだが、
JBLはスピーカーユニットに関しては、生産上の能率差を±1dBを許容範囲としている。
もっともこれは4343をつくっていた頃の、
JBL proのアプリケーション・エンジニアのゲーリー・マルゴリスの発言で、いまのJBLがそうだということではない。

けれど4343の時代では、最大で2dBの能率差が生じることもあるわけだ。
ステレオサウンドで使っていた4343、4344ではコーン型ユニットに関しては能率差は感じなかったが、
ドライバーユニットに関してははっきりと認められるだけの能率差があった。

だから前回の補足になるが、ウーファーだけを鳴らしたときも、
できれば左右の音圧差がないかどうかチェックしておきたい。
このときプログラムソースはモノーラルのものを使った方がいい。
これは、マルゴリスも、ステレオサウンド 51号掲載の4343研究の中で語っていることだ。

左右一本ずつでの音出しをし、モノーラルでの両チャンネルの音出しで中央に音源が定位するようにすること。
場合によってはアンプのバランスコントロール、
もしくはパワーアンプの入力レベルコントロール(左右独立調整のもの)での調整が必要になるかもしれない。

ミッドバス(2121)のレベルコントロールも同様で、モノーラルの音源を用意しておきたい。
モノーラル1本ずつでレベルを調整し、モノーラル音源の中央の定位が明確になるようにしていく。

ウーファーをネットワーク通さずに鳴らしたときと、
ネットワーク通しミッドバスまで鳴らしたときの再生帯域はそう違わない。
けれど、実際にこのふたつの音を比較すると、大きな違いがある。
片方はネットワークを経由していないウーファーだけの音、
もう片方は3つのフィルター(ウーファーのハイカット、ミッドバスのローカットとハイカット)を通って、
しかも2つのスピーカーユニットが鳴っているわけだから、違いがあって当然なのだが、
このときの音の違いは記憶しておきたい。

Date: 9月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続余談)

4343のウーファー2231Aが弾むような感じでうまく鳴ってくれるところ、
音楽を聴いて手応えを感じられるような音で鳴ってくれるところが見つかったら、
ここで床からの距離を試してみる。

最初から1cm刻みで高さを変えていくという人もいるだろうが、
最初は5cm単位、10cm単位ぐらいでいい。
それで床に直置き、5cmあげた状態、10cmあげた状態、15cmあげた状態の音を聴いて、
たとえば床直置きと5cmあげた状態、どちらか迷うのであれば、その中間を試してみる。
このとき4343をもちあげる台は、まず木のブロックがいい。
もちろんほかの材質のブロックを使ってもかまわないが、
最初は同じ材質で高さの違うブロックを用意しやすいということで、木をすすめる。

この時点で、ウーファーを固定しているネジの締付け具合による音の変化も確認しておきたい。
しっかり締めた状態、すこしゆるめた状態、あきらかにゆるめた状態の音を聴いて、
音楽のメロディが明瞭に聴こえるところにしておく。
締めつけすぎはよくないが、しっかり締まっていなければ、音楽のメロディは明瞭に聴こえてこないはずだ。

ここまでやって、これから上3つのユニットのレベル調整にとりかかる。
ここからはバイアンプ駆動のロータリスイッチを通常のポジションに戻す。
ミッドバス(2121)、ミッドハイ(2420)、トゥイーター(2405)のレベルコントロールは完全に絞っておく。
そしてミッドバスのレベルコントロールをあげていく。ウーファーとのバランスをはかりながら調整していく。
ミッドバスのレベルをあるところまで調整できたら、ここでもミッドバスを固定しているネジ締付け具合を調整する。

だからといって、ここでものすごいこまかい微調整まで行わなくてもいい。
まだチューニングの途中なのだから。

Date: 9月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・余談)

低音域こそが土台であり基本であり、そこに、その上の帯域を築いていく、ということは、
なにも既存のスピーカーシステムにスーパーウーファーを加えて調整するときだけでなく、
既製品のスピーカーシステムについても同じことだ。

今年の2月から毎月第一水曜日に四谷三丁目の喫茶茶会記で行っている公開対談の前々回で、
JBLの4343をどう鳴らすのかをテーマにしたときにも話したことだが、
4343の調整方法として、こういうやり方もある。

4343はバイアンプ駆動が行えるようになっている。
リアバッフルの入力端子の近くに、
マイナスドライバーで切り替えられるようになっているロータリースイッチがある。
これをまずバイアンプ駆動のポジションにする。
そしてパワーアンプからのスピーカーケーブルは下側の端子(つまりウーファー用の端子)に接ぐ。
ウーファーの2231A(もしくは2231H)をフルレンジとして鳴らすことになる。

ボイスコイルボビンとコーン紙との接合部分に、
f0を下げるためのマスコントロールリングが装着されている2231Aだから、
2220やD130のウーファー版の130Aのように、
またはアルテックの515のようにある程度まで中高域まで伸びているわけではないが、
高域は完全に不足しているものの、音楽のメロディは聴きとれる。
この状態で、4343の設置場所をあれこれさぐる。
つまりウーファー(低音域)ができるだけよくなるところをさぐりだすわけだ。

スピーカー背面の壁からの距離、左右の壁からの距離をあれこれ試す。
このときは、床に直置きでもかまわない、というか、直置きのままのほうが動かしやすく、
最適もしくは好適な場所をさぐりやすい。

床からどのぐらい離すかは、最初にやらなくてもいい。
もちろんブックシェルフ型のスピーカーシステムだったら別だが、
4343は4面仕上げしてあるとはいうもののフロアー型スピーカーシステムであるからだ。

Date: 9月 19th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その16)

私自身も、最初からそう捉えていたわけではなくて、
QUADのESLの低音に大きな不満は感じていたわけではないが、
さらに拡充しようとしたときには、そこに「つけ足す」という認識でいた。

当然そういう選択眼で、市販されているウーファー(ユニットを含めて)見ていたから、
これといって目ぼしいモノはないように受けとめていた。

これが変っていったのは、ずっと後である。
自分でサーロジックのスーパーウーファーを使いはじめたこと、
それと菅野先生の「音」を聴くことができたからである。

菅野先生のスピーカーは、ここで改めて書くまでもないと思うが、3システムある。
既製品のスピーカーシステムはマッキントッシュのXRT20だけで、
あと2つのシステムは、菅野先生自身によってスピーカーユニットを組み合わせてまとめあげられたもの。

ここで注目してほしいのは、その2つのシステムの低音を受け持つのは共通している、ということだ。
JBLのオリンパス風の一種のバスレフ型のエンクロージュアに、ユニットはJBLの2205をおさめられている。

この上に、2つのシステムを構築されている。
ひとつはJBL375と蜂の巣(537-500)の組合せを中心としたもので、
もうひとつはジャーマン・フィジックスのDDD型ユニット、Trobadour80を中心としたものだ。

菅野先生のシステムの変遷についてご存じの方は説明は不要だろうが、
いま2205がおさめられているエンクロージュア(パイオニアLE38A)には、
いくつかのウーファーがとりつけられてきた。
パイオニアのPW38A、ソニーのULMやトリオのユニット、
アルテックのウーファーも515Bをはじめいくつかを試されている。
JBLではLE15Aから2220、そして現在の2205である。

このあいだ中高域を受け持ってきたのはJBL375+537-500である。
トゥイーターは075。このところには変化はなかった。

Date: 9月 18th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15)

中高域にコンデンサー型ユニットを採用し、低音域だけをコーン型ユニットに受け持たせた、
いわゆるハイブリッド型と呼ばれることの多いスピーカーシステムのすべてを見て聴いているわけではない。
だから、もしかすると私がこれから書くことと違う構成のものが存在していたかもしれないが、
すくなくとも大きな傾向として、このハイブリッド型スピーカーシステムのウーファーは、
比較的小口径のコーン型が採用されている。

なぜかといえば大口径のコーン型のウーファーの、いわゆる音の重さを嫌ってのことだろう。
コンデンサー型ユニットの軽やかさに追従するためには、コーン型ウーファーも、
小口径、中口径のもののなかから選び、振動板の面積が不足するのであれば、複数使用する──。

もっともらしい理屈のように思えるが、
実はこれが、うまくいかなかった、大きな理由ではないだろうか、と私は考える。

たとえば、中高域が無指向性ユニットならばウーファーも無指向性にしたほうがいい。
そのためにウーファーをエンクロージュアの正面にとりつけずに、
エンクロージュアの底面にとりつけ床に向けて放射して無指向性にする──、
これと似たような発想に思えてしまう。

なぜ低音域に関しては、スーパートゥイーターにあった発想の自由度がこうも失われてしまうのか。
むしろスーパートゥイーターに関してよりも、
スーパーウーファーに関してのほうが自由度がなければうまくいかないのではないだろうか。

この問題について考えると、この項の(その14)に書いた、
「コーン型ウーファーをつけ足す」という発想そのものが、じつは間違いの元、
スーパーウーファーは難しい、ということに生み出している、としか思えない。

スーパートゥイーターはつけ足す、という感覚でとらえてもいいが、
スーパーウーファーはつけ足す、という感覚ではうまくいかない。
なぜなら、低音域こそが土台・基本であるからだ。
つけ足す、のではなく、そこに築いていくものであるからだ。

Date: 9月 18th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その14)

振動板といっても、コーン型ユニットとコンデンサー型ユニットでは、
前者が振動板であれば後者は振動膜である。
さらに前者にはボイスコイルとボイスコイルボビンがそこにぶらさがり実効質量が大きくなりがちなのに対し、
後者の振動膜にはボイスコイルもボイスコイルボビンもいらない。

それに駆動力のかかりかたも大きく違う。
コーン型ではボイスコイルが振動板の駆動源となるが、コンデンサー型では振動膜全面に駆動力がかかっている。

その駆動力を生み出している原理の違いもあるから、どちらがどうとは一概にはいえないところはあるけれど、
コンデンサー型スピーカーは、やはり軽やかな音を出すものが多い。
鈍い、なにかをひきずったような、悪い意味での重さにつながるような音は出さない。

そういうコンデンサー型スピーカーシステムの低音域の再現能力をより充実させようと思ったときに、
安易にコーン型ウーファーをつけ足してもうまくいかない──、
そんなふうに、これまでいわれてきた。

確かにメーカー製の、コンデンサー型ユニットにコーン型ウーファーを足したスピーカーシステムで、
うまくいった例はあるのだろうか。
私が聴いた範囲内では、残念ながら成功例といえるものには出合えなかった。

そういった製品ばかりが続いていると、なにか原理的にうまくいかないのではないか、
とつい考えてしまいがちになるが、ほんとうにそうなのだろうか。
コンデンサー型スピーカーの低音域を拡充するには、
同じコンデンサー型の大型ユニットをもってこないとだめなのか。

スーパートゥイーターに関しては、ユニットの動作原理・振動板の形状について比較的自由であったのに、
なぜかスーパーウーファーに関しては、その自由度を、自ら手放してしまっているように感じることがある。

Date: 9月 18th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その13)

スーパートゥイーターとスーパーウーファー、
このふたつは、ワイドレンジ再生にとって有効な手法でありながらも、
実際に取り組まれている方の意識、といおうか、自由度といおうか、
それがスーパートゥイーターとスーパーウーファーとでは捉え方に差異がある、とみえる。

たとえばタンノイのキングダムはスーパートゥイーターにドーム型ユニットを採用している。
システムの中核となる同軸型はコーン型とホーン型は複合形ゆえに、
これまでのスピーカーシステムの構成的にはスーパートゥイーターにはホーン型ユニットとなることが多いし、
それを自然なことだと受けとめられることだろう。
ホーン型でなければリボン型ユニットとなるだろう。
そこをあえてタンノイは、そのどちらでもなくドーム型をもってきたところに、
タンノイ初の4ウェイ・システムのキングダムがうまくいった要因のひとつが感じられる。

スピーカーを、自分でユニットを組み合わせて構築されている方でも、
中域にホーン型ユニットを採用し、それに惚れ込みながらも、
スーパートゥイーターに関してはリボン型ユニットという方も少ないないと思う。
なにもそれは中域がホーン型ユニットの場合にかぎらない。
ドーム型ユニットの中域の上にリボン型という人もおられるだろう。

中域・高域がホーン型ならばスーパートゥイーターもホーン型、
中域・高域がドーム型ならばスーパートゥイーターもドーム型、
このことにとらわれている方はあまりおられないと思えるし、
メーカーのスピーカーシステムをみても同じ方式のユニットで必ずしも統一しているわけではない。

つまりスーパートゥイーターの選択に関しては、自由度を感じられる。
なのにスーパーウーファーに関しては、どうだろうか。

よくいわれている、つまり昔からいわれていることがある。
コンデンサー型のスピーカーにスーパーウーファーをつけ足すのは、うまくいかない、ということがある。

スーパーウーファーについて(パラゴンに関しての余談)

仮想音源について考えると、JBLのパラゴンをマルチアンプで、
デジタル信号処理で3つのユニットの時間差を補整して鳴らすのは、果してうまくいくのだろうかと思ってしまう。

パラゴンではウーファーいちばん奥にある。しかも低音のホーンは曲っている。
もうパラゴンを聞いたのはずいぶん昔のことで、しかもまだハタチそこそこの若造だったため、
音源がどのへんにできているかなんて、という聴き方はしていなかった。

低音の仮想音源は、高音用の075の設置場所のすこし手前であたりにできるのだろうか。
低音のホーンはこのへんでカーブを描いている。

そして中音は中央の大きくカーブした反射板をめざすように設置されている。
反射板も、中音に関しては、左右チャンネルの音が交じり合っての仮想音源となっているだろう。

高音と中音の各ユニットは近くに位置している。

パラゴンの図面を眺めるたびに、いったいどこにそれぞれの音域の音像は定位するのだろうか、と考えてしまう。
考えるよりも、実際にパラゴンを聴いた方が確実な答えがでるのはわかっている。
でも、いまその機会はないから、こうやってあれこれ考えている。

私の予想では、やはり075の周辺にうまくできるような気がする。
だとすると、パラゴンを、いまの時代に鳴らすことの面白さが、いっそう輝きを増す。

Date: 2月 5th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その12)

デジタル信号処理がオーディオ機器の中に取り込まれたことで、
アナログだけの時代では困難だったことも可能になり、しかも価格的にも身近になっている。

エレクトロニッククロスオーバーネットワークに搭載された時間軸の調整がある。
これによりスピーカーの個々のユニット配置の自由度が増した、と一般には言われている。

コーン型ウーファーと大型ホーン型の中高域の組合せだと、たいていホーンの長さの分だけ、
ドライバーの位置は後ろになる。
いうまでもなくウーファーから出た音とドライバーから出た音は、聴き手の耳に到達するまでの距離が異る。
それをデジタル信号処理で補整することができるわけだから、ユニットの配置の自由度が高まる、といわれている。

けれど、この項の(その1)でも書いたように、音源には実音源と、もうひとつ、いわば仮想音源がある。
とくにホーン型、それも大型のホーンになれば、この仮想音源の問題が浮上してくる。

ホーンのどの位置に音像が定位するのか。
たとえば、もうJBLもやらなくなってしまったが、スラントプレートの音響レンズや、
多孔型の音響レンズ(いわゆる蜂の巣状のもの)がホーンの前面についていると、
音響レンズのあたり、つまりホーン開口部あたりに音像はできる。

そういうホーンがある一方でノドの奥に音像ができるものもある。

いまのデジタル信号処理では、この仮想音源の位置までは補整できない。
つまりいかにデジタル信号処理を導入しようとも、仮想音源の位置合せは使い手側に要求される。

音響レンズ付のホーンであれば、ウーファーと同一平面状にマウントされた状態で、
ほぼ仮想音源の位置は揃うことになる。
このままではホーンの長さによってはドライバーの位置がウーファーよりも後ろにくることが多いので、
ウーファーにその分だけのディレイをかければいい。
実際には厳密な距離分だけの時間差の補整ではなくて、最終的には細かな詰めは求められるけど、
デジタル信号処理のメリットがうまくいきるケースといえる。

ノドの奥に定位しがちのホーンでは、ウーファーとホーン開口部を同一平面にしたままでは、
実音源の時間差は補整できても、
仮想音源の位置の補整はできないままなので、物理的な位置合せが求められる。

つまりデジタル信号処理があっても、各ユニットの配置の自由度が増すとはいえない。

Date: 1月 19th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー, 岩崎千明

スーパーウーファーについて(その11)

スーパーウーファーの使いこなしに苦手意識をもっている人は、
実際に確かめたわけではないが、スピーカーの自作の経験のない人かもしれない、と思うことがある。

そのスピーカーの自作も、いきなり2ウェイなり3ウェイといったマルチウェイからとりかかるのではなくて、
最初はフルレンジからはじめて、トゥイーターを追加して2ウェイ、さらにウーファーを追加して3ウェイ、
こんなぐあいに段階を踏んでマルチウェイのスピーカーの自作のことだ。

たとえばカートリッジを交換する、CDプレーヤーを交換する、アンプを交換する、
交換によって生じる音の違いには、エネルギーの総体量の変化は、基本的にはないといっていいだろう。

厳密にいえばワイドレンジのカートリッジもあればナローレンジのモノもある。
アンプにしても、古い古典的な、トランスを多用した管球アンプと、最新のソリッドステートアンプとでは、
やはり周波数特性も違うし、ノイズレベルも異るから、エネルギーの総体量は、決して同じではない。

でも、フルレンジのスピーカーにトゥイーターを足したり、
メインのスピーカーシステムにスーパーウーファーを足すのに較べると、
その差は、ないとはいえないまでも少ない。

つまり上に書いたスピーカーの自作の経験のある人は、エネルギーの総体量の変化に対して、耳が馴れている。
ない人は、スーパーウーファーの使いこなしに対して、臆病になっている、そういう面がありはしないだろうか。

ここから話はズレるけれど、
フルレンジからスタートしたスピーカーに、次の段階としては、
ふつうトゥイーターを追加することが一般的ではないだろうか。

少なくとも、私はそう思っていたし、これは瀬川先生の4ウェイ構想の影響でもあるけれど、
私には、ウーファーを、まず追加する、という発想はなかった。

いま瀬川先生の「」に関連した作業で、
岩崎先生の文章を先日入力していた。

パイオニアのスコーカーPM12Fについて書かれた文章を読んで、岩崎先生らしい、と思った。
     *
これをフルレンジとしてまず使い、次なるステップでウーファーを追加し、最後に高音用を加えて3ウェイとして完成、という道を拓いてくれるのが何よりも大きな魅力だ。
     *
こういう驚きは、気持がいい。